ポケットモンスター Trans Monsters   作:イビルジョーカー

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遅くなってすみません(汗)

でも年を越す前に投稿できて良かった〜〜!!




第6話 始まり カントー編 part6

 

 

 

 

 

鬱蒼と生い茂る森の中を風の如く疾走する一つの影。

 

それは一匹のウインディだ。更にそのウインディと並走するようにして飛ぶスピアー……いや、『ワスピネーター』はウインディへと声をかける。

 

「ブゥゥン。お前そのダメージ……さては、オートボットにやられたな?」

 

「うるさい! ……あのエリートガードの小僧、いずれ頭を噛み砕いてやる」

 

ウインディこと『バリケード』は、怒り心頭と言わんばかりに殺気立ち改めてバンブルビーを仕留めてやると息巻き決意を固める。

 

そんな彼にワスピネーターは特に興味こそはなかったが、『エリートガード』という言葉に興味を示した。

 

「ブ〜ン、もしかして〜『エリートガード』と戦ったのか?」

 

「ああ。名はバンブルビー。知っているだろ?」

 

「もっちろ〜ん! アレだろ? 歴代最年少でなったって言う、

オートボットの逸材君」

 

「そうだな。戦闘センスとそれに関係する技量は認めざる得ない。

だが、だとしても経験が足りん。あの時はガキだと油断したが……

次はこうはいかん」

 

ワスピネーターとバリケードがそんな会話を繰り広げている内に両者は目的地である洞窟の前へ辿り着いた。

 

森の中に聳える崖にぽっかりと空いた穴の中は極めて漆黒に包まれ、入口手前はともかくその先は懐中電灯などの光源が無ければ把握すること叶わない闇が

 

「ディセプティコン、バリケード。貴方様の伝令により与えられた偵察任務から、只今戻りました」

 

「同じく、ワスピネーターも」

 

普段はお気楽な口調の筈のワスピネーターが洞窟の前で、ウインディ姿のバリケードと共に頭を下げ、畏った態度を見せると言うのは見る者によっては驚きの光景かもしれない。

 

しかし『洞窟の中にいる者』は彼等ディセプティコンにとって、重要人物であると同時に敬うべき存在なのだ。

 

「バリケード、ワスピネーター。急な伝令ですまなかったな……で、結果はどうだ?」

 

「貴方様が懸念した通り、オートボットでした。しかも、エリートガードが2体も」

 

「ほお……で、そいつらは仕留めたのか?」

 

「それは……」

 

予想できた問いだったが、ディセプティコンに名を馳せるバリケードは素直に2体共取り逃がしたなどと間抜け過ぎる報告はゴメンだ。

 

 

プライムトレーナーと言うイレギュラーがあったとは言え、エリートガード小僧一人に敗退を余儀なくされたなど、恥以外の何者でもない

 

しかし、無言や虚言など。眼前の人物に何ら意味を成さないことをバリケードは知っている。

 

だからこそ、正直に事の顛末を報告した。

 

「……分かった。まぁ、プライムトレーナーの存在もあった以上、任務失敗の責は問わん。それよりも気になるのはプライムトレーナーの子供の方だ」

 

厳格なる声の主が興味を示したように呟いたのは、レッドの事だった。

 

「プライムトレーナーの証『プライマックスエンブレム』が手の甲にあった筈。何が刻まれていた?」

 

「『炎』です。間違いありません」

 

バリケードの言葉に洞窟から忌々しさをこれでもか、と孕ませたような獣の如き唸り声が響き渡る。

 

それを聞くだけでバリケードは身体を巡るエネルギーや体液全てが凍りつきそうになる錯覚を感じ、隣にワスピネーターに至っては、今にも気絶しそうな程に震えている。

 

「よりによって、炎のプライムトレーナーが早期に覚醒したか。炎は18人いるプライムトレーナーの中でも統率力を発揮し他を導く者……まだ子供とて生かしてはおけん」

 

声の主はそう言いながら、一歩。一歩。

 

また一歩とゆっくり地鳴らしのような重低音を旋律させバリケードとワスピネーターたちへ近づいて来た。

 

やがて、洞窟の中からその全容が明らかとなった。

 

身体の全体を占める灰色を溶け込ませた様な銀色。

 

ヘルム状の頭部にある顔は悪鬼羅刹の如くと言わんばかりに凶悪的なもので、何か得体の知れない憎悪や怨念…そう表現しかできない負の情念が渦巻いている。

 

刺々しいと例えるに相応しいエッジの多いフォルムは、何処か一風変わった騎士のようにも見えなくない。

 

右腕には外見と同様にエッジが目立つフォルムの砲身『融合カノン』が装備されており、これこそが彼にとっての主力武器だ。

 

「炎のプライムトレーナーを殺せ。子供であっても、だ。プライムトレーナーは我等ディセプティコンの野望を妨げる存在。引き入れる事ができればそれに越した事はないが、敵であるオートボットに付くのなら……致し方あるまい」

 

冷酷に。厳格に。

 

そう告げた存在……『破壊大帝メガトロン』に対し、バリケードとワスピネーターは了解の意を答え、すぐさま行動に移す事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「で、何から説明すればいいのかな? も、

もちろん全部答えるけどさ、何処からって言うのも大事だと思うんだ」

 

「………じゃあ、質問その一。お前は、いや、

お前らは一体何なんだ?」

 

オーキド研究所では、ふざけなど一切通用しないほどの重圧とした空気で支配されていた。

 

原因は他でもない、ピカチュウの姿からロボットへと瞬く間に変身することのできるバンブルビー本人だ。ちなみに今はピカチュウの姿になっている。

 

彼が何者なのか、それを知る者は本人を除いてこの場にはいない。

 

つまり、レッド達からすれば、全てが未知の存在ということになる。

 

だからこその、最初の質問が存在の詳細というわけだ。

 

「じゃあ、まずは僕という存在について。

僕はこの星から遠く離れた惑星サイバトロンから来たんだ。僕の種族……トランスフォーマーは、別名サイバトロニアンとも言ってご覧の通り機械に似た構造を持った金属生命体なんだ。えっと、ここまではいいかな?」

 

最初の説明だけでも到底ありえない話なのは嫌でもよく分かるだが、それを話している存在が既に証明となってしまっているのだから否定もできない。

 

「僕らは、サイバトロニアンという原種から更に二つの種に分かれていた。平和的で温和な性格のマクシマルズと、攻撃的で凶暴な性格のプレダコンにね。二つの種はその違いから常に争っていたんだ。戦って、戦って、とにかく戦い続けた。一つの戦いが終わっても新しい戦いが始まって、その繰り返しだよ」

 

そういった部分は人間と然程変わらないのだとレッド達は内心思った。

 

実際、過去の歴史を見るに人間同士の戦争や紛争など多くあった。

 

中にはポケモンさえ戦争の道具にするような凄惨な戦いもあった程だ。

 

世界は変わろうとも、そういった生物としての闘争は変わらないのかもしれない。

 

「そんな延々と続く戦いの世界に嫌気が差して、宇宙へ旅立つサイバトロニアンも少なくなかったよ。そんなある日、一つの紛争が起きた。

サイバトロンの第一首都『アイアコン』から始まった。その紛争はマクシマルズに奴隷化されたプレダコンが起こしたもので、当初はすぐ片がつくものだと誰もが思ってた。何せアイアコンの防衛軍はサイバトロンの中でも別格級。下手に仕掛ければ返り討ちがオチだったからね」

 

と、ここでレッドが疑問を孕んだ顔で質問した。

 

「待ってくれ。その、プレダコンって連中を奴隷にしてのか? 長年の敵ってやつなんだろ?」

 

「プレダコンの中には、過去僕たちマクシマルズに捕虜として捕らえられた、あるいは捕虜を祖とする奴隷民族がいたんだ」

 

「で、そいつらを散々こき使って反逆された……ってオチか?」

 

バンブルビーの言葉にグリーンが嫌悪を滲ませて割って入る。

 

グリーンは過去、悪質なトレーナー集団の奴隷と化してしまったポケモンを見たことがある。扱いは最悪で、ポケモンに対しての目は『道具』としか見定めていなかった。

 

そのトレーナー集団は、今では警察によって御用となっているが……悪質なポケモントレーナーは、彼らだけでなく今も確かに存在しているのだ。

 

だからこそ、怨敵とは言え相手を隷属化する

マクシマルズのやり方に関しては内心否定的だった。

 

「……うん。言い訳のしようもなくその通りだよ。奴隷民族はある者の手で解放されたんだ。そいつはサイバトロン随一の剣闘士で、

その功績の数々からサイバトロン防衛軍の司令官にまで登り詰めた男。

名は『メガトロン』。破壊大帝メガトロン」

 

二度、その名を繰り返すバンブルビーはその名の主に対する恐怖感があるかのように念押している風にも捉えられる。

 

いや、実際のところ恐怖しているのだ。

 

破壊大帝メガトロンを前にして、今まで生き残ってこれたのは現オートボット総司令官の『彼』と、その近衛部隊であるエリートガードたちのみ。

 

他は挑みかかったものの、その悉くが死に絶えた。

 

正直な所、エリートガードも彼がいなければ全滅も有り得ただろう。

 

他でもないエリートガードの一員であるバンブルビーが躊躇なく、そう断言せしめるのだからその強さが窺い知れる。

 

「おい、みんな終わったぞ」

 

と、ここでドアを開けて入って来たのはオーキド研究所の所長にしてポケモン学界の権威オーキド博士だった。

 

言わずもだが、オーキド博士は既にバンブルビーに関しての説明はレッドたちから受けている。

 

「あのリザードンの具合は?」

 

「それがの……色々精密検査をして分かったんじゃが……ありゃロボット、いや、そちらさんと同じ存在のようじゃな」

 

レッドたちに頼まれて精密検査と治療をしていたオーキド博士だが、どうにもあのリザードンはポケモンではなかったらしい。

 

ポケモンに関して言えば専門分野だが、機械は全くの専門外。

 

つまり、お手上げの状態なのだ。

 

「僕と同じ?! でも、もしそうなら信号で分かるはずなんだけど……」

 

「もかして、どっか壊れてんじゃないのか? とにかくあのリザードンが機械で出来てるんだったら、俺の出番だな」

 

そう言ってニカッと笑い、自信満々とばかりに袖を捲り上げるレッドだがそれを止めたのはグリーンだった。

 

「ちょっと待て。お前まさか、直す気なのか? 宇宙から来たロボットを? 」

 

「まぁな。こう見ても機械は得意なんだよ」

 

「おいおい、待てって! そこらのプラモデルとは違うんだぞ! 直すなんて無謀だ」

 

「やってみないと分からないだろう? それに俺はあいつを助けるって誓ったんだ。あいつ自身じゃなくて、俺個人だけどそうと決めた以上はやる。俺の性格、知ってるだろ?」

 

これだ。昔からレッドはこういった性格なのだと今更ながらグリーンは思った。

 

決めたことに振り返らず一直線。

 

決して曲げず、最後まで諦めない。

 

天へ真っ直ぐと伸びる情熱の炎と言えるのが

レッドという少年なのだ。

 

「……分かった、分かったよ。好きにしろ」

 

「へへっ、ありがとうな」

 

「礼なんか言うな気持ち悪い」

 

「いや、お前のナルシストぶりの方がキモい

だろ」

 

そんな会話を交わしてレッドはリザードンがいる部屋へ向かおうとするが、ドアを開ける前にバンブルビーを呼びつけた。

 

「お前も直してやる、来いよ」

 

「う、うん」

 

レッドに従い彼の側へ寄るバンブルビー。

 

部屋を出て行く一人と一匹を見てグリーンとブルー、そしてイエローとオーキド博士は溜息を吐いた。恐ろしくばっちりなタイミングで。

 

「厄介なことになったな。これは」

 

「本当だね〜。でも、宇宙人っていたんだ」

 

「それもポケモンに擬態できる変形能力を持った……ロボットですね」

 

「ワシもかれこれ長生きしているが、う〜ん……何とも言えんのう。その、え〜と、なんじゃったかな?」

 

「トランスフォーマー」

 

「そうそう、それじゃ」

 

正しく名前を言えない、というか記憶できていないオーキド博士に対しグリーンが答えた

 

「しかし、そのトランスフォーマーとやらは一体何なんじゃ。ポケモンへ違和感を与えずに変形できるロボットなんぞ聞いたこともない」

 

「俺たちも知ったばかりだけど、教えるよ」

 

正しくトランスフォーマーに関しての知識がないオーキド博士に付け焼き刃だが、先ほどバンブルビーに教わった情報を伝えるグリーン。

 

それを聞いて行く内にオーキド博士は不思議な懐かしさを内心密かに感じていた……。

 

 

 


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