「全員、伏せろぉーーーっ!!」
ワイドボーンの声が響くと同時に轟音が響き、パトロクロスのブリッジが巨大な衝撃に揺さぶられた!!
☆☆☆
もし貴方が神の視点を持っていたのなら、このような情景が見えただろう。
第2艦隊旗艦を屠るべく直上方向から逆落としで
乱戦の中でその存在を最初に気づいたのは、ワイドボーンでもラップでもなく同盟軍巡航艦”ケープタウン”の艦長、ジャンジャック・ヴァノン少佐だった。
「死ぬ数は少ないほうがいいな」
ケープタウンが位置していたのはパトロクロスの後方斜め上方。
旗艦を失い混乱する艦隊の死者数と巡航艦1隻の死者数……考えるまでもなかった。
「機関全速! 武装分のエネルギーリソースを全てフィールドに回せ!」
ケープタウンが射線に突っ込んだのは、4艇の雷撃艇が合計96門のレールガンを発砲した直後だった。
当たり所にもよるが、至近距離なら戦艦すら沈める雷撃艇の一斉射……巡航艦などひとたまりもなかった。
船体に満遍なく被弾したケープタウンは一撃で轟沈し、乗員の生存は絶望的だった。
だが、彼らはその役割を果たした。
そう、パトロクロスへの直撃を防ぐことに成功したのだ。
だが唯一の予想外は、爆砕したケープタウンの残骸がパトロクロスにも命中し、致命的ではないもののダメージを与えていたことだった……
☆☆☆
「クソ……どうなった……?」
自分でも緩慢と思える動作でワイドボーンは体を起こす。
床に伏せていたせいもあり骨折などはしてないようだったが、顔をしかめる程度に全身がズキズキ痛む。
「ラップ、生きてるか!? 生きてたら返事をしろ! 死んでても返事しろ!」
頭を振りながらワイドボーンは周囲を見回す。端的に言えば地獄を髣髴させる風景だった。
あちこちで同僚が床に投げ出される、あるいは叩きつけられるかして呻き声を上げていた。
壁に亀裂が入っていたり火災が起きていたりはしていないが、咽るような濃厚な血の匂いがやけに鼻腔を刺激した。
「生きてるよ……あんまり大声を出すな。頭に響く」
声は思ったより近くから聞こえた。振り向く先にいた珍しく顔をしかめる親友の姿にワイドボーンは安堵する。
「それと無茶を言うな。死んでたら返事なんてしたくてもできないさ」
「フフン。俺は一度見たいと思ってたんだ。ゴーストというものを」
「なら自分でなってみろ……って、パエッタ中将はどこだ?」
二人は同時に見回し、
「んがっ!?」
「うっ……」
顔色を変えて同時に叫ぶ。
「「衛生兵っ!!」」
二人の視線の先に居たのは、衝撃で投げ出され床に打ち付けられた血に濡れる提督の姿だった……
☆☆☆
衝撃でアドミラルシートから放り出されたパエッタは、ことのほか重症だった。
応急処置では事足りず、麻酔をかけられ医務室へ緊急搬送されるほどに。
そしてパエッタは離脱する自分の最後の責務として、怪我による出血と麻酔で薄れ行く意識の中で艦隊の命運をワイドボーンとラップに託した。
後に歴史家は語る。
アスターテ会戦と呼ばれることになるこの戦いにおいて、パエッタが残した最大の功績は二人への指揮権の移譲だったと。
「俺がパエッタ中将よりこの艦隊を預かった臨時提督、マルコム・ワイドボーン准将である!!」
艦隊への全域通信の一声は、なぜかどこかの男塾の塾長を思わせるものだった。
「提督不在となり不安になる者もいるだろう。だが、心配は無用だ!!」
ワイドボーンは自分の胸を打ち、
「なぜならこれより第2艦隊の指揮は、この俺! ”十年に一度の秀才”と謳われたマルコム・ワイドボーン自らが執るからだ!!」
とドヤ顔を決めた。
ただしラップは「フラグにならなきゃいいが……」とつぶやいたという。
「それだけではないぞ! 艦隊参謀ジャン・ロベール・ラップ
言ってることは無茶苦茶かもしれないが、だが確実に効果はあった。
巨大な敵を前に折れかけた士気が、確かに修復されつつあったのだから。
「全艦に告ぐ! 艦隊機動同調プログラム”C-5”を起動させろ! な~に、なんのことはない」
ワイドボーンは漢臭く笑い、
「帝国のポテト頭どもに艦隊戦のやり方を教育してやろうではないか!!」
☆☆☆
決戦、いや生き残りのために俄かに活気立つパトロクロスのブリッジにて……
”ぽん”
ふと肩に置かれた手にワイドボーンが振り返ると、ラップが瞳のハイライトを消していた。
ラップは妙に空ろな声で、
「俺、生きて帰れたらジェシカと結婚するんだ……」
「やーめーろーっ!!」
めるかっつの”かいしんのいちげき”でわいどぼーんとらっぷがかくせいした!
わいどぼーん→提督Lv↑
らっぷ→参謀Lv↑
わいどぼーんは”鼓舞”をおぼえた!
らっぷは”昏い瞳”をおぼえた!
らっぷのこうぶつに”ぱいんさらだ”がついかされた!
追記
ママ、僕にもオリキャラ(即死)が書けたよ……