Overlord of Overdose ~黒の聖者・白の奴隷~   作:Me No

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守護者達の話し合い

 モモンガとみかかがアルベドの設定について談義している中、闘技場では階層守護者達が自分達の支配者であるモモンガとみかかについて談義していた。

 

「流石はモモンガ様だ。我ら守護者達にすらそのお力が効果を発揮するとは、まさしく超越者を名乗るに相応しい御方と言えるだろうね」

 スリーピース・スーツを着た悪魔、デミウルゴスが感嘆の息を漏らす。

 ここにいる各階層守護者とセバス、アルベドはモモンガやみかかと同レベルの存在だ。

 だからこそ、生半可な能力は通じない。

 しかし、モモンガはギルド武器を、みかかは課金アイテムを使用することで彼らの能力を上回る結果を見せた。

 当人達は自らの身を守るために必要なことをしただけの事だが、彼らの更なる尊敬と崇拝を得ることになったのは幸運だったと言えるだろう。

 

「さっきのモモンガ様はすっごく怖かったね。お姉ちゃん」

「うん。でも、みかか様にもびっくりしたよ! まさかこちらにいらしてたなんて思わなかったもん!」

「ホントだよねぇ、凄いよねえ」

 アウラの言葉にマーレもコクコクと頷く。

 階層守護者の中では最も優れた察知能力を持つアウラですら欺く隠匿の技。

 コキュートスも言っていたが、暗殺者として死を追求しその技を極めた御方だ。

 しかし、アウラは他の皆の顔を見て首を傾げた。

「あれ? なんか皆、反応が薄くない?」

「スマナイ、アウラ。私達ハ事前ニ守護者統括殿カラ聞イテイタ」

「えっ?!」

 アウラがアルベドに顔を向けると、アルベドは少しばかり罰が悪そうに顔を浮かべた。

「ごめんなさい、二人とも。貴方達と接触する機会がなかったから伝えることが出来なかったのよ」

「ん~~。そうなんだ。でも、聞いていたって、どういう事? みかか様が私とマーレを驚かしたかったって意味?」

「いいえ、そうではないわ」

「あ。あの、どういう事なのか、詳しく聞きたいです! そうすればもっとモモンガ様とみかか様のために働けるかもしれませんから!」

 マーレの言葉にアルベドは頷き、話しを続ける。

「勿論、二人にも説明するわ。今日は何か用があったのでしょうね。モモンガ様とみかか様はセバスとプレアデス達を連れて、玉座の間に来られたの。それも伝説の武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を持ってね。正直、私も驚いてしまったわ」

 守護者統括たるアルベドがギルド長であるモモンガを今日より前に見かけたのは一体どれほど昔のことか分からない。

 

「最近のモモンガ様はナザリックにいらっしゃっても、特定の場所しか訪れることはなかったから……」

 ギルドメンバー達が去り、一人残ったモモンガは一人でも問題ない狩場を巡っては、それで得たナザリックの維持費となる資金を宝物庫に放り込んだり、霊廟でかつての仲間を模したアヴァターラの作成をするだけの毎日を送っていた。

 アルベドがそんなモモンガの来訪を知っているのは、単にナザリックのシモベなら誰しも持っている力のお陰だ。

 ナザリックに所属するシモベ達はナザリックに所属するシモベ達の気配を感じ取れる力がある。

 特に創造主たる至高なる四十一人が放つ支配者の気配は強大で、たとえ遠くにいてもその存在を感じ取れるほどのものだ。

「そうだね。他の至高の御方々がお隠れになられて随分と時間が経った気がするよ」

 デミウルゴスの言葉に皆が沈黙した。

『りある』という世界から戻ってこない自分達の創造主に、それぞれ複雑な思いを抱いている。

 それ故に暗くなってしまった空気を払拭すべく、アウラは明るい話題を持ち出した。

「で、でもさぁ、今日は、いつもより多くの至高の皆様が訪れて下さったよね? 第九階層で留まられたまま、そのまま帰られるばかりだったけど……みかか様も戻ってこられたし、もしかしたら皆様も戻ってこられるのかもしれないよね!」

 アウラの言葉にマーレも色めき立つ。

「そ、そうだよね! ぶくぶく茶釜様も戻ってこられるかも、みかか様がいなくなられた時は凄く心配してたもん」

「たっち・みー様も気になされてました。あの方は至高の御方々に愛されていました……その可能性は高いのではないでしょうか?」

 セバスも心なしか嬉しそうだ。

「……そうね。そうかもしれないわね」

 そんな三人を見つめながら静かに笑うアルベド。

「………………」

 その笑みに潜む否定の感情を感じ取れたのはデミウルゴスだけだ。

 その根拠を問い質したいところだが脱線しかかった話しのレールを元に戻すことにする。

 

「それでアルベド――玉座の間にモモンガ様とみかか様が来られた後、どうしたんだい?」

「ありがとう、デミウルゴス。話しを戻すわ。玉座の間に来られたお二人は、そこで今起きている異変を感じ取られたのよ」

「さすがは至高なる四十一人。私達には何が起きているのか知覚すら出来ていないというのに鋭敏に察知されるとは頭が下がるばかりだ」

「まったくデミウルゴスの言うとおりだわ。お二人は異変を察して、ここに皆を召集させるように私に命じられた。後は簡単な推理よ、みかか様の気配は消えてしまった。けど、あの御方が異変を察知したにも関わらず、それを放置して『りある』とかいう何だか分からない世界に行くことなど在り得ないわ。だとすれば……」

「みかか様の支配者の気配は感じられなくなっているが、みかか様なりのサプライズがあるかもしれない。だから注意すること、と壮大にネタ晴らしをされたというわけさ」

 デミウルゴスが困ったものだと肩をすくめた。

「マッタクダ。守護者統括殿モ性格ガ悪イ」

 フシューと冷気を漏らしながらコキュートスも苦笑する。

「あら? それは心外だわ。私は守護者統括として皆が無様な姿を晒さないように注意しただけよ? 決して、私がサプライズされないことを妬んだわけではなくてよ?」

「そういう事にしておきましょうか。しかし、支配者の気配すら感じ取れなくなるのは少し考えものかもしれませんね。御忠告申し上げた方が……いや、その必要はありませんか。モモンガ様と同じくみかか様も類稀なる洞察力を持つ御方だ」

「愚問ね。自らの力を知らないような御方ではないわ。むしろ私達が失礼のないように注意すべきでしょう。ところで皆に聞きたいのだけど……GMコールという謎の言葉について何か知らないかしら? みかか様が仰っていたのだけど私には理解出来なかったの」

 

 アルベドが一人一人に目線で問いかけるが、皆は首を振るばかり。

 そして、ある一点で止まった。

 当然、皆の視線もそこに集まる。

 先程から一言も言葉を発さずに跪いたままプルプル震えるシャルティアを。

「ドウシタ、シャルティア」

 顔をあげたシャルティアは陶磁器のように白い肌は紅く染まり、息が僅かに乱れていた。

 その妖艶な魅力は常人であれば理性を奪い去り、獣欲に駆り立てられたかもしれない。

「モモンガ様の凄い気配にゾクゾクしてたところに……みかか様のあの笑顔で、達してしまいんした」

 

 ………………。

 

 その言葉に静まり返る。

 マーレだけが意味を理解できずに首を傾げているが、他の皆はシャルティアのこれでもかと詰め込まれた歪んだ性癖を知るだけに何と声をかければいいかお互いの顔を窺いあう。

 誰が声をかけるかを互いの顔を見ながら相談し、皆の視線はアウラの元に収束した。

(私が言うの?!)

 アウラは瞳で抗議するが、皆の視線は変わらない。

 一度、満点の星空を仰いでから、アウラは観念してシャルティアの方を向く。

 そして一言。

 

「……変態」

 

 アウラが額に手を当てながら、端的な感想を述べた。

 至高の御方達の素晴らしさを語り合ってる中、そんなことを考え、よりもよって――その、なんだ……まぁ、そういう状態になった同僚に軽蔑の眼差しを向けている。

 そんなアウラに対して、むしろ誇らしい顔を浮かべながらシャルティアはゆらりと立ち上がる。

「ハッ。これだからがきんちょは嫌でありんすねぇ。主も大人になれば分かりんすよ」

「はぁ? その偽乳で大人を語られてもねぇ」

 アウラは両手を広げて肩をすくめる。

「ああん? 今、何か戯言が聞こえた気がしんすねぇ?」

 シャルティアの右手に黒い靄のようなものが現れる。

「戯言ぉ? 真実の間違いじゃないの?」

 アウラが腰に下げた鞭を手に取る。

「二人トモ、ソコマデニシテオケ」

 コキュートスが手にしたハルバートが地面を叩いた。

 彼の内心を現すように周りの地面も音を立てて凍りつき始めている。

「だってさぁ……」

「アウラとシャルティア――両者の意見は理解できるわ。でも、今は争っている場合ではないでしょう?」

 アルベドの声も少しばかり冷たい。

 その方向性はぶっ飛んでいるがシャルティアは自らの主人を賛辞しているのだ。

 それを侮蔑するのは不敬だろう。

 対するシャルティアも場の空気が読めないわけではない。

 二人はお互いに数秒の間見つめあった後、まずシャルティアが頭を下げた。

「そうでありんした。反省するわ」

「私もごめ……。ん? シャルティアの意見も理解できる? どこら辺が?」

 どういう意味だと疑問に思うアウラにアルベドは続ける。

「もちろん、全てよ」

 見れば、翼がパタパタと忙しなく動いている。

「……全て?」

 アルベドの言葉を慎重に吟味し、その意味をようやく理解する。

(つまりアルベドもシャルティアと同類ってこと?)

 うわぁ、と正直にドン引きするアウラの肩をデミウルゴスが叩いた。

「アウラ、そこら辺は二人の趣味嗜好の話だ。追求すべき問題ではないと思うよ? ただ、シャルティアの話で思い出したのだが、疑問に思っていたことが一つある」

 正直、この話は早く切り上げたいのだがデミウルゴスが話題を続けるなら付き合うべきだろう。

 そう思い、アウラは話を続けた。

「疑問って、何なの?」

「シャルティアはみかか様の笑顔にある種の癒しを得たようだが、そこに何か疑問に感じることはないのかい?」

「ドウイウ意味ダ?」

 至高なる御方に笑顔を向けられるなどある意味何よりの褒賞と言えることだ。

 そこに疑問を感じる余地などないように思えるが……。

「あ、あの……今日のみかか様は、あまり笑われないなって思いました」

 マーレの言葉にデミウルゴスとアルベドを除いた者達が気付かされ、そういえば……と考え込む。

「みかか様はどんな時でも笑顔を絶やされたことはないわ。異常事態を感じられた時から、大きく変わられてしまった。勿論今の凛々しいお顔も素敵ですけど、出来ればあの方には常に笑顔でいて頂きたいものだわ。そうでしょう?」

 皆が一様に頷く。

 至高の御方の役に立つこと。

 それこそが自分達の存在意義である。

「まさしくその通りだ。それではアルベド。そろそろ命令をくれないかね? 私達も早急に動くべきだろう?」

「ええ、そうね。では、これからの計画を立案します」

 アルベドも先程までの談笑を交えていた時とは違い、守護者統括としての顔に戻る。

 そんな彼女に皆が頭をたれ、敬意を示した。

 

 自分達の全ては創造主にして支配者である至高なる四十一人の為に。

 そして、至高の花園にて育てられた一輪の華の元に、かつての満開の笑顔を取り戻すべく彼らは行動を開始した。

 

 




シャルティア「濡りんせんほうが頭がおかしいわ」
アルベド「そうよそうよ」
アウラ「えっーー」
 原作よりビッチ成分が倍になっておりますので巻き込まれるアウラの心労も倍になります。


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