ハイスクールAMEN 作:雑魚グール
生き残ってしまったので携帯小説でも書いていこうと思います。
神は偉大だ。
彼は遥か天上から私たちに慈愛を注ぐ。
聖書の教えを守りさえすれば、彼から見れば蛆虫に過ぎない私たちでも天国に行くことができるのだ。
だから私は、無実の人を癒し、悪魔を滅し、堕天使を殺し、異教徒を導く。
私の名はアーシア・アルジェント。
教会に拾われた孤児である。
そして教会の科学者によって、この体に退魔の知恵と、神の祝福とを埋め込まれた。
その後に、この身にあらゆる傷を癒す、
「君は… 僕を殺すのかい?」
私の目の前には、黒髪の青年がいた。
彼は私にディオドラ・アスタロトという名と、自分が悪魔であることを名乗った。
彼の腹には巨大な傷がある。
「私が殺すのは、理性を失った悪魔と、裏切った堕天使どもに限る。 君は理性を持たない悪魔か?」
「いや… 理性を失ってはいないさ…」
「そうか、ならば傷を見せろ。」
驚いた表情をする男の腹の傷を、
彼の傷は神から受け取ったこの力によりみるみるうちに塞がっていく。
「いいのかい?」
「私はね、血に酔いはしないのだよ。 相手が悪魔といえども、意味もなく殺してしまっては理性を失った悪魔どもと同じだ。 私は悪魔は嫌いだが、
「でも、本当にいいのか? 悪魔である僕をたすけて。」
「む? 私は悪魔なぞ癒していない。 路地裏で腹に傷を負った、人間の好青年を癒しただけだ。 違うかね?」
「…ありがとう。」
礼を言うアスタロトに背を向け、路地裏から立ち去ろうとするが、アスタロトが声をかけてくる。
「待ってくれ、君の名前はなんて言うんだ?」
「…アーシア、私の名はアーシア・アルジェントだ。 ま、2度と会わないとは思うから覚えなくても構わないよ。 では、さようなら。」
振り返らずに言い切り、今度こそ路地裏を去る。
空は黒く、恐らく時刻は0時を回って、今日は昨日になった頃だろう。
欠伸を一つして、教会に向かう。
ー○○○ー
アスタロトを助けてから数日後、教会内におかしな噂が立っていることに気づいた。
その噂はどうやら、私に関してのことのようだ。
なんでも、私が悪魔と通じているだの、夜な夜な悪魔を部屋に招いて、淫交を行っているだの。
恐らく相手はあの青年だろう。 どこから話が漏れ、さらに膨らんだのか…
教会側は、聖人たる人物にそのような噂が立っては不味い思い、その噂を揉み消そうとした。
だが、教会内の話を聞く限り、それはうまくいってないようだ。
わかっている。 私が愛を求めてはいけないのだ。 周囲に無償の愛を与えてこそ、聖人。
だが、この状況は我慢しがたい。
更に数日立つと、直接私にその噂について追求する者が現れた。
もちろん全て否定するが、信じられることはないだろう。
殴り、蹴り、物を奪い。 まるで神に仕えるものとは思えない彼らの行為は、酷く私を傷つけた。
その気になれば、いつでも殺せる。 しかし、私はそれを許さない。
そのまま数ヶ月が経過した。
教会が最終的に出した判断は、私を追放することであった。
私は異端として、教会から追放され、放浪を余儀なくされた。
ー○○○ー
「さて、どうするか…」
私は今、スラムを歩いている。
教会から追放されてはや1ヶ月、用心棒や小さな仕事をして金を稼ぎ、なんとか食いつないできた。
懐から取り出したのは、金属で補強された聖書だ。 結界を作り、防御壁を作り、空間転移を行う。
聖書が神の奇跡の力により光、ページが捲れる。
そしてその見開きに手を当て、転移を行おうとした瞬間、後ろから声がした。
「あら? あなた、シスターかしら?」
声に反応し、聖書を閉じ、振り返りながら距離をとる。
「お前は堕天使のようだな。」
修道服の裾から4本の
「あら、怖いわね。 私に貴女を傷つける気はないわよ?」
「成る程。 では、神への反逆者がシスターへ何の御用かな?」
「いえいえ、最近ね、話を聞くのよ。」
「と、言うと?」
黒く長い髪と、醜い黒い翼を持つ女の堕天使は、口を三日月のように歪めて笑う。
「教会を追放された聖女が、各地を放浪している… ってね? しかもその聖女は上位の
「ほう、その噂ならば私も耳に挟んだことがある。 全くもって、不幸なやつもいたもんだ。」
「それでね、そのシスターは長くて綺麗な金髪で、緑の瞳をしているらしいの。 そして人の傷を癒すのと同時に、悪魔狩りや堕天使狩りも行っているらしいわ。」
この女の目的は恐らく、私を連れ去ることだろう。
この程度の相手ならば倒せるが、仲間が複数いると苦しい。
無理やりにでもシラを切るとしよう。
「へえ、どうやら境遇だけでなく外見も私に似ているようだ。 偶然もあったものだよ。」
「ええ、それで、その聖女は銃剣を武器として使い、聖書を用いて転移をするそうよ。」
「…で、お前はその聖女に近づいてどうするつもりだ? 狩られるとは思わなかったのか?」
「あら、中位の堕天使である私が、聖女風情に狩られるわけが無いじゃない。」
女は笑いながら言う。 こいつは何故この程度の力で自信を持てるのか?
「ちなみに、その聖女はアーシア・アルジェントって言うらしいわ。 ところで貴女、名前は?」
「アレクサンド・アンデルセンだ。」
「随分と男らしい名前ね、勇ましくて好きよ?」
師匠の名を言って誤魔化そうとするが、こいつはもう聞く耳を持たないだろう。
この状況で、私がアーシア・アルジェントでないと信じられるのは、よっぽどの馬鹿のみだ。
「ならば、要件を聞こう。」
「貴女、私と来ない?」
「…それはつまり?」
「私について来なさいって言ってるのよ。 少なくとも今よりはいい暮らしができるわよ?」
「…三食風呂付きだ。 神に祈らせろ、安息日を与えろ。 それ以外はいらん。」
「なら、交渉成立ね? 私たちは極東の島国、日本の駒王町の教会を拠点として活動しているわ。」
成る程、教会か。 しかもこの条件付き。
「OK、明日にでも向かうとするよ。 あと日本の通貨を寄越せ。」
「わかったわよ。 …じゃあ、これぐらいで?」
女は、私の手に数枚の紙幣を渡した。
ほぼ間違いなく、堕天使の魔力を使って偽装したものだろう。
人物の顔と、恐らくはその金の価値を表すであろう日本の数字。
「これにはどれほどの価値が?」
「約30ドル分よ。 これぐらいあれば足りるでしょう?」
「そうか… あんたの名を聞いてなかったな。」
「レイナーレよ。 じゃあ、私はもう日本に帰るから。」
「ああ、ではまた明日にでも会おうか。」
レイナーレは醜い黒い翼を広げて飛び立った。
…あのまま飛んで海を越えるのだろうか?