個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど   作:ゴランド

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問題!投稿が遅れた理由は3つの内どれ?

1.ビルダーズ2
2.KH3
3.ジャッジアイズ


答えは………




全部だ(ドヤ顔
あ、ちょっと待って。銃を構えないで。
すみません。しっかり投稿するので許してください。



第50話 勇学園前編 ゾンビランドUA

 

 

「ふんぬっ!!……コレが職場先?で新たに身につけた形態。名前を……熱々筋肉(あつあつきんにく)と名付けた」

 

「「「却下」」」

 

「そんなっ⁉︎」

 

「熱々は無いだろアツアツは……」

 

 

 朝のホームルームが始まる前、炎を纏う異形の姿を見せる天倉の言葉に男子達が否定の意を見せる。

 

 

「しっかし天倉。更に凶悪な形態作っちまったなぁ」

 

「確かに強力だけどピーキーだよね」

 

「そうなんだよね……熱っ!!」

 

 

 天倉孫治郎の見せる熱々筋肉(仮)は、強力なのだが長時間使用すると自分が火傷してしまう欠点を持つ形態だ。

流石に限界が来たのか、すぐに"個性"を解除しいつも通りの人間態の姿に戻る。

 

 

「熱つつつ……それじゃ熱々筋肉に変わる名前はどんなのが良いかな?」

 

「おっ、なら!俺!俺良い案があるぜ!」

 

「はい切島君」

 

「名付けて…出怒飛威斗(デッドヒート)!どうよコレ!いい感じでしょ!」

 

「おぉ!カッコいいな!」

 

 切島の案はどうやら好評価らしい。「おぉっ」と声を漏らす者もいれば、自分も便乗しようと名前を考える者もいる。その中で、常闇が二つ目の名前を告げた。

 

 

「……『緋炎ノ煉獄』」

 

「お、常闇君!……それってどう言う意味?」

 

 

 響きは悪くないだろう。しかし天倉本人は意味が良く分かっておらず評価としては微妙なようだ。

 

 

「安直っぽいけど『エクシードマグマ』でどうかな?」

 

「お、緑谷!良い案だすなぁ……」

 

「そんなに技名って大事か?」

 

「勿論だろ。オールマイトの技名だって『こんにゃくッ!』って叫びながら殴ると力抜けんだろ?」

 

「こんにゃく⁉︎」

 

 

 憧れのオールマイトの必殺技がプルプルとした食品の名前にされている事に緑谷はショックを受けているようだ。

……しかし、そんなハイテンションで技名決めをしている男子達の中で轟がむすっとした様子で呟く。

 

 

「…ンなもん極熱形態で良くねぇか?」

 

「あれ?轟君乗り気じゃ無いの?」

 

「いや、まぁ……クソ野郎(親父)に似ててな……」

 

「「「……あぁ、成る程」」」

 

 

 轟は天倉の新形態がエンデヴァーに似ている事が気にくわないのだろう。無論、天倉自身は彼の父親に似せたワケではなく偶然こんな姿になっただけである。

 

 

「別に天倉に罪はねぇ。あっち(クソ野郎)が似ているだけた」

 

「うん。父さん(クソ野郎)なら仕方ないね」

 

 

バシッ バシッ グッ!

(無言の腕組み

 

 

「2人の父親に対する闇が……!」

 

「つーかさ、結局どうすんの名前?いっその事複数の奴を合わせてみる?」

 

 

 うーんと顎に手を当てる天倉。しばらくして、彼は意を決したように口を開く。

 

 

「それじゃ…極熱筋肉で!」

 

「「「敢えてそれにするか⁉︎」」」

 

「いやいやいや、天倉よぉ。もう少し考えようぜ?」

 

「えー、良いじゃん極熱筋肉」

 

 

 技名を決めるのに疲れたのか、自分の机に突っ伏す天倉。壊滅的なネーミングセンスの彼にしては比較的良い方なのだろう。

 

 

「……緋炎六天慟練雅魔獄」

 

「いや、もう常闇君の命名はいいや」

 

「!?」

 

 

敗因『技名か喋りにくい。あと、読みが分からないから。』

 

 

 その後、何度も案を出す常闇を無視しながら時間は過ぎていった……。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 そんなこんなでヒーロー実習の時間がやって来た。そろそろ新しい装備(ベルト)の性能を試したい所だけど、今回はいつもと違い見慣れない制服を着た4人の生徒が教室に居た。

 

 

「いきなりだが今回のヒーロー実習に勇学園ヒーロー科の生徒5名が特別に参加する事となった」

 

「「「「「「のっけから新キャラ来たぁぁぁぁあああああッ!!!」」」」」」

 

 

 相澤先生は相変わらずサプライズが好きですねェ!あと、耳がヤバイ!耳を塞ぎながらも上鳴君と峰田君(煩悩丸出し2人組)のリアクションが目立つ。

 

 

「眼鏡女子だぜ女子ィィィィィイイイイイイッ!!」

 

「なぁなぁ彼女、ライン交換しy──だぁぁぁぁぁぁあああああッ!?」

 

「ったく、馬鹿を晒すなっての」

 

 

……なんだかんだであの2人は良いコンビだと思う。今回はいきなりナンパする上鳴君に非があるけどね。

新キャラの登場によってクラスの中が一気に騒がしくなる中、俺は勇学園の人達をじっくり観察している。

 

観察する理由?………出来れば友達になれるといいなと思っているだけであって他意は無い。

 

えーっと、汗を掻いている少し太っている男子に素行が悪そうな男子。そして眼鏡を掛けた女子に………あれ?なんか首から上がまんま蛇の……女子?が居る。

 

 

「…………」

 

 

 刹那、騒がしかったクラスがしんと静まる。それはまるで激しく燃え上がる炎が一気に鎮火されるが如く。先生の鋭い目から「これ以上騒がしくすると除籍処分にするぞ」と容易に読み取れる。

 

合理的主義な先生が俺達を黙らせるのには数秒もいらなかった。

 

 

「自己紹介を」

 

 

 相変わらず怖いよ相澤先生……勇学園の人達もすっかり怯えてるじゃん。すると自己紹介の途中にヘビ頭の女の子と蛙吹さんか互いの視線が交わる。

 

……目と目が合う〜瞬間……ごめんなさい、言ってみたかっただけです。ハイ。

 

 

「友達かな……?」

 

「なんかハラハラするぞネイチャー(食物連鎖)的に……!」

 

「ハハハ、何をバカな緑谷君。別に人肉を食べるワケじゃないから大丈夫でしょ」

 

「えっ、あ、うん(どうしよう、天倉君がいつも人肉食べてるイメージが……)」

 

 

 んん〜?なんで緑谷君は視線を逸らしているんだ?俺について言いたい事があるならハッキリ聞こうじゃないか。

 

 

「万偶数!雄英の奴なんかと仲良くしてんじゃねーよ!」

 

「オイ、今なんっつった!雄英以下のクソ学生があッ!」

 

「ほらほら、落ちついてよ爆豪君」

 

 

 まぁ、初めてあった頃のイキってた爆豪君と比べたらかなりマシになったけどさ。

 

 

「黙ってろや天倉!テメェからぶっ殺すぞコラ!」

 

「ほら爆豪落ち着けっての」

 

「るせぇぞ!切島ァ!」

 

「うるさいのはお前だよ爆豪。静かにしてろ」

 

「ぐっ!」

 

 

 さすが先生。問題児を抑えるのは慣れてるって感じだなぁ。対して爆豪君は相変わらずって感じだな。職場体験が終わった後なら少しは落ち着いていると思ったんだけど……。

 

 

「それじゃ、全員コスチュームに着替えてグラウンドΩに集合。飯田、勇学園の生徒を案内してやれ」

 

「分かりました!」

 

 

 飯田君は高らかに声を上げ、皆を更衣室へ誘導する。……爆豪君と勇学園の藤見君は睨み合ったままだけど。

 

………目と目が合う〜瞬間〜〜〜

 

 

「「あ゛?」」

 

「なんでもありません」

 

 

 なんで2人共俺の心の内を読めたのかはさて置き、もう2度やらないでおこう。やっぱり不良っぽい人は苦手だ。俺は急いでで更衣室に駆け足で向かおうとする。

 

……が、誰かが背後から俺の肩を掴む。

 

 

「フフフ、怖────だぁぁぁぁぁぁあああああッ!?」

 

 

……あ、ついアームロックが。

 

 

「それ以上いけない!?」

 

「いや天倉お前!何初っ端からアームロックをかましてんだよ!」

 

 

「あ……いや……背後に立たれた上に脅されると、アームロックを掛けないと心配で……」

 

「デュー◯東郷かよお前!」

 

 

いや、だって……職場体験先があまりにも厳しかったから、無意識に自己防衛しようと身体が勝手に……。

 

 

「あ…その、別に故意があった訳じゃなくてね……」

 

「がああああああああああああ」

 

「いや、離してあげてよ!ホントに!」

 

 

 そう言われて俺はすぐさまアームロックを解く。と言うか、この頭に猫耳っぽいもの着けて眼帯を装着してる人、どっかで見たことあるような……?

 

 

「……あぁッ!!もしかすると天龍ちゃん!」

 

「え?天龍さんって……!」

 

「そうだよ!番外編に出てた!」

 

「そこまでにしとけよ麗日さん!」

 

 

 なんか最近、麗日さんヤバくなってない⁉︎色々な意味で壁を超えて来てるんだけど!そう言う意味でのPuls ultraはしなくていいよ!

 て言うか天龍さんって、俺の小学校以来の数少ない希少な友達じゃないか!

 

 

「いやぁ、久しぶりだね天龍さん。と言うか勇学園だったの⁉︎」

 

「痛……あぁ、久しぶりだな……」

 

 

 そう言いながら彼女は俺の背後に回り込み、コメカミに拳を当てて来た。……え?いだだだだだ⁉︎いきなり何⁉︎

 

 

「なにシレっと技を掛けてきたのを無かった事にしたんだお前!つうか!なんで!俺の顔を忘れてんだよ!お前は!」

 

「あだだだだ!こめかみをグリグリすんのはやめて!だって!どうせ俺なんかの顔を覚えている人なんて居ないって思ってたから!」

 

「本気でぶっとばすぞテメェ!」

 

 

 

 いだだだだだ!誰かこの人を止めて⁉︎こう言うのって第三者からの介入が無いと止まらない奴だから!

視線によるSOSメッセージをクラスメイトに送る。

 

 

 

「なぁ、アイツって意外と女子との絡みが多くねぇか?」

 

「そうだな、世の中不公平だよな」

 

「ファッキン天倉」

 

 

なんかアソコで悪口言われてるーーー!堂々と敵意の視線が突き刺さってるんだけどなんで⁉︎

 

……あ、そうだ。意外と良識のある轟君と八百万さんに助けてもらおう。助けて2人共ーーーー!(視線によるSOS

 

 

 

「……あら、轟さん?どうしました?」

 

「チッ……あそこのポジション(親友枠)は俺の場所なのに…あの女!」

 

「轟さん!?」

 

 

 

なんか違う意味で敵意持たれてる⁉︎

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「なぁなぁ、天倉!あの天龍ってデカ乳眼帯属性モリモリの女子を紹介してくれよォォ!」

 

「頼む!後生だ天倉!」

 

「ん?良いけど」

 

「いや!良いのかよ!」

 

「なんか余裕があって腹立つ……!」

 

「なんで!?」

 

 

 こめかみをグリグリされる地獄から解放された俺は上鳴君と峰田君から天龍さんを紹介して欲しいと懇願され、了承したのだが何故か敵意を持たれた。コレガワカラナイ。

 

 そんな会話をしながら俺はライダースーツ(コスチューム)を羽織り、その上からグローブ、ブーツ、ベルトと言ったアイテムを装着する。

 

……それにしてもなんでベルト以外は"個性"を使うと一瞬で無くなるんだろうか。"個性"を使った前は服を着ている筈なのに"個性"の使用後は一瞬で服が無くなっているって……ホントどう言うことなの…(ガチ困惑

 

 

「天倉君、その腕につけてるアクセサリーはなんだ!常に着けているのは関心しないぞ!」

 

 

 自身の個性の仕様に困惑していると飯田君がズンズンと迫って来る。……お願いだから服を着てからにしてくれないかな。迫力があって怖いんだけど。

 

と言うか腕のアクセサリーって……あ、レジスターの事か。

 

 

「あぁ、コレね。実はコスチュームアイテムでさ。青山君のベルトみたいな扱いなんだよ」

 

「む、そうなのか!俺の確認不足だった!すまない!……いつも身につけている気がするのんだが、不便じゃ無いのか?」

 

 

不便、不便か……いやまぁ。最初こそは着替えるとかで不便だったけどね、すぐに慣れたからなぁ。

 

 

「いや、もう慣れたから大丈夫だよ。それに…骨まで食い込んでいる感じだから無理に外すと大量出血するだろうからなぁ……」

 

「そうか、それは良かっt……ん?骨までってどう言う⁉︎」

 

「気にしない気にしない」

 

「いや、しかしだな……」

 

「そんな事よりもさ、アレをどうにか出来ないかな……」

 

 

俺が指を指す方向にはバチバチとメンチを切り、闘争心を剥き出しにした2人が居た。

 

 

「気に入らねぇんだよぉ……雄英に入ったってだけで、お前みたいなのが世間にちやほやされてんのはぁ……」

 

「喧嘩売ってんなら、言い値で買ってやんよぉ!!」

 

「この実習でぇ…俺達の方が優れてるって事を証明してやるぅ……!」

 

 

 今にも殴り合いに発展しそうな爆豪君と藤見君。どうにかしてもらおうと良識を持つ(例外有り)緑谷君に目配せをする。

……あ、目を逸らされた。おい幼馴染だろ何とかしろよ。

 

 

「いい加減にしないか、爆豪君ッ!」

 

「ごめんなさい!藤見君は口が悪いけど、決して悪い人ではないんです……」

 

「こちらこそ済まない。もっともコチラは悪い人間じゃないと言えないのが何とも……」

 

「んだとッ!」

 

「まぁ、待って!爆豪君にだって良いところが……あ、ごめん。今の無しで」

 

「本気でブチ殺してやろうかテメェ……」

 

 

 突如として怒りの矛先が俺に向けられる。いや、本当にごめんね。今までの出来事を思い出しても良いところが出てこなかったんだ。

 

 

(……ナチュラルに人を煽る天才なのかなぁ……?)

 

 

 何故か緑谷君から呆れたような目を向けらるのが気になるが、俺達はコスチュームに着替えたAクラス+勇学園ヒーロー科はグラウンドΩに行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

──グラウンドΩ

 

 

 そこにA組と勇学園生徒達がコスチュームに身に付け集合していた。しかし、全員揃っているにも関わらず訓練は開始されず皆は頭の上に疑問符を浮かべていた。

 

すると、出入口から見覚えのある人物がやって来る。下顎から突き出た牙と左頬に十字傷があるのが特徴の男性。

B組を担当するブラッドヒーロー【ブラドキング】だ。

 

 

「待たせたなイレイザー」

 

「B組担当のブラドキング?なんでここに?」

 

「それは勿論───」

 

「僕達も参加するに決まってるからだよ!」

 

 

 ブラドキングの後ろから声が聞こえる。グラウンドの出入口からゾロゾロとコスチュームで身を包んだ者達がやって来る。

 

 

「げぇーーっ!B組……とついでに物間!」

 

「今回は丁度、B組と合同で訓練を行うつもりだったからな。勇学園も加えてでの混戦を想定してでのサバイバル訓練を行う」

 

「合計46人かぁ……」

 

「さぁ、決着をつけようじゃないかぁ!」

 

 

 B組のメンバーを加えた大掛かりな訓練に関心の声を漏らすAクラス。それに対して1人だけ挑発をしてくる物間はとてもシュールな絵面だろう。勇学園の生徒達も「なんだコイツ…」と呆れた者を見るような目をしている。

そんな中、天倉は物間をジッと見つめた後にポンと手を叩く。

 

 

「……あぁっ!思い出した!いっつも拳藤さんに殴られてる人!」

 

「んーっ!流石はA組!僕達とは違って面白い覚え方をするね!僕達B組じゃ真似出来ない芸当だよ!」

 

「ん?あぁ、いやそれ程でも無いよ」

 

「いやいや、流石だと言っておくよ。僕達じゃあ成し遂げれなかった体育祭の3位。さぞや良い眺めだっただろうね」

 

 

((((……高度な挑発合戦を繰り広げている⁉︎))))

 

 

 勇学園の生徒達は雄英の舌戦に冷汗を掻く。

そう、訓練は既に始まっていたッ!彼等は互いの間合いを図り、言葉という名の武器で殴り合いを始めているのだッ!

それはラッシュの速さ比べとでも言おうか。近づけば途端に巻き込まれる災害の如く何者も寄せ付けないプレッシャーを放ち、その空間だけを刈り取ったように戦場へと変質させていたッ‼︎

 

 

((((これが……雄英か……!))))

 

 

そして、そんな彼等に対して言葉を贈ろう。

 

 

 

 

 

──いえ、片方だけが馬鹿なだけです。

 

 

 

 馬鹿(天倉)が単に物間の回りくどすぎる言い回しが挑発だと気付いていないだけであり、天倉本人は「B組の人って謙虚だけど良い人だなー」としか思っていないのだ。

 

 

「…さすが天倉。成長してやがんな……」

 

 

──そして何故、この厨二眼帯少女(天龍)は「天倉は私が育てた(キリッ」とした感じに格好つけているんだ。

 

 

 

 

 

「ほら、やめとけ物間」

 

 

そこに1人の少女が物間の背後に回る。

 

 

「う゛っ」

 

 

 手刀によって一瞬で意識を刈り取る。まるで少年漫画の如く見た者を魅了する程の美しくも恐ろし早い手刀。

ちなみに俺でなきゃ見逃しちゃうねと呟く人は出なかった模様。

 

 

「いやー悪かったな天倉……って、なんか遠くね?」

 

「いや、気にしないで…ください」

 

 

 緑谷の背後に隠れるように拳藤と会話を交える天倉。

どうしてこんなに怯えているのか不思議でならない拳藤だが、そこに天龍が寄って来る。

 

 

「えっと?拳藤って言ったか?天倉の奴さ、体育祭でお前を蹴り飛ばした事、まだ引きずってんだよ」

 

 

 小学校で知り合っていたお陰か、天倉がどう考えているか容易に想像できると天龍は言う。

 

 

「あー、アレの事。別にもう気にしてないんだけどな……」

 

「アイツの性格上、飯奢って貰うとかしねぇと気が済まないんだよ」

 

「そんじゃ、あとで昼奢ってもらうかな?」

 

「おう、そうしとけそうしとけ」

 

 

 

 

 

「やべぇ…きっとあの2人で俺を袋叩きにしようとしてるんだ……もう駄目だぁお終いだぁ……」

 

「おい天倉、良い加減立ち直らねぇと除籍にするぞ」

 

「すみませんでした」

 

 

 ガクガクと震えていた天倉だが相澤先生の激励一言(と言う名の脅し)によって元に戻るのに数秒も要らなかった。

そんな天倉が立ち直った直後に再び訓練の説明が入る。

 

 

「よし、今日のヒーロー実習を担当するのは、俺とブラド。そしてもう一人───

 

 

 するとグラウンド天高くから1人の巨漢が現れる。雄英高校においてヒーロー基礎学を担当する先生であると同時にNo.1ヒーローでもある人物【オールマイト】の登場だ。

 

 

「私がーーーー! スペシャルゲストの様な感じでーーーー!来たッ!!」

 

「オ、オールマイトォ!!」

 

「本物ッ!!」

 

「マジかよ!」

 

「凄い迫力ッ!!」

 

「雄英が羨ましい……!!」

 

 

 オールマイトの派手な登場に勇学園の5人は目を輝かせる。緑谷達は改めて自分達が如何に恵まれた環境で勉学を学んでいるのか、No.1ヒーローが身近に居ると言うのがどれ程凄いものなのか認識した。

 

 

「さて…今回の実習だが、さっき聞いたと通り全員参加でサバイバル訓練に挑戦して貰う!」

 

 

 天倉はサバイバルと聞いて一瞬、森の中で命を賭けた生き残り、自然の脅威などが頭に浮かび上がってきたが、すぐにオールマイトの話に意識を戻す。

 

 

「状況を説明しよう…生徒達は4~5人で1組。全6チームに別れ、こちらが指定した任意ポイントから訓練を始めてもらう。訓練の目的はただ一つ……"生き残る事"だ。他チームと連携しようが戦おうが構わない!とにかく最後まで生き残ったチームの勝利となる!」

 

「他チームとの戦闘に突入した際、この確保テープを相手に巻きつければ『戦闘不能状態』と見なす事となる。雄英生にはお馴染みのアイテムだな」

 

「早速チーム分けだが…、いきなりごちゃ混ぜした感じだとやりにくいだろうから、それぞれA組、B組、勇学園でチームを組むと良い!」

 

 

 説明を受けた生徒達は己の"個性"に合ったチームを作ろうと動きだ───

 

 

「ここで追加ルールを発表しよう!」

 

 

「ッ!?」

 

 

 刹那、天倉に悪寒が走る。

まるで実家のような安心感のような、行きつけの居酒屋で"いつもの"を注文するかのような。そんな()()()()()()()()()()が天倉は感じたのだ。

 

 

「今回、サバイバル訓練に【鬼】を追加する」

 

(ッ!!お、鬼だと〜〜〜〜〜ッッ!)

 

 

 ダラダラと冷汗を掻く天倉を尻目に飯田は手を挙げ、追加ルールについて質問を投げかけた。

 

 

「質問ですッ!サバイバル訓練における"鬼"とは一体なんなのでしょうかッ!」

 

「良い質問だ。ヒーロー活動において決して、倒せない存在が居る可能性もある事忘れるな。自分達では敵わない相手。挑む事も大切かもしれないが、最もいけない事は自身と相手との実力の差を見誤る事だ」

 

 

その言葉と共に相澤先生はチラリと緑谷、飯田、轟に視線を移す。

 

 

「"鬼"はこの訓練中において決して『戦闘不能状態』にならない者となる。挑むだけで非合理的だな」

 

「成る程!ありがとうございますッ!」

 

「ちなみに鬼の人数は1人。まぁ、戦闘不能状態にならないハンデとしてはこれくらいが充分だろう」

 

「つまり…トーソーチューのハンターって事ですか?」

 

「ん……まぁ、そんな認識で良いだろう」

 

 

「楽しそー!」

 

「結構楽そうじゃね?」

 

「けど1人だろ。メチャクチャきついぞ」

 

 

 

(間違いないッ!!予感的中ッ!悪寒の正体ッ!)

 

 

 大人数によるレクリエーション(訓練)において、高確率にハブられる人物。そのハブられる人を幾多も経験した彼はこうなる事が容易に想像出来ていた筈だった。

 

だが彼は浮かれていたのだ。小学生の頃の友達との再会、職場体験学習の終了、ヒーロー実習の三拍子にッ!

 

 

「ハイ、と言うわけでこのBoxの中から皆の名前が書かれた用紙が入っている。その中から1枚。選ばれた人は鬼の役目をやってもらうぞ!」

 

 

 取り出したのは1つの箱。天倉にとっては新たな黒歴史の1つになるか、ならないかの分岐点(ターニングポイント)。そんな彼は箱に向かってブツブツと呟く。

 

 

 

「(い、いや…カカカカ確率的には1/21×1/41で861分の1だから簡単に当たるわけ無いダダダイジョウビ俺はやれる、こんなの簡単に残りの860を引けるに決まってる…大丈夫俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる……!)当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな……!」

 

 

 

「う、うーん……誰が当たったかな?(天倉少年、凄い気迫だ……)」

 

 

【天倉】

 

 

「アーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

あぁ、やっぱり今回も駄目だったよ。アイツは運が悪いからな。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 グラウンドΩに生い茂る森の中、数人1組のチームが木々の間を駆け抜けて行く。

 

 

「頑張ろうねデク君!」

 

「うん!」

 

 

ある者は訓練を楽しみ、

 

 

「負けないわ羽生子ちゃん」

 

「こっちだって!」

 

 

ある者は再会を楽しみ、

 

 

「首洗って待っとけや!」

 

「こっちの台詞だぁ…!」

 

 

ある者は啀み牽制し合い、

 

 

「次こそは勝たせてもらうぜ!」

 

「上等!次も俺が勝つッ!」

 

 

ある者は正々堂々と対決する約束を交わし、

 

 

 

 

 

 【鬼】

  ↓

  ( 'A`)

  (oヘヘo

  

 

 

 

そしてある者は1人になった状況に涙する。

 

 

 そんな各々のチームは決められた定位置に移動し、これからどう行動するか話し合う。

 

 

 

【爆豪、切島、八百万、障子チーム】

 

 

「天倉は1人だけどリタイアにはならないんか……」

 

「不利に見えるが考えられてるな……」

 

「えぇ、それに。1人になった分、行動も自由になると考えて良いでしょう。少数になる分見つかる可能性も低くなります……と、なると天倉さんが使ってくる戦法は奇襲が主体になってくると思いますわ」

 

「関係無ェわンな事!アイツは俺が直々にブチのめしてやるッ!!」

 

「いやいや!天倉は倒せねぇって!(訓練中のみ)」

 

「そうですわ!相手にしても意味がありません!」

 

「だったら適度にボコして動けなくしてやるわ!邪魔な障害物なら先に潰しておいた方が楽だろが!」

 

「理にかなっているけど言い方ァ!」

 

 

 

【緑谷、麗日、芦戸、蛙吹チーム】

 

 

「こんな事もあろうかと、ジャーン!お菓子を持ってきました!」

 

「わーい!」

 

「なんでお菓子なの芦戸さん⁉︎」

 

「これでね!天倉を罠に掛けるの!」

 

「いや!流石にそれで引っかかるわけ!……いや、待てよ?そもそも天倉君の嗅覚は強くなってる訳だから森の中において良い戦法なのか?先生も言ってたけどコレはサバイバル訓練だから、こう言ったものも……」ブツブツブツ

 

「皆、変わらないわね」

 

 

 

 

 殆どのチームがどう行動する方針を立てた直後、タイミングを見計らったように合同サバイバル訓練は開始された。

 

それと同時に鬼の役割を担う天倉はどこへぶつけたら良いか分からない怒りと悲しみを抑え込み、森の中に足を運んで行った。

 

 

「ォォォォォオオオッ!!変身(アマゾン)ッ!(半ギレ」

 

 

 緑色の炎に包まれ姿を変えた天倉は木々を飛び移りながら移動する。多少ドスの効いた声で叫んでいたが、気のせいだろう。

 

それはさておき、この鬼と言う役割だがハッキリ言って天倉は適任とも言える。森の中では邪魔になる木が多く、整備されてない道で走り難い等、障害は幾つも挙がる。

 その点、天倉はトカゲや蛇が持つ『ピット器官』と言う赤外線感知器官を持ち他チームの居場所の特定が可能で、俊敏な身のこなしによって木と木の間を飛び移り高速で移動。そして緑の体色によって周囲の景色に溶け込む事も可能な為、彼は森の中の戦闘において有利と言えるのだ。

 

 

 

「よし、先ずは───」

 

 

 

 彼もその事を理解しているのか、敵の位置を確認する為ピット器官を使おうと移動のスピードを落とす。

 

 

「高速溶接ッ!」

 

「えっ」

 

 

が、考えてみて欲しい。

そんな鬼の役割を持つ彼を他の者達は放っておくだろうか?否、彼等が取るべき行動は───

 

 

「よっしゃ拘束完了!」

 

「えっ」

 

 

──先手を取り、鬼を封じる事だ。

困惑する天倉を尻目に泡瀬を始めとした拳藤、角取、小大が木の陰から現れる。

 

 

「悪いけどさ天倉……コレさサバイバルだから」

 

「えっ」

 

「ゴメンナサイ天倉サン、エート…ネェ、ドンナ気持チ?成ス術ナク無効化サレルノッテドンナ気持チ?」

 

「えっ」

 

「……と、言うわけでさ……ホンットごめんな!」

 

「えっ」

 

「………」(無言でお辞儀)

 

「……えっ?」

 

 

【拳藤、泡瀬、角取、小大チーム】天倉の動きを封じる事に成功。

鉄骨と地面に溶接され、動けなくなった鬼である天倉はそんな彼女達の走り去って行く後ろ姿を見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

「…………!?」

 ↑

やっと状況を理解した鬼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<初見殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハ!どうだイレイザー、俺のクラスは!この日の為、A組を対策するように課題を出していた!確かにお前等の方の個々の実力は凄まじいものだ!それは認める!だがB組の連携はA組を上回る!」

 

「……ったく、油断しやがって……」

 

 

 天倉の悲痛な叫びを耳にした教師陣。片方は生徒達の活躍に高笑いし、もう片方は開始数秒で動けなくなった情けない生徒に頭を抱える。

 

 

 

 

天倉孫治郎(鬼)、初見殺しにより戦闘不能(リタイア)

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬッ!!クソ、鉄骨と周りの木で身体がガッツリ固定されて動けんッ⁉︎」

 

 

 全身に力を込める(天倉)。しかし、自由が利かない体制で固定された所為なのか身体に溶接された鉄骨はピクリと動かない。

 

 

「やべぇよ……やべぇよコレ……下手したら何も出来ずに訓練終わるぞ……!」

 

 

 天倉の脳裏に映し出されるのは周囲からクスクスと笑われる自分自身の姿だった。

 

 

『プークスクス、何も出来なかったった(マジ)?』

『わー、引くわー、雄英生の癖して何も出来ないの引くわー』

『失望しました。天倉君の友達やめます』

『えーマジ?初見殺し⁉︎キモーイ』『初見殺しが許されるのは小学生までだよね』『『キャハハハハハハ』』

 

 

「どやんす⁉︎どうする俺!どやんすッ⁉︎」

 

 

 何故佐賀弁なのかはさておき、被害妄想も甚だしい。ネガティブ思考の天倉はこのままでは言葉責めに合うと想像し身体を無理矢理動かそうとする。

 

しばらくして、これ以上動いても無駄だと思ったのか暴れるのをやめる天倉。

 

 

「……いや、先ずは冷静に考えよう」

 

 

 深呼吸をした後、自分の脳をフル稼働させ緑谷のようにブツブツと呟く。

 

 

「えーと……まず、俺のアドバンテージは……1人だと言う事。チームでの連携とかが無い分、自由性が増してる。…けど問題なのは真っ向勝負が不利って事。それでも一対一、もしくは不意打ちなら戦闘不向きな個性持ちを倒せる……はず」

 

 

 先程まで水の外でビチャビチャと跳ねる魚のように暴れていたのが嘘のように落ち着いてくる。

 

 

「拳藤さんとの戦いだって、ほぼ不意打ち?的な感じで倒しちゃったし……」

 

 

 

「……………」

 

 

 

「……ゴポォ!(吐血」

 

 

 いつもの。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…なんで自爆してんだろ俺」

 

 

 全くである。今、自分のできる事を見つける事が先決だと言うのに何故、無駄に体力を消耗した上、ダメージを負っているのだろうか。

 

 しかしそんな彼の目に再び炎が宿る。口元から血を垂らしながらも彼は諦める事は無かった。

 

 

「まぁ、取り敢えずはだ。周りが森林って言うのが厄介だな……ッ!」

 

 

そう呟いた直後、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、【飯田、砂藤、常闇、瀬呂チーム】は自分達の周囲に瀬呂のテープによる結界を張り、敵チームを足止めしている間に捕縛する方針を立てたのだが

 

 

「グハハハハッ!何処に居るのかバレバレでしてなァァァアアアッ!」

 

「うぉぉぉぉぉおおおおッ!」

 

「アイツ!蒸気機関車かよ!正面から向かってくるかフツー⁉︎」

 

 

 Bクラスの生徒、【宍田獣郎太】が小細工も無しにテープの結界を破りながら突進して来たのだ。それに対抗し砂藤の"個性"シュガードープによって取っ組み合いにもつれ込み、互いの力が拮抗した状態となった。

そこに常闇が援護を行おうと闇影(ダークシャドウ)を操る。

 

 

「闇影!」

 

『アイ───ヨッ!!』

 

「がっ⁉︎」

 

 

 が、闇影は宍田ではなく常闇に攻撃を喰らわせた。

不意による攻撃により吹き飛ばされる常闇だが地面を転がりつつ、すぐに態勢を立て直す。

彼が睨む場所(ダークシャドウ)の中からぬるりとソレは現れる。

 

 

「此処は最早、俺の舞台(ステージ)と化した」

 

「……ッ!闇影を操るかッ!」

 

「あぁ……!その通りだ常闇踏影。貴様と俺は同じにして異端。覚えておけ。闇を覗く時、闇もまたこちらを覗いているのだ……!」

 

「……面白い。俺が闇の存在が無ければ何もできない者だと思ったら大間違いだ。俺の覚悟は貴様の信念をも穿つッ!」

 

 

 黒い物に溶け込む"個性"を持つ【黒色支配】は闇影を巧みに操り常闇と戦う。

彼等の世界を割く事は出来ず(黒歴史確定の言動をしております)最早誰にも止める事は叶わないだろう(そっとしておいてあげて下さい)

 

 

 

 

「砂藤君ッ!頭を下げるんだ!」

 

 

 飯田の脚のマフラー部分から炎が噴き上がる。直後、"個性"エンジンによる蹴りが宍田の頭を襲う。

 

 

「解除ッ!」

 

「ッ!」

 

 

 しかし"個性"を解除する事によって宍田の身長は大きく縮んだ事によって飯田の蹴りは虚しく空を切る事となる。

 

 

「……まだだッ!砂藤君!俺を投げてくれ!」

 

「おう!」

 

 

 そこに砂藤は蹴りを外した飯田の脚を鷲掴みに、宍田に向けて全力で投げる。それと同時にエンジンのギアを1段階上げ蹴りの威力を上げようと試みる。

 

 

「ッ!」

 

 

 が、飯田は側面から飛んできた複数の弾丸らしき物を蹴りで弾く。声の方向に注目すると、中国の長袍(チャンパオ)のようなコスチュームを纏った男子生徒がこちらに手を向けているのに気付く。

 

 

「突っ込んでいくな黙示録!少しは冷静になれって!」

 

「"個性"を使ってしまうとハイになってしまうので!あと、その呼び名はやめてくださいますかなァァァアアア!!」

 

「伏兵か───ッ⁉︎なんだッ⁉︎」

 

 

 足元の違和感を覚えた飯田は自身の脚部に視線を移す。白濁の液体が付着しているのに気が付いた。そして、みるみる内にその液体は固まっていき脚が地面から離れない程に強固に接着されてしまう。

 

 

「ナイスだ凡戸!アイツの機動力は厄介だからな!」

 

「先に飯田を潰すかよ!」

 

 

 【凡戸固次郎】の"個性"によって動きを封じられてしまう飯田。そこに【鱗飛竜】は手から弾丸のように鱗を飛ばそうと構えるが瀬呂はテープを彼の腕に括り付け、別の方向へ向けさせ誤射させる事に成功する。

 

 

「くっ、回原!今の内に飯田を頼んだ!」

 

「やばっ!まだ隠れてやがんのかよ!」

 

 

 鱗の言葉に瀬呂は内心舌打ちをしながら味方全員に警戒を呼びかける。そこに鱗が呼んだ【回原旋】は飯田に向かって飛んで来る。

 

 

 

 

 

───ボロボロになりテープで縛られた状態で

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 

 

「隙を見せ過ぎなんだよ雑魚共ォォォォォォオオオオオッ!!」

 

 

 

BOOOOOOM!!!

 

 

 

 回原に続いて現れたのは、もはや敵サイドのキャラクターにしか見えない形相の爆豪本人だった。飛んで来た回原は彼にやられたのだと周りはすぐに理解した。

 

 

「テメェ等全員、死んどけやァァ!!」

 

「くそ!」

 

 

 そこに鱗が爆豪に向け無数の鱗を撃つが、爆破の反動によって空中を自在に舞い難無く回避する。

 

 

「鱗飛ばすだけかよ!凡度!爆豪の動きを止め───」

 

「そっちかよ!爆速ターボ‼︎」

 

 

 鱗がチラリと視線を向けた方向に隠れた生徒の存在に気付いた爆豪は一瞬で距離を詰め胸倉を掴む。

 

 

「ちょ、何───」

 

爆破(エクス)カタパルト!」

 

「うお───!?」

 

 

 爆破による遠心力を利用し鱗を勢いよく投げ飛ばす。投げた先には"個性"を発動しかけている凡戸の姿があった。

 

 

ブチャッ!!!

 

 

 2人が激突し合うと共になにかがブチまけられる音が響く。そこには鱗と凡戸が白い液体によって身動きが取れない状態になってしまう。

ニヤリと(凶悪な)笑みを浮かべる爆豪だが、背後から宍田は腕を振りかぶる。

 

 

「爆豪殿!背後がガラ空き───

 

「ワザとだわ!ボケ!!!スタングレネード!!」

 

 

 森の一角が閃光と爆音で覆われる。光と煙が晴れる頃には個性によって視覚、聴覚が強くなっていた為か宍田は爆破によって目と耳を抑えながらその場で悶絶していた。

 

 

「グォォォオオオオッ!?耳と目がぁぁぁぁ!!」

 

「ハッ!目と耳が良すぎる奴にはよぉく効くよなァ!天倉と同じタイプでつまんねぇわボケ!」

 

 

 爆豪の登場により先程まで窮地に立たされていた飯田達は優勢となる。そんな爆豪の元に瀬呂が駆け寄る。

 

 

「わり、爆豪助かった───BOOM‼︎

 

 

 刹那、瀬呂の顔面に無慈悲な爆破攻撃。忘れてはならない、これはあくまで訓練である事を。悲しいけどコレ、サバイバルなのよね。

 

 

 

「全員、ぶっ潰したらぁ……!!」

 

 

 

この後、無茶苦茶抵抗したが負けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、さすがと言いたいよ。一対多を物ともせずに勝っちゃうんだからさ」

 

「でもさ、彼にとっては自分以外の人間をただの脇役としか見ていない。それは僕だってそう思うさ。なんせ、誰もが他人の人生の脇役であり 自分の人生の主役なんだ」

 

「それは仕方ない事さ。あぁ、仕方ない。だからホント嫌になるよね1人でなんでも出来るって奴はさぁ!」

 

 

 

「……物間、お前……誰に向けて言ってんだ?」

 

 

 

 森林の中、物間達と拳藤のチームが合流を果たす。爆豪の戦いを見ていた物間の独り言に拳藤達は距離を置く。彼と同じチームの鉄徹、柳、吹出も若干引き気味だ。

 

 

「さて、拳藤。いくつかのチーム、特にA組は何も考えずに動き、数を減らしてきている頃だ。そろそろ僕達も動き出す頃じゃないか?」

 

「……確かにな。んじゃ、私達も本格的にやるとするか」

 

 

 そう呟いた直後、拳藤は片目をつぶりばつが悪そうに口を開く。

 

 

「ホント、ごめんな」

 

「ん?何を言っt「SMASH!!

 

 

刹那、木の上から現れた緑谷が放つ拳が物間の顔面を捉える。

 

 

「物間──「悪いわね、先手必勝よ!」──って、うぉぉぉおおおお!?」

 

 

 さらに、蛙吹の舌が鉄徹を掴み遠くを放り投げ、綺麗な放物線が描かれる。

 

 

「ま、A組とB組が同盟を結んじゃ駄目って言われてないからな」

 

「フ、フフフフ。成る程、A組の考えそうな事だ。緑谷君、だったかな?いつの間に力をセーブする事が出来るようになったんだい?」

 

 

 拳藤の言葉に応えるように物間は右腕を"鉄に変化させ"立ち上がる。事前に奇襲を警戒し鉄徹の"個性"をコピーしたと緑谷は分析する。

 

 

「成る程、防御力の高い鉄徹を最初に無効化するなんてね……!」

 

「そう言う事!緑谷!」

 

「分かってる!"触れられないように"だよね!」

 

 

 そう言うと緑谷は全身に力を込め跳躍を行うと、物間との距離を瞬時に詰める。

 

 

「(ワン・フォー・オール・フルカウル!)SMASH!」

 

「ッと……!安心しなよ。君の諸刃の剣みたいな"個性"は厄介だからコピーする気になんてならないよ」

 

 

【ボヨヨヨ〜〜ン】

 

「うぉ!?」

 

 

 緑谷の拳は突如として現れた巨大な漫画の擬音のような物に命中ふる。すると凄まじい反発力で拳は弾かれてしまう。

 

 

「ダメだ…弾かれ……⁉︎」

 

 

 あまりの反発力に緑谷自身も飛ばされるが、拳藤の巨大な手によってキャッチ。そこに芦戸が擬音に溶解度を高めた酸を当て、みるみる内に溶かしていく。

 

 

「何、あの"個性"!?」

 

「確か……拳藤さんが言ってた吹出君の個性!」

 

「結構厄介だそアレ……って、うぉッ!?」

 

 

 そこに石や砂利の雨霰が緑谷達を襲う。拳藤は両手を組み巨大化させ即興の盾を作り出した。

 

 

「私の後ろに回って!」

 

「次は柳さんのポルターガイスト!」

 

「こんなの動くの難しいよ!」

 

「ハハハハハ、組んだとしても連携がなってないんじゃあ勝てるものも勝てないよ。……さて、そろそろ鉄徹も戻ってくる頃か───

 

 

 そこから先、物間の言葉は続かなかった。何故ならば急に現れた巨大な赤い何かに轢かれたからである。

 

 全身から炎を噴き出し、筋肉は極限まで増強されオールマイトと同じくらいの大きさに変貌を遂げ、片手に武器という名の鉄徹を構えた天倉がそこに居たのだ。

 

 

「悪い子はいねがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「出たーーー!?鬼だーーーーー!!」

 

「いや台詞的にはナマハゲだけど鬼だーーーー!」

 

 

 本物の鬼とさほど大差の無い迫力にその場の全員は逃げ出す。しかし遊戯において鬼の役割は勿論。

 

 

「に゛か゛さ゛ん゛ッ!!」

 

 

地の果てまで逃げる側を追いかける事である。

 

 

「いや!いやいやいや!アレ天倉か!?何がどうしてあんな化け物になった!?」

 

「強化されたと言うか凶化されてる!」

 

「くそっ!小大、泡瀬!」

 

「…うん」

 

 

 拳藤の言葉に小大は個性で小さくした鉄骨をばら撒く。

 

 

「そこへ高速溶接!」

 

 

 そこに泡瀬の個性で鉄骨同士と地面を溶接させる事によって簡易的な柵を作成する事に成功する。

 

 

「ふんっ!」

 

「ぶげっ───!?」

 

 

 しかし、柵に向かって手に持った鉄徹を全力で投げ飛ばし柵を破壊する。投げられたと同時に鉄徹自身は身を守る為に個性を使用しガードを行なったが全身に伝わる衝撃によってそのまま気絶してしまう。

 

 

「て、鉄徹ーーーー!?」

 

「なんだよアイツ!人の心持ってねぇのかよ!」

 

「今は鬼だよ」

 

「いや、上手いこと言ってる場合じゃ───

 

 

そう言いかけた泡瀬だったが、足元に疎かになっていた所為なのかその場で転んでしまう。

 

 

「あ………ああああああああああああああああああああああああッ!!??」

 

「泡瀬ーーーーー!?」

 

「振り向いちゃ駄目だよ拳藤さん!」

 

「彼の犠牲を無駄にしちゃ駄目!」

 

 

 何か壮大な話になっているがただ、泡瀬は捕縛されただけであって喰われたワケでは無いので無事である。そこに蛙吹が何か思い出したようにポツリと呟く。

 

 

「そう言えば……天倉ちゃん。よく山籠りしてるって言ってたけど……森に慣れてるのかしら」

 

「え?森に慣れるって───おわっ!?」

 

 

 そう言いかける麗日が泡瀬と同じように転んでしまう。すると足元に違和感を感じ視線をつま先に向けると彼女は目を見開く。

そこら中に結ばれた草が複数設置されているのに気付いたのだ。

 

 

「梅雨ちゃんが言ってたのってそう言う──って、来た!?」

 

「来いよォォォォォォッ!!こっち来いよォォォォォォ!!」

 

 

 気付いた頃には(天倉)はすぐそこまでに迫って来ていた。その迫力に気圧された麗日は思わず目をつぶり、捕まるのを待つしかなかった。

 

 

SMASH‼︎

 

「ッ!」

 

「デク君⁉︎」

 

「早く逃げて!!!」

 

 

 だが、そこに緑谷は天倉目掛けて拳を打ち込んだ。あの時もそうだった。例えコレがサバイバル訓練だとしても彼はヒーローとしての行動を選択する。緑谷は一定の距離を保ちつつ構える。

 

 

「……天倉君、こうやって一対一でやるのって初めてだよね」

 

「あ、確かに」

 

「やっと、マトモに戦えるようになったんだ……でも、まだ慣れてないからさ。ちょっとだけ付き合ってくれないかな?」

 

 

 緑谷の言葉に天倉は「はぁ」と呟き項垂れる。するといつも見る緑色の姿に戻ったかと思うと今度はベルトのポーチから捕縛用テープを取り出し、無造作に地面へ落とした。その行動に緑谷は思わず目を見開いてしまう。

 

 

「あのさ……俺が友達の頼みを断れないで言ってる?」

 

「……ありがとう!」

 

「どういたしまして……その代わり俺もコレ(ベルト)の使い方を完璧にさせる為に付き合ってもらうからね」

 

 

 各々は独自のフォームを取る。緑谷は爆豪のように腕を後方に構えつつ体勢を低くし、天倉はネコ科のように片手を地につけ身体を落とすように構える。

 

 

 

 

 

 

「ォォォォォオオッ‼︎『Violent(バイオレント)』」

 

「(最初は様子見で5%フルカウル!)デトロイト…!」

 

 

互いの拳は振りかぶられ、溜めた力と共に放たれる。

 

 

STRIKE(ストライク)‼︎/SMASH(スマッシュ)‼︎』

 

 

2人の拳がぶつかり合う。最初の一撃、力で勝ったのは……

 

 

「おぉぉぉぉおおおおおおおッ!!」

 

「〜〜〜〜っ!ぐぁ!」

 

 

天倉だ。

 

 

(…ッ!あのベルトを弄った時、天倉君の腕の筋肉量が外見はあまり変わらないけど増加してる‼︎)

 

「ウァァァァァアアアッ!!」

 

 

 そこへ踵落としの要領で蹴りが飛んでくるのに対し緑谷は腕を組み防御を固める。

 

 

「ッ!ァァァァァアアアッ!!」

 

 

 しかし防御した所に更に力を込め防御を崩そうとする。所謂ゴリ押しと言う奴だろう、そのまま緑谷は地面に叩きつけられる。

 

だが、彼の攻撃はまだ止まない。叩きつけられ跳ねた瞬間、上に突き上げるように蹴り上げ、空中で身動きのできない所を捻りを加えたドロップキックを打ち込む。

アルファ→ベータ→ガンマドライブと体育祭で見せた技だ。

 

それを緑谷は痛そうな表情を見せつつもすぐに体制を立て直し向かってくる。

 

 

(そりゃ、骨折した上で更に骨折するくらいのタフネス持ってるからなぁ……!)

 

 

 正面から輝きを身に纏いながら緑谷は駆ける。天倉はそれに対し脚を振りかぶる。振り払われた脚が緑谷の顔を捉える────と思いきや、天倉の蹴りは緑谷の眼前で空を虚しく切って終わる。

 

 

「なッ⁉︎」

 

「SMASH!!」

 

 

 緑谷の拳が攻撃のタイミングがズレた彼の顔面を捉える。いや、正確には緑谷がタイミングをズラしたのだ。蹴りを放って来た直後、"個性"を解除する事によってスピードを低下させ攻撃を不発させる事に成功したのだ。

 

 

「(まだ!ここで!)SMASH!」

 

 

 さらに、腹部に拳を打ち込み追撃を加える。そのまま天倉は後方に吹き飛ばされ木に激突する。

 

 

「…ハァ……ハァ……、天倉君は……腕のソレ滅多に使わないよね……!」

 

「……?」

 

 

 腹部を抑えながら天倉は緑谷に視線を向ける。

 

 

「それは僕の事を考えてくれてるから?それとも、君自身が嫌だから?」

 

「……それは……」

 

 

 天倉にとって答えは両者である。人を傷つけてしまう力だから嫌なのだ。深々と突き刺さり、肉を裂き、抉る刃と爪はどうしても使うのを躊躇ってしまう。

 

 

「俺は───「僕はヒーローになる!!」──!?」

 

「君もヒーローになるんだったら!自分の力を認めるんだ!"個性"を奥の手とかじゃなくて、自分の身体の一部だって!USJの時だって、君はその力で先生や僕を助けてくれた!」

 

 

 

──助けたいと思って行動に移したお前はあの時、確実にヒーローだった!

 

──ありがとう、私のヒーロー

 

 

 脳裏にそんな言葉が浮かび上がって来る。

あぁ、君は何て真っ直ぐなんだろう。人を信用するのを怖がる自分とは大違いだ。

……だけど……俺もそろそろ、変わらないといけないと駄目なんだな。

 

 

「君は──「俺だって!」

 

「俺だって、ヒーローになりたい!君みたいに!誰かのヒーローになる!」

 

 

 

 

 

 

「ォォォォォオオッ!!!」

 

 

 グリップを握り締め勢い良く引くと液体をビチャビチャと飛び散り、彼の手には一本の槍が握られていた。一瞬、緑谷は何が起きたのか理解出来なかったが、彼の"個性"によって()()()()()()()()()()()()()()()と考えれば合点が行く。

 

 

(成る程、どうなってるのか全然分からん)

 

 

 ただし、本人はあまり理解していないらしい。そんなのもつかの間、天倉は槍を逆手に持ちこちらに向けて投げの構えを取る。

 

 

『ViolentBreak』

 

「おおおおおおおおッ!!」

 

「ッ!」

 

 

 咄嗟に緑谷は横に飛び退く。すると投げつけた槍は木に深々と突き刺さる。そして再び天倉はネコのように腰を落とした体勢となる。

 

 

「ここからは俺は……一切手加減しないつもりだ!」

 

「……ッ!」

 

「アアアアァァァァァアアアッッ!!!」

 

 

 叫びながら天倉は四足歩行の状態で駆けてくる。肉食動物が獲物を仕留めるが如く飛び込んでくる天倉に緑谷はスライディングの要領で天倉の真下を通り回避する。

 

しかし、予測していたのか天倉はすぐさま身体を捻りつつ脚に力を込め緑谷に襲い掛かる。

 

 

「ッ!SMASH!!」

 

 

 咄嗟に緑谷は拳を突き出すが、それを空中で身体を捻り回避を行い、同時に緑谷の肩に爪を立てながら投げ飛ばされる。そのまま投げ出されると背中を木に打ち付けられ肺の中の空気が一気に吐き出される。

 

 

「がっ!?」

 

「う゛ッゥゥゥゥぅぅ……ァァァァァアアアッ!!」

 

(防御……いや、回避!)

 

 

 天倉が腕を振りかぶる瞬間を見た緑谷は防御ではなく回避を選択。木を背後にした状態で屈み、その場から飛び退く。

すると、バキャリと音を立てながら天倉の腕にある刃状のヒレが深々と木に食い込んでいた。

 

 

「威力やばッ──!」

 

「まだだッ!」

 

 

 そのまま腕に力を込め、木の幹を裂きながら緑谷に向けて刃を振り抜いた。緑谷は咄嗟にグローブでガードを行うと同時に凄まじい衝撃が襲い掛かった。

 

 

「〜〜〜〜〜ッ!腕は……大丈b……⁉︎」

 

 

 結果として手は痺れたものの怪我はなかった。しかしコスチュームのグローブは手の甲に該当する部分が大きく抉れ、無残な姿と変わり果ててしまった。

 

 しかし、そんなショックを受けた緑谷を見逃す程天倉は優しくはなかった。再び天倉は腕を振りかぶり攻撃を行ってくる。それを跳躍して回避を行う。

すると彼の後ろにあった木はメキリと嫌な音を立てながら倒れる。あまりの威力に緑谷は冷や汗を掻く。

 

 

(信じられないけど、これが天倉君本来の戦い方なのか!)

 

(僕やかっちゃんとは違う。本能のままに暴れるように闘うファイティングスタイル!それに加えて!)

 

 

「おおおおおおおッ!!!」

 

 

(彼の触手による攻撃で懐に入れない!捕まれば威力の高い技を決められる!)

 

 

「そこだッ!!」

 

 

手から生える触手を掴み思い切り引っ張る。

 

 

「うぁッ───!?」

 

 

緑谷が天倉に向かって引き寄せられる。

 

 

「後ろにあった木が!?」

 

 

 先程、刃状のヒレが突き刺さり脆くなった木を触手で掴み引き寄せる事によって天倉と木の間に位置する緑谷は木に巻き込まれる形で引き寄せられたのだ。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

当たる寸前の所で身を翻す事によってラリアットを躱す。

 

(イレイザーヘッドの技を使うのか!)

 

 

「今のはラリアットじゃない……バッファ◯ーハンマーだ」

 

(やっぱり5%ぐらいじゃ駄目だ……なら、ギリギリ片腕だけでも20…いや30%で……!)

 

「……バッファ◯ーハンマー知らないのかなぁ

 

 

 

 すると緑谷は周囲の木々を高速で飛び移り錯乱を行いつつ、正面から拳を振りかぶる。しかし視覚、聴覚が優れる天倉にとって正面からの攻撃を防ぐのは容易だろう。すぐさま腕をクロスしガードの体勢に入る。

 

 

「SMASH!」

 

「!?」

 

 

 しかし緑谷は拳を天倉ではなく、地面を殴りつけ砂塵を巻き上げ視界を遮る事に成功すると瞬時に後方へ移動を行う。正面からではマトモに回避される。それならば、不意を付き一撃を喰らわすしかないだろう。

 

 

「そこd「後ろからだよねッ!」

 

「ッ!?」

 

 

 瞬間、天倉は身を屈め拳を躱すと同時に緑谷の脚をおもむろに掴んだのだ。

 

 

「緑谷君って頭脳派だから背後を狙うと思ってたよ!!」

 

「読んでたのか!?」

 

 

 驚愕する緑谷に一撃を与えようと天倉はとある技の体勢に入る。緑谷の両脚を自分の首を挟み込むように持ち上げ、そのまま軽く後側に身体を反らし始める。

 

 

「とりあえず……首は抑えておいた方がいいよ」

 

「えっ……えっ?」

 

 

 困惑する緑谷を差し置いてそのまま天倉は重力に従い上半身を前方へ落とした。

 

 

「セイハァァァァァァァァアアアアアッッ!!!」

 

「ちょっ待っ────ぶ」

 

 

 【パワーボム】

 

背中を大きく反らした反動により相手を持ち上げた後、地面に叩きつける技であり多くの場合そのまま抑え込みに派生するが、今回天倉が使ったのはホイップ式と言われ、派生せずにそのまま投げっぱなしにするものだ。

 

 しかしパワーボムと言うよりは思い切り地面に叩きつけたと言った方が正しいだろう。そんは緑谷は背中を叩きつけられた衝撃により動けなくなってしまう。

 

 

「よし……あれ?」

 

「う、ぐぐぐぐ……ッ!」

 

 

……が、まだ諦める事は無かった。三角絞めの要領で脚を組み首を絞め始める。

 

 

「(脚の力を強めて……!このまま落とすつもりか!)超変身ッ!」

 

 

 それに対し天倉はパワータイプである極熱筋肉形態に変身を行い、緑谷を引き剥がそうと試みる。痛みの所為か極熱筋肉のパワーにより次第に脚が首元を離れていく。

 

 

(駄目だ……ッ!引き剥がされる!捕らえなきゃ……このまま捕らえないと………!()()()()()()()()!!!)

 

「無駄な事を、今楽にしてやる!」

 

 

 そう言いながら天倉は更に力を込めると、緑谷の脚は完全に首元から引き剥がす事に成功した。後はすぐ側に置いておいた捕縛用テープで緑谷を確保すれば彼の勝ちとなる。

 

 

「これで────ッ!!?」

 

 

刹那、緑谷の腕から"黒いモノ"が伸びる。

 

 

「首に黒いのが巻き付いて……ッ⁉︎おおおおおおおおおおおおおおおッ⁉︎なんだ……ッ!この力……ッ⁉︎極熱筋肉のパワーでも千切る事が出来ないのか……ッ⁉︎」

 

 

 万力のように徐々に()()()()()()()()()は天倉の首を絞め上げていく。それに加えて極熱筋肉形態の時間制限によって元のフォームに戻ってしまう。

 

 

「う……ぐ………ッッ!?緑谷……君ッ!」

 

「───ッ」

 

(聴こえてない……⁉︎まさか、個性の暴走か!)

 

 

 天倉は首元の黒いナニカを片手で千切ろうとしつつ、もう片方の手でレジスターのスイッチを入れる。

 

 

『Over Flow━━Danger‼︎』

 

 

瞬間、音声と共に所々の血管が浮き上がり筋肉が膨張し始める。

 

 

「ウォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 本来レジスターは予備バッテリーとしての役割を果たす……が、天倉が扱っているのはあくまで間違った使い方(ドーピング)である。レジスターから多量の栄養が身体に送られ、一時的に脳機能が麻痺。その際にリミッターが外され結果的に身体能力が向上する。

 

だがそれは同時に身体に多大な負荷をかける事になり必要以上の出力を放ち、自身の細胞を破壊してしまう事になる。

 

 

「ぎ………ッ!!おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 

雄叫びと共に首元の黒いナニカは天倉によって引き千切られた。

 

 

「ハァ…ハァ……なんだ……あれ……」

 

 

「……っと、緑谷君!」

 

「───えっ⁉︎あ、天倉君?」

 

「大丈夫?なんか、腕からヒジキみたいなサムシングが生えてたよ?」

 

「ヒジキみたいなサムシング!?」

 

 

 天倉のダサいボキャブラリーに唖然としながらも緑谷は先程の現象について思考に没頭し始める。

 

 

(……さっき天倉君を捕まえるって強く思ったら……でも、一体なんなんださっきのアレって?)

 

 

 緑谷の"個性"は彼が知る限りではあくまで身体能力を強化する憧れの人から受け継いだ力であり、その憧れの人も黒いナニカを使う事は無かった筈だろう。

 

 

(……駄目だ、さっきまでの記憶が曖昧だ)

 

 

 深く考えようとするが先程まで無意識だったのか、どう使用したのか検討もつかない上、戦闘による衝撃で頭が混乱しあまり覚えてない事に苛立ちを覚える。これについてはオールマイトに聞いてみようと考えていると背後から声をかけられる。

 

 

「と、言うわけで捕縛させてもらうね」

 

「え?って、わぁッ!!?」

 

 

 すると片脚に触手が巻き付き宙吊りにされてしまう。彼の目の前にはテープを持った天倉が一歩ずつ近付いて来ると言う、どう見ても悪役のソレにしか見えないシチュエーションにしか見えない。

 

 

「ごめんね、これサバイバルだから───!?」

 

 

 天倉は何かを察知し、その場から飛び退くと先程まで自分がいた場所が凍結したのだ。

 

 

「この"個性"は……!」

 

「デクくーん!」

 

 

 天倉が視線を向けた先には麗日達に加え轟率いる尾白、葉隠、口田のチームが居た。

 

 

「やば」

 

「悪いな、天倉。お前は強ェが……遠距離飽和攻撃には対処しきれねぇだろ」

 

 

 そう呟くと轟は右手を向け、氷結を使おうとする。それに対抗し天倉は炎で相殺しようと形態を変化させようとする。

 

 

「天倉、疲れ切ってる今の状態じゃ極熱筋肉は数秒も持たないだろ」

 

「う」

 

「それにな、どっちみち緑谷もろとも凍らすつもりだ。後で炎を使って戻せばいいしな」

 

「「そんなっ⁉︎」」

 

 

 無慈悲な宣告にショックを受ける2人。そんな天倉は如何にしてこの窮地を抜け出そうとするか思考に没頭する。

……すると、葉隠が「あ」と呟き空に向かって指を指す。

 

 

「ねーねー、なんかミサイルが落ちてくるよ」

 

「は?」

 

 

──カッ

 

 

 瞬間、緑谷達の目の前に落ちて来たミサイルによって辺りが眩い光と凄まじい音によって支配される。

 

 

「緑谷君ーーーーッ!?」

 

「天倉ーーーーッ!?」

 

 

 麗日と拳藤の悲痛の叫びがミサイルの轟音によって掻き消される中、緑谷は一瞬の不意を付き皆の元に駆け出した。

 

 

「うぅ……!大丈夫⁉︎」

 

「うん大丈夫。目がチカチカするだけ……」

 

「皆……大丈夫みたいね」

 

 

 しばらくして視力と聴力が回復していく中、拳藤が耳を抑えつつもとある箇所について指摘する。

 

 

「そう言えば……アレどうするの?」

 

 

 彼女が指をさした方向には口から(口が何処にあるか良く分からない)泡を吹きながらビクンビクンと痙攣する見るからにやばい状態の天倉が横たわっていた。

 

 

「「「天倉ァ!?」」」

 

「強力な光と音にやられたんだ」

 

「うわぁ…あれはやばい」

 

「……ともかく、コイツはどうする?」

 

(……アレ?思った以上にA組って冷静に対処してるなぁ)

 

 

 皆のリアクションに拳藤は内心驚きを隠せずにいたが、コレはあくまで吐血するのが芸となりつつある天倉なら大丈夫なんだろうなぁと皆が思っているだけである。

 

そんな彼等を関心している拳藤は遠くに見える異様な景色に疑問を持ち始める。

 

 

「あれ……なんだろう?あの煙……」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 目を覚ますと先程とは違った岩場のフィールドに俺達は居た。目と耳が少し痛むが、まぁ問題無いだろう。何故こんな事になったのか話を聞くと、謎の煙が森を包んでいる為一時的に避難をしているらしい。よく見るとB組の何人かが居る。

 

そんな俺達の元に見覚えのある2人がこちらに向かって駆けて来た。障子君と天龍さんだ。

 

 

「大丈夫か!緑谷!」

 

「障子君!……と、天龍さん⁉︎」

 

 

 緑谷はやや驚いたように声を出す。勇学園の生徒が居た所為なのだろうか、いや違う。驚いた理由としては障子君が天龍さんの口元を押さえてながら連れて来たからだろう。その光景はどう見ても犯罪のソレにしか見えなかった。

……うん、アウト。

 

 

「障子君。何か弁明は?」

 

「誤解だ!」

 

「楽になりなよ……分かってるさ、そんな見た目で蔑まれるのは軽いもんだからさ……」

 

「違えよ!お前は何考えてんだ!」

 

 

 障子君と天龍さんが否定の意思を見せる。どうやら障子君にはその気が無かったようなので俺は安堵する。

このクラスに犯罪者が現れなくて良かった……。

 

 

「ナイス障子!」

 

「オッパイ要員の補充お疲れ!」

 

 

あ、駄目だ。犯罪者予備軍がこのクラスに1人いるぞ。

 

 

「つーか、ヤバイな……藤見のやつ、個性を使いやがった!」

 

「藤見君って、爆豪君と仲が悪かった…」

 

 

 爆豪君みたいな不良キャラが印象に残っている為、すぐに誰だか分かった。すると森の中から何人かがこちらに向かって歩いて来る。

皆、無事のようで安心していたが、次の光景ですぐに希望は絶望によって染め上げられた。

 

 青白い肌に、ノロノロとした動き。そして「あ〜〜〜」と言う叫びコレはまさしく……!

 

 

 

「スクリーm「「ゾンビだーーー!?」」……あれ?」

 

 

 どうやらスクリームじゃなかったようだ。後で聞いた話だがスクリームはお化けでは無くジェイソンみたく殺人鬼と言うのが衝撃的だった。

 

 

「やっぱりゾンビウイルスを使いやがった!」

 

「フハハハハハ!!!どうだ俺の“個性”は!」

 

 

 驚愕に満ちた俺達の前にこの光景の元凶である藤見君が現れる。そんな彼に天龍さんが食いつく。

 

 

「おい!流石に危ねーぞ!俺達まで巻き添え食らったらどうすんだよ!」

 

「何言ってんだコレはサバイバル訓練だ。最終的に生き残りゃ勝ちなんだ!雄英なんぞ大した事────

 

 

 そんな彼だが、背後から何者かが近づいて来るのに気付いてない様子だった。そんな光景に俺は思わず叫んでしまう。

 

 

「志村ーー…じゃなかった、藤見ー!後ろ後ろ!」

 

「あ?何言って……ギャァッ!?」

 

 

 そう、藤見君はゾンビ化した爆豪君の謎の執念によって噛み付かれそのままダウンしてしまったのだった。その光景に俺を含めた皆は唖然とする。

 

しばらくして藤見君は起き上がり───

 

 

「あ〜〜〜〜〜〜……」

 

 

ゾンビが一体出来上がった。

 

 

「すげえな雄英、あんな執念見た事ねぇぞ」

 

「あー、いや爆豪君だから仕方ないと言うか……あれ?」

 

 

 待てよ、そう言えば藤見君のゾンビウイルスってどうやれば解除されるんだ?……とりあえず天龍さんなら何か知ってるかな?

 

 

「ところで、ゾンビ化っていつになったら元に戻るの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あ、いや……いつもは藤見の奴が個性解除してたからなぁ……さっぱりわかんねぇ」

 

 

そんな彼女の言葉と共に

 

 

「ギャァァアアアア」

 

「助け……ヒィィィィイイイイイっ!」

 

「ケローーーー!!」

 

「梅雨ちゃ……キャーーーー!?」

 

「やめて!助けて!おねg……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

阿鼻叫喚と共にゾンビの数は増えて行く。

結論、絶対絶命大ピンチ。

 

 

「とりあえず、ここを離れよう!」

 

「うん!……って、囲まれてる!?」

 

 

 気が付けば周りにはゾンビの群れで囲まれていた。轟君は氷結で足止めを行おうとするが、ゾンビウイルスによってパワーアップした皆の力は氷を簡単に砕くほど力を増していた。

 

 

「映画と同じだ……!力が増している!」

 

「ゾンビって力増すんだ」

 

「どうしよう!皆なお肉を食べられちゃうよ!」

 

「ここでカニバリズムの危機が!?」

 

 

何人かがパニックに陥る中、天龍さんが前に出る。

 

 

「全員離れてろ!ここを吹っ飛ばす!」

 

 

 すると彼女の背中に砲台を積んだバックパックが現れる。砲台はゾンビ達の足元に狙いを定め、弾が放たれる。

すると轟音と共にゾンビ達の岩で出来た足場が崩れて行き、道が切り開かれる。

 

 

「戦艦⁉︎」

 

「応とも!俺の"個性"【軽巡洋艦】の火力を甘く見んなよ!」

 

 

 そう言いながら彼女はこちらに向かってムフーとドヤ顔を決める。

……コレって褒めると絶対調子に乗り、後々足元を掬われそうな展開が待ち受けていると思っているのは俺だけだろうか?

そんな事を考えながら崩れた岩場を跳びながら渡って行き、逃げ始める。

 

 

「えっ、ちょっと!わぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

「葉隠さん!?」

 

「蛙吹さんの舌か!」

 

 

 リッカーに襲われるプレイヤーの如く葉隠さんはズルズルとゾンビの群れに引き寄せられる。そんな事させるか!

 

 

「葉隠さん!この触手に掴まって!」

 

「でかした!」

 

 

 触手で葉隠さんの体掴むと、蛙吹さんに負けないようにこちら側に引っ張る。

 

 

「待ってて!今助けるから!」

 

「うん、ありがt──いだだだだだだだ!?待って!千切れる!体が真っ二つに千切れる!?」

 

「天倉君!流石にそれはダメ!」

 

「いだだだだだ!本気でホラー映画のグロいワンシーンになるから離してェ!」

 

「えっ、でも葉隠さんはそれで良いの⁉︎」

 

「うん……もう、楽になりたいから……ごめんね皆……天倉君、触手の力を緩めて。できれば……早めに(懇願」

 

「……分かった」

 

 

 俺がそう言うと表情は分からないが、不思議と彼女の安堵の様子だけは伝わった。そのまま触手の力を緩めると、彼女はゾンビの群れに向かって姿を消してしまった。

 

 

「葉隠さん………」

 

「嫌な……事件だったね」

 

「…………」

 

 

 その場の全員が歯を食いしばり、自分達の無力さを実感する。

……だが、彼女の言葉で俺は覚悟を決めた。

 

 

──守護(まも)らねば。

 

──緑谷君も天龍さんも轟君でさえも……

 

──否、オールマイトでさえも俺が守護(まも)らねばならぬ。

 

 

 

俺は皆の前に出るとゾンビ達に向かって構える。

 

 

「俺が時間を稼ぐ!今の内に皆は逃げ──「天倉は駄目だ!」

 

 

瞬間、轟君が食い気味に叫ぶ。

………今、なんと?

 

 

「え?なんで?」

 

「天倉がゾンビ化したらどうなる?」

 

「えっ……あっ(察し)」

 

「タイラント級のクリーチャーが生まれる!?」

 

「えっ」

 

「それどころか、G的なウイルスを作る可能性も…!」

 

「えっ」

 

「そうなったら本格的にパンデミックが……⁉︎」

 

 

 すると、皆は俺を囲むようにして陣を張り始める。そして俺に向かって皆はサムズアップをする。

 

 

「大丈夫、お前()()()絶対にゾンビにさせねぇよ」

 

「そうそう、アンタは()()()()()()()だからね」

 

「絶対に天倉だけは死守するぞ!天倉が攻撃されたら死ぬと思え!」

 

「「「「「「「応っ!!」」」」」」

 

 

 俺と天龍さんを除く全員の心が一致した瞬間であった。その異様な光景に天龍さんは俺の肩に手を乗せる。

 

 

「なぁ、元気だせよ」

 

「やめて天龍さん。逆に泣きたくなるからソレ」

 

 

皆は『俺への心配<自分達に向けられる危険性』と言う構図で俺を守る形になっている為、とても複雑な気分だった。

 

 

そんな俺だったが途端に身体に力が入らなくなり、その場で崩れてしまう。

 

 

「あれ?」

 

「あ」

 

「あ」

 

「え」

 

 

 すると、俺の脚に蛙吹さんの舌が絡みつき俺の身体がズルズルと引き摺られていくのが分かる。

 

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!? なんで俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!?」

 

「天倉!さっきのは万偶数の【弛緩】か! つーかピンポイントで弛緩出来んのかよ!?」

 

「ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!! させてたまるかぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

 近くにあった木に爪を立て、その場に何とか留まる。その様子を驚いたように皆が見る。

 

 

「アイツ何で全身の筋肉が弛緩されてんのに流暢に喋ったり動いたりしてんだよ⁉︎」

 

「うるせー!! こちとら職場先で神経毒とか盛られたりしたから多分そう言うのには慣れたんだよ!!(半ギレ」

 

「「「「お前の職場先はどうなってんだよ!!」」」」

 

 

 だが、不思議パワーで何とか木に爪を立てたもののあくまで弛緩が進行するのを遅くしてるらしく指先の力も次第に抜けていくのを感じる。意地でもゾンビにならない為に俺は触手を近くの人に目掛けて伸ばした。

 

 

「うおおおおおおお! 助けて耳郎さぁん!!!」

 

「何で私!? って、触手を絡みつかせるなぁぁぁぁあああああ!!!」

 

「うぉぉぉおおおおおっ!!! 天倉ァ! ナイスだ! だけど何で麗日や天龍、拳藤にしなかったんだ!」

 

「それは遠回しに私の胸が小さいって言いたいのか峰田ァ!!!」

 

 

 耳郎さんはそう言いながら俺の触手を引き剥がそうと力を入れ始めた!? やめて! ただでさえ弛緩で力が入り難いってのに!

 

 

「待って耳郎さん! シニタクナイ! シニタクナイ! シニタクナーイ!!」

 

「分かった! 分かったから! 一旦落ち着いて触手を離してェ!」

 

「それじゃあ死ぬじゃん!!」

 

「大丈夫! 死なない! 死なないから!」

 

「う、うん。分かった!」パッ

 

「えっ」

 

「あっ」

 

 

 

 時が止まったような感覚が辺りを支配する。俺もパニックに陥っていた為か耳郎さんに絡み付かせていた触手を離してしまった。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

しばしの無言。耳郎さんはそのまま俺に背を向けて走り出した

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!? ちょっとぉぉぉぉおお! 見捨てないでえええええええええ!!」

 

「天倉! 今すぐ助けn「駄目だよ轟君! ミイラ取りがミイラになるよ! 轟君までゾンビにされちゃうよ!」うるせぇッ! 親友の危機に黙っていられるか!」

 

「轟君!? そんなキャラだったっけ!?」

 

「ごめん天倉! お前の意思は無駄にしないから!」

 

「皆ーーーーー!!!」

 

 

 

 ズルズルと引き摺られ、視線を後方に向けるとゾンビの大群が料理を楽しみにしているかの如く迫って来る。

すると、あまりの恐怖に俺の精神は色々とヤバイ状態に陥っていたのか、様々な感情が爆発するかのように口が開く。

 

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええッ! ふざけるな! ふざけるな馬鹿野郎ッ! 許さん……断じて貴様らを許さんッ! 生存に憑かれ、ヒーローの誇りを貶めた亡者ども……その夢を我が血で穢すがいい! 訓練に呪いあれ! その願望に災いあれ! いつか地獄の釜に落ちながら、この天倉孫治郎の怒りを思い出せェェェェェエエエエエッ!」

 

 

 

 

 直後、俺の意識は深い闇へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「耳郎ちゃん」

 

「耳郎」

 

「耳郎さん…」

 

「耳郎、お前なぁ………」

 

「いや、ホント、その……すみませんでした……コレが終わった後、天倉に謝ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 しばらくして辿り着いたのは洞窟のある岩場だった。道中、何人かが梅雨ちゃんと万偶数の弛緩からの舌による捕縛コンボによって生存者が減り、「私が来たァ」と吐血しながら叫ぶガリガリゾンビ(オールマイト)の登場もあったが、轟の氷結によって洞窟の出入り口を即興の氷壁で塞ぐ事によって一時の安息を得る。

 

 

「今、生き残ってんのは誰だ?」

 

「えーと、天龍さんに、僕(緑谷)、麗日さん、芦戸さん、轟君、障子君、峰田君、耳郎さん、上鳴君。そしてB組の拳藤さんに角取さん、小大さんに…吹出君だね」

 

「結構、生き残ったな。探索能力の高い個性持ちが3人も居て助かった」

 

「疲れたー!」

 

「一息つける……」

 

「でもなぁ…此処がいつまで保つか分かんねぇぞ?」

 

「とにかく他の連中のゾンビ化が解けるまで、ゾンビにならずに逃げ続けるしかないって事か」

 

「少なくともガスは晴れてたから、僕達がゾンビになるとすればゾンビに噛まれた時だけだけど……問題は何時まで続くかって事だよね」

 

「でも、本当に危なくなったら、先生たちが止めてくれるよね?」

 

「うんうんうん!」

 

 

 緑谷達の考察に先生が助けてくれると言う希望を持つが、頼りになる先生の1人であるオールマイトは現在、動けない状態にある事を緑谷は知っている為、とても複雑だ。

 

 

「そう言えば、デク君。ゾンビ映画の主人公は、どんなやり方でピンチを切り抜けてきたん?」

 

「それが、ゾンビ映画って大体がバッドエンドで……」

 

「そんな!?」

 

「ハッ、くだらないな」

 

 

 緑谷のゾンビ映画の結末に天龍は一蹴する。ニヤリと笑みを浮かべ彼女は自慢気に話す。

 

 

「そんな映画如きで怯えてんじゃねーよ。いざとなりゃ弾をぶち込んででもゾンビ共をぶっ飛ばしてやるよ」

 

「てんりゅー!」

 

「頼もしいよ!」

 

 

 フフンと満足気に笑う天龍。男らしさを見せる彼女に女性陣はキャッキャと盛り上がるが、轟がとある発言を行う。

 

 

「ゾンビって、大抵は弾を喰らっても平気じゃねぇのか」

 

 

ピタリと天龍の動きが止まる。

 

 

「な、何言ってんだよ。い、いざとなりゃオレのコレ(刀)でぶっ飛ばして……」

 

「何でわざわざ近距離に持ち込むんだ?それだったら遠距離攻撃をした方だ良いだろ」

 

「った、たりめーだろ! オレならゾンビ共を蹴散らして……」

 

「そもそも、弾数考えずにバカスカ撃つなよ。タダでさえ音がうるさいんだ、ゾンビ共が集まるだろうが。それにこんな岩場で使えば相手の足場どころか俺達まで被害を受けるだろ、それくらい考えろよ」

 

 

 轟によるダメ出しラッシュにより精神的にズタボロにされていく天龍。だが轟には故意があってダメ出ししているワケではないのだろう………多分。

 

 

「う、うるせぇよぉ……お、オレにそんな事言われても……しょうがねぇだろぉ………」

 

「お、おい幾ら何でも泣く事は……」

 

「あー! 轟泣かせやがった!」

 

「いっけねーんだ! 女子泣かしちゃ駄目なんだぜ!」

 

「せんせーに言いつけたろ!」

 

「ほら、てんりゅー。泣かないで?お菓子あるけど食べる?」

 

「うん……食べる」

 

「あー! 静かにして! 今、外の状況を探ってるから!」

 

 

(やばい、ツッコミ役の天倉君が居なくなった途端に無法地帯に……!)

 

 

 今になって天倉の重要性に気付く緑谷。ストッパーにもなるツッコミ役が居ないとこうも混沌とした状況になるとは思わないだろう。大切なモノは失って気付くとはこう言った状態を言うのだろうか。

 

そんな彼等だったが、外の様子を探っている耳郎が反応を示した。

 

 

「待って! コッチに誰か来てる! 数は……1人!」

 

「チッ、仲間を呼ばれると厄介だ。外に出て捕まえて置くか?」

 

「いや待って! 天龍! 泣いてる所悪いけど、アンタの個性で外の様子って探れたよね!」

 

「ぐすっ……あぁ、レーダーやソナーでいける……」

 

「悪いんだけどさ、外の奴がどうしても様子がおかしいから索敵お願いできない?」

 

「……あぁ」

 

 

 涙を拭い目を瞑る天龍。彼女はレーダーにより氷壁越しに電波を送り反射波を感知し相手の居場所、様子を探ることが可能だ。

目を瞑ったまま彼女は口を開く。

 

 

「確かに外に誰か居るが……それがどうした?」

 

「そっちから見て、移動速度はどんな感じ?」

 

「どんな感じって……あれ? なんかゾンビ共と比べて少し速いなコイツ」

 

「うん、きっと生存者がコッチに来ている」

 

「お! それならさっさと氷の壁を溶かしちまえよ轟!」

 

「別に構わねぇが、念の為に用心しておけ」

 

 

 そう呟きながら轟は左手を氷壁につけ、炎を発動。手を付けた箇所からみるみる内に氷壁は薄くなっていき外の様子が明らかになって行く。

 

 

「………っ!?」

 

 

 轟は外の様子を見て驚愕を露わにする。遅れた様子で洞窟内の全員も外を見ると轟と同じ反応を示す。

それも仕方のない事だろう。何故なら、ゾンビになっていた筈の天倉が目の前に立っていたからだ。

 

 

「天倉君!?」

 

「い、いや! ゾンビか!」

 

「落ち着け、よく見ろ。個性を使ってない状態だが顔色の様子を見るとゾンビ化していない」

 

 

 そう言われて観察すると目の前の天倉は肌の色はゾンビのように蒼白いワケでは無く、健康的な明るい色でありゾンビ特有?の「あ〜〜〜〜〜〜」という声も発していない。

 

 

「無事で良かった天倉君!」

 

「そうだな!……ほら、耳郎謝れって」

 

「う、うん……その、ごめんなさい」

 

 

 頭を下げる彼女に天倉はニッコリと微笑む。どうやら気にしていないようだ。そんな彼を轟は洞窟内に招きこむ。

 

 

「とにかく、無事で何よりだ。お前も早く洞窟ん中に────

 

 

頭が高い

 

 

「……は?」

 

 

 

 瞬間、轟の頭は掴まれ地面へと叩きつけられる。

 

 

「がっ……!?」

 

「轟!?」

 

 

 そのまま地に伏した轟を天倉は頭を踏み付ける。今までの天倉を知っている皆にとってその光景は異質としか呼べないモノだった。

 

 

「あ、天倉君!? 一体、なにを!」

 

 

緑谷の言葉に天倉はニィと口端を吊り上げる。

 

 

「随分楽しそうじゃないか轟ィ……。支配者(ゲームマスター)である私を差し置いてェ!」

 

 

「お、おい! 様子が明らかにおかしいぞアレ!」

 

「て、テメェ! 天倉の偽モンか!?」

 

「偽者……? 私は私だ。それ以外の何者でも無い」

 

 

 彼の言動は彼等の知る天倉とは大きくかけ離れたモノだ。しかし、姿形は何処からどう見ても天倉本人である。その場の全員が困惑する中、緑谷は戦闘態勢を取る。

 

 

「どうしたの天倉君! 君は本当に天倉君なのか!」

 

 

 そんな彼の悲痛の叫びに先程まで笑っていた天倉の表情が一変。凡ゆるモノを見下すような冷たい眼差しへと変わる。

 

 

「違う、違うなぁ……! 天倉孫治郎と言う名はもう捨てた……」

 

 

 

 

 

「今の私はァ……

 

 

 

 

 

 

 

 

シン・天倉孫治郎だァ!

 

 

 






 ヒロアカ最新話で緑谷が凄い事になってたのでサービスで出してみた。緑谷君の腕から出てきたヒジキみたいなサムシング。一体何なのだろうか……(すっとぼけ)

 何か色々と叩かれてる気がするけど、終盤チートのインフレが当たり前のジャンプ漫画なら仕方ないと思う。
そう考えると天倉が緑谷を越えられそうに無いんだよぁ。


すげぇよデクは……。



〜〜キャラ紹介〜〜


【天龍】

"個性"『軽巡洋艦』
軽巡洋艦っぽい事が出来る。魚雷を撃つ(投げる)事が出来るし、レーダーで探知も可能。
意外に汎用性が高く強い"個性"である。

眼帯の可愛い方。実は番外編にも登場したキャラクター。 フフ怖。
小学校では天倉と知り合い。もっと天龍イジメをしたかったが本編なので流石に自重。番外編は楽しみだなぁ(ゲス顔)

天龍可愛いよ天龍。




次回、ゾンビのやべーやつが暴れます。
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