(未完)異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!? 作:DENROK
玉座の間で殺気をバリバリに放つシモベ達に囲まれ守護されている形の二人の神は普段のヘラヘラした様子よりも多少真面目な雰囲気でここには居ない誰かと会話する。
その異様な光景を見る玉座の間にいた王国側の護衛や観衆達はこの場に漂う感じたこともないほどの殺気から全く動けない。玉座に腰掛けるランボッサ三世はせっかくエリクサーで元気になったのに、既に脂汗を流して虫の息である。
王国の五宝物を纏って護衛に侍っていた周辺諸国最強の戦士であるガゼフ・スロトノーフでさえ、全く隙のないシモベ達とソレから叩きつけられる殺気に体を震わせながら武器を気丈に構えるのが精一杯だった。
シモベの護衛の輪の中に神々との位置関係からついでに入れられていたジルクニフは笑顔を貼り付けて思考停止している。
「シズ、城全体をスキャンして。これからスーパーシルフを出すから。悪いけどあたしは手が塞がってるから権限を渡すわ」
「ニグレド、お前もだ。また働かせて悪いが今度は課金アイテムの併用を許可する。見落としは許さんぞ」
神々の凜とした声だけが静まりかえった玉座の間に響いていく。
ナザリック地下大墳墓第四階層に併設された超巨大格納庫。
外見も十分巨大だが、内部は魔法的な空間拡張(課金)で完全に異空間と化しており、その内部容積はひとつの階層に匹敵する。
管理者権限によって格納庫が起動し、格納庫内部のハンガーがサイレンを鳴らして警告灯が発光する。
ハンガーが音を立てて動き出し、そのまま格納庫外部へと機体を載せたままスライドしていく。
格納庫のハッチが開き内部の異空間との気圧差から第四階層の空気が吹き付ける。
ゴウゴウと空気の音とサイレンの音が鳴り響く中で、ハンガーの上の戦闘機のエンジンに火が入り、甲高い悲鳴のような唸り声を上げた。
情報収集・情報戦に徹底的に特化した超が十個くらい付く高性能戦闘機は、機体に搭載された同じく超が百個くらい付く過剰に高性能な人工知能、否、”機械生命体”によって完全に制御されている。
超高性能戦闘機FFR-31MR”スーパーシルフ”が格納庫の外へハンガーごとせり出してくると、第四階層にあるガルガンチュア等の超大型の物体を外部へ転送するための装置も同時に稼働を初めた。
パリパリとスパークがスーパーシルフを取り巻き、次の瞬間機体が居るのはリ・エスティーゼ王国首都の王城を遥か下に見下ろす高空だった。
超々高度なAIによる機体制御で難なく空気を掴んで飛翔すると、スーパーシルフは命令通り機体に搭載された複数の探知システムで眼窩の巨大な城をスキャニングしていく。
城の上空スレスレをぐるぐると至近距離から張り付くように旋回しているCZ2128Δが搭乗するガウォーク形態のVF-0も捉えられる。
城の上空から鳴り響くジェットエンジンの爆音が玉座の間の中にも轟くなかで、怪訝な様子でインランが声を発した。
「ん? 後はゴミアイテムしかないわね」
「やはり別の場所に隠しているのではないか? ──ニグレド、走査範囲を街全体に拡大しろ」
「ああ、城下町にいくつか面白そうなアイテムがあるみたいね。これは……地下かしら?」
インランはタブレット端末をモモンガに手渡す、画面には今のスキャンで発見された一定以上のデータ量・魔法効果のアイテム達が羅列されている。モモンガが指で画面をフリップすると一定以上のレベルの存在も別ウィンドウに羅列されていた。
モモンガは羅列された高レベルの者達の中で一際高レベルな者を見つけて声を上げる。
「おい、レベル50台がいるじゃないか」
「プレアデス級ね。まぁゴミ……おっと、プレアデスはエロ可愛いからそれで良いのよ?」
一緒に王国の会談に参加していたプレアデス達を気遣ってインランが途中で発言を改めた。
「他にもレベル30前後がチラホラといるのか、さすがに大国の首都なだけはあるということなのかな」
「デスナイトがちょっと居る程度と考えると力が抜けるけどね。あぁ、警戒して損したわ」
インランは肩の力を抜いて嘆息する。
だが、シモベ達は依然臨戦態勢のまま微塵も警戒を解かなかった。玉座の間全体に目を向けながらも、特にガゼフの動きを注視している。
暢気だが殺気をタップリ放ちながら会話をする神々に最初に声をかけたのはすぐ傍に立つバハルス帝国皇帝ジルクニフだった。このまま制御不能の神々が何をするのか分からないので、楔を打つためにその英雄クラスの胆力から声をかけたのである。
「き、君たち、何を……考えているのかな……」
「ん? 警戒?」
「そうだな。まぁ今特に警戒すべきなのはそこの男が持つ剣だけのようだが」
「そうなのか…… では君たちは武器を……」
「降ろさないわよ?」
「うむ。危険がある以上はなぁ」
「はは…… そうだよね……」
苦笑い8割くらいの微笑を浮かべてジルクニフはそれ以上言葉を紡げなかった。
「どうする? ジルちゃん先に帰る? ケッコー危ないわよ?」
「え……ああ………………… 残る……」
ジルクニフはかつてないほど思考を張り巡らせた末この場に残ることを選んだ。放って置けない。何が起こるか分からない。出来ることなら多少なりとも干渉したい。先に逃げ帰った末に王国が消滅しては洒落にならなかった。ペンペン草も生えない土地よりはまだ神に統治された国が隣にあるほうが帝国の利になるだろう。
攻撃的な雰囲気を纏っている神々と友好的な雰囲気で話している(ように外部からは見える)ジルクニフに、王や観衆達が息を呑む。
そんな視線を努めて無視しながら、ジルクニフは目の前の玉座に腰掛けるランボッサ三世に声をかけた。
「ランボッサ王よ。どうかそこの護衛であるガゼフ・ストロノーフが持つ五宝物の一つである剣をコチラに差し出しては貰えないだろうか」
その言葉に静まりかえっていた玉座の間がにわかにざわつく。本来ありえない要求なので当然だ。
「無論。余りにも度が過ぎた要求だとは理解している。だが、ソレをこちらに渡さない限り、王国に未来はないことを、このバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスがこの名をもって保証しよう」
ジルクニフは真摯な目でランボッサ三世と目を合わせて語る。
だが、その横で矢面に立たされたガゼフは顔を怒りに歪め、シモベ達に叩きつけられる殺気の中で驚異的な精神力で自身を奮い立たせると気丈に叫んだ。
「馬鹿な……! これは王国の至宝なのだぞ!」
「理解していると言っている。それでも、それを差し出さねば、確実に王国は滅びるぞ」
長年カッツェ平野での合戦でガゼフに煮え湯を飲まされてきたジルクニフはある意味因縁の相手であるガゼフに語って聞かせるように同じことを喋る。まさか自分が憎き宿敵の命を案じるようなことを語るようになるとはとジルクニフは内心で自嘲しながらだが。
ジルクニフとガゼフの言葉を受けて、インランは納得したという声を上げる。
「ああー、宝物かー」
「中々仰々しい呼び名だが、まぁ異常な性能を考えれば納得だな」
「じゃあ交換で良いんじゃないの?」
インランは虚空から巨大な太刀を取り出す。メカニカルな外見の無駄に嵩張る鞘が刀身を覆っていた。余りにも刀身が長く、インランの身長では抜くことも出来そうにないが、鞘全体が稼働して開き刀剣が全て外に晒されるとパワードスーツで伸長した機械の腕でシャラリと刀を抜き放つ、鞘に比べると非常に細く感じる刀身を暫く空気に晒したあとで再び鞘に戻す。ガチャリと機械の鞘が稼働して刀身を呑み込み固く噛みしめる音が響く。
「
「
インランの身長よりも長い、異常に長大な太刀を手にパワードスーツを着たままのインランがガゼフに近づいていく。
それをシモベ達が必死に止めようとするが、インランは伸ばされたシモベ達の手をはたき落としてズカズカと進んで行った。
「じゃあ、コレと交換してよ。いいでしょ?」
威圧。
鞘に収まった巨大な刀を機械の手で前に翳した少女の外見のインランに無垢な笑顔で声をかけられたガゼフはそう感じた。心臓を掴まれたように体が萎縮し、口が上手く動かない。
「ん? コレじゃダメなのかしら? 切れ味に関しては多分この世界ならそのインチキ剣と変わらないわよ? データ量から考えれば単純な攻撃力はむしろ増えるでしょうね」
ガゼフは思わず五宝物の一つの剣を目の前の神に差し出しそうになる。だが気絶しそうになりながらもなんとか寸前で踏みとどまる。
後ろでそれを見ていたデミウルゴスが呪言を使おうとするが、モモンガが手でソレを遮った。
動けないガゼフ達を見かねたのか、ジルクニフがインランの後ろから玉座に座る王と固まっているガゼフに語りかける。
「ガゼフ殿。いやランボッサ王よ。どうか、どうかこの刀とレイザーエッジを交換して貰えないだろうか。このジルクニフが余の名前にかけてこの神が創った刀の価値を保証しよう。間違いなくレイザーエッジに匹敵。いや凌駕さえするだろう」
その言葉を受けて、ランボッサ三世の表情が僅かに動いた。
バハルス帝国、皇帝執務室。
ジルクニフは執務机に突っ伏していた。ピクリとも動かないので見る人が見れば皇帝が謀殺された一大事に見えるかもしれない。
「疲……れた……」
「お疲れ様です陛下……」
「余は……もう……ここから……動きたくない…… ずっと……宮廷に……引きこもる……」
帝国に帰って来たジルクニフは行く前に比べて大きく見違えていた。主に体格的な意味で。
「陛下、向こうでは筋肉トレーニングでもしていたのですか? さすが神の御業ですね。見違えました」
「お、お前……余を見て最初に言うことがそれなのか……」
執務机に投げ出した腕の、服をはち切れんばかりに押し上げている入道雲のように盛り上がった上腕二頭筋をプルプルと振るわせてジルクニフは唸る。
「いえ、余りにもこう…… 気になったモノですから……」
「お前、ソッチの気があるんじゃないだろうな…… 秘書官から外すぞ……」
「いえいえ、滅相も御座いません! 私はノーマルです!」
執務室にはなんとも言えない空気が漂っていた。
ジルクニフは神から贈られたポーションを呑むと椅子に深く座り直す。
「ふぅ…… このポーション、効くなぁ……」
「”エリクサー”でしたか、宮廷魔術師が鑑定して泡を吹いて失神してましたよ」
「まぁ、万単位で贈られたからな。俺が普段使いしても良いだろう。追加でまた来るらしいしな…… 恐ろしい話だ……」
「どうしますか? このポーションを帝国全土に配れば国民は病などの憂いから完全に開放されますから国民の生産性はかなり向上するでしょう。もしくは他国との外交でもこのポーションをちらつかせればかなり無理な要求でも通せるでしょう。あらゆる病、怪我が完全に治りますからな。このインパクトは途轍もないものです。いえ捨てるほど在庫はあるのですが」
「いいんじゃないか?」
凄まじく適当に皇帝ジルクニフは筆頭秘書官の言葉に応じた。その表情は悟りを感じさせる達観したものになりつつある。
筆頭秘書官はその顔を見て「お労しい……」と胸中で呟いた。
ジル君強く生きて
メカ書けて楽しかった(小並感)