新 三好春信は勇者である   作:mototwo

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今回も勇者たちが誰も出てきません
は~、こまったもんだね~



29話 ホワイトデー・その前に

「で、出来た。。。!」

 

大赦の食堂にあるオーブンの前で春信が声を上げた。

 

「おっ、やっと満足いく物ができたかい?」

 

「ああ、チーフ、ありがとうございます。厨房まで貸していただいて。。。」

 

「なあに、気にする事ないよ、妹へのお返しなんだろう?」

 

「ええ、まあ。。。板チョコしかくれなかった小娘への当て付けみたいなものですよ」

 

「それにしちゃ、本気で作ってたけど…」

 

「はっはっは、チーフの前だから、気合が入っただけですって」

 

「アンタもすっかり上っ面が綺麗になっちまったねぇ」

 

「はい?」

 

「もっと、自分を出していかないと、若い娘にゃ伝わんないよ」

 

「な。。。何の話ですか?」

 

「まあ、自分で気付かないと意味ないけどね」

 

「は、はあ。。。」

 

「ところで、それ持って今から讃州中へ行くんだろ?」

 

「あ、はい。ちょうど3月ですし、当日は園子嬢の発案で色々あるでしょうから」

 

「じゃあ、コレも持ってってくんな!」

 

「これは。。。」

 

それは3つの大きな菓子の包み。どうやらチーフの手作りのようだ。

 

「須美ちゃんと園子ちゃんと…銀ちゃんの分だよ」

 

「先代の御三方。。。銀様の分だけ少し大きいようですが。。。」

 

「色々、考えてたら…ねえ…ちょっと気合が入りすぎちまったかね!」

 

チーフは年甲斐もなく、目に涙を溜めて鼻の下をこすっていた。

先代勇者の戦いは今の大赦に務める者なら誰もが知っている。

その結末を知る者にとって、あの3人はあまりにも思い出深く、

特に銀に対して特別な思いを持つ者は多い。

 

「。。。ここに来ていただければ皆さんにも会えるんですが。。。」

 

「過去の勇者…特に銀ちゃんとの接触は厳禁だって言われてるからねぇ…それに」

 

「それに?」

 

「もし、会っちまったら、泣いちまって話も出来ないだろうよ…」

 

「そう。。。ですね、そうかも知れません。。。」

 

「アンタもその仮面を脱いで、ちゃんと話したらどうだい?折角直接会えるんだから…」

 

「それは。。。」

 

「まあ、今のままじゃあ無理かね」

 

「すみません。。。」

 

「気にしなさんな!さ、もう行くんだろ?」

 

「あ、はい、行ってきま。。。」

 

「ちょっと待ったーーー!!」

 

「「え?」」

 

いきなりの声に振り向くと、そこには大赦の職員が大勢並んでいた。

 

「み、皆さん、一体どうしたんですか。。。?」

 

「勇者や巫女の皆さんに色々と思いを伝えたいのは何もチーフだけじゃねえ!」

 

「我々とて、お会いしたいのを我慢して日々を過ごしているのだ!」

 

「そんな思いをプレゼントで示せるホワイトデー!」

 

「こいつを使わねえ手は…あ!ねえってえもんよ!」

 

「な、なんでそんなに芝居がかった言い方を。。。」

 

「特に意味はねえ!ノリと勢いってえやつだ!」

 

「そ、そうですか。。。」

 

「とにかく!」

 

「荷物にならないよう、各ファンクラブで1つずつにしてある!」

 

「さあ!持って行きやがれい!」

 

「そ、それでも19個ですか、これは結構な荷物に。。。」

 

「あ”?」

 

「い、いえ、持って行きますよ、ちゃんと持って行きます」

 

「当たり前だ!飛鳥からちゃんと持って行ける様にしてあると聞いてるんだ!」

 

「アイツから?ってこの袋のことか。。。」

 

春信は『彼』から貰った白い袋を取り出す。

 

「その袋?確かにデカいが、全部入るのか?」

 

「ああ、きっと大丈夫でしょう、彼がそう言ったなら」

 

春信が箱を受け取り、袋に入れていくとどんどん袋が膨らむ。

だが、一定の大きさに膨らむとなぜかそのままの大きさで箱が入っていく。

 

「な、なんか不思議な光景だな…」

 

「中はどうなってるんだ…?」

 

「あ、覗かない方がいいですよ。きっとろくな事になりませんから。。。」

 

「そ、そうなのか…」

 

「あいつ、実は未来から来た猫型ロボットとかじゃねーのか…」

 

「何を言ってるんですか、ただの研究の副産物ですよ。多分。。。」

 

「いや、これ一つで一生食ってける特許取れそうなんだが…」

 

「さてと。。。これで全部ですね」

 

「待って下さい!」

 

「はい?」

 

声に振り向くと今度は大勢の女性職員がなにやら後ろ手にもじもじとしている。

 

「あ~。。。皆さんも?」

 

「は、はい!荷物になるからと遠慮してたんだけど、その袋なら!」

 

「はぁ。。。一体どなたに?」

 

「もちろん!」「須美ちゃんと!」「園子ちゃんと!」「銀ちゃんに!」

 

「ああ。。。それは。。。断れませんね」

 

「きゃー!」

 

女性職員たちは歓喜し、春信の下へ殺到して贈り物を渡していく。

その様子を見た男性職員たちは

 

「なんか…」

「ただ受け取ってるだけなのに…」

「三好がちやほやされてるみたいで…」

「イラっとするな…」

 

なぜかイラっとしていた。

 

「さて、それじゃ今度こそ行きますよ」

 

「ああ、行ってきな」

 

「皆さんによろしく!」

 

「銀ちゃんに食べ過ぎないように注意してあげて!」

 

「ちゃんと渡して来いよ!」

 

さまざまな思いを抱えて

物理的にも色々抱えて

春信は讃州中学勇者部へ向かうのでした。

 

<つづく>

 




<バレンタイン話の頃>

大赦内にて

「三好の部屋の前、見たか?」

「ああ、やっぱりチョコが積み上がってたぜ…」

「許せん!シスコンでロリコンで巫女好きでバトルマニアのクセに!」

「今日は絶対にチョコを受け取らせまいと仕事を溜めに溜めて奴の前に積み上げたのに」

「ギリギリ、終わらせて勇者部に行ったそうだぜ」

「まあ、あの時間に行っても誰もいないだろうけどな」

「ふっふっふ、後はあのチョコの山だ」

「一体どうしてくれようか…」

「義理チョコ以外は回収?」

「いや、もういっそ全部回収でいいんじゃね?」

「妹以外にもらっても困るだろうしな!」

「となれば…」

「「「いざ、回収!」」」

「あ、コレ秘書課のあの子のだ」

「こっちは経理課のあの子からだな」

「おお、オペレータのあの子からも!」

「くっ、なんか惨めになってきた…」

「考えるな!考えたら負けだ!」

「あ、これは…」

「どうした?」

「そ、それは…!」

「「「『三好夏凜より 愛を込めて』?」」」

「妹から?」

「でもこれって…」

「…だよな」

「ふ…」

「コレだけ置いて行ってやるか…」

「慈悲ってやつだな…」

「ま、面白そうだってのもあるが」

「後のは大赦務めの子達ばかりだったし」

「全て回収で良かろう」

「では…」

「「「ハッハッハ!さらばだ!三好春信!」」」

ダバダバダバ~

こうしてチョコを横取りした3人は、その後、女性職員たちにバレて酷い目に遭うのですが…
その所業と結末が春信の耳に届く事は無かったそうです。

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