相変わらず遅筆で申し訳ありませんが、楽しんで頂けたら幸いです。
今更ですが、このお話の時間系列は一方通行編とエンゼルフォール編の間だったりします。
拝見皆様、お久しぶりです。上条です。
この作品では影が薄すぎてもう出てこないのではないかと危ぶまれております。
不幸です…。
えー、私は何をしているかと申しますと、今日こそは不幸と遭遇せず過ごせるかと思っていた矢先、あれよあれよと災難に見舞われ自転車が大破して謎の仮面の男が自転車を弁償してくれると言ってくれて持って行ったのは良いものの、考えてみれば相手は自分の事を知らない訳で慌てて追いかけたましたが完全に見失い、私も道を見失い絶賛迷子な訳です。
何て言うか…。
「不幸だ…。道を聞こうにも人がいないし」
当麻は、トボトボと夜道を歩く。丁度、曲り角に差し掛かった時だった。全力疾走で自分に向かって来る人影。そして、それはそのまま当麻へドーーンッ!
お互いにぶつかる形でその場に倒れ込む。
「グフッ!?…不幸だ」と尻餅をつきながら前を見ると…。
「オグッ!?何で曲り角でぶつかったのが男何だよ。普通、こういうのって女の娘って相場が決まっていてそこからムフフなフラグが始まるんでしょうよ…。だいたいさ…」
前のめりで倒れたままトリップしてブツブツと何やら文句を呟いている青年。一目見て当麻は、関わり合ってはいけない奴だと悟る。
当麻は知る由もないが、倒れている青年は変た…ゴホンッ、絢香だった。
「って、こんな事してる場合じゃなかった。スマンな、少年。怪我はないか?」
ハッと自分の世界から戻って慌てて絢香は起き上がる。
「あ、あぁ…」と当麻も立ち上がる。
ようやく会えた人だが、挙動のおかしいこの人物に道を尋ねて良いものかと尻込みしてしまう。しかし、当麻よりも早く絢香が口を開いた。
「出会ったばかりで面食らうと思うが、ここから早く逃げた方が良い」
「はぁ?」
「ちょいと訳ありでね。っと、早くしないと
「!?」
絢香がそう言って走りだそうとした瞬間、当麻は絢香の進行方向に飛び出してそれを阻害する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!その風紀委員達ってのは、茶髪で短髪の女の子とツインテールの女の子じゃないか!?」
「??そうだが…知り合いか?」
「やっぱり。事情を教えてくれないか?」
「……時間がない。詳しい話は移動しながらだ」
「あぁ!」
最初、この少年に話して良いものかと考えたが、気迫の込もった目を見て絢香は考えを改めた。風紀委員の知り合いならそれなりの実力者だろうし、それに佇まいから分かる。この少年は相当の修羅場をくぐり抜けて来た凄味がある事を。ならばその彼の心意気を無下にするのは不粋。応えるのが大人の、いや、漢の器ってものだ。
事情を掻い摘んで絢香は当麻に説明し、二人は並走する形で先を急ぐ。ちなみに自分が下着ドロだとはややこしくなりそうなので話していない。
「二人は大丈夫なのかよ?」と事情を聞いた当麻は驚きながら尋ねた。
「今の所は、な。…あぁ、チクショウ!駄目か!?」
「だ、駄目!?ヤバイのか!?」
不吉な言動に当麻は狼狽する。
「ん?あ、いや、この駄目はこっちの事で。さっきから某国の衛星にハッキング掛けてレーザー狙撃を試みているんだが、着弾しないんだ」
「……なんつー物騒な事を」
「それに今気付いたけど周りに人っ子一人いやしねぇ。まるで空間だけを切り取った、そんな感じだ」
「空間を?……。まさか」
そのワードに当麻はピンとくる。似た様な事を以前から体験している。
「もしかして、人払いのルーンか?」
「へ?人柱のローン?」
「違ぇーよ!ルーン!人払いのルーンだ。あぁ、そうだな…つまりそれを使うと人に認識されなかったり、隔絶した世界を擬似的に創り出す事が出来るんだ」
「成る程。だから外部からの干渉が阻害されてんのか」
「おそらくな。でも…」と当麻はそこで言葉を濁した。
人払いのルーンは、元々科学的に発生させる物ではなく、寧ろそれとは真逆の魔術的な要素なのである。
魔術という言葉が出てきた所で少しだけ世の中の隠れた顔について話そう。
世界は科学サイドと魔術サイドに分ける事が出来る。科学サイドとは言わずもがな、文字通り科学技術を取り扱う者や組織、広義としては現代社会その物を指す。
対して魔術サイドとは、平く言えば宗教諸組織が秘密裏に運営している総称だ。宗教的観点や思想、行動、オカルトめいた伝承等は全て魔術サイドの管轄になる。
また、科学サイドの技術の結晶、恩恵とも呼べる
そもそも、基本、魔術自体が世間一般に秘匿されているため、科学サイドからは存在が認知されていない訳で例え存在を知っていたとしてもかなりの少数だったりする。
そして、ここからが話の肝になるのだが、両サイドは相入れず、対立関係で互いの技術情報は独占しており、暗黙の了解として相互不可侵を築いているのだ。
だから、尚の事今回の襲撃は不可解な点が見える。相互不可侵であるにも関わらず互いの技術が使われている点だ。
ちなみに、どちらにも属していないグループを一般サイドと呼称するが、それは学園都市外の人間、絢香みたいな存在を指す。絢香は別として普通の人間は科学技術の恩恵を享受する以外、または宗教へ入信して関与する以外、両サイドの情勢を知り得ない。要は、どちらのサイドからも影響を受けつつどちらのサイドにも深くは傾倒していない「その他」の部分だ。
その為、本来なら容疑が浮上する事さえないのだが、当麻にはもしかしたらという疑惑があった。
上条当麻は、夏のある日とある出来事を経て魔術サイドと科学サイドを渡り歩く稀有な存在、いや、異質な存在となった。そんな当麻だからこそ気付けた違和感。
それは絢香が目の前で義眼を使い情報収集やハッキングを掛けている所から着想したものだ。
絢香の様に高次元で情報を統括する者が他にいない訳ではない。そう言った者が少しずつ、少しずつ両サイドの技術を会得していったら?
両サイドの様に拘りや括りがなく、且奔放に理に触れる事なく着手する事が出来る。
だが、腑に落ちないのは魔術を扱う者は能力を、能力を扱う者は魔術を一緒に行使する事は出来ないと言う前提を覆している事だ。
しかし、事実は事実と認識するしかない。そう思い、当麻は絢香にその事を述べた。勿論、魔術サイドについて絢香は知る由もないので当惑こそしたもののすぐにそれを受け入れ、絢香は直ぐに右目をデータベースへアクセスする。今はもう要の介入はないはずだ。
「……それなら話は全部繋がる。それが出来る人物で…『武器商人』…。……
要の告げた言葉を用いり検索を掛けると一件該当が出た。そして、人物、背景、所属組織などありとあらゆるデータが右目に流れ込んで来る。
「少年、お手柄だ!………あー後、名前は?俺は高峰。高峰絢香」
「俺は、上条当麻」
「そうか。……普段俺は、ヤローには名乗らないしこんな事も言わないが、一度信頼した奴は別だ。次も一丁頼むぜ、
絢香は当麻の前に拳を作って突き出す。
「あぁ、任せろ!
当麻もまた拳を作って絢香の拳に合わせる。
互いにニッと笑みを浮かべて坂道を駆け上がった。
美琴の目の前には、確実に勝利を確信しせせら笑うイーヴィンが懐から拳銃を取り出して自分達に狙いを付けている。
「さて、見たところ降参するという選択肢は…なさそうですね?」
「当然でしょう。何でアンタ何かに白旗を振るのよ。これ位丁度良いハンデよ」
美琴は、窮地に立たされているのにも関わらず笑みを浮かべた。余裕などまるでない。能力も使えず立っているだけで精一杯。頭のネジがぶっ飛んでしまったのだと自分でも思う。
それでも笑みが零れたのは、きっとそう……アイツの所為だ。
アイツは、いつもこんな気持ちだったのだろうか?
能力もないのに誰かを守る為に自分の身など構わずに己が右拳を振るう。それが強大な相手でも。
私は、それを間近で見た。アイツの覚悟を、信念を。アイツの背中から見て感じた。だから戦える。だからこそ…。
「みっともない姿を見せる訳にはいかないのよね」
美琴は小さく呟いた。
身体が言う事を聞かない。だからどうしたと歯を食いしばった。
自分の拳を力強く握りしめる。能力は封じられているが、完全にではない。なけなしの電力を絞り出せば一発分は
自分はどうなっても良い。だが、黒子だけでも…。
「黒子、良い?私が時間を稼ぐからアンタは逃げなさい」
「…お姉様、それを私が素直に聞くとでも?」
黒子が事情を察し、美琴に対しては珍しく怒気を含めた口調だ。
「……」
美琴もそれを理解して押し黙る。
「私はね、お姉様…。お姉様が地獄の底まで付き合ってと言われれば何処までもお付き合いする所存何ですのよ。ですから、不肖この白井黒子最期までお供しますわ!」
自分を身損なわないで欲しい。見くびらないで欲しい。自分は何時、如何なる時も御坂美琴の右腕なのだ。それが自身の誇りであり、自身足らしめる存在意義なのだから。
黒子はそれを言葉に込める。それだけで美琴には伝わるだろう。
「全くアンタは…。どうなっても知らないわよ!」
悪態をつく美琴の顔は少しうれしそうだった。
こうなったら
…あぁ、何だ。そう言う事か…。
「死ぬ順番は決まりましたか?それとも、辞世の句でも浮かびましたか?」
イーヴィンのにやけた顔。この顔を引きつらせる事が出来たらさぞ爽快だろう。
「ねぇ、アンタ…」
「はい?」
「一つ分かった事があるのよ。聞きたい?」
「何でしょう?」
「私も大バカだったって事!っ黒子!」
美琴の号令と伴に黒子が死角から飛び出す。能力は使えないが、風紀委員である彼女は高いレベルでの戦闘訓練は受けている。一対一の白兵戦でまず負ける筈がない。
咄嗟の出来事でイーヴィンは対処出来ずに手にしていた拳銃を黒子に弾かれてしまう。
「なっ!?」
そこから低空タックルによりイーヴィンの足を掬い、バランスを崩してそのまま背後を取ると羽交い締めにする。そこへ、すかさず美琴が…。
「歯ぁ、喰いしばれやゴラァッ!!」
腰を深く落とし体重が完璧に乗った渾身の上段右回し蹴りがイーヴィンの顔面を吹き飛ばす。
完全に決まった。首の骨が折れたのではないかと錯覚するぐらいの強烈な一撃。
食らったイーヴィンはぐったりとして今度こそ意識を完全に失った。
「どんな…もんよ!」
イーヴィンが倒れる同時に美琴もまた膝を付く。電池切れを起こして尚且つ根性だけで戦ったのだ。全身の力が抜けてもう立てない。だが、気分は良かった。
「お姉様!?」
慌てて黒子が美琴の元へ駆け寄る。
「大、丈夫よ。力が入らないだけ。取り敢えず…少ししたら
「…そうですわね。私も少し……」
瞬間、黒子はとても受け入れ難い現実を目の当たりにした。
「お、お姉、様……?」
「………え?」
驚く位真っ白な白刃が背後から美琴の心臓を貫いていた。
ゆっくりとスローモーションの様に美琴が倒れていく。
「お姉様…?」
地面に伏せた美琴はピクリとも動かない。
見た目、血は全然出ていない。それなのに美琴の顔は既に血の気を失い息をしていないのが分かる。
「お姉…さ」
倒れた美琴に触れた黒子は、そこで全てを理解した。理解はしたくない。だが、事実は変わらないのだ。
死んでいる…。
身体は冷たく先程まで談笑を交わしていた温かさはもうない。
混乱する頭で美琴の後ろに視線を向けるとそこには五人の男女がいた。イーヴィンの仲間と考えるのが妥当だった。そのうちの一人の男が日本刀らしき物を握っている事から美琴を刺した犯人だと伺える。
雰囲気からイーヴィンとは違い、完全に戦闘に特化されたプロフェッショナルだと把握するが、今の黒子にはそんな事関係なかった。
「お前がァァァァァァァ‼」
獣の雄叫びとも思える大咆哮。
ありったけの力を込めてその男へと突っ込む。
勝負は目に見えていた。能力を封じられていた自分。対して戦闘のプロ。
そこにあるのは、一片の慈悲もなく、ただただ冷徹な一振り。
男の白刃が黒子の喉を突き刺した。
「お、ねい……申し、わ………せん」
親愛する美琴の仇に一矢報いる事が出来ずに黒子は涙を流しながらその命を散らしたのだった。
倒れたイーヴィンを囲む五人。一人は、羽織姿の美琴と黒子を殺めた日本刀を持つ精悍な顔付の男。一人は、ロン毛の如何にも軽薄そうな無精髭の男。一人は、無表情で大柄のスキンヘッドの男。一人は、妖艶な衣装に身を包む女性。一人は、ターバンを巻いたインド風の男。
イーヴィンは、用意周到な男だ。自分に何か起こり、任務が滞った場合自分に忠実な五人の部下が転送されて来る手筈を整えていた。
この五人は、他の者達とは違う。イーヴィン同様にそれぞれ思惑があり、イーヴィンを信奉する狂信者だ。
元々、自分は戦闘屋ではない。一科学者、一経営者なのだ。畑が違う。最終的に目的が達成出来れば良い。彼らはその為の保険。
武器商人である彼は、裏事情に精通している。彼の目的は如何に効率良く敵を殺す武器を創り上げるか、利益を上げ富を上げるかしか興味がなかった。その中で目をつけたのがこの
そこでイーヴィンはある考えを思いつく。実戦に身をやつす彼ら。それは、ありとあらゆる実戦データが手に入る。しかも、資金は豊富。自分は今、偶然
イーヴィンにとっては、人がどれだけ死のうが関係ない。自分にとって益か不利益かのどちらかだけ。組織が何を成そうと興味はない。こうして歪んだ思考の末にイーヴィンは、
そしてまたある時、彼はとある鉱物の存在を知る。
希少鉱物『グロウ』。この鉱物は、外部からの熱エネルギーを溜め込み更に内部で倍増させる外部へ放出する性質を持つ。
イーヴィンは、これを兵器利用出来ないかと考える。言わばグロウはエネルギー増幅器。例えばこれに炎を与えるとそれを吸収して内部で更に強い炎を産み出しそれを放つ。
想像して欲しい。もし、こんな物を用いて兵器を創り出されたとしたら…。能力を持たない者でも安易に破壊能力を手にし、能力を持つ者ならより強力な力を手にする事となる。
「まずは、御大将の治療を。それからすぐに目標物の確保だ」
五人組の一人、日本刀を手にした羽織姿の男が紅一点である妖艶な衣装の女性に指示する。
「はぁ〜い」
女は甘ったるい声で頷くとイーヴィンに近寄り、殴られ腫れた箇所に手を触れるとみるみるうちに腫れが引いて行く。
「それにしてもラクショーッスね。つうか、レベル5ってのも大した事なかったし」
「それは能力を封じられていたからだ。正面から、しかも万全な大勢ならこんな簡単にはいかんよ」
軽口を叩くロン毛の男にターバンの男が嗜める。
「……」
スキンヘッドの男は一言も漏らさず辺りを警戒している。
「あぁ〜あ、でも、勿体無いッスね。結構上玉の女ッスよ」
ロン毛男は、倒れている美琴と黒子に近づきしゃがみ込むとその顔を覗き込んで頬をペシペシと叩いた。
その刹那…。
「テメェら、そこから離れやがれェ!」
怒声と共に五人へと手裏剣、苦無、鉄矢、ナイフが雨あられと降り注ぐ。
「なっ!?」
ロン毛の男がそれに気付き慌てて地面に手を当てると五人と未だ気絶しているイーヴィンの身体が地面に溶け込む様にして消えて行く。
武器の数々は地面に突き刺さるが美琴と黒子には一切合切傷付ける事なく降り注ぐ。
そして、上空から当麻を担いだ絢香が美琴と黒子の側に舞い降りて来た。
着地と同時に当麻が倒れている二人の元へ走り出す。二人の様子を見て愕然と地面に伏せる当麻。
今にも泣き出しそうなのを必死に堪えている。それを見て絢香も悲壮感に苛まれた。掛ける言葉が見つからない。
「随分と舐めた事しやがるじゃねぇか!?このどサンピン共がっ!?」
当麻達から約10m先に消えたイーヴィン達が現れる。ロン毛の男は激昂している様で今にも襲ってきそうだ。それを羽織姿の男が日本刀で制して前に出て来る。
「主らそこのレールガンの仲間か?」
「……そうだ。お前は…
「…!?驚いた。まさか身許が割れているとは」
既に相手の素性は右目を使い先刻承知だ。ロン毛は、
「やったのはテメェかって聞いてんだよっ!」
今迄のふざけた雰囲気とは一変してまるで別人の様な殺伐とした雰囲気の絢香。
「如何にも。私の得た能力は、この真剣。
「……そうかよ。じゃあ、殺してやるからあの世で二人に詫びて貰おうか?」
「殺れるものなら、な」
構えを取る両雄。すぐにでも切り結び殺し合いが始まりそうだ。だが、当麻は違った。
能力で?…じゃあ、もしかしたら身体は仮死状態なのか?それなら…。頼む!そうであってくれ!
勘兵衛の告げた言葉に当麻は、『救える』という確信に近い可能性を閃く。
彼の右手。この世の、或いはあの世で有ろうと存在する全ての異能を打ち消す力を秘めた腕。
「これが覆せない絶対の死だと言うなら、まずはその幻想をぶち殺す!」
右手を刺されたとされる黒子の首筋に当てる。瞬間、何かが砕ける様な音と共に黒子が息を吹き返す。
「ゲホッゲホッ!?………何が起こったんですの?…あら?貴方は何時ぞやの殿方?」
まだ状況を把握出来ていないのか黒子はキョトンとしている。
「効いた!じゃあ、御坂にも!」
続けて当麻は美琴の刺された箇所へ手を伸ばす。
「ゲホッ!?何が起こっ……!?」
同様に息を吹き返す美琴。しかし、次の瞬間、顔を赤面させて驚きと怒りが入り混じった複雑な表情を見せると同時にグーパンで当麻をぶん殴った。殴られた当人は困惑する。感謝されるであろう人物からのまさかの攻撃。
「グハッ!?いきなり何するんだよビリビリ!?」
「何するんだじゃないわよ!わ、私の胸を触るなんて!」
「あっ!?……いや、これには理由があってだな」
「エッチ、スケベ、変態、もう信じられない!」
命の恩人である当麻だが、救われた当人には自覚はなく、次々に罵られてしまう。すると、足元に鉄矢が投げ刺さる。
「苦しんで死ぬのと一瞬で死ぬの…。どちらがお好みですの?私としては、前者をオススメしますわ…」
黒子に至っては、目が殺人鬼になっている。と言うか殺る気だ。
「大丈夫ですの。急所はワザと外して痛みだけを鋭敏にしますわ」
「いや、ちょっとまて白井!それは全然大丈夫じゃないし、これは誤解だ!話を聞いてくれ!」
戦いが始まるかと言う矢先、今迄殺伐としていた空気が当麻の行動により霧散してしまう。
絢香は、その光景を見て安堵の溜め息を漏らすと怒りに満ちた形相から一転、いつもの飄々とした柔和な顔付を取り戻す。
敵対する五人は、信じられないと言った顔付を見せて愕然としている。
「バカ、な…。私は確かに殺した筈だ。殺し切れなかったとでも?」
「その様だな。で、どうする?正直俺は、あの娘達が助かったんなら戦う意思はない。だが、またあの娘達に、寮に危害を加えると言うなら先程同様容赦しない」
「知れた事。ならば、もう一度殺して目的を達成するまで!」
「交渉決裂だね、どうも…」
絢香はくるっと踵を返すと後ろを向く。
「三分くれ。相手はそれからしてやる」
「良いだろう。今生の別を告げる時間ぐらいはくれてやろう」
「ほざけ。クソヤロー」と中指を立て、それから当麻達の元へ歩いていった。
「なぁ、どうやって生き返したんだ?もしかして神様の使いか?」
冗談めかして絢香が当麻の元へ戻るとそこで美琴と黒子は絢香がいる事に気付く。
「あ!?アンタはさっきの下着ドロ」と開口する美琴。
「どうも。無事で何よりだよ」と言葉も漫ろにまだ事態を把握し切れていない二人に掻い摘んで説明をする。美琴は、敵に遅れを取った事が悔しい様で身悶えしているが、黒子は美琴が無事だった事に身悶えているようだ。流石変態。ぶれない。
まぁ、前置はそれぐらいで本題はこれから。
何かあれば駆け付けられると高を括り、挙句美琴と黒子を危険に晒した。完全に自分の判断ミスだ。それが許せない。当麻がいなければどうなっていたか。
詰まる所、自分は何もしていない。独りよがりも良いところだ。
だから、これ以上は皆を危険に合わせられない。
責めてもの罪滅ぼしに、と…。
「実はちょいとこれから後ろの五月蝿い小蝿を倒さないといけなくなったんで三人は少し離れていてくれ」
キッパリと絢香は告げた。
「はぁ?何言ってんのよ?なら私達も…」
「俺も手伝う。御坂と白井は休んでいてくれ」
言いかけている美琴の言葉を遮り、当麻が前に出た。
「……正直、アイツらは強い。当麻の気持ちは分かるが…」
「アイツらは俺の仲間を傷付けた!」
当麻は叫んだ。
「それにアンタが、全部背負う必要はないだろ。アンタがいたから二人を助けられた。駆け付けられた。間に合ったんだ!だから、自分だけに責任があるみたいに言うなよ。俺にも背負う権利はある筈だ」
あぁ、全く…。真っ直ぐだ。どうしようもなく真っ直ぐだ。こんな見得を切られてしまったら返す言葉も浮かばねぇよ。
「……あー、何か腹が痛いな。一人で五人は無理かもな…。やっぱ、手伝ってくれ当麻」
棒読みで口にすると、拳を当麻の前へ突き出す。
「ったく、素直に言えよ」と当麻も拳を作りそれに合わせる。
これ以上は、言葉はいらない。軽く視線を合わせただけで二人は五人の前に立った。
「辞世の句の準備は出来たようだな?」
勘兵衛が剣を構えて言い放つ。
「あぁ、とびっきりのがな。当麻、言ってやれ!」
「掛かって来いよ、クソッタレ!」
次回はもう少し早く更新出来るよう頑張ります。
今回は結構焦って最後がグダッてしまった様な気がします。
精進せねば!