ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第99話

「な、何が起きたの?」

 

ナミが真っ二つになり沈んでいくクリーク海賊団の本船を見ながら声をあげる

 

「斬ったのか、あの巨大な船を…」

 

呟くように言葉を溢すゾロの言葉に私は頷く

 

「えぇ、その通りですね」

「その通りって…シュウは驚かないの!?」

「あの程度でしたらグランドラインでは日常茶飯事ですよ」

 

私の言葉にナミとゾロは目を見開く

 

「確かにグランドラインの住人なら難しくないでしょうけど、一振りで真っ二つに

 出来る奴なんてそう多くはないでしょう?」

「えぇ、ですがあの人なら可能ですね」

 

ベルメールさんの言葉に私は答える

 

すると、ゾロが問い質すように私に聞いてきた

 

「…誰だ?」

「《鷹の目のミホーク》…私の知る限り純粋な剣士として最強の男です」

 

ガレオン船が沈む際に起きた水飛沫で覆われた視界が晴れていくと、小さな船が姿を見せる

 

その船に乗る男の背負う大刀が十字架のように目に映り、その影は墓を思い起こさせる

 

「奴だ!奴が追ってきたぞ―――!」

「鷹の目だ―――!!」

 

ミホークの姿を目にしたクリーク海賊団の者達が、恐怖の叫び声をあげる

 

沈み行くガレオン船からバラティエの足場へと飛び移ったクリークが、

仲間達を落ち着かせるように前に進み出た

 

「落ち着け!今のは悪魔の実の力だ!」

 

クリークの言葉が辺りに響き渡る

 

「…そうなの?」

「いいえ、純粋な剣技ですよ」

 

ナミの疑問に答えるとゾロの肩が震える

 

だが、そのゾロの目は戦意に満ちたものだった

 

「鷹の目!てめぇは何が目的で俺達を狙った?!」

 

クリークの言葉にミホークが億劫そうに顔をあげる

 

「暇潰し」

 

さも当たり前のように言ったミホークの言葉を耳にした者達は言葉を失う

 

言葉の意味を咀嚼するように少しの間静寂が続くが、クリーク海賊団の者達によって破られた

 

「「「ふざけるな―――!!」」」

 

ミホークの言葉とクリーク海賊団の憤慨の言葉に、私は思わず笑ってしまう

 

「ククク…相変わらずですね」

 

私に気づいたのかミホークが視線をこちらに向ける

 

私はワームホールを使い双方に声が届くようにした

 

「久しいなシラカワ」

「えぇ、久しぶりですねミホークさん」

 

私達の会話にナミを始めとした周囲の人達が驚く

 

「東の海まで出向くとは珍しいですね」

「先程も言ったが暇潰しだ。でかい船が数多く揃っていたのでな、斬り応えがあると思った」

 

暇潰しで壊滅させられらクリーク海賊団は、ご愁傷様といった所ですね

 

「しかし、丁度いい所で会った。酒を融通してくれ」

「大樽で渡した筈ですがもう飲み尽くしたのですか?」

「代金はそこの者達が落としていった宝を俺の船に積んである。適当に持っていけ」

 

暇潰しで手に入れた泡銭とはいえ、随分と豪気な事だ

 

「ナミ、そう言う事ですので宝の選定に付き合ってくれますか?」

「あら、シュウは目利き出来ないの?」

「えぇ、残念ながら」

 

ワームホール内に賞金稼ぎをしていた時に手に入れたお宝がかなりあるのだが、

価値がわからない上に賞金だけで事足りていたので死蔵したままである

 

ナミを伴いミホークの近くに転移しようとしたその時、ゾロが勢いよく飛び出して行く

 

そして、ゾロがヒレの足場へと辿り着くと、先程まで争っていたコックと

海賊達が道を譲るように別れていった

 

「お前が鷹の目か?」

「…そうだ、弱き者よ」

 

酒の受け取りを邪魔されたからなのか、ミホークがやや不機嫌にゾロの言葉に応える

 

その後2人が2、3言葉を交わすとゾロは左腕に巻いていた手拭いを頭に巻き直す

 

そして、ゾロが3本の刀を使う独特の構えをとると、ヒレの足場に

跳び移ったミホークが首飾りにしていたナイフよりも小さい短刀を手にした

 

そんなミホークを目にしたゾロはコメカミに青筋を浮かべ、舐めるなとばかりに斬り掛かる

 

ゾロが刀を交差して豪快に斬り掛かって行くが、ミホークは短刀を片手で突き出して

あっさりと受け止めてしまう

 

「…嘘でしょう?」

 

その光景を見たナミがそう呟く

 

だが、幾度もミホークと手合わせをしてその腕前を知る私にしてみれば、

この光景は当然の事だ

 

「シュウ、鷹の目と知り合いみたいだけど、どういった関係かしら?」

「賞金稼ぎ等をして修行をしていた事は知っていますよね?」

「そうね」

「その修行の一環として幾度も手合わせをしていただいた間柄ですね」

 

私とベルメールさんの会話を聞いていた周囲が、驚きの表情を浮かべる

 

眼下では焦燥の表情でゾロがミホークに打ち掛かって行くが、軽くあしらわれている

 

「我が息子ながらあんな男と手合わせをしてきてよく無事だったわね」

「無事?数えるのが嫌になるほどボロボロにされましたよ」

 

手合わせの度に死なない程度にボロボロにされた事は記憶に新しい

 

「…アーロン達を一蹴したのも納得ね」

 

ノジコが呆れたように言葉を溢す

 

ミホークとゾロの戦いに動きが出る

 

ミホークが短刀をゾロの左胸に突き立てたのだ

 

「…勝負ありね」

 

ナミがそう呟くが、短刀を突き立てられたゾロはその場を退こうとしない

 

ゾロを兄貴と慕うヨサクとジョニーが、その光景を見て飛び出そうとするのをルフィが抑え込む

 

だが、抑え込んだルフィも歯を食い縛って飛び出さぬように耐えているようだ

 

左胸を突かれて退かぬゾロにミホークが問い掛けると、ゾロの答えが気に入ったのか

その場を飛び退き背中の黒刀に手を掛ける

 

ゾロとミホークが改めて対峙すると場は静寂に包まれた

 

そして、ミホークが踏み込む姿勢を見せると、ゾロが両手の刀をプロペラのように回転させる

 

「三・千・世界!」

 

ゾロとミホークが交差する

 

だが、ゾロの渾身の奥義はミホークの黒刀による一撃で打ち砕かれた

 

ミホークの一撃により三本の内の両手に持っていた二本の刀を失ったゾロは、口に銜えていた

刀を納刀して止めの一撃を加えんと迫るミホークに振り向く

 

そして、ミホークを見据えて不敵に笑うとミホークが称賛の言葉を口にした

 

「…見事!」

 

その称賛の一言と共に、ミホークが黒刀による一撃でゾロを斬り捨てる

 

ミホークの一撃をその身に受けたゾロは、海にゆっくりと落ちていったのだった




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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