ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第125話

刀と棘が幾度も互いを弾き合っていく

 

「くっ、やりにくい!」

 

ミス・ダブルフィンガーが足を棘にして自身の高さを変える事で、彼女の攻撃の角度が

戦いの中で度々変わっていく

 

「中々やるわね、ミス!」

「貴女こそ!」

 

ミス・ダブルフィンガーが両手を棘にして刺突を繰り出せば、たしぎが刀の反りを活かして

その刺突をいなしていく

 

互いに決定機を欠く攻防が続く

 

そんな中で先に動いたのはミス・ダブルフィンガーだった

 

「ハッ!」

 

ミス・ダブルフィンガーは能力者であり、その攻撃は棘にした身体を使って行われる

 

故に、その攻撃は手によるものだけでなく、足や身体全体も使うのだ

 

ミス・ダブルフィンガーが棘にした足で蹴りを繰り出し、棘にした髪を使うように頭を振る

 

それまでの攻防とリズムが変わった事でたしぎは後手に回るが、何とかしのいでいく

 

同僚であるライトとの手合わせの経験のおかげだ

 

戦いの主導権はミス・ダブルフィンガーの物となったが決めきれない

 

その事にミス・ダブルフィンガーは少しずつ苛立ちを覚える

 

そして、ミス・ダブルフィンガーは身体のツボを棘で突いて身体能力をアップさせる

 

更にリズムを変えようと棘による刺突に薙ぎ払いや叩く事も加えるが、たしぎはこれもしのぐ

 

ミス・ダブルフィンガーの猛攻をたしぎは我慢強く耐え忍ぶ

 

上がってしまった息を整えようとミス・ダブルフィンガーが引けばたしぎが押す

 

そして、戦いの主導権はたしぎへと移る

 

愛刀を振るいミス・ダブルフィンガーの身体に少しずつその一太刀を入れていくが、たしぎの

一太刀が振るわれる場所を瞬時に棘に変えてミス・ダブルフィンガーはしのいでいく

 

やがて、双方共に完全に息が上がってしまった事で、互いに警戒をしながら離れて息を整える

 

「ハァ、ハァ…しぶといわね、ミス」

「ふぅ…負けませんよ…いえ、勝たせてもらいます!」

 

かつて、ローグタウンでゾロに敗れた時の悔しさが、たしぎに強い勝利の渇望を持たせた

 

「ふふ、貴女とお酒を飲んでみたかったわね」

「牢越しでよければ、お付き合いします」

 

美女2人が柔らかく笑う

 

だが、直ぐに表情を引き締めて互いに鋭く見据える

 

砂塵が2人の間を通り抜けるのをキッカケとして両者が踏み込む

 

たしぎが愛刀を横薙ぎに振るい、ミス・ダブルフィンガーが棘の手で突き込んでいく

 

両者の影が交わり、砂塵が舞い上がる

 

やがて砂塵が晴れると、そこには左肩に棘を突き刺されているたしぎの姿が現れた

 

だが…

 

棘を突き刺しているミス・ダブルフィンガーの方がゆっくりと倒れていったのだった

 

「ふぅ…」

 

たしぎが一息つく

 

そして、納刀をして地面に膝をつくとミス・ダブルフィンガーの身体を調べ、命の心配が

無いことを確認すると海楼石製の手錠をミス・ダブルフィンガーに嵌める

 

そこまで動くと、たしぎは力が抜けたように地面に座り込むのだった

 

「なんとか、勝てましたぁ~…」

 

先程までの戦いが嘘のようになんとも気の抜ける声を上げる

 

「痛っ!」

 

戦いの興奮が落ち着くと、たしぎは左肩を抑えて痛がる

 

「あいたた…これ、痕が残っちゃいますかね?」

 

海兵としては名誉の傷かもしれないが、それでも彼女も女性なので気になってしまう

 

「う~ん…まぁ、そうなったらライトくんに責任を取ってもらいましょうか」

 

たしぎは傷痕が残るのを少しも残念に思っていないように、頬を赤くしながら笑顔を見せる

 

「今回、私が前線に回る事になったのはライトくんのせいですから…仕方ないですよね?」

 

たしぎはまるで誰かに言い訳をするように話すが、そこには気絶している

ミス・ダブルフィンガーしかいない

 

そして傷の応急処置を終えると、たしぎはミス・ダブルフィンガーを右肩に担いで歩き出す

 

「さて、もう一頑張りしましょうか。ライトくんも頑張っているでしょうからね」

 

後に、大海賊時代の高名な女海兵として歴史に名を残すたしぎだが、今回の戦いが

たしぎが成した最初の大きな武功として記録される事になる

 

そんな事になるとは露知らず、たしぎはミス・ダブルフィンガーを担いで歩き続けるのだった

 




次の投稿は11:00の予定です

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