ちょっと区切りよくするために文字数少なめでーす。
「よくやってくれた三科。正直最後の方は負けたかと思ったぞ」
代表にも腕輪の効果は説明してなかったから彼は本当に気が気でなかったと思う。彼からしたらあと一撃分食らったら戦死する点数で最後の博打を仕掛けたようにしか見えなかっただろうし、心臓に悪いよね。
なんせ槍がしっかりと土手っ腹を貫いてたからね。若干冷や汗かいてるのもわかる。
「ごめん、心臓に悪かったよね」
その言葉に周りのみんなは勢いよく首を縦に振る。まあ一回串刺しだったしね、わかるよその気持ち。
でも--。
「--でも、繋げたよ代表」
代表がぶるっと身震いをした。武者震いなのだろうか。嬉しそうに代表が俺の肩を叩いた。
「ほんとうによくやった!」
バシッと音がなる。嬉しそうなところ悪いんだけどマジで痛いから。
それを見てだろうか周りのみんなも近づいてきて代表と同じように身体を叩き始めた。
「おう三科よくやった」
「三科よくやったぞー」
「でかした三科」
最初なんとなく気恥ずかしい気がしてならなかったがなんか違う。みんなの叩く手に殺意が篭ってる。ドスンと鈍いを音を出しながら須川や横溝とかをはじめとするヤツらが身体を叩いてくる。よくやったと言ってる割には労いとか優しさとかカケラも感じられない。優しさと殺意の割合が1:9ぐらい。何より目が笑ってない。
「よくやったがしかし、テメエが童貞卒業してることに関しちゃ話がある」
気づけば周囲は逃げる隙もなく完全に包囲されていた。振り下ろされる手は時々人体の急所を的確に狙ってくる。
この状況、普通にやべえよ。
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代表の試合が始まるからと説得してなんとか包囲網から抜け出せた。
途中、姫路までリンチの輪に加わって足蹴にしてきたのでほんと手に負えない。つま先で脛を正確に蹴ってきて超痛えのな。
現在の状況は2対2。マジで昨日言ってた俺、土屋、姫路の3タテが実現するとも思ったがトシくんの方が強かった。トシくんまじリスペクトっす。
だがまあFクラスがAクラス相手にここまで食い下がれている時点でもう十分に驚きである。
そしてこれから始まる勝負にはもしかしたらがあるかもしれない。
高校生がなかなか解く機会がない小学校六年生の社会科のテスト。勝利のキーワードは大化の改新。
これが出るまでどこまで代表が集中力を切らさず粘れるかが大事になってくる。
しかし、今の目の前の彼はそんな不安を一切感じさせない。やる気と自信に満ちた顔でただ前を見据えていた。思えばDクラス戦からと長く続いたこの戦い。Fクラスという最低の戦力をもって勝ち抜けてきた。その勝利は坂本の兵法、彼の采配があってこそだろう。
Dクラス戦が始まった当初、俺はお手並み拝見と言っていたが、彼はもう既に十分にその能力を示した。10点満点の男である。
人の上に立つ才能、頭のキレ、本人の能力全てを自信を持って評価しよう。
この男は確かに俺を含めた皆が付き従う価値のある人だった。
気づけばすでに坂本たちは別室へ移動しているようだった。ディスプレイには彼らがテストを受けている姿が表示されている。
次々と問題が表示され、皆が固唾を飲んでディスプレイを見つめていた。Fクラスにはピリッとした空気が張り詰めており、それはAクラスも同じだった。その空気に耐え続ける中、テスト後半に差し掛かってからだろうか。遂にソレはでた。
ソレを見てFクラス内では我慢していた声が爆発する。勝利を確信した。皆が拳を握り、隣の人と肩を叩き合い、お互いをたたえた。
「これで俺たちの教室がシステムデスクにっ!」
誰かがそう叫んだ。そういえばコイツらはそれが目的で加担したんだよなあと思い出す。優子たちには悪いが確かに勝利を確信した今、最高に気分がいい。叫ぶヤツらの声も気にはならない。
やがてディスプレイに表示されている坂本たちがペンを置いた。テスト終了。皆がその採点結果を心待ちにしていた。
アナウンスとともに点数が表示される。
小学六年 社会科
Aクラス 霧島翔子 97点
vs
Fクラス 坂元雄二 53点
目の前が真っ暗になった。
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Aクラスからは拍手喝采が巻き起こり、見事に現在のFクラスサイドと空気が二極化していた。
こちら側では今から吊るし上げが始まる。
「……殺せ」
「良いだろう、望み通り殺してやる!」
無念といった感じで坂本は跪いてはいるが問題はそこではない。
「53点ってなんだよ!この点数だと--」
「いかにも俺の全力だ」
「このアホがぁぁーー!」
もう一度ディスプレイを見て点数を確認する。53点、その数字は変わっていない。
「高橋先生ちょっと答案見せてもらえません?」
手渡して貰ったのは霧島の答案と坂本の答案。霧島は大化の改新を除いて見事に全問当てている。
それに対して坂本は酷かった。書いたことごとくは外れ、三分の一を落としている。
そして何より許せないのは--。
「代表、空欄ってなにさ」
坂本の顔が引き攣る。
「いや、それは--」
「霧島が大化の改新以外外すと思ってんの?空欄作って勝てるわけないじゃん、馬鹿なの死ぬの?」
「……はい、殺してください」
空欄作って勝てるわけないだろうまじで。
「吉井」
「なにかな」
「許す、殺れ」
「くたばれ雄二ィィイ‼︎」
止める気はもうさらさらない。さっきまでの坂本の評価も捨てた。散々かき回して終わらせた奴には相応の報いを与えよう。坂本、ギルティ。
そんな茶番をしていているとこちらに近づいてくる影があった。Aクラス代表霧島翔子である。
「……雄二、試召戦争前にした約束覚えてる」
負けた方が勝った方の言うことをなんでも一つ訊く、というやつだろう。それを聞いてなにを勘違いしたのだろうか、土屋がいそいそとカメラの準備をし始めた。だがそれも無用だ。
「……雄二、私と付き合って」
皆の動きがフリーズする。霧島は頬を薄紅色に染め、もじもじとしていた。坂本はというと頭をがしがし掻きながら目を閉じていた。
「お前まだ諦めていなかったのか」
「……私はずっと雄二のことが好き」
「拒否権は」
「……ない、だから今からデートに行く」
「放せ!やっぱりこの件はなかったことに--」
あまりの衝撃に周囲の時は止まったまま。フリーズしてないのは事情を知っている極一部だけである。
そうして固まった空気をぶち壊してくれる人もいるわけで。
「遊びはそこまでだ貴様ら」
どこからともなく現れたその巨漢を俺たちは知っていた。はち切れんばかりの筋肉をスーツの下に隠して普段は教師の仮面をかぶっている--。
「表の顔も教師だ馬鹿者」
そういってコツンと、本人はその気であろうが、先ほどの誰よりも痛い小突きを入れる西村先生。一体どこから現れたんだ。
何しにここへと尋ねると何でも本日付けでFクラス担任になったとか。それを聞いて周囲からは悲鳴が聞こえる。そんでもって毎日補修が入るらしい。
そういえば試召戦争の時間の確保のために授業潰しまくってたもんなあ。
先輩は勉強して待ってくれるだろうけど暫くの間は放課後デートはお預けだと思うとテンションは下がる。
でもとりあえずは激動の試召戦争も終わり、明日から普段通りの、卓袱台からみかん箱に変わった教室での生活が始まる。ようやっとゆっくり休めそうな気がした。
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試召戦争明けの初登校の朝、HRが始まる前の空いた時間に俺はみかん箱の上で参考書を開いていた。
「お、三科早いな。勉強してるのか?」
大きな欠伸をしながら教室に入ってきた坂本は、俺が勉強をしてるのを見るなり声をかけてきた。
「うん、いつかAクラスにリベンジするときのためにね」
そうか、とまた欠伸をしながら返事するが彼も他人事ではない。
「どこかの代表が役に立たないってことがわかったんでね、近衛の俺がしっかりしておかなきゃいけないと思ってさ」
痛いところを突かれて坂本はバツの悪そうな顔をする。彼にはもっと重く受け止めてほしいものだ。
Dクラス戦から長く時間をかけてAクラスに代表戦を受け入れさせることに成功し、代表戦もきちんと最後まで繋いだ。お膳立ては完璧だったにも関わらず彼自身の怠慢で負けたのだ。
今まで設備交換を一切行ってなかったため戦果は何一つ残らず設備はグレードダウン。自分たちで首を絞める結果となった。
挙げ句の果てには彼自身は学年で一際可愛い霧島と交際が決定し、一人美味しい思いをしている、と周囲は思っている状況である。
俺からしたらとてもめでたいことなんだけどね。霧島ほんとよかったね。連日坂本をデートに連れていっているようで彼女はホクホク顔である。
めでたいことではあるが、担任が西村先生に変わったことやら妬みやらでヘイトが彼に集中するのではないかと彼の行く先が不安だ。
「今回の定期テストは次席取るつもりでいるから期待しててよ」
それはある種、同じ教室内にいる姫路瑞希への宣戦布告にも聞こえた。彼女は去年の後期末テストでは次席であったが、今年の振り分け試験は途中で辞退することになったため次席の座をトシくんに譲っている形である。
周囲の目もあるため彼女は控えている定期テストで次席を奪還するつもりであった。そのため今も同様に参考書を開いて勉強している。
なんともまあ安い挑発であるが彼女にしてはそれで十分。私の道を邪魔してくれるなよと笑顔で圧をかけてくる感じがたまらなく鬱陶しい。それに対してがん無視をくれてやると時間の無駄だとわかったのか、すぐに元の参考書へと向き直った。
最近姫路は煽り耐性低い気がするんだけど気のせいじゃないよね?
Bクラス戦から段々と容赦とか遠慮がなくなってきている気がした。俺と一緒にいるとき、割と吉井たちの前でも以前のような調子で絡んでくることが増えてきた。ストレスを溜め込まないためにはいい方法であるし、このまま当たりが強くなるのが俺以外にも広がってほしい。うん、広がれ。
予鈴数分まで迫ると次々と知った顔ぶれが教室に入ってきて、席も着々と埋まっていった。改めて卓袱台がみかん箱に変わったのを見て皆辟易としている。
試召戦争という娯楽もなくなり、刺激の足りなくなった学校生活は非常に退屈なものであからさまにモチベーションを落としていた。
負けたらそのまま、リベンジに燃えることもなく勝手に燃え尽きるのは実にFクラスらしいものである。
皆何をやるにも手持ち無沙汰で、燻っているようにみえた。
HRの注意事項を聞き流し、窓の外をぼんやりと眺める。退屈は嫌いで、何か面白いことが起きないかなあと思った。
ようやっと試召戦争編が終わりました。話ごとに章分けしたほうがいいですかね?
次に迫るのが肝試しだったか文化祭だったか忘れてるんですけど、確か常夏コンビ出てくるのは文化祭が先だった気がするから次描くのは文化祭編かな?
なんか段々と地の文増えてきましたね。