もし革命軍にMAがいたら(仮題)   作:偽ハシュマル

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 久しぶりの投稿…だが文章はガバガバだ。

 


もめ事はいつも突然起こる。

 アーヴラウ正規軍の兵士にはあることに対して大なり小なり不満がある。それは送られてきた援軍についてだった。もし送られてきたのがマクギリス配下の革命軍で大人…石動のような人物だったら現場の兵士は特に不満を言うことはなかっただろう。もし送られてきたのがある程度まとまった数の鉄華団人員だったとしたら少しの不満はあったにせよ数という頼れる要素があるため飲み込めたかもしれない。

 

 「馬鹿にしやがって何が『どのような危険があるか分らないからそちらは後方に備えてほしい』だ!」

 

 だが送られてきたのはたった3機の兵器だった。実情を知る者からすればこのうちの二機は百単位のMSの援軍を得たに等しいと分かるものだが残念ながら彼らからすればよく分らん機体がたった3機しか送られてこなかったという認識しか残らなかった。

 

 「挙句あの餓鬼は『あんたらは下がってて邪魔だから』だと!!嘗めやがって!」 

 

 バルバトス専属パイロットである三日月の言葉もまた不味かった。彼がこう言い放ったのは事前にグザファンから今回アリアンロッドが出してくるであろう戦力はアーヴラウ正規軍の手に負えるものではないので自分たちが睨みを効かす必要があると言われたためである。三日月からすれば無駄死にを避けるための言葉だったが当然現場の兵士はそんな風に受け取るはずもない。

 

 

 逆にSAU側とアリアンロッド側とでは大きないさかいは特に起こらなかった。SAU側の兵士は単に上層部が手を組んだ相手がアリアンロッドだっただけで特にギャラルホルンに対する思想的思い入れはない。それにアリアンロッド自体もちゃんとした大人の兵士で嘗められることもなく、出立前に礼儀は悪くならないようにしていたたため現地の兵と問題を起こすことはなかった。結果当初の予定通りアリアンロッドとSAUとの部隊の配置分けは上手くいっていた。その結果が問題を引き起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんというか暇だね…」

 

 「まぁ今回はにらみ合いで終わる仕事らしいですからそう思うのも仕方ないっすよ。」

 

 『もっともバルフォー平原辺りは国境があいまいだからどこで敵とはち合わせるかは分からないから気を抜きすぎるのはよくないぞ。』

 

 とはいえさすがにアリアンロッドの兵士ならば自分たちがどういう存在かは分る筈なので仕掛けては来ないだろうと考えていた。いくら恨みがあろうとこんなところで原作のようにダインスレイヴの雨なんてやろうものならば道徳以前に各国の反応は最悪になるはずだったからだ。仮に出てきたのがSAU正規軍ならば殺さない程度にボコってこちらの存在を伝えるメッセンジャーになってもらおうそう軽い気持ちで考えていたときその報告は届く。

 

 「ねぇグザファン、何かアーヴラウの連中勝手に前に出てるけど放っておいていいの?」

 

 『……は!?』

 

 思わず間抜けな声を出してしまう。待て待てどういうことだ!?まるで意味がわからんぞ!?何勝手に進んでんだよ!このまま俺たちを前面に出しとけば被害が出ずにすむ話なのに何で自分から危険地帯に飛び込もうとしてるんだ?

 

 「とりあえず追っかけてみる?」

 

 『ああ!急ごう。』

 

 あれか、俺たちに任せておくのは正規軍としてのプライドが許さないとかそんな考えなのか?にしたって相手にアリアンロッドがいることは多分知っているはずだが…それにいくらなんでもアーヴラウの連中じゃアリアンロッドの相手にならないことぐらいは分る筈だ。しかし残念ながら現実はそううまくいかなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「隊長!この反応を見てください!!」

 

 「このリアクター反応アーブラウの正規軍か。向こうから仕掛けてくるとはな…こらえ性のない奴らだ。続いてきているのは鉄華団の悪魔と黒い凶鳥か…待て!MAだと!?連中正気か!?」

 

 リアクター反応を見た部隊長は凍り付く。MAは厄災戦を引き起こし人類を殺戮したまさに天敵と言える存在だ。そんなものを宇宙や圏外圏ならばともかく地球に持ち込むなどあってはならない。それがギャラルホルンに身を置くものならば当然の認識だった。いかに革命軍といえどかつてはギャラルホルンだった身、その一線を越えるとは思っていなかった。なのにこの仕打ちである憤りを覚えるのも無理はない。

 

 「信じられん!奴らいったい何を考えてるんだ!?」

 

 安全だなどと謳われてはいるが結局のところMAはMA、人殺しのための兵器だ。事実自分たちの敬愛していた主を殺した主犯格の一つはこのMAだ。

 

 「隊長如何なさいますか?」

 

 「今あいつらと戦えるのは私を含めて三機、いや今の装備ではバルバトスはともかくグザファンに致命傷を負わせられる武装を持っているのが…」

 

 MAに致命傷を負わせられるほどの武装は残念ながら現在のところここには持ち込んではいない。当然だ地球上のしかもこんなややこしい場所でそんな高火力の武装を使おうものならば確実に後に響く。

 

 「やはりここは《サウレ》を使いましょう。」

 

 「《サウレ》か…あれはな…」

 

 正直サカタ博士はあまりかかわりたくはない人種の人間だった。別段自分たちを差別的な目で見たり実験動物的な目で見てきたりしてきた訳ではない。むしろ自分たちが主人の敵を討つために手術を受けることを了承した時にはすごく感謝し、部隊が全滅した時は自分も死ぬと本気で訴えかけてきたくらいだ。それが逆に怖かった。

 

 (あの人どう考えても忠誠心で動くタイプの人間じゃない。多分だが自分の研究が命でそれが日の目を見ることになってハイになってる人だ。)

 

 だから後方の安全地にいるのに平気で命をかけるとかいうのだろう。多分自分たちが負ければサカタ博士は本当に死ぬつもりなのだろう、博士の目は仇内を誓った部隊員に匹敵する凄みがあった。だからこそ怖い、この素性の知れない応答が機械音声のMSはいったい何でできているのだろうかと。手術を受けることを了承した自分たちにすら明かせないその秘密はいったい何なのだろうかと。だがこの地球でMAを野放しにしていい理由はない戦力として換算できるならば使うべきだ。隊長はそう決断した。

 

 「分かった《サウレ》を使おう…ただし部隊は分けて先行させる。上手くいけば《サウレ》の秘密が知れるかもしれないからな…」 

 

 「了解しました。ではそのように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たどり着いた先で見たものは先行したアーヴラウ正規軍MSの残骸とそれをやったと思われる一機のMSだった。

 

 『遅かったか…』

 

「あれって敵だよね。どうするの、潰しちゃう?」

 

 『(この反応ツイン・リアクター…というか相手はガンダムか。これはまた変わったものを)仕方ないやるぞ』

 

 可能ならば戦闘は避けたかったがこうなってしまっては仕方ない。先手必勝とばかりにテイルブレード二つによる変幻自在な攻撃。普通どころか熟練のパイロットでもただでは済まないであろう

拳で弾いただけならばまだ驚かない。それ自体は火星でバルバトスルプスがハシュマル相手にやっていたので不可能ではない。問題なのは相手がやったのは決して力任せなどではなく実に滑らかに衝撃を逃がすかのようにはじいたということだ。

 

 (な!!)

 

 謎のMSの動きそのものは恐らく阿頼耶識もしくは疑似阿頼耶識によるものであるとすぐに判断できたがそれだけで今の一連の動きを行えるという理由にはならない。仮にルプスレクスとMAの尻尾のことを詳しく知っていたとしてもだ。

 

 (初見で今のをあそこまで…俺が知っているパイロットでこんな芸当ができるやつはいないぞ!最初からMSの扱いに長けたパイロットが阿頼耶識手術を受けたということか?)

 

 一気に目の前の機体に対する危険度が上がる。本来人間にはスラスターなどついていないため阿頼耶識を施術して間もないものならばその差に苦労する。しかし例外も存在する。これに該当するのはマクギリスだ。もともとMSの動きというものに詳しくかつ自分も優れたパイロットであった彼は阿頼耶識という初めてつかうはずのデバイスでもスラスターなどの配分を正確に見極めバエルを操縦してのけた。だが他にそんなことができる人物がいるかと言われれば答えは否だ。

 

 (だが俺たちニ機を同時に相手するのはさすがに無理だろう。)

 

 先ほどの動きは予想外だったがそれでもこちらの組み合わせを上回るということはないだろう。しかしそんな考えはすぐに覆ることになった。新しいエイハブリアクターの反応が三機とらえられたからだ。

 

 「またなんか出てきたな。」

 

 『新手?』 

 

 ガンダムフレーム機に続いて増援が現れる。少し見た目はおかしいが三機のレギンレイズだった。

 

 『三日月そっちの三機を頼めるか?私はこのガンダムをやる。』

 

 「了解。」

 

 バルバトスは腕部200mm砲を即座にレギンレイズの一機に向けて発射する。しかしは隊長機は機体をそらし200mm砲を避けて、続いてくる砲弾も最小限の動きで避けた。それに反応してバルバトスが巨大メイスを横薙ぎに振るうとレギンレイズはライフルの射撃を止めて後ろに飛びそれを避けた。

 

 「なかなかやるな。」

 

 バルバトスの象徴ともいえる鈍器を強く振り抜く。普通ならばリミッターを外したガンダムフレームの力を受ければ最新型のレギンレイズでも吹き飛ばされるはずだが、相手のレギンレイズはメイスの持ち手の部分を抑えることでギリギリのところで踏ん張りバルバトスを止める。そこから更に続けてテイルブレードで続けて追い打ちをかけようとするが違和感に気付く。

 

 「後ろが抑え込まれている?ま、ぼちぼちやるか。」

 

 テイルブレードが抑え込まれながらも、鍔迫り合いは有利だと判断した三日月はさらに力を込めて剣を押し込んでいくが、逆に不利だと判断したレギンレイズはすぐさま手を引き味方と合流し連撃を繰り出した。

 

 単純な速さだけで阿頼耶識使いには追いつけない。

 バトルアックスの強襲が風を切り裂く。跳ね飛ぶ砂と小石がぱらぱらと装甲の上で躍りそれを兵器の刃が吹き飛ばす。まともに受ければほかの機体に圧倒される。三日月は超人的な反応速度でアックスの横降りをかいくぐる。

 

 「避けた!?」

 

 「焦るな三位一体で襲いかかれ!相手に付け入るすきを与えるなよ。」

 

 「「了解!」」

 

 ときに避け、身を退き、応戦も合間に交えて連続攻撃に対抗。大型メイスが金属質の悲鳴をあげて、特大の火花が炸裂する。一機のレギンレイズがメイスの表面をレールにしてスパークをまとわせながら白刃は肉薄させる。眼前に迫る斧に三日月は息を飲み込んだ。後方への離脱では間に合わない、刃は迫る。

 

 「面倒なやつらだな…」

 

 幾ら防いでも、幾ら弾いても、続けざまに剣が襲い掛かってくるので防御に徹するしかない。さらに防御できたところで隙を狙おうにも続けざまの対撃が迫るために反撃に移れる隙すらできないのだ。

 いや正確には隙らしきものはあるのだが、そこに飛び込むのはきわめて危険だと三日月の勘は警鐘を鳴らしており一切の反撃が許されない状況であった。だが当然のことながら全ての連撃を防げるわけもなく、数で分がある相手の攻撃を受けて僅かにだが切り傷が増えていく。それでもほんの少しの小さな切り傷、フレームにはとどいていないところに納めており、三機を相手に、その程度で済ませているのだから彼の対応もかなりのものと言えよう。

 

 「っち!!」

 

 こちらも敵の連携を分断すべく200mm砲やテイルブレードを放つが、三機は互いにサポートしあいながら致命的なダメージを避け離れてくれなかった。

 ナノラミネートアーマーで覆われたMSは当たり所が悪くない限り砲弾が直撃したくらいでは破壊されない。仕留めるには近づいて接近戦で潰すか抉るかする、もしくはテイルブレードで切り裂く他ないだろう。

 だが近づいたら近づいたらで、三機のうち一機はテイルブレードを相手取り抑え込み、残り二機が斧で斬りつけてくる。

 このままでは良くないと三日月は飛び上り三機の敵からいったん離れることにした。しかしブーツのかかとが地面に着くころには、敵の一機がそこで待っていた。

 

 「ウザいな…」

 

 一か八かバルバトスは狙いが不十分のままテイルブレードを敵機に射出する。刹那、隙を見せたなと言わんばかりにレギンレイズの足が閃く。脚部が変形し掘削機のようにしバルバトスを蹴り飛ばそうとする。

 

 「あいつと同じ武装か…」

 

 足の動きに見覚えがあった三日月は咄嗟にレクスネイルで回転する前の脚を掴む。そのまま脚を握りつぶそうと考えるが、第六感がそれは危険だと叫ぶ。残り二機が隊長機を援護するかのように切りかかってきたからだ。

 掴んだ手を離し二機の攻撃を危ういところでかわし勢い余ったアックスが近くのがれきや木を叩き潰した。だが一息つく暇もなく今度は三機が同時に襲い掛かる。

 

 「おいバルバトス…死にたくなければ俺に力をよこせ!」

 

 このままではこちらの身が危うい。三日月の考えに同調したのかバルバトスの目が赤く染まり大型メイスをまるで棒でも振るうかのように軽々と振り回すことで三機の踏み込みを一瞬躊躇させる。そしてその躊躇を見逃さないとばかりの超反応とスピードで隊長機に襲い掛かる。

 

 「隊長!?」

 

 体長機の援護に部下が向かおうとするが、先ほどよりも動きの切れが増したテイルブレードが邪魔をする。 

 タイミングを見計らいの拳をしかける。が、ルプスレクスはそれを独特のステップで避け、歩幅を計り飛び込みながらのレギンレイズの体をガードごと殴り飛ばす。さらにガンダムは矢のような速さで接近、今度は右の拳が見舞われる。倒れ込むように転がって回避、直後に聞こえた音は勢い余って壁を殴った際の衝撃音だった。首を振って一瞬確認すると、破壊槌のような鉄拳は地面に跡を残していた。

 

 「なんて奴だ…化け物か!?」

 

 「このままでは」

 

 「うろたえるな!あれほどの力そう長くは続かん!相手は本物の悪魔ではない、該当ありの機体と人間だ!!」

 

 もはや阿頼耶識がどうこう以前に人間をやめているとしか思えない動き。確かに目の前のMSは強い、だがこんな強さを発揮してはパイロットも機体ももたない。構成されているMSのフレームもパイロットの肉体自体は決して悪魔そのものではないからだ。確かにわれわれ一機ずつではあの機体を倒せるとは考えられない。しかし自分たちは群れなのだ。例えその中の何人かが散ったとしても最終的に誰かが立っていたらそれは勝利なのだ。そのためならば奴を削るため燃やしてやろう。

 

 「しつこい奴らだな、これ結構しんどいのに…」

 

 一方の三日月は機体がもってくれるかな、次はどこが動かなくなるんだろうと冷静に考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『不味いな…あの三機もここまで面倒な奴だとは』

 

 いつの間にか三日月と分断され、正体不明の敵と対峙したグザファンはテイルブレードを構え相手へと向ける。対する敵も両手に大剣を持ちグザファンへと向ける。敵の武装には見覚えがあった。ヴァルキリアバスターブレード、同族であるハシュマルに止めを刺した武器。

 可能ならば三日月と合流するべきであろう。だが目の前の相手がそれを無視させてくれるとは思えない。相手のMSの武器が対MS用程度ならば無理やり突っ切ることも可能だがガンダムフレームの力から放たれるあの大剣相手に背を向けるのはさすがに不味い。

 

 『ヤバそうな相手だがやるしかないか』

 

 その言葉が契機となり猛攻が始まる。互いの刃は様々な剣撃を行っていきその攻撃は重くそれでいて速く強いものとなっている。そんな中グザファンは、剣が体に当たる寸前を見切りスラスターを吹かして回避する。空を切った大剣は地面の叩きつけ大量の砂埃が舞う。

 大剣自体は重く取り回しがお世辞にもいいとは言えず、次の攻撃の挙動にかかる時間はテイルブレードの方が早いがガンダムは大剣自体を軸にしテイルブレードを足のハンターエッジで上手く弾き致命傷を避けている。

 やはり阿頼耶識の動きは危険だ。フレームへの負担を顧みない動きではあるが可動範囲の広いスラスターと大剣の重みを実にうまく扱っている。

 

 (だがそんな無茶な動きをしていればどこかで歪が出る其処をつきさえすれば…)

 

 その無防備なすきを狙おうとテイルブレードを目標に差し向けるが、目標は得物であるヴァルキリアバスターブレードを手から離し拳のナックルガードで白刃取りの要領でテイルブレードをつかみ取る。

 

 (剣を捨てた!?)

 

 百錬のような普通のMSならばその状態でも力押しでなんとでもなるがガンダムフレーム機相手ではそうはいかない。それでも相手の機体を多少は翻弄することができれば十分と判断し掴まれた尻尾を振りまわすが眼前のガンダムはそのタイミングに合わせて拳からテイルブレードを手放す。結果テイルブレードは目標の装甲を少し切り裂くだけにとどまった。さらに目標はデッドウェイトになりうる大剣を捨て身軽になることでさらに加速力を増しこちらに突っ込んでくる。

 

 (尻尾をとっさに呼び戻す暇はないか。)

 

 尻尾を呼び戻す時間を稼ごうとグザファンは牽制目的で足の運動エネルギー弾を相手に向ける。が相手はそんなものはお構いなしと言う風に拳を運動エネルギー弾発射口に突っ込む。そしてナックルガードと発射直後の運動エネルギー弾がぶつかり合いガンダムはナックルガードが壊れグザファンは足のバランスを崩し仰け反る。

 

 (こいつ!無茶苦茶しやがる!!)

 

 今のやり取りで直接的な被害は少なかったが、重力下において足のバランスを急に崩すというのは非常に不利だ。とっさにホバーでバランスを直そうと試みるが腕だけの負傷に留めた目標は壊れてないほうのナックルガードですでにこちらを殴りかかってきていた。

 ガンダムの腕とグザファンの間で金属質の悲鳴が上がり、特大の火花と電撃が散らばる。

 

 (視界が…)

 

 ツインリアクターから生み出される力と電気ショック、それもリミッターを外したものとしか思えない物。のしかかる重みと内部にかかる電気的な負担に装甲は音をたてて軋み視界にはノイズが走る。だが押し負ければこのまま吹っ飛ばされ、追いつかれてやられるだろう。演算システムの悲鳴を無視して踏ん張り装甲にめり込みかけた相手の腕を軸に体を回転させ目標を体から離れさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背後に下がったハッシュには、彼らの戦闘は局所的な竜巻の激突のようにすら思えた。

 ルプスレクス及びグザファンの戦闘をただ見ることしかできなかったハッシュは悔しさにくちびるを噛む。先輩のお付として地球にやってきはしたが、自分はまるで無力だ。

 

 「俺はまた…」

 

 タービンズの形見分けである辟邪、そんな大切な機体を預けられたことが誇らしく心躍った。アリアンロッドとの戦いも危ういながらも生き残り先輩からもある程度認められるようになった。だがこの現状はどうすればいい――爪が操縦桿にぎりぎりと食い込む。今は三日月さんもグザファンも大きな損傷はないがこのまま続けた場合もし相手に同じレベルの増援がこられたら本格的にやばい。双方の戦場には一寸の隙も見当たらず、今自分が介入したとしても足手まといにしかならないだろう。焦る気持ちばかりが膨らむ。

 

 

 (落ち着け…ディンも言ってただろ!自分の置かれた状況を的確に判断するのはパイロットに必要なことだろうが!)

 

 それでもただ嫉妬に任せてがむしゃらに力を欲していた時とは違う、大切な機体を預けられたからにはそれ相応にならなければならない。仲間が言っていた言葉を思い出し冷静になろうと努める。

 

 (相手はどう見ても全員阿頼耶識、しかも機体も強い何か弱点はないのか?相手の装備、三日月さんが戦っている相手は…あのガンダムは…ん待てよ!そうか敵の装備は…)

 

 ふと気付く。自分では先輩のもとに助けに入ったとしてもすぐに殺されるのがおちだろう。だがもしあの中にMAであるグザファンが加わればどうなるか?なぜかはわからないがMAを仕留められるであろう大型の獲物を持ったのはガンダムフレーム一機だけだった。ならばおそらくMAがルプスレクスのもとに駆けつけさえできればフォーメーションどころではなくなるだろう。 

 

 「グザファン!聞こえるかグザファン!!」

 

 『何だ?こっちは見ての通り取り込み中だ。』

 

 「分かっている、だが聞いてくれ!」

 

 『何か妙案でも思い浮かんだのか?』

 

 「どういうフォーメーションなのかは分からないがやつら三日月さんの相手に阿頼耶識レギンレイズを、グザファンに対してはガンダムフレームをぶつける事に固執しているみたいだ。だからそれを崩したい。」

 

 『こいつは相当強い下手をすれば君は死ぬぞ?』

 

 「三日月さんを援護するために必要なことだ頼む!」

 

 『いいだろう。こっちもできる限りバックアップはしよう。辟邪にマイクロウェーブで私の意識の一部を送る。これで少しはもつだろう。』 

 

 地上戦のデータが少ない部分はグザファンは補ってくれるらしい。これまでの敵の誰よりも強いであろう相手に無意識のうちに操縦桿を握る指先に力がこもる。辟邪は使いやすくそれでいて強い機体だ。それでも正直辟邪だけだとあのガンダムフレーム機には絶対に勝てはしないが一撃で撃墜されさえしなければどうにかすることはできるはずだ。自分の射撃技術ではやつをとらえることはできない。ならば直接攻撃しかとトビクチブレードを握りしめた瞬間、グザファンと戦っている敵の姿が掻き消えるような錯覚があった。

 

 「こっちに向かってきただと!?」

 

 急加速に目を見開く。トビクチブレードは取り回しに特化しており簡単には折れないにしろ、ガンダムフレーム機の力にそう耐えうるものではない。ナックルガードで殴られたブレードからは嫌な音がし、このままではこのままでは確実に押し切られるだろう。

 

 「ぐ…まだだ!!」

 

 トビグチブレードに罅がはいろうとした瞬間に相手の手に蹴りを放つことで殴られるのを防ぐ。が相手もそれがフェイントだといわんばかりに左手で殴りかかる。その結果トビグチブレードを落とすが続けざまに放たれた攻撃は捌ききりこちらも右突き―――と見せかけたフェイントで左に攻撃を仕掛ける。

 

 右手、左手、二連回し蹴り、アッパーからの肘打ち。そのどれもが尋常じゃない威力。唸る攻撃が風を切っていた。ガードを組むも腕にビリビリと衝撃が伝わる。

 

 

 「体が…」

 

 『少しだけ持ちこたえろ。後は私が何とかする。』

 

 相手の蹴りに合わせて渾身の右蹴りを放つ。互いの足が交差し、金属音が鳴り響く。しかし相手は止まらない。

 辟邪とぶつかり合った蹴りを軸にして、軸足を跳ね上げて二連続の蹴りを見舞い顎を狙う。

 

 「ぐぉ…」

 

 そのまま敵機の脚は辟邪の顔を捉えハッシュは意識が飛びそうになる。今攻撃されれば本格的に不味い。だが意外にも攻撃してくることはなかった。それに対して辟邪はトビクチブレードを構え応戦しようとするがナックルブレードを装備した変態機動のガンダムフレーム機にはあまりにも分が悪く簡単に弾かれる。

 

 (やられる!)

 

 とっさに腕で防御できるように構えスラスターをダメージ軽減に使えるようにする。がここで敵機は意外な行動に出る、辟邪を掴み投げ飛ばしたのだ。そのまま攻撃していれば確実にダメージもしくは戦闘不能にするくらいはできたにもかかわらずだ。

 

 『動きが止まった?』

 

 ハッシュ自身が囮役を買って出たことにも驚くがまさか敵自身がフォーメーションを崩すかのような行動に出たことに戸惑う。咄嗟におれ自身を敵機に向かわせながら、一度意識を辟邪に送りハッシュの援護をしようとする。わざわざ辟邪に近づくということは近接戦闘でしとめる算段ということだろう。だが結果はそうはならなかった。

 

 『よくは分からんが今だ。』

 

 なぜ相手が辟邪に手心を加えたかまでは分からないがチャンスができたことに変わりはない。なるべく相手に近づいた状態でテイルブレードを眼前の敵に向けて伸ばす、それに反応して相手は辟邪を無視して肩に背負ったヴァルキュリアバスターソードを盾にしテイルブレードを防ぐ。一度ぶつかり合った後スラスターを一気にふかしヴァルキュリアバスターソードを両手に持った敵に敢えてそのまま突進する。大質量同士の物がぶつかり合うことで凄まじい音が周囲に鳴り響くが誰もそれを気にかける余裕はない。無論体は大剣に当たるがほぼゼロ距離でしかもテイルブレードで威力を殺してしまえばヴァルキュリアバスターソードもただ重い武器だ。そしてそのまま三日月たちのところまで一気に突っ込む。

 

 「こちらに近づいて来る機体あり!これは《グザファン》と《サウレ》です!!」

 

 「何だと!?それは不味いな…」

 

 乱入者の存在を察知するや否やレギンレイズ達は一旦合流し距離をとる。するとそこに木々をなぎ倒す音が聞こえたと思うと大剣とMSを体に張り付かせたままのMAが突っ込んできた。 

 

 『遅れてすまない三日月。』

 

 「ハッシュは?」

 

 『無事だ問題はない』

 

 『三日月ここは下がるぞ』 

 

 フォーメーションを崩したことでこちらが少し優位になったが、事態が楽観視できるわけではない。その場でにらみ合いが続く。

 




 こんなにお待たせして本当に申し訳ない。

 次の投稿…それは私にもわからない。

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