東方短編録   作:神道道也

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咲夜 甘夢


休憩時間にて

 

 

 

 

今日も夕食まで無事に終わり、俺は一つの部屋へふらふらと吸い込まれる様に入って言った。

 

「つ、疲れた」

 

部屋へ入って開口一番これだった。だがもうどうでもいい俺は乱雑に革靴を脱ぎ、ロングソファーに倒れこむ。

うつ伏せになって寝ると肘掛けで首が辛いので、倒れ込んだと同時に仰向けになり、ネクタイを緩め第一ボタンを外す。

 

過酷な労働が終わり、仕事のスイッチからプライベートのスイッチへと切り替わる。そうなって仕舞えば、否が応でも愚痴をこぼしてしまう訳で、

 

瀟洒で居ろとか、カッコよくしてなさいとか訳のわからない事ばかり言われて、挙句の果てには妹様の弾幕ごっこの相手しろとか殺す気かよ。こちとら普通の人間やぞ、阿呆どもめ。

 

なんて事を考えてしまう。確かに忠誠心はある事にはあるが、元を辿れば自分は外来人な訳で。

路頭を迷った……否、いつの間にか森に居て、困惑していた所を助けられ、気付いたら執事服を着させられていたのである。

 

そんなこんなであれよあれよと気が付けば二年も経っている訳で、ほんと恩があるとはいえひど過ぎやしませんか?

 

「いつか死ぬっつーの」

 

そんな風にボヤきながら、目の上に光を遮らせる様に手を被せ、少しばかり仮眠をとる事にする。

 

「そうそう簡単には死なないと思うわよ?」

 

だがそれは一人の人物によって無に帰してしまう。おのれ

 

「覗きに盗み聞きとは随分と高貴な趣味をお持ちですね、メイド長殿」

 

たっぷりと皮肉に次ぐ皮肉を込めて返事を返させていただく。

だが皮肉を返された本人はクスクスと口元を抑えて笑い、愉快だと言わんばかりだ。

 

「褒めて頂き光栄ですわ」

 

「褒めてなどはいませんよ」

 

はぁ…と溜め息を吐きたくなるが吐いてしまっては本気で落ち込む可能性があるので飲み込んでおく。

 

そんな俺を見てか、やり取りが面白かったのか、メイド長殿は笑みを深めながら近づいて来る。

 

「ね、座って良い?」

 

「聞く前に座るなよ、覆い被さるなよ」

 

聞きながら座り、そして覆い被さってくると言うね。俺も俺だがメイド長もメイド長でオンオフが激しいな。

 

「あ、やっと敬語取ってくれた」

 

そうですか、無視ですか。

メイド長殿は俺が敬語を使わなかったのが嬉しかったのか、俺の話を無視して嬉しそうに笑う。

 

「敬語の方が良かったですか?メイド長殿」

 

「……分かってやってるでしょ、馬鹿」

 

嬉しそうに笑ってくれるのはこちらも良いんだが、無視は頂けない。そう思いからかってみるものの……拗ねやがりましたね。

頬を軽く膨らませ、そっぽを向いてしまう。からかい過ぎたこちらも悪いと思うが……こちらの身にもなれと思う所もある。

 

「悪かったよ、咲夜。だから機嫌直して、な?」

 

だが誰かが機嫌が悪いのはやはり嫌なものだ。特にそれが自分の彼女、恋人であれば尚更だろう。

だから機嫌をとる様に、頬を撫でこちらを向く様に仕向けるが、目を合わせたと思ったらキュッと目を瞑り、ベェーっと舌を出して許さないとでも言いたげだった。

 

そんな子供っぽくて可愛らしい行動に頬が緩むが、とある事を思いつきニヤリとその笑みは怪しいものに変わった。

 

咲夜は目を閉じているから俺が悪い笑みをしているのに気付かない、それに俺がとる行動にも。

 

俺はそんな可愛い咲夜の行動を脳に焼き付けた後、その突き出してる舌にしゃぶり付く様に口付けをした。

 

「ちょ!んうぅ…!」

 

そんな俺の行動に驚いたのであろう、咲夜は目を大きく開くと同時に口を開く。

だけれどその口からは言葉が漏れる事は無かった、否、出来なかった。

 

言葉を紡ごうと開けた隙間から俺の舌を滑り込ませる。そしてそのまま味わう様に咲夜の甘い舌を揉みくちゃにしながら、柔らかい唇を吸う。

 

何故こうも咲夜の舌は唾液は甘いのだろう、水飴の様に甘くて、生クリームよりも舌触りが良い。

それに鼻に広がる、咲夜の甘くて優しい匂い。その匂いは俺の頭を溶かしていく。

 

もしこれを一日中味わえるなら俺は食事をしなくても良いと言えるくらい、咲夜の舌は、唾液は、匂いは魅力的で惹きつける魔力があるのだ。

 

「んちゅ…ん…はぁ…はぁ」

 

「んー…ご馳走さん」

 

十分に堪能し、これ以上は駄目になると思い咲夜を解放する。

咲夜はほんの一瞬だけ惜しいとでも言いたげな表情をするがいけないという感じで目を釣り上げる。

だが顔が赤いし、何よりも一瞬だけ惜しいと言う表現をした時点で自分も楽しんでいたのがバレバレだ。今さら怒った顔をしても遅いわ、小娘。

 

「……むぅ」

 

「ごめんって、咲夜が可愛くて意地悪しちまった。だから今ので許してくれないか?」

 

だけれど俺は大人の対応をする。私は怒っていると言う咲夜の事を立てて、謝罪ゆえの行動であったと言う事を伝える。別に悪戯でした訳じゃないから、本当だから。

 

「………んっ」

 

そんな俺の考えが分かって分からずか、咲夜は少しだけ考えた後、再び目を閉じて、今度は触れるだけのキスをして来た。

 

そして真っ赤な顔を隠す様にキスをした後直ぐに俺の胸に顔をうずくめる。耳までリンゴの様に赤くして。

 

「これで…その……許すわ…」

 

「…ありがとさん」

 

あーもー可愛いなぁ!

何故こうもこやつは一々ツボを押してくるのだろうか。襲いたくなる感情を押さえ込んで咲夜の肩を抱き、頭を優しく撫でる。

 

相変わらずのサラサラで撫でているこちらも気持ち良い、撫でられている本人も気持ち良さそうだがね。

 

そしてそんなこんな事をしているとソファの正面の壁に掛けてある振り子時計が休憩時間の終わりを告げる。

 

「あー……終わっちまったな休憩時間」

 

「……そうね」

 

自然と咲夜も俺もその振り子時計を見つめていた。それも残念そうな雰囲気を出して。

そしてどちらともなく、目線を合わせて口を開く。

 

 

 

「……なぁもう少しこのままでいないか?」

「……ねぇもう少しこのままでいない?」

 

 

 

今日の休憩時間はもう少しだけ長くなりそうだ。

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