(未完)異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!? 作:DENROK
この国で考えられる最も上等な盗聴対策と防諜が施された部屋の中に、秘書官の蕩々とした声が響く。
「竜王国に天使と神が降臨したそうです。神の領域の大魔法によって十万体以上のビーストマンを一瞬で殲滅させたとのことです」
「ははは、ウケルー!」
「……陛下」
「……分かっている」
その声を無視して、秘書官はどこか諦めた顔で蕩々と追加情報を述べていく。
「放っている諜報員を駆使して裏を取ってみましたが、これはかなり確度の高い情報であることが分かりました」
「分かっていると言っているだろう!!!」
豊かな髪を掻き毟り、整った顔を悲嘆に歪めながらこの国で最も位の高い男は叫ぶ。秘書官はそんな顔を見たことはなかったし、見たくもなかった。しかし、己の職務に忠実な彼はなおも言葉を吐き出し続ける。
「法国の宣言した神の降臨という話は、今までに得た情報と先の情報を合わせ、もはや事実と見るほかありません」
「……何故今なんだ。帝国の地盤を固め、コツコツと王国を弱体化し、さぁこれからという時になって、何故神の降臨などというふざけた話が飛び込んでくるのだ」
弱々しい声が秘書官の耳に届くが、彼は無慈悲にも追撃の言葉を浴びせた。これも国のためを思ってのことであった。
「……陛下、それに関してさらにお耳に入れたい情報があります。フールーダ様が」
「もう聞きたくない」
子供のように耳を塞ぎ、男は椅子の上で身を固くちぢこませる。
「フールーダ様が!! 是非なんとしても神へ接触したいと申しております!! これが聞き入れられない場合は、帝国から離反することも辞さないと!! 私は直接、それはもう凄い剣幕で脅迫されました!! むしろ陛下の許可を頂くまではとなんとか引き留めたことを評価して頂きたいほどです!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!!」
髪を乱暴に掻き毟りながら、鮮血帝は声にならない叫び声をあげた。
リ・エスティーゼ王国。エ・ランテル城塞都市。
王国の国益上非常に重要な一大拠点である。隣接する各国との交通の要衝としての交易都市であり、バハルス帝国と面した城塞都市でもある。
堅牢な高く分厚い石壁に三重に守られた都市構造は、この都市が砦でもあることを都市を利用する人々に認識させる。さらに難攻不落だとも。
そんな誰もが難攻不落だと考える砦は、内側から陥落しようとしていた。
「もう持たないぞ!!」
「応援はまだなのかよお!! 俺達に死ねっていうのか!?」
「もう近場の衛兵は全部来てるんだ! これ以上の応援が来るには時間がかかるぞ!!」
夜のエ・ランテル共同墓地は高い壁に囲まれ、唯一の出入り口は鉄の扉によって固く閉じられている。
だが、墓地を囲む壁の上からボトボトとアンデッド達が器から水が溢れるように止めどなく出てきては生者である衛兵達に向かってゾロゾロと向かって来ていた。迎え撃つ衛兵達はそれなりの数が揃っており、お互い適度に距離を取りながら向かってくるアンデッド達を槍と剣で退治していく。
それでも、壁の外に出てくるアンデッドは際限なく増え続け、数の前に衛兵達はじりじりと後退することを余儀なくされていた。
「ちくしょう!! 俺は逃げるぞ!! こんなところで死ぬなんて嫌だ!!」
「おい待て!! この後ろの壁の向こうには街があるんだぞ!!」
「くそが! せめて家族だけでも逃がすぞ!」
「避難が終わるまでは……!」
「今は夜中だぞ! どれだけ時間がかかるんだよ!」
「扉を封鎖して内側の壁の中に篭もるしかないかもしれんな」
絶望的な状況に衛兵達の士気が下がっていく。
ナザリック地下大墳墓。第九階層。
インランの私室で、裸に剥いたアウラをモデルにインランが大変高尚な絵画を描いていると、扉がノックされメイドによって開けられた。
つかつかと部屋の中に入ってきたモモンガは《
アウラは服を着るとモモンガに退出を促され、真っ赤な顔で出ていった。
「アンデッドの大群? 中々面白いイベントね。クリア報酬は特大データクリスタルかしら。やっぱり確定ドロップはおいしいわよね」
「いや、死者の書じゃないですか?」
「糞運営のことだから、どうせ微妙な消費アイテムでしょ。1時間だけ金貨・経験値獲得量1.5倍みたいな」
「あぁーありえるー」
「ふぅ、で?」
「いや、リ・エスティーゼ王国のエ・ランテルという城塞都市でアンデッドの大群が出現したそうですよ」
「あらー、ギルド長も結構ブイブイ言わせてるのね。さすが悪のギルドだわ」
「俺じゃないですよ」
「そうなの? じゃあ誰よ?」
「アンデッドが大量に隠れてたのか、《
「なんか面白そうね。ちょっと見てみましょうよ」
「ゴミみたいなアンデッドも数が揃うとなんか強そうに見えない? 見えないか」
「まぁコレだけ数が揃ってると自然と上位のアンデッドが出現しますから、このままだと現地勢にはかなり厳しいんじゃないですか?」
「おお、喰われてる喰われてる。あれねゾンビ映画観てる気分だわ」
「しかし、この都市はもう終わりかもしれませんね。現地勢にどれだけ強い個体がいるのかは分かりませんけども、この程度の雑魚アンデッドに人間側が手こずっているようでは、この先出てくる上位アンデッドは処理できないでしょう」
「んー、ちょっと話が低レベルすぎて合ってるか自信ないんだけど、今ならレベル30位のパーティでなんとかなりそうじゃない? デスナイトが複数出てきたら厳しいだろうけど、その前ならなんとかなりそう」
「インランさん、レベル30とかこの世界では英雄の実力らしいですよ。要するに滅多にいないってことです」
「え゛、そんなに弱かったかしら? あたしが良く行くエルフの街の宿屋の女将さんは普通にレベルそれくらいあるんだけど」
「エルフは長命ですから、長い時間をかけて経験値を貯めることが出来るからじゃないですか? 恐らく若い個体はただの人間と差はないはずです」
「ああ、なるほどー。女将さんは300歳超えてるもんね。年聞いて超年上のババァ口説いてるのかと一瞬変なトキメキがあったわ」
「しかし、どうしましょうか? このまま放置します? 多分地図からこの都市が消えますよ」
「ここは逆にナザリックの高レベルアンデッドを放ってアンデッド側に加勢するってのは?」
「えぇ……? なぜです?」
「いやぁこれが人為的なものなら、きっとギルド長やこのギルドと話が合いそうじゃない? カルマ値低いわよきっと」
「ふむ…… どうしたものか」
「それに《
「第七位階です」
「それって50レベル代ってことでしょ? 現地勢にしては中々強いんじゃないの? この世界でそれだけ高レベルだとレアな知識とかレアなアイテムとかレアな人脈とも持ってるかもよ。あたしはそっちの方が興味あるわね」
「まだ《
「じゃあ援軍を送ってあげましょうよ。恩を売っておくのよ」
「
「精霊創造に使える依代が見つかればあたしもストック出来るんだけどねぇ」
話し合いは一区切りつき、モモンガはシモベに命じて墓地に援軍を送ることにした。
エ・ランテル共同墓地。
一時は押されていたが、エ・ランテル冒険者組合が誇る高ランクの冒険者達がすぐに援軍に駆けつけたことで、今は人間側が優勢になっていた。
上位のアンデッドが増える前に強力な援軍が迅速に駆けつけた事が明暗を分けたといえる。
「イケル! 勝てるぞ! 俺達は!」
「やっぱり冒険者は頼りになるな。さすが本職だ」
衛兵達も士気を取り戻し、後方支援に回っていた。
エ・ランテル共同墓地。墓地の奥へと進んだ場所。
「至高の御方の意志だ……死ぬがよい……」
「せめてもの慈悲に苦しみのない速やかな死を与えてやろう……」
「かかってくるがよい……御方の力の片鱗……とくと味わえ……」
ゾロゾロと蒼炎を全身から漂わせた騎士風のアンデッド達が統制の取れた動きで墓地に並んでいた。
「なんだコイツら!?」
「こんなアンデッド見たこともないぞ!?」
「アンデッドがここまで流暢に話すものなのか? 恐らくかなり高難度のモンスターだぞ!」
エ・ランテルが誇る中では最高ランクの冒険者パーティは、墓地のアンデッドを殲滅しながら進んだ先に待ち構えていた見たこともないアンデッドに非常に警戒した様子で対峙する。
これまで幾度も死線を潜り抜けてきた彼等は、目の前のアンデッドが尋常な難度ではないことを知識と経験と勘から確信していた。
「クソォ! 一旦退くぞ! コイツらはヤベー!」
「「「おう!」」」
パーティのリーダーと思わしき男が、荒っぽい口調で叫ぶ。パーティメンバーはその言葉に素直に従い、すぐさま後退を開始する。
アンデッドの騎士達は全力で撤退していく者達に対して特に追撃するそぶりは見せなかった。やがてある程度の距離が離れると、冒険者達は背中を見せて全力疾走で逃げていく。さすがにある程度のランクにある冒険者だけあってその疾走速度はこの世界の基準では非常に速かった。
「愚かな……」
「慈悲を与えてやったのに……」
「苦しみ悶え絶望し……死ぬがよい……」
全力で後退していく冒険者達の足元の地面から青白い手が複数飛び出すと足を掴む。
「な!?」
「馬鹿な!? 探知には反応なんてなかったぞ!?」
地面に転がった冒険者達は足を掴んでいる青白い手に各々の武器を突き立てるが、皮膚に悉く弾かれてしまった。
「拙い拙い拙い!!」
やがて地中から肥満体の上に長い首をもち全身をところどころ血で赤く染まった青白い皮膚に包まれた異形のアンデッドが複数飛び出してくる。
身の毛もよだつ奇怪な鳴き声を上げながら、体を左右に揺らすようにしてじりじりと地面に倒れた冒険者達ににじり寄ってくる。
「キィイィイイィイィイイィッッッ」
「クケケクケケケクケクケケケッッッ」
「また見たこともないアンデッドかよぉ!!」
「武器が効かない! 拙いぞ!」
「だから前に出過ぎだって俺は言ったんだよぉ!! イグヴァルジィィィ!!!」
「うるせぇええ!! こんなところで死んでたまるかよぉおおおお!!」
リーダー格の男ががむしゃらに武器を足を掴む地面から生えた手に向けて振るうが、やはり皮膚に弾かれて全く効果がなかった。
冒険者のひとりのすぐ傍までにじり寄ったアンデッドは、歯が剥き出しになった口をかぱりと開くと首を長く伸ばして腹に噛みついた。
「ぐあぁああ!!」
アンデッドが首を上げると、血塗れの口に引き釣り出された腸が腹に繋がったままずるずるとぶら下がっている。グチグチと水っぽい音を起てながらソレを噛みしめて啜るようにアンデッドは呑み込んでいく。
「キィィイイイィイイイイッッッ」
「ひぃ!? 来るな! 来るんじゃねぇえ!!」
同種類の別個体のアンデッドが、まだ無事なリーダー格の冒険者に奇怪な鳴き声をあげながらじりじりとにじり寄っていく。
向けられた頭部に向かって武器が激しく降られるが、やはり皮膚に弾かれ全く刃が通らない。
頼みの綱である高価なポーションを投げつけてみたが、多少皮膚が焼けた程度で全く怯む様子もなかった。
「ざっけんなぁ! なんなんだよこいつはよぉおお!!」
「前線はほぼ壊滅状態だそうです……」
「馬鹿な……! ミスリル級のパーティも出ているんだぞ!?」
今は夜中であるが、緊急事態のために冒険者組合に居た冒険者組合組合長のプルトン・アインザックはその報告に頭を抱える。
「墓地の中程までは順調に殲滅が進んでいたのですが、そこで他に類を見ないほどの非常に高難度の新種のアンデッドが突如大量に出現し、一気に前線が瓦解したとのことです。ミスリル級であるイグヴァルジのパーティは墓地の奥まで単独で向かっており、誰も確認に向かえないため現在消息不明です」
「なんということだ……ミスリル級でも勝てない難度のアンデッドの群れなど、もはやエ・ランテルの戦力ではどうしようもないぞ……パナソレイ氏は?」
「現在この組合まで向かってきているそうです。もう間もなく到着するかと」
「せめて魔法詠唱者がもっと育っていれば……」
この国の魔法詠唱者への冷遇はアインザックの目には非常に愚かな行為に思える。今回のアンデッド達も優秀な魔法詠唱者の数が多ければかなり楽に対処出来ただろう。アンデッドは基本的に斬撃や打撃などの物理攻撃に耐性を持っているため近接武器では頭部以外への攻撃は効果が薄いため数体程度ならばともかく一度に多数を相手にすると難度が跳ね上がるのだ。こういったアンデッドは火炎魔法で一気に焼いてしまうのが最も効果的である。例外はあるが。
「もう墓地からわき出てくるアンデッドを抑えこむのは不可能と判断して生き残りは街がある壁に向かって後退を始めているそうです」
「壁の中に篭もって王国からの援軍を待つしかないかもしれんな……」
アインザックは現状最も無難な選択を口にした。
エ・ランテル共同墓地周辺が映し出された
「なんか援軍送ってなかったらアンデッド達は負けてたくさい?」
「ですねぇ。さすがに街にはマトモな戦力が居たみたいですね」
「うーん、墓地から人も掃けたし、そろそろ大量のアンデッドを放った奴に会いに行きましょうか?」
哄笑が地下空間に響き渡る。
此度のエ・ランテル共同墓地のアンデッド騒ぎの首謀者であるカジットは、宝玉を握りしめ禿げ頭を脂でテカテカに光らせて狂ったように大笑していた。
「はははははは! 上位のアンデッドがこうも大量に生まれるとはな! 素晴らしい! 素晴らしいぞおおお! 儂の悲願がもうすぐ叶うのだ!! わはははははは!!」
「う、うーん。 とんでもないわね。 混乱に乗じて逃げようと思ってたのになぁ…… これじゃ外に出れないじゃないのよ。 カジっちゃん。生まれた上位のアンデッドに私を攻撃しないように命令できないのぉ?」
それとは対照的に、程よく筋肉質で肉感的な体にビキニアーマーを纏った金髪をボブカットにした美女であるクレマンティーヌは困惑と苛立ちに顔を歪ませていた。カチャカチャと手で愛用するスティレットを弄びながらカジットに問う。それに返ってきた答えは否定だった。
「出来んのだ。《
「えぇー、それは凄く困るなー」
「う、うむ。お前には大変な恩義があるからな、儂もなんとかしてやりたいのだが……ん!?」
「何だ!?」
突如床から黒い靄のようなモノが壁のように立ち上り、カジットとクレマンティーヌ、それと後ろに控えていたカジットの高弟達が警戒する。
「はぁい。元気してるかにゃー?」
「うへぁ……、気持ち悪いので自重しろ」
「ブッコロ」
黒い靄の中から、裸体に胸元が大きく開いた一枚の裾の短いワンピースのような服を着ただけの、クレマンティーヌを超える痴女ファッションで、黒髪を左右に2房結ったありえないほど美しい少女と、非常に上質で大変手の込んだ意匠が施された漆黒のローブを纏った黒髪の利発そうな顔立ちの青年が出てきた。
「な、なんだ貴様達は!?」
「なんだてめぇらは? ……ただ者じゃないね?」
警戒心を全く隠そうともせずに、クレンマンティーヌとカジットは各々の武器を構えて臨戦態勢でいる。
それに対して、少女と青年は気さくな態度で接した。
「いやいや、ほらぁ、あたしたちぃ、あんた等を助けてあげたのよ?」
「はぁ? 何言ってんだてめぇ?」
「まぁまぁ、落ち着くが良い。お前達のアンデッドの軍勢に俺達がさらに強力なアンデッドを加勢として送り込んでやったから、街の人間達に勝てたのだぞ」
「なんじゃと? いったいどういうことだ。説明しろ」
「ちょっとカジっちゃん。こいつらヤバいよ。暢気に話してる暇は……」
警戒を一切解かず、むしろより警戒を強めたクレマンティーヌが少女と青年を視界に入れたままカジットに向けて喋った。
それを一笑にふしながら青年が説明を続けると、それに追従する声がこの空間の唯一の出入り口のある階段の方から聞こえてくる。
「ふ、俺達にはお前達に危害を加えるつもりはないぞ。それどころか逆に加勢したのだからな」
「御方々の言う通りである……」
「貴様等……頭が高いぞ……そちらにおわす御方々をどなたと心得る……」
「処す……? 処す……?」
蒼炎を全身に纏った騎士風のアンデッド達が、階段に続く入り口に立っていた。
「んなぁ!? なんでアンデッドがここに!?」
「どういうことじゃ!? まるで意味が分からんぞ!!」
混乱の極みに達したカジットとクレマンティーヌを見ても少女と青年は親しみのある態度を崩さない。
「なに、俺がそこのアンデッド達を作ったのだ。そしてお前達に加勢させたということわけだ」
「これあたし来なくてよかったかも」
「せやな」
クレマンティーヌちゃんマジ天使
異形種の感性で、カルマ値低いと人間の街を潰すのは蟻の巣を潰すのと感覚的に大差ない
倫理観壊れる
デドハンドの効果は、恐怖恐慌錯乱状態にして獲物の判断力と動きを低下させることです。