(未完)異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!?   作:DENROK

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蒼の薔薇回2


第22話:平和な邂逅

 

 

 

 

 

 背景が白黒で、この場にいる面々だけ色彩を持った異空間。

 この異空間にはこの場にいる者以外に住人は全くいない。

 生活臭が全くしないとこんなに違和感があるのかと蒼の薔薇の面々は内心驚く。

 そんなどうでも良いことでも余りにも違和感があると意識に上がってくる。

 そんなことを考えるほど蒼の薔薇のイビルアイを除いた面々は目の前で繰り広げられる話の蚊帳の外だった。

 

 「良く出来てる話だな」

 

 「十三英雄ねぇ。知らないプレイヤーなのが良いんだか悪いんだか」

 

 「ふふ、人間種を選ぶから寿命に縛られるのだ」

 

 「まぁねぇ…… 皆人間種ばっかり選んじゃってるから、まぁ自業自得よね」

 

 「老化は人間種の宿命だからな、ゲームシステムはそう簡単には覆せない、まぁ我がナザリックには関係のない話だがな」

 

 「ふふふ、ギルドの潤沢な国庫ならアウラとマーレの不老不死化も問題ないわよ」

 

 不敵に笑う二人のプレイヤーはさも愉快そうに語る。

 別のテーブル席に座るダークエルフの男女が目を潤ませてグシグシと涙を拭った。

 

 

 

 仮面を外し素顔を晒したイビルアイに声がかけられる。

 

 「イビルアイ。お前はプレイヤーについてドコまで知っているのだ?」

 

 「何も、ほとんど何も話しては貰えなかったんだ。今話したことで全てだ」

 

 「まぁあたしも同じ立場ならどう話していいか分かんないしね。逆に何か聞きたいのかしら?」

 

 「あなた達は神なのか?」

 

 単刀直入な問いだった。

 

 「あっはははははは!!! そんなわけないじゃないの!!」

 

 「うっくく! お、俺達が神に見えるのか? どうなんだ?」

 

 問いを受けたプレイヤー達は爆笑し、我慢できないとばかりに腹を押さえながら、プレイヤーの青年はぐるりと席についた者達を見回して逆に問い返した。

 

 「た、確かに、神……には、見えんな」

 

 「むしろ、人間にしか見えないですね」

 

 「だなぁ、俺もあんた達が神とか言われても全然ピンと来ないぜ」

 

 「ぶっちゃけ可愛い男の子以外はどうでもいい」

 

 「可愛いは正義」

 

 蒼の薔薇の面々はうんうんと頷く。

 

 

 

 

 「そりゃあそうよ、あたし達も人間だし。あー元ね」

 

 「うむ、まぁいずれはバレるだろうしな。今言っても構わないだろう」

 

 瞬間、空気が爆発するようなざわめきが生まれる。プレイヤーの取り巻き達の取り乱しようがもの凄く、ガタガタと椅子が床を引きずる音が色のないレストランに木霊した。

 それでも取り巻き達は弁えているのかすぐに静かになったが。

 

 「あー勘違いするなよ、あくまで元だ。もう人間的な精神はほとんど残っていないだろうな」

 

 「そうねぇ。あたしも人間を同族だと思う感覚はもうないわねぇ。可愛い子は大好きだけど、なんか違うのよ」

 

 「う、うん? 貴方たちは、人間にしか見えないが……?」

 

 「あら? さっきも此処に来る前に言ったじゃない。”あたし達は全員異形種”だって、まぁアウラとマーレはダークエルフだから違うけど」

 

 「は、はぁ……?」

 

 イビルアイ他、蒼の薔薇の面々は食い入るようにプレイヤーの青年と少女を見つめるが、人間にしか見えずに困ったような顔をするばかりだ。

 

 「あー、あたしは種族は神霊(ディバインスピリット)よ。んー妖精(フェアリー)精霊(スピリット)の一番偉い奴って言えば通じるのかしら?」

 

 「俺はこう見えて死の支配者(オーバーロード)だぞ。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の親玉だな。尤も今は隣にいる馬鹿がかけた魔法のせいで人間の体になっているがな」

 

 ますます蒼の薔薇たちは困惑する。眉を顰めて唸るしかない。

 

 「しょ、証拠はあるのか…… いや、ぷれいやーにこんなことを言うのは失礼かもしれないが」

 

 

 

 イビルアイの言葉を受けて、プレイヤーの美少女は顔を手で隠し、手をどかした瞬間。

 そこには美少年がいた。空気がキラキラと光るように錯覚するほどの尋常ではない美貌の少年である。

 

 「ホラ。これで……いいか?」

 

 「ファッ!?」

 

 「!? どういうことなの!?」

 

 イビルアイが吃驚し、ラキュースは顔を赤らめながら口元に手を当てて驚く。

 

 「大きすぎる。残念」

 

 「残念すぎる」

 

 「かなり良い男だが、童貞の匂いがしねー。つまんねーな」

 

 他の蒼の薔薇の評価は概ね渋かったが、驚愕しているのは確かだった。

 

 「んん! あー! あー! 声はこれでいいかな。ギルド長」

 

 「おおおお! おう! インランだよ……な?」

 

 程よい筋肉質な男性の体の美少年と化したプレイヤーの美少女──インランという。が、喉を押さえて発声練習のようなモノをしながら隣に座るプレイヤーの青年──モモンガという。に良く通る男性の声で問いかける。

 モモンガは激しく狼狽えながらも若干の疑問系で返した。

 

 「わはは! 驚いたか!? そうだろー! スッゲー沢山練習したからな!」

 

 「ああ、なんだインランだな。うん」

 

 納得した顔でモモンガが頷く。

 男性化したインランは凄まじく美形の少年だが、若干知性を疑うほど破顔して大笑していた。しかしそれでも超絶な美形は美形のままなので不快感は不思議とない。

 だが、服装はワンピースの変わり種みたいな服一枚しか纏っていないので、見た目から漂う犯罪臭は先ほどの比ではなかった。

 

 「どうだ? コレで証拠になっただろ! ん? なんないかな?」

 

 顔をペタペタ触りながら無邪気な笑顔でインランがイビルアイに問いかける。

 イビルアイもインランの顔に少女の小さな手を伸ばしてその美しい少年の顔を確かめるように触る。

 

 「幻術……ではなさそうだな。いったいどういう手品だ?」

 

 「いやいや、この体は作り物だからな。見た目なんていくらでも変えられるんだぜ? まぁ俺は男でも女でも宇宙一美しいけどな!! わはははは!!」

 

 このアホっぽさは男女の姿のどちらでも共通しているのだなと同じテーブルに座る面々は思った。それと確かに外見が異常に美しい点は共通している。発言がどこかアホらしいので見た目に激しく釣り合っていないが。

 

 「ふぅ! あー楽しかったぜ! ──どうよ!! あたし凄くない!? これは名実共に性を司ってるでしょ!? マジインランちゃん神がかってるぅ!! あははは!!」

 

 インランの声が男性の低い声から、非常に愛くるしく玉を転がすような心地よい高い声に変わり、座高も縮むと次の瞬間には顔も美少女のモノになっていた。髪も艶のある癖のない黒髪を左右で大きなリボンで結って垂らしたものになっている。リボンはどこから現れたのだろうか。

 

 

 

 「う、うむ! 分かった! 確かに人間ではない……んだよな?」

 

 イビルアイの声がドンドン自信がないものになり、最終的に首を傾げて疑問系となる。

 

 「あんた分かってないじゃないの!? ちょっとせっかくインランちゃんがインランくんに成るところまで見せたのに!」

 

 イビルアイに掴みかかる勢いでインランが椅子から立ち上がると抗議した。

 

 「まぁ、見た目はいくらでも偽装できるのも事実だからな。異形種が一時的に人間化して人間専用の街に入るためのアイテムもあるくらいだ。俺も今は外見はほとんど人間化してるから、異形種といっても分からんだろう」

 

 モモンガは嘆息気味にそう述べると立ち上がり、アカデミックガウンの胸元を正しながらさらに口を開いた。

 

 「なかなか他では聞けそうにない話が聞けたし、別に俺達が異形種だとお前達が信じる必要もない。これでお開きとしようか」

 

 「む、そうか? 私としてはまだ聞きたいことが山ほどあるのだが」

 

 イビルアイは立ち上がったモモンガを見上げながら不満そうに口を尖らせて食い下がる。

 

 「ならば、我がナザリック地下大墳墓に来るが良い。プレイヤーについて知りたいならプレイヤーの拠点に来るのが一番だろう」

 

 「それは私達も一緒に伺って宜しいということなのでしょうか?」

 

 蒼の薔薇のリーダーであるラキュースが問う。イビルアイ単身で行かせるのが心配なのが3割。残り7割は純粋に神の拠点に行ってみたいという好奇心である。ラキュースは英雄譚に密かに憧れているし、神というものにもっと触れたいとも思っていた。

 

 「勿論だ。来客は歓迎しよう。盛大にな!」

 

 英雄の卵であるまだ年若い美少女の問いに、モモンガはニヤリと笑って返す。

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、ああああ! ああああの女ぁああああ!!!」

 

 「許せないでありんす! ありんす! 至高の御方に笑いかけて頂けるなんて!」

 

 「ブッコロ! ブッコロ!」

 

 ゴリラとヤツメウナギが正体を現しかけている脇で、守護者達は真面目な空気で話しあう。

 

 「至高の御方々が元とはいえ人間、これは大変な事実ですね」

 

 「私は知っておりましたが、それはそんなに重要なことなのでしょうか?」

 

 埴輪がこともなげに言い放ち、守護者達の集いが騒然となる。

 

 「なんと!? ……本当ですか?」

 

 デミウルゴスが目を開いて驚いた瞬間。

 周囲の景色に一瞬で色彩が戻ってくる。インランがワールドアイテムの効果を切ったのだ。

 この場の話はお開きである。至高の存在に尽くすことよりも重要なことはシモベには存在しないのだから。

 先ほどまでの喧騒が嘘のように、一瞬で守護者達は表情を引き締めて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 レストランからいきなり消えたかと思えば、今度はいきなり現れた蒼の薔薇達とモモンガとインランにその取り巻き達に、たまたまその光景を近くで見ていた店員が腰を抜かして驚いていた。

 面々が見ればテーブルには湯気をたてる料理がいくつも並べられている。ちょうど今しがた出来た料理を給仕していたらしい。席に客がいなくともしっかり仕事をこなしていたということだろう。

 いきなり目の前のテーブルに人が一斉に出現したら驚くのも無理はなかった。

 

 そんな店員を無視してモモンガは椅子に座り直すと口を開く。

 

 「それでどうするのだ。今すぐ来るのであればそれでも構わないぞ?」

 

 「申し訳ありませんが、我々にもアダマンタイト冒険者としての立場がありますので、今すぐ此処を離れるわけにもいかないのです。数日程度で動けるようになるとは思いますが、正確な日時まで指定することはできません」

 

 蒼の薔薇のリーダーであるラキュースがモモンガに対応する。慣れているのか中々様になっていた。

 

 「そうなのか、ならばコレを渡しておこう」

 

 「これは?」

 

 ラキュースは手渡された手に収まる程度のサイズの長方形の箱のような物を見て疑問符を浮かべる。

 

 「通信機だ。必要になったらその突起を指で押さえながらそのアイテムに話かけるが良い。ナザリックにいる誰かしらが対応してくれるだろう。その後迎えの者がすぐにやってくるはずだ」

 

 「ネタアイテム筆頭の通信機が役に立つ時がくるなんて、なんか感動ねぇ」

 

 感慨深げにインランが頷く。ユグドラシルでは《伝言(メッセージ)》をほぼ全てのプレイヤーが使っているので、一々手元に出して使用する通信機は完全にフレーバーアイテムと化していたのだ。無駄にリアルなノイズや低音質まで再現されている誰得仕様である。

 

 「こんなに素晴らしいマジックアイテムをお貸しして頂けるとは、お気遣いありがとうございます」

 

 ラキュースが感動した様子で頭を下げる。

 

 「まぁ、それは友好の証として受け取るが良い。なんならもう1セット贈ろう、好きに使え」

 

 あまりにもラキュースが感動しているので、モモンガは追加で2個の通信機を手渡した。他の通信機と混同しないようにペア同士で色が同じになっている。

 ソレを受け取ったラキュースは破顔して喜んだ。

 

 「まぁ! ありがとうございます! 凄く助かりますぅ!」

 

 「本来はチャンネルを切り替えて通信先を選べるのだが、まぁ難しいことは今度ナザリックに訪れた時に教えよう」

 

 「ところでぇ、うぷっ! 何よ?」

 

 「口説くなよ。めんどくさいだろうが」

 

 会話に割り込もうとしたインランの口元にモモンガの鋭いチョップが当たり、インランはモモンガを睨む。

 

 「まだ何も言ってないじゃない!?」

 

 「気配で分かるぞ、何年付き合いがあると思ってるんだ」

 

 ニヤリとモモンガが笑った。

 

 「これは!? 嫉妬ね!? 遂にあたしがギルド長の子供を孕む時が来たのね!? ヒャッハー!!」

 

 「ま゜!!(心停止)」

 

 想像を絶するセリフにモモンガが変な声を上げて椅子から床に崩れ落ちた。

 

 

 




 外見が人間だと心情的に友好的になりやすいんだろうけど、中身は悪魔かもしれんよ
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