でも仕事終わりだから、クオリティには期待しないでね。
俺は今、戦火の広がる荒野にいる。
戦うことのできない俺は、身を賭して戦う仲間達の見守ることしかできない事に歯がゆい気持ちになる。
いつも思う感情なのだが、今日は少しだけ違う気持ちになる。
理由は目の前の光景にある。
4メートルはあろうかと程に巨大なノッブ。
ナイフ片手に立ち向かう白髪の幼女。
謎の飛行物体を乗りこなすノッブ。
その姿を見てなんでさ! と叫ぶ褐色のコック。
二つの刀を使いこなす新選組衣装のノッブ。
刀に切り裂かれ、既に事切れた青タイツ。
―――何なんだこの絵面―――
今までにもあったことだが、稀にサーヴァント達のワガママに巻き込まれた結果、闘いとなることは少なくない。
面倒ではあるが、火種や素材が手に入るので参加はするのが………。
「やっぱり今回は参加しなくてもよかったかな」
「ではマイルームに戻りましょう。先輩」
「しかしマスター、種火等は足りているのか? 茶々の分が減っているだろう」
エミヤが言う通り種火を多少使ったのだが、最近は新しいサーヴァントが呼べていないので余っているのだ。
素材もある程度纏まった数余っているので、無理して戦ってもらう必要もないのだ。
「しかし、QPが少なくなっていなかったか?」
「あ! そういえばそうだった!」
じゃあ少し宝物庫にいこうかな。
またメンバーを呼んでこないと……
「では私もご一緒します」
マシュが手を上げて意思表示をする。
此方としてもやる気があるのは嬉しいが、宝物庫に行くメンバーは基本的に固定なのだ。
なので、今回はマシュにお留守番をしてもらうことになる。
「そう…ですか…」
マシュの悲しそうな声に心が痛む。しかし、最近マシュには頼ってばかりなので、たまには休んでもらいたいのだ。
マシュを蔑ろにしていたら、Dr.ロマンに怒られてしまう。
「そう…ですね。ドクターに怒られたくはないですね」
目に少しだけ涙が浮かんだいるが、その顔は笑顔になっていた。
これで安心して宝物庫に行くことが出来る。
「では行ってらっしゃい。マスター」
うん、行ってきます。
あれ?何でエミヤは難しい顔をしてるの?
「いや、マスターは気にしなくていい」
「あっ、うん」
何で憐れみをふくんだ目でこっちを見てるの?
「先輩が私の事を心配して……」
「あっ、マシュー! こんなところで何してるの?」
「ふふ……ふふふ」
「あっ、これは聞いてないね……」
「何故私を連れていかなかったのかしら?」
「い、いや…メンバーは基本的に固定だから…」
「…何故私を連れていかなかったのかしら?」
「いや、だから」
「何故私を連れていかなかったのかしら?」
「話を聞いてくれないかな!!」
正座をする俺と対面する形でソファーに座る彼女は、第一特異点でお世話になったサーヴァント。マリー・アントワネット其の人である。
「宝物庫なら、私が行っても問題はないでしょう?」
「まあ、そうなんだけど…」
「では、私を連れていかなかった理由を教えてくださる?」
「言ったら許してくれる?」
「ええ、もちろん」
そう言って、花のような笑顔を見せるマリー。
その笑顔に少しだけ安心する。
俺が思うに、マリーは一人でいるのが嫌いなようだ。
カルデアにいるときも近くに誰かがいるのだが、常に一緒ではない。
そのときのマリーは、とても儚げに見えたのだ。
しかし、クエストに行けば、近くに必ず仲間がいる。その時間が、マリーにとってかけがえのないもののようだ。
その時間を奪われたことが、マリーにとっては腹立たしいのだろう。
「実は、幕府ポイントを集めるときに何度も戦ってくれたから、少し休ませようかと……」
「………」
その答えに、マリーが呆けた顔をする。
そんなに意外な答えだったのだろうか?
「ふふふ、そんなことを気にしていたのね。マスターさんは」
「笑うことないじゃないか」
「私達サーヴァントはっ、使われるっ、存在なのよ? それなのにっ、休ませようなんて」
必死に堪えようとしているのだろうが、時々笑っているのがバレバレである。
俺としては、どうしてもサーヴァントを道具として使おうとは思えないのだ。
「…優しいのね」
「そういうつもりはないけどね」
「謙遜する必要は無いわ。でもね、私はもっとマスターさんの役に立ちたいの」
………本人がそういうなら此方も頼らせてもらおう。
しかし、休むことも大切なことだ。
次からはマリーに確認を取ってから休ませれば問題はないだろうか
「じゃあ、もう少し休んだら幕府ポイント集めに付き合ってくれる?」
「ええ、もちろんいいわよ」
「じゃあ、また呼びに来るよ 」
「ええ、待っているわ。大好きなマスターさん」
「俺も大好きだよ」
そう伝え、部屋を後にする。
今日も色々なことがあったが、みんな自由に今を楽しんでいるようだ。
たとえ生前とは違う世界でも、サーヴァント達は各々が楽しめているなら問題ないだろう。
今日も今日とて、カルデアは平和です。
「どうせ、マスターさんは気づいていないのでしょうね。でも、いつか必ず手に入れてみせますわ」
「まったく、いい加減にしてもらいたいものだ」
溜め息混じりに吐き出した声は、誰にも聞こえることなく消えていく。
「気づかないマスターも問題だが、流石に暴走しすぎだろう」
日々厨房で精を出すエミヤは、今日も今日とて疲弊したからだを引き摺りながら歩く。
毎日の食事だけでなく、暴走するサーヴァント達からマスターを守るのは骨が折れるのだ。
(クー・フーリンは死に、マシュはあちら側に堕ちた。私がしっかりせねばな)
そう考えるエミヤの進む先で、
「マスターは……私のマスターです」
「ご主人様はキャットの物だワン。全身毒女の入る隙などないのである」
「黙れ……犬っころ」
「………なんでさ……」
今日も今日とて、エミヤは働き続ける。
各がマスターの安心のために。
(まったく、今日もカルデアは