「よシ、これなラ、まだなんとかなるだろウ。」
外国人のような片言で喋っているのはセクメトだ。
数年前、とある特務隊によって、行方不明になっていたセクメトは回収され、ゼストの元に届けられた旧世代のキャストだ。
現在は、ゼストの自宅にて保護、及び調整を受けている。ゼストが調整する訳では無い。調整するための設備さえあればセクメトは自身で調整を行えるので、ゼストは設備を備えた部屋を貸し与えている。
「さすがニ、喋られなイままでハ、意思疎通に問題があるだろウ。元のように、流暢ニ話せるようニなるには旧世代のキャストのデータが必要だガ、生憎このご時世、古いものは淘汰されて行くようダナ。今では旧世代のキャストなんか、俺しかイナイだろうからな。データが無いのも仕方ないカ。」
今の世代の最古のキャストパーツを流用してもセクメトの声帯系列の回路には適合出来なかった。改良を施してようやくこのレベルだ。
声を発する度に、人で言う声帯の位置に存在するパーツがギシギシと嫌な音を立てる。
「どうしてモ、話さなければならない時以外ハ、これを使うわけにハ、行かないかもしれないナ。声帯パーツを無理矢理合わせているのダカラな。常用スレバ、2度と声が出なくナルだろう。」
拷問でも受けたのだろうか、セクメトが回収された時には記憶、思考回路、声帯が破壊されていた。ゼストによって記憶と思考を取り戻すことが出来たが、声帯はゼストにも戻せなかった。
その当人のゼストというと、少しの疑問を持っていた。ゼストはキャストの修理にはかなりの知識があり、声帯も治せるほどの技術を持っていた。そのゼストであっても戻せなかったことに対してだ。
「旧世代のキャストと言えども、声帯パーツは新型とあまり変化はない。しかしあいつだけは元のパーツを復元しようとしても原型がわからない。あいつには何か特別な機構が仕組まれている・・・?」
ゼストは本質を掴めてはいないが、セクメトの変化については気付いていた。
セクメトの過去のデータと照合しても、事故を起こす前と起こした後では明らかに素体の形状が違うのだ。
「形状変化型と言えどもあそこまで変化を起こすキャストは聴いたことがない。セクメトは特別な旧世代だとでも言うのか・・・?」
「俺は、ゼストニ隠している機能がアル。だが、恐らく気付くのも時間の問題だろう。これをなぜ話さないか、今プログラムサレテいる、「ゼストを守る」という目的に必要ナイからだ。」
セクメトの決意にその謎の機構は必要ない。それがプログラムされた決意であってしても、必要ないと。
「ダが、守る為に、この機構がどうしてもヒツヨウになった時は、この身が尽きようとも、その機構を極限まで使ってヤロウじゃないか。」
守る為には必要ない。しかし守る為にどうしても必要な時にこの身が滅びる可能性があっても使うという矛盾。それにはゼストの「守る為に自分を犠牲にするな。犠牲の上に成り立つモノなどたかが知れている。」というセクメトに施された外部からの唯一のプログラム、それと本来のプログラムが競合している結果の発言だ。
「俺は、自分の意思などない。ただ与えられたプログラムにソッてやるだけだ。しかし、ナンダこの胸を刺すような違和感ハ・・・。」
セクメトに別の何かが宿ろうとしていた。