ゼストの相棒であるメノウもデューマンである。しかしまたしてもそれは後天的なもの。
似たような境遇を持つ2人は最高のペアとして周知され、憧れられていた。
「あのデューマンコンビ・・・。間違いない!ゼストとメノウだ!」
「俺達もいつかあんなペアになれればなぁ!」
周りから歓声が聞こえる。どうやらゼストとメノウが任務から戻ってきたらしい。
「相変わらず、煩いものだ。」
ゼストは任務から戻ってくる時は静かな方がいい人だ。
「まあ、気にするな。周知されてるのは喜ばしいことじゃないか。」
メノウは割り切った性格だ。
冷えた性格のゼストを宥めるようなメノウ。お互いに関係は良好で、ゼストが唯一背中を任せられると豪語したのがこのメノウである。実力も拮抗し、戦ったことはないがゼストはメノウと戦うと本当に死ぬかもしれないという程だ。
「今回も手掛かりになりそうなものは見つからなかったな。」
「ああ。あの区域のエネミーは確かに強い。しかしまだまだだ。まだ遠く及ばない。」
ダーカーの異常発生区域に任務に赴いていたが、2人でその区域を完全鎮圧したという凄まじい報告だ。
「まあ、あの記録を解明してその「ゼスト」とかいう名前、さっさと取り払ってしまいなよ?」
「・・・その話はあんまり人前でするなよ?」
「分かってるって。私がゼストと知り合った時は「ゼスト」って名前じゃなかったしね。慣れないんだよやっぱり。」
「済まないな。だが、あの名前を使うにはまだやり終えてないことが多すぎる。」
メノウはゼストの全てを知っているかのような口ぶりだ。
それもその筈。ゼストとメノウが知り合ったのはメディカルセンターだ。
ゼストがセツナに治療はされたがあまりの重傷さに、フォトン残量がほぼ0になり掛けていた。自分でフォトンを生み出すことが出来なくなればアークスとしての活動ができなくなる為、遺伝子操作を用いた治療を行うことを決意した。
その際、同じような重傷で運ばれたのがメノウである。同じく遺伝子治療を行う予定だった。
ゼストの遺伝子操作による治療は成功し、さらにゼストはその遺伝子に完全に適応したためフォトン量が治療前と比べて増大した。しかし副作用により元の種族、ヒューマンからデューマンへと変貌を遂げた。
「グッ・・・ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」
「これは!うわああああああああああああああ!!」
メノウは反対に適応出来ずに暴走した。その当時のメディカルチームの半分を殺害するほどの事態に発展した。その際に右眼から出血、角と羽、尻尾が生えており、遺伝子治療に用いる遺伝子がメノウの体を変化させ侵食していた。
「収まれ」
デューマンと化したゼストがメノウを完全に静止させる。刺さるようなフォトンの雰囲気がメノウを止めたのだ。
完全に適応したゼストの遺伝子を用いてメノウは一命を取り留めた。しかしゼスト以上に見た目の変化は著しく、羽と尻尾は治まったものの角が残り、右目の充血は治ることは無かった。
さらに元々セツナのような遠距離支援型のメノウの適性が変化した影響で支援が出来なくなり、ゼストのような近接戦闘を行うようになった。
「あの時は本当にどうなるかと思ったぞ。」
「お、覚えてないんだから仕方ないだろ!?実際あの時自我を遺伝子に食い殺されそうになってたんだ。こうやって自分が残ってることが奇跡なんだと思うよ。」
お互いの境遇に似たものを感じている為、お互いが多大な信頼を寄せている。そして何より、ゼストがメノウに全てを打ち明けていることから分かることだ。
メノウは「第四特務隊全滅記録」について全て知っていて、「ゼスト」の素性をすべて知り尽くした唯一無二の存在なのだ。
彼女はゼストに協力する。それは彼の無くしたもう一つの名前を取り戻させる為、もう一度その名前で「ゼスト」を呼んであげたいと言う簡単な、たった一つの彼女の願いのためでもあるのだった。