夢はパパ   作:肉壁

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おまたせしました。ようやっとAクラス戦です。
10話超えるなんて早いもんですね。
今回八千字近くあるんでお待たせした分覚悟しててください。


10.頭いいやつはだいたいメタる

「アンタに勝って今度こそ私のこと見てもらうんだから!」

 

吼える優子はどこか危なっかしかった。どうして自分との勝負にそこまで執着するのか。今度こそ見てもらうと言われて、果たして自分は優子をないがしろに扱ったことがあったのか。何がそこまで優子を駆り立てているのかまったくわからなかった。

一つ確かなことは今まで勝負を避けてきた自分も今回は万全の状態で挑んでいることであり、それははじめて本気で優子とぶつかり合うことになることだった。

今回自分は勝つためにこの場に立っている。正直今までの優子との勝負はどれも負けてもいいものであった。勝ち負けに拘らず、面倒なことを避けてきていた。

でも今日は負けるわけにはいかない。負けちゃいけない理由がちゃんとある。

 

Fクラスが試召戦争をはじめたキッカケ、もっと言えば吉井の試召戦争にかける思いを知った以上。そしてどことなく気づいた坂本がAクラスに勝つことに固執する理由、もしそれが正しいのであればそれも十分に自分が手助けしたいと思えるものだった。

 

本気で優子を倒す。倒すべき敵として、全力で戦う。

 

「試験召喚」

 

「試験召喚!」

 

一歩も引くわけにはいかない。

------

 

場所はAクラス。今ここにはAクラスの生徒の他にFクラスの生徒たちが集まっていた。

これから始まるのは試召戦争番外編、特別ルールによるAクラス対Fクラスによる代表戦である。

 

ルールの確認もほどほどに先に出されていたオーダーに沿って試合が始まろうとしていた。試合前の調印式の時から霧島と坂本はバッチバチである。それぞれのサイドに分かれ最期のミーティングをしている。

 

「よしまず最初は明久、行ってこい」

 

「ふうん。別に、倒してしまっても構わないんでしょ?」

 

お前はどこの弓兵だ。

 

「ああ、お前の本当の実力を見せてやれ」

 

「やれやれしょうがないなあ」

 

なぜか今の吉井の雰囲気は格好良さが滲み出ており、うまく表現の仕方がわからないプレッシャーを放っていた。斜に構えて目は閉じられており、普段の彼にはない、できる男の空気が取り巻いている。

相手のAクラスの佐藤美穂さんもその気迫にどこか気圧されているようにも見えた。

 

「貴方、まさかっ!」

 

「そう、実は僕--」

 

前に出て一歩彼は宣言する。

 

「--左利きなんだ」

 

さっさと死んでしまえ。

 

 

------

 

坂本の当初の予定通り吉井は負け、次は土屋の出番である。前に聞いたが吉井がある種キッカケとなって始めたこの試召戦争。最後の最後のAクラス戦でアテにすらされないって、吉井超絶かわいそうなやつかよ。

 

土屋とAクラスからはショートの小柄な女の子が中央へと向かう。二回戦、科目選択権を行使するのは土屋である。正直、あの教師も目を剥くような点数を取る土屋には不安とか一切抱いてない。どこかの吉井と違ってこれ以上ない安心感がある。

 

「去年途中から転校してきた工藤愛子です。そういえば土屋くんって保健体育が得意なんだよね、実は僕も結構得意なんだ」

 

なるほどボクっ娘か。一部でしか需要のないマイノリティに進むとはなかなかの根性だ。そんな彼女はボーイッシュな魅力のある笑顔を振りまいて盛大なカミングアウトをする。

 

「--君とは違って実技でね」

 

赤い花がそこら中で咲いた。

そりゃまあ年頃の女の子、それこそ少女漫画で主人公らの世代になりやすい17歳の子が、自分はエッチですってカミングアウトしたらこういう反応になるのだろう。

土屋なんてほぼ瀕死だし、まずいんでねーの?

 

「そっちが吉井くんと優子の言ってた三科くんだよね。君たちにも教えてあげようか保健体育。もちろん実技で」

 

優子が言ってたってなんだよ。変なこと言ってないよね、変なこと言ってたら泣いちゃうよ?

 

彼女からの誘いに吉井は恥もなくお願いしますと答えようとしたが背後からのプレッシャーに気圧されて口をつぐんだ。

たしかに以前までの俺だったら多少は吉井みたいに揺れ動いていたかもしれないが今は違う。

 

「俺はもうすでに履修済みだし、間に合ってます」

 

そうキッパリと断ったにも関わらずFクラスの野郎どもが殺意を困った目でこちらを見てくる。おい待てお前らそんな怖い顔してこっちの方を見るな。敵はあっちだ。こっちじゃないよ。ほらターンレフト。優子もそんな顔して睨まないの、めっ。あ、今の少し気持ち悪いな、無しの方向で。

 

一部女子は顔を赤くしているが、高校生ぐらいなら避妊さえしっかりすればそこらへんは構わないと思う。万が一の時のための覚悟と責任を持つことを十分に守れればそれでいいんじゃないか?

え、良いと思える相手がいない?さいですか。

 

「あ、うんそっかごめん」

 

聞いてきたくせにショートの女の子が一番ウブな反応を見せてくる。あれだなファッション童貞ならぬファッション変態ってやつか。それなりに興味はあってもその先を知らないやつか。かわいいヤツめ。

 

冗談もほどほどにしてふらふらの土屋とまだ少し顔の赤い工藤が召喚獣を呼び出す。

 

保健体育

Aクラス 工藤愛子 446点

 

なるほど確かに保健体育が得意と豪語するだけのことはある。

だがしかし。

 

vs

 

Fクラス 土屋康太 572点

 

ウチの変態には敵わない。

 

「……加速、終了」

 

まさに秒殺。Bクラス戦でも見せた腕輪の力によって目視できる速度を超え、必殺の一撃によって仕留める。

土屋康太、本当に相手したくないヤツだ。大楯なんて正面からの攻撃はいいかもしれないけど取り回し辛いから背後から回られてザクッよ?

 

負けた工藤はショックで膝をついているがそんな風に足を曲げてるとスカートの中身見えちゃいそうで恐い。

 

土屋の勝利で現在一勝一敗、次は過去の次席と現在の次席の勝負である。

 

ダルそうな視線をこちらに向けてくる姫路に諦めろと目で答えると溜息を吐いて彼女は前に進んでいった。

 

終始だるそうな仕草で彼女は召喚獣を呼び出し、その大剣を構えさせる。

 

総合科目

Aクラス 久保利光 3997点

 

vs

 

Fクラス 姫路瑞希 4409点

 

点数にして姫路の方が数段上をいっていた。ただ決してトシくんの点数も低いわけではなく、学年次席に恥じない高得点である。

このレベルになってくると伸び代もなく、点差が開くということはなかなかないため皆驚いている。

 

心なしか召喚獣も気だるげに大剣を引きずりながらトシくんの召喚獣に近づく。お互いが間合いに入り姫路の召喚獣が両手もちで切り上げの体勢に移ったとき、トシくんの召喚獣は相手の初速の遅い手元にさらに近づき大鎌を盾にして姫路の攻撃を受けきった。

前回のBクラス戦、俺がとったハルバードの横薙ぎ回避と同じやり方だった。

 

完全に動きの止まった姫路の剣を脚で踏みつけて抑え、首を狙った一撃を見舞おうとするも姫路が大剣から片手を離し、腕で攻撃を受けることによって直撃を食らうことは免れた。

 

総合科目

Aクラス 久保利光 3405点

 

vs

 

Fクラス 姫路瑞希 3225点

 

今の攻撃で大体25%ほどの点数が削られ、姫路の顔にも不味いといった表情が出てくる。

姫路は冷静に多少強引にでも剣を振り払い相手との距離をとって一息をつこうとする。だがトシくんの召喚獣がそれをさせようとはしない。

 

クラッシックなフレームの眼鏡を光らせ、いただいたといった感じで腕を組むトシくん。彼の召喚獣はバックステップをとった姫路の召喚獣に向かって自身の武器、大鎌をぶん投げた。

高速で回転して飛来してくる咄嗟の攻撃、予想外すぎるそれに反応することもできず姫路の召喚獣はもろに鳩尾に食らう。

姫路の召喚獣はさらに奥へと吹っ飛び煙から出てきたその姿はすでに満身創痍といったところだった。

 

vs

 

Fクラス 姫路瑞希 1360点

 

元々の装備の硬さで即死は免れたもののすでにトシくんとの差は大きく開き、ここから逆転して勝つのは絶望的だった。

 

隙を逃すまいと続けざまに彼の召喚獣は接近しインファイトをとる。ぴったりとくっつかれ大剣を振る余裕を与えられなかったため徐々にその点数は削れていき、やがて0となった。

 

新旧学年次席同士の勝負、蓋を開けてみれば一方的なまでのトシくんの勝利であった。ぶっちゃけ皆トシくんの慣れすぎた対大剣使いの戦い方に引いていた。

ざわざわとその試合結果とクールな彼からは想像もつかない大胆でアグレッシブな戦い方周囲は騒めく。

 

その視線に気づいたトシくんはフレームを抑え、答えた。

 

「(ゲームで)シュミレーション通りさ。重装備の相手には接近戦。(pvpの)基本だよ」

 

そう、実は新学期が始まるまでの春休み、先輩と過ごす以外の時間はお友達のトシくんの家に度々訪問して格ゲーとかRPGとかを一緒にやり込んだ。

姫路の攻撃のかわし方が俺と同じだったのも、同じ対戦ゲームで繰り返した戦法だったから。彼の性格上今までゲームというものをあまりしてこなかったが、自分で攻略本を作るレベルでやり込むことにやり甲斐を感じ珍しくその非生産的な時間の使い方に没頭した。今じゃ立派なゲーマーである。トシくん効率厨過ぎて引くよ、あと徹底的なメタがほんと酷い、羽目とか容赦ないもん。

 

一対一の対戦経験が少ない姫路はトシくんに徹底的にメタを取られて手も足も出ないままに負けてしまった。それが割とショックだったのか、ブツブツと肩を落としながらこちら側に戻ってくる。

 

「……次はコロス」

 

なんかもう一人トシくん限定のメタラーが生まれそうな予感がした。

 

 

------

気を取り直して副将戦。俺と優子の勝負である。

相手は勝利までリーチをかけてる状態で、優子も先ほどのトシくんのワンサイドゲームを見て士気が上がっているのかだいぶ息巻いていた。

 

「アンタに勝って今度こそアタシのこと見てもらうんだから!」

 

やる気満々といった感じで前へ出てきた優子がそんなことを言ってくる。彼女ほどに俺はこの勝負に対して特に思い入れはないが、ここで負けたら今までの努力の全てが終わってしまう。

代表につなげることもできず終わらせてしまうことは絶対に嫌だ。

後がない今、俺の仕事はなんとしてでも優子に勝つこと。今までまじめに向き合ったことはなかったため気がつかなかったが、彼女の放つ圧力は本当に恐いものである。

 

「試験召喚」

 

「試験召喚!」

 

出てきたのは優子そっくりの召喚獣。緑色の戦装束に甲冑をつけ、手には大槍を構えている。見た目は金属製であるからそれなりの耐久度と突貫力がありそうだった。

軽装というわけでもなさそうなので機動力で圧倒されることはなさそうである。かといって力尽くで相手を崩すことができるかといったらそれもまた難しそうであった。

 

こちらはいつも通りに錆びれた鎧に等身大の大楯。そして腕には鈍色に光り輝く腕輪。それ以外には何も持っていない。もしも相手が速かったら槍でリーチの外からザクザクやられることもあったため少し安心できる。高機動タイプではなさそうだから今回の優子の召喚獣はまだやりようがあった。

スクリーンに点数が表示される。

 

古典

 

Aクラス 木下優子 378点

 

vs

 

Fクラス 三科楓 439点

 

圧倒的実力差。表示された点数を見て誰もがそう思った。過去、一部の者しか知らないが入学時学年三席を取った三科楓の実力は健在であった。

今回科目の選択権を使ったのは木下優子の方であった。科目は彼女の中でも特に点数が良かった古典、木下優子の土俵である。

木下優子は所謂オールラウンダー型。一点突破の高火力こそ持ってはいないが総じて300点以上を取るような才女である。彼女の性格上苦手科目を作ることを良しとしない。200点代というのはAクラス内ではあくまで平凡な点数。

それでは大して教師へのアピールにならないし、優等生で通している彼女は飛び抜けて高い点数を取らず、全体を通してバランスよく点を取ることに重点をおいていた。苦手な科目を作って質問されたり、授業で当てられたりして答えられないというのは彼女のプライドが許そうとしない。実に難儀な性格である。そのため彼女が出した結論は、全てを答えてやろうという無茶とも言えるものだった。

彼女の凄いところはそれで中途半端な結果に終わるのではなく、徐々にではあるが平均点を上げ続けていることである。彼女の全てを答えられるようにするという目標は少しずつ、達成に近づいていた。それは絶えることのない日々の努力の賜物である。

 

対して三科楓は典型的な文系型の生徒であった。一番の得意科目は英語であるが、次点で高いのは国語科の科目。中でも古典文学に関しては彼は話が面白いとかなりのめり込んでしまうタチであり、授業で扱われた御伽草子や今昔物語などの題材も個人で嗜むことが多々あった。

点数の変化はいかにその題材が彼の趣味に、ツボに入っているかというところに寄ってくる。場合によっては英語を超える点数を取ることもある程に振れ幅は大きい。趣味の範囲で読んでいたものがテストに出てきたときは今回のように総じて高い点数を取っている。

 

彼は木下優子と違い同時進行ができない人である。一つを突き詰める。その一つは他人を寄せ付けない圧倒的な集中力を持つ。簡単に言ってしまえばムッツリーニの上位互換、しかも興味分野が清純なものであるため上位互換に加え汚点の修正も入っている。

そのためムッツリーニと同様に彼の入試の得点はかなりムラがあり、最高点の科目と最低点の科目の点数差は250点にも及び、まさに一教科分の点差がそこにはあった。

 

優子の召喚獣が大槍を両手で構えて深く膝を曲げる。それに対応するように大楯の召喚獣も腰を落としてしっかりと受けの体勢をとった。

 

優子の召喚獣が一歩、膝のクッションを効かせて柔らかく踏み込む。また一歩、徐々に加速していき突進の速度は早くも最高点に達した。曲げて力を溜めていた膝裏を伸ばし、爆発的な跳躍力を持って残り数メートルの距離を一瞬で詰める。

だが加速した動きの中で相手は方向転換を取ることは不可能、そう判断し大楯の召喚獣はさらに深く腰を沈め相手の攻撃を完全に受けきるようにでる。

 

武器同士が衝突する瞬間、優子がニヤリと広角を釣り上げた。接触、大槍の先端を起点に優子の召喚獣が力を逃すように大楯の召喚獣の上を一回転、背後に回った。

 

振り向いて腰だめからの一突き、なんとか大楯を振り回す形で弾いて攻撃をずらしたが、脇腹をかすってしまい完全に防ぐことはできなかった。

今の攻防の結果が点数に反映される。

 

Aクラス 木下優子 378

 

vs

 

Fクラス 三科楓 361点

 

かなり大幅に削られている。まともにくらっていたら半分以上が削れていたかもしれない。

分かりやすい攻撃を見せてセオリー通りの動きをとらせることでその裏を書く。優子らしい戦法であった。

 

「腕輪、発動」

 

このままではまずいと思い、一つ保険をかけておく。いくら戦闘経験がこちらの方が多いからといって先ほどのような動きを取られて何度も対応できる訳がない。

 

vs

 

Fクラス 三科楓 180点

 

持ち点が半分になり自身の召喚獣の周りに薄白い光の膜が纏わりつく。

だがこれといった外見の変化や姫路のような熱線が出ることもなく、皆何も起こらないじゃないかと不思議に思った。

 

------

 

優子も特に自分の召喚獣に干渉してこない腕輪の効果に警戒心を強める。外見上の変化が見られないということは相手へのバフか何かだろうか。もしかしたら相手自身も腕輪の効果がわかっていないのかもしれない。

 

暫く様子を見て見るも土屋の召喚獣のように動きが早くなるわけでもないし、効果の判断がつきづらい。引き腰になったままではダメだと喝を入れ、再び槍を構え直させ走らせる。

 

万が一のために距離を置きつつ外側からチクチクと攻撃してみてもカウンターで何か飛んでくるわけでもないし、相手の防御力などに変化を感じない。

しかし召喚獣に纏わり付いてる光の膜は消えることはなく、その存在自体が一体謎に包まれている。

 

様子見で攻撃して行く間に、もしかしたら時間差かもしれないとなんとなく効果に当たりをつける。だとしたら短期決戦が望ましいだろう。

そう思案していると大楯の召喚獣はその楯を上段へと構え振り下ろしてくる。分かりやすい大振りの攻撃が掠るが大したものではない。気にせずそのまま横合いから反撃をいれる。しっかりと入った。

 

Aクラス 木下優子 318点

 

vs

 

Fクラス 三科楓 98点

 

後一撃で決着がつくだろう。結局何も効果がわからないまま終わってしまうがそれはそれで構わない。初めて楓と万全の状態で戦えて、それも勝つことができる。彼にアタシの努力の結果を見てもらうことができる。それは想像するだけでとても心が踊った。

あと、一撃を入れれば終わる。はやる気持ちを抑え、相手と向き直る。

 

ぼろぼろの大楯の召喚獣は、先程よりも大きなタメで飛び込んできていた。見るからに苦し紛れ、逆転が難しいと思ったか最後の一撃で全て型をつけるつもりなのだろう。楓の表情も全く余裕がない。

人はピンチの時こそ冷静でいなければいけない。焦りやイラつきは動きを単調にさせミスを誘発する。彼は冷静さを欠いている。下手な対処をしない限りこの点数差がひっくり返ることはまずないだろう。

 

何より相手よりも早く攻撃を当てればもう勝ちは確定である。大振りではなくともしっかりと一撃当てることを優先してタイミングを計って踏み込み、攻撃を繰り出した。

そうして突き出した槍は確かに大楯の召喚獣の腹を貫き、錯覚ではあったがこの手に確かな手応えを感じた。

 

------

 

勝ったと、そう三科楓は確信した。槍で腹を貫かれたまま、さらに一歩踏み込んで最大溜めの大楯を振り下ろす。槍は召喚獣の体に深々と刺さっており相手は咄嗟に逃げる事は出来ない。

驚愕の表情のまま優子の召喚獣は地に叩きつけられた。

 

古典

Aクラス 木下優子 戦死

 

vs

 

Fクラス 三科楓 1点

 

 

勝利を確信していたAクラスの面々は呆然とした表情でスクリーンを眺めていた。優子もまた納得のいかない表情で消えてしまった召喚獣のいた後をみつめていた。

 

「……どう、して……?」

 

泣きそうな声でこちらを見上げる優子は先ほどとは違ってとても弱々しかった。あの状況、1点だけ残るというのはまずありえない。リスクの計算をしたとしてもギリギリ耐えるという算段はなかったはずだ。何かしらシステム的な現象であると呆然としながらも木下優子の頭は理論的な結論を出していた。

 

たしかに俺の召喚獣が耐えたのはシステム的な結果であった。俺の使った腕輪の効果は「食い縛り」。点数を半分消費することで一度だけ戦死に陥る攻撃を耐えることができるというものだった。試召戦争中一度しか使えない効果であり、点数も1点残しといったものである。

今回俺はどんな攻撃も一度だけ耐えられるという腕輪の効果を使って、逆に一撃確実に攻撃をいれるための状況を作る手段として使った。点数差があったためガードなしで直撃をいれられたら優子を倒せるだろうと思ったためとった戦法だった。

不意打ちのようで申し訳ないが、相手が勝利を確信した一撃が入ったその瞬間に生まれた油断を突いた。

 

木下優子という少女が強いからこそ、こういう姑息な手を使うことでしか勝つことができなかった。余裕なんてない。持てる手札を使ってどうにか勝ちを拾ったというのが正解だろう。

 

本来であれば正々堂々正面からぶち当たりたかったが、今回は状況が状況であったため罵られようと構わないといった気持ちでこの手を使った。

 

友達であっても今の優子にかけられる言葉はない。敵として戦った以上、情けをかけることもできないし、彼女の性格上今声をかけるのは傷つけてしまうかもしれない。

うなだれる彼女に背を向けてそのままFクラスの方へと戻った。




食い縛りの腕輪強すぎたりはしないですよね?攻撃力2倍とか馬鹿げたエンハンスとかじゃないですしいいですよね?主武器以外の特殊武器取り出すとかバビロンじゃないしいいですよね?楯持ちがさらに保険持ったってだけですし許してください。

それとウチの久保くんもある程度絡みやすくするためにゲーム要素とかアクティブ要素入れてくつもりです。攻略本を見て進めるゲームは邪道であり、レベリングをしっかりこなし、推しのキャラクターや武器をしっかり持っているタイプの人間です。

誤字脱字報告、評価、感想などなどお待ちしております。
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