霊夢と結婚した   作:毎日三拝

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結婚生活五回目「清掃奉仕」

 早朝、起き抜けに新鮮な空気を換気せねばと思い、居間の障子窓を開けば冬季に相応しくない暖かな風が吹き抜けていく。そろそろ季節的に考えても雪解けが始まる頃合なのかもしれない。

 身体を伸ばして深呼吸。間接から小気味良い音が鳴る。

 僕は寝巻きから着替えると朝食を作ってくれているだろう嫁さんの代わりに日課である神社内清掃の準備を始めた。

 

 ■ □

 

 本来ならば神社の清掃奉仕は神職や巫女、または氏子が行う。

 ところが博麗神社は神職である神主が不在だし、崇め奉るべき主神を信仰する氏子が皆無なので僕との結婚前は博麗の巫女たる嫁さんが一人で清掃奉仕していたようだ。

 外界から流れて来た本で読み知ったのだが神様とは随分と綺麗好きらしく清潔を保たねば神社は本来の機能を果たせなくなるらしい。

 それもその筈か。神社とは一種の聖域であり、現世と切り離す結界を張られた場所である。穢れを祓うべき場所が汚れてれば役割を果たす所ではない話だ。

 ゆえに掃除はまめにきちんとが基本である。一日の始まりと終わりには必ず清掃奉仕を行う。それと同時に自分が奉る神様に対する礼と挨拶になるのだ。

 清掃奉仕に入る前に自分が穢れの原因になってら元も子もないので、まず身と心を清める作法に入る。

 嫁さんが朝一番に御幣と言うらしい御祓いに使う棒串を軽く振り、清めてもらった井戸水で満たしてある桶から右手に持った柄杓で水を掬い左手に掛け、今度は左手に持ち替えて右手にも掛ける。また右手に持ち替え左手を御椀状にして口を漱ぐ。

 後は賽銭箱の前に垂れ下がる鈴を鳴らして二礼二拍一礼すれば清掃奉仕に移れる。

 この神社の巫女である嫁さんはそんな儀礼や作法を気にせず取り掛かってしまうが、僕はこうした作業が非情に大事だと考える。非情に面倒だととも思うけれど。

 さて、これから清掃作業に入りたいと思うのだが生憎と境内は雪が積もり掃き掃除が困難なので、用意しておいた清められた井戸水と雑巾で階段と賽銭箱を主とする。

 嫁さんは大して気にしていないが僕は巫女の夫というだけなので神社の本殿に立ち入る資格を持っていないので清掃奉仕は階段までとなっているのだ。

 少しばかり身内として疎外感を受けるが、僕は博麗神社に奉っているだろう神様の正体すら知らないので当然の帰結である。

 

「朝御飯出来たわよ。食後の御茶を宜しく」

 

 丁度、僕が賽銭箱の拭き掃除を終えると嫁さんが僕を呼び戻しに来ていた。

 彼女は既に寝巻きから着替えており、紅白色をした巫女服の上に厚手の防寒着を纏って寒そうに震えている。両腕で自分の身体を抱え込むくらい肌寒いなら無理して呼びに来なくともいいのに、と思ったが妙な所で義理堅いのも彼女の美徳か。

 

「ん」

 

 僕は何時ものように短く彼女に返答すると使用した清掃道具を片付けて持ち運ぶ。その姿を見届けて先導し始めた嫁さんの後を追い横に並んだ。

 

「ねぇ」

「ん?」

 

 此方を顔色を窺うように彼女は口を開く。

 

「お賽銭入ってた?」

 

 何とも返し難い言葉に思わず顔を顰めそうになった。

 誤魔化そうにも嫁さんは超能力染みた勘で嘘を看破するだろう。僕は内心可哀想に思いながらも正直に本当の事を告げる。

 

「……空っぽ」

「ああ、そう、うん」

 

 そんなの分ってたわよ、と明らかに落ち込んだ声を出して彼女は肩を落とす。

 この博麗神社では未だに余所者扱いの僕であるが嫁さんの為に何か出来ないかと日夜模索しているのだけど、如何せん神社で働いた経験も知識も無いのでどうしようもないのが現状だ。

 努力はすれどそれを解決する術を持てないのは辛い現実である。僕は溜息を吐くと嫁さんの頭を撫でて無言のまま自宅へと戻った。




広告詐欺との凄絶な戦いが終わったので投稿。
結果は濃厚な敗北。執筆中に浮き上がってくるあの広告群の所為で些か集中力が削がれるのが参ったものです。
皆さんも広告詐欺に騙されてソフトを買わないようにお気をつけて。
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