バラティエでの一件から明けて翌日、ココヤシ村に商人達が訪れた
商魂逞しい彼等はどこで聞いたのかココヤシ村を含めた村々が解放された事を知って
ここぞとばかりに食料や酒、他にもアーロンの支配下では嗜好品となっていた
物品を大量に持ち込んできたのだった
最早お祭り気分全開の村人達は勢い良く散財していく
中には商人から買い付けたその場で酒を飲み始める強者までいる始末だ
「おやおや、随分と気が早い人達ですね」
「それだけ解放の時を待ちわびていたのよ」
ベルメールさんの言葉に私のワガママで長い時を待たせた事に罪悪感が沸いてくる
「…待たせてしまってすいません」
「シュウが謝る事じゃないわよ」
ナミがそう言ってくれるが手段を選ばなければもっと早く解放する事が出来たのだ
「シュウ、村の人達は村の関係者であるあんたが解放してくれた事を感謝しているし
その事を誇りに思っているわ。だから、胸を張りなさい」
ベルメールさんの言葉を受けて私は顔を上げる
「よし!それじゃ私達も買い出しをして明日の宴の準備をするわよ!間違っても料理や
酒が足りないなんて事にならないようにしっかりとね!」
ベルメールさんの言葉が合図となり私達だけでなく村の人達も動き出す
丸一日かけての準備となったが皆笑顔で動き続けたのだった
◆
明けて翌日、いよいよ宴当日となり開始のイベントとしてアーロンパークの
打ち壊しをするのだが、その時にココヤシ村の沖合いに海賊船が現れた事で
村の人達の間に緊張が走ったのだった
だが、その海賊船の特徴的な船首で沖合に来たのが誰なのかわかった事で宴は再開される
そう、沖合いに来た海賊船は私やナミの知り合いであるルフィ達のものだったのだ
「よう、シュウ。肉食いに来たぞ!」
そう言って気軽に姿を見せたルフィ達だがそこには新顔が含まれていた
「またお会い出来ましたね、お姉様方~♪」
なんと、バラティエのコックであったサンジがルフィ達の仲間になっていたのだ
彼の料理の腕前、知識は一流であるので栄養面での体調不良はルフィ達と無縁となるだろう
もっとも、食欲旺盛なルフィが食料を食いつくさなければの話だが…
閑話休題
ルフィ達を交えて宴が始められる
まずはアーロンパークの入口である門や塀に縄を掛けて村人達で引き倒していく
門が、塀の一部が倒れる度に村人達から歓声が上がっていく
そして、門や塀を倒し終えていよいよアーロンパークの建物を打ち壊していく
これは建物の倒壊を考えて女性、子供は不参加だ
日々の漁や畑仕事で鍛えた肉体美を魅せつけるように上半身をはだけた男衆が
アーロンパークの要所に打ち込まれている楔に順番に木槌を振るっていく
そんな男衆に婿取りを考えている村の女衆が熱い視線を送っている
既にお相手がいる者は誰が建物を倒壊させるのか賭けをしている状態だ
「ししし、面白そ―だな!」
そう言ってルフィ達、麦わら海賊団も飛び入りで参加する事になった
ルフィとゾロが豪快に木槌を振るいサンジが楔に蹴りを入れる事で建物に罅が入っていく
大見得を切ったが少しへっぴり腰で木槌を振るったウソップの姿は笑いを誘うものだった
そして、木槌はナミの元に持ってこられる
「え?わたしも?」
「ナミは何年もココヤシ村を始めとした村々の為に頑張ってきたんだ。誰も文句は言わんさ」
ゲンさんが差し出す木槌をナミが戸惑いながら受け取り俺を見てくる
俺が1つ頷いて見せるとナミは笑顔になり木槌を肩に担いで建物に向かって歩き出す
そして、武装色で身体強化をしたナミが木槌を楔に向けて振るうと
ゴンッ!
見事な音が周囲に響き渡り、ゾロやサンジと変わらぬ大きさの罅が建物に入ったのだった
「…マジかよ」
目を見開いたウソップがそう言葉を溢すが村の人達はナミに歓声を贈る
木槌を振るってスッキリした顔のナミが今度は俺に木槌を差し出してくる
その様子を見た村の人達は囃し立てるように歓声を上げる
「シュウ、最後の一撃をお願いね♪」
「…えぇ、任せてください」
ナミの言葉に頷くが私は木槌を受け取らずに建物に向かって歩いていく
そんな私を見た村の人達がザワつくが私がワームホールから剣を取り出すと
ザワつきがどよめきとなりやがて固唾を飲んで見守り始める
ボッ!
風を斬り裂く音を出して剣を振り抜くと時が止まったように静寂に包まれる
そして…
ズズッ…!
袈裟懸けに振られた一撃をなぞるように建物が滑るとそれを機に
罅が広がり建物は崩れだして行く
埃が辺りの視界を埋めて行きながら建物は大きな音と共に崩れ続ける
やがて埃が晴れるとそこには完全に倒壊したアーロンパークが姿を見せる
それを見た人々が今日一番の歓声を上げて解放の喜びを表現していくのだった
本日は5話投稿します
次の投稿は9:00の予定です