ONE PIECE~重力の魔人~   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第94話

「1億ベリーか…よくもそんなに溜め込んだものだね、チチチ!」

 

ココヤシ村の沖合いにて留まる軍船の船上にて1人の男が笑う

 

海軍第16支部ネズミ大佐

 

それがこの男だ

 

「まぁ小娘にはご苦労とでも言っておこうか…私の為に1億ベリーを

 集めたのだからね!チチチ!」

 

この男は長年アーロンと癒着をしており、その癒着で得た資金で上層部への根回しや

出世争いの相手をアーロンに潰させたりして大佐の地位まで登り詰めていた

 

それだけに止まらず、ココヤシ村周辺で商いをする商人達からアーロンに襲われない為と

称して賄賂を要求して私腹を肥やしてきたのだ

 

「にゅ~、ネズミの旦那、いらっしゃ~い」

「ハチか、出迎えご苦労」

 

沖合いに止まる軍船にタコの魚人がネズミ大佐を出迎える為にやってきた

 

「それで…小娘は戻っているのか?」

「にゅ~、ナミなら戻ってきてるよ。でも、アーロンさんがいないからお金は渡してないよ」

 

ハチの言葉を聞きネズミ大佐が笑う

 

「チチチ…それで、小娘はどこにいる?」

「家でゆっくりするって言ってたよ」

「それは好都合だ」

 

髭をしごきながら笑うネズミ大佐は部下に小舟の準備を命令する

 

そして、数人の部下を伴い自ら小舟に乗り込むとハチに命じて小舟を曳かせた

 

「チチチ、1億ベリーか…何に使うべきかな?」

 

ネズミ大佐は思考する…更なる甘い蜜を味わう為に

 

「本部への栄転に使うべきかな?いや、コネが無くなるのは痛い…

 ならば准将への昇進が妥当だな、チチチ!」

 

「そうなると、いよいよ私も閣下と呼ばれる身分になるのか…チチチ!」

 

ネズミ大佐の笑い声が海原に響く

 

この小舟が進む先は更なる栄光へと続くのだとネズミ大佐は笑い続けるのだった

 

 

 

 

「にゅ~、それじゃ帰りにまた声をかけてくれよ。ネズミの旦那」

「チチチ、ご苦労!」

 

タコの魚人であるハチはネズミ大佐を見送るとため息を吐く

 

理由は自らに与えられた役目を果たし終えたからだ

 

「モ―――ム―――!」

 

ハチは自身の口をラッパのように使い海獣の海牛を呼び寄せる

 

「モ~♪」

「…行こう、モーム」

 

ハチはモームと並び海原へと泳いでいく

 

「海賊は廃業だぞ、モーム…アーロンさんとの約束だからな」

「モ~…」

 

「たこ焼き屋をやろう…長年作り足し続けた秘伝のソースがあるんだ…旨いぞ~」

「モ~♪」

「うんうん、モームにも一杯食べさせてやるからな」

 

1人と1匹が海を行く

 

新たな人生を思い海原を泳ぐその姿は、やがて水平線へと消えて行ったのだった

 

 

 

 

「チチチ、邪魔をするよ」

 

ノックも無く開けられたドアの向こうには海軍の軍服を着た小男がいた

 

「あら、ネズミ大佐…なんの用かしら?」

「ベルメールか…お前の小娘に用があってきた」

「残念ね、小娘なんて名前の人は家にはいないわよ」

「チチチ、相変わらず強気な女だ」

 

小男が上機嫌に笑う

 

「だが、近いうちに閣下と呼ばれる私に少しは媚びを売っておいたほうが身のためだぞ」

「あら、口説かれてるのかしら?でも、私程のいい女を口説くにはあんたじゃ

 役者不足よ。出直してきなさい」

 

脅しともとれるネズミ大佐の物言いに、いつもと変わらぬ様子でベルメールさんは切り返す

 

ベルメールさんの言う通りに役者不足だ

 

「ふん!まあいい…それで、ナミはどこにいる?」

「ナミに何のようかしら?」

「ナミが不当に金銭を集めていると情報が入った。ならば海軍として見過ごせまい?」

 

予想通りのネズミ大佐の行動に呆れのため息が出る

 

「はぁ…その熱意を少しはアーロン討伐に向けたら?」

「チチチ、高度な柔軟性を持って対処にあたっているのだ…素人の口出しは控えてもらおう」

 

この男はベルメールさんが元海軍本部の大佐だと知った上で言っているのか?

 

「ん?そこの男は見覚えがないな…誰だ?」

「私の養息子よ。最近になって漸く帰って来たのよ」

「ほう?では納める税が増えるのか、それは大変だな」

 

ネズミ大佐は少しの労いの様子も見せずに軽く肩をすくめながら言う

 

「それは問題ありませんよ、ネズミ大佐」

「なに?」

「アーロンは私が倒しましたのでもう税を納める必要はありません」

 

私の言葉にネズミ大佐は少しの間呆けると途端に笑いだした

 

「チチチ!面白い冗談だ!」

「冗談?ハチにアーロンはもういないと伝言を頼んだ筈ですが…」

 

私の言葉にネズミ大佐は首を傾げる

 

そして、1つ舌打ちをしてから口を開いた

 

「チッ!確かにアーロンはいないと言っていたが…」

 

ネズミ大佐はそこで言葉を切ると醜悪な笑みを浮かべた

 

「それはそれで都合がいい…そこのお前、アーロンの身柄を寄越せ、これは命令だ」

 

ネズミ大佐の言葉に私とベルメールさんはため息を吐く

 

「アーロンが倒されたのなら奴が支配していた証拠として奴が集めた税も

 回収しなくてはな…チチチ!」

 

「これで私は准将どころか少将に…いや、中将だって夢ではない!チチチ!」

 

もはやため息もでないその醜悪な姿に我慢の限界を超えたのか

海軍の軍服を纏ったガープさんが奥から姿を見せる

 

「チチチ…?誰だ!?」

「ここまで腐っておるとは思わんかったのぉ…」

 

拳の骨を鳴らしながらガープさんがネズミ大佐に近付いていく

 

「なんだ!?私は海軍第16支部のネズミ大佐だ!階級と姓名を明らかにしろ!」

「…よかろう、儂はモンキー・D・ガープ!海軍本部の中将じゃ!」

 

ガープさんの言葉にネズミ大佐は固まり、彼の部下は直立して敬礼する

 

「歯を食い縛れぇ!」

 

ガープさんの拳により、ネズミ大佐は開け放たれたままのドアから外へと殴り飛ばされる

 

こうしてアーロンの支配から始まった一連の出来事に終止符が打たれたのだった




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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