(未完)異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!?   作:DENROK

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八本指回 メンヘラ回


第25話:神の息吹

 

 

 

 雪崩のように人が部屋に押し寄せては書類の束を机に置いていく。

 種類が積み上げられていくのはただの机ではなくドーナッツのような形状をした円卓である。

 円卓を囲むように九人の男女が椅子に座り、ほとんどの者は目の前に積み上げられ今なお標高が高くなっていく書類の山を唖然とした顔で見つめていた。

 

 「……なんだコレは?」

 

 「資料です」

 

 円卓に座る壮年の男性が、良く通る声で問いに答える。

 この男はこの場の進行役であり、同時にこの場の全員が属するとある組織のまとめ役でもあった。

 とある組織とは八本指という名で巷では知られ、同時に恐れられる強大な犯罪シンジケートである。

 

 今、円卓には八本指の名の由来ともなっている組織内部の八つの各部門の長を務める八人と、さらにまとめ役の男を合わせた全部で九人の男女が集っていた。

 まとめ役の男は犯罪組織のトップとは思えないほど優しい声音で面々に語りかける。

 

 「件の神について、我が組織の全諜報力を駆使して徹底的に情報を集めました。当然各部門で独自に情報は入手しているとは思いますが、それでもこの資料は一読の価値があると思いますよ」

 

 円卓に座る面々は小さい文字がビッシリ書かれた書類を手に取り眉を顰めた。情報量の多さにいっそ執念さえ感じた。

 ギラギラとした瞳が面々を貫く。

 

 「ははは、この書類の山を作るために利益が吹っ飛びましたよ」

 

 「楽しそうだな……」

 

 「まぁ情報は力だからな」

 

 ペラペラと紙を捲る音が響く、どれも値千金の価値がある情報が記されていた。

 

 「とりあえず結論を先に、──勝てません」

 

 まとめ役の男は優雅に腕を広げてそう口火を切った。

 

 

 

 

 「飛行するゴーレムの推定難度150以上? 六腕どころかアダマンタイト冒険者を全て束ねても勝てない!?」

 

 一人の叫びに円卓を囲むスキンヘッドの巨漢がピクリと反応する。

 

 「あの大質量を飛行させる術はこの世界には存在しません。理論上は可能ですが、余りにも現実的ではない。資料の通りです」

 

 「仮に飛行させる場合は第三位階魔法詠唱者を千人単位で動員する超大規模儀式が必要だと? ありえんだろう」

 

 「いえいえ、それは《飛行(フライ)》で飛ばす場合の概算魔力です。ご存じの通り、この魔法は特性として飛行重量の増加に対して致命的に魔力消費が増大します。数学では指数関数と呼びますが、重量が百倍だと消費魔力は一万倍ですよ」

 

 「では、例えばドラゴンはそんな馬鹿げた魔力で飛行しているのか?」

 

 「恐らく違うでしょう。何か別の魔法なりカラクリと推測されています」

 

 「ならばこの概算には意味はないのではないか、わざわざ金をかけてこんなことを調べていたのか?」

 

 「逆に言えば、我々にとって未知の技術で飛行しているわけです。十分脅威ですよね? 知らないことほど恐ろしいことはありませんよ」

 

 「ワイバーンより速く飛べてもそれだけでは脅威にはならんだろう」

 

 「分かりませんよ? もしかするとあのゴーレム単機で国を滅ぼせるかもしれません。何しろ全てが未知のゴーレムですから。そもそも飛行型ゴーレム自体、我々が調べた限り古今東西どこにも存在していませんでした。この推定難度は歴史に伝わるビーストマンが使用したと言われる伝説のゴーレムと同等の性能のゴーレムだと推定した場合の話です」

 

 「推測ばかりじゃないか、過大評価じゃないのか?」

 

 「それはこれから資料を読んでいけば分かりますよ。むしろこの推定難度でも甘めの評価だと私は個人的に思っています」

 

 不敵にまとめ役の男が笑う。

 

 

 

 

 資料は天使に関する部分にまで進んだ。

 

 「天使が降臨したというのは本当なのか」

 

 「それはもうマジですよ」

 

 「マジか……」

 

 天使に関する資料だけで抱えきれないほどの量になる。ことがことだけに念入りに調べていることが窺えた。

 

 「慈悲に溢れたまさに天使にふさわしい振る舞いをしていますね」

 

 どうやって情報を手に入れたのか、資料には法国での天使の行動が詳細に記されていた。

 法国の下々の者達にも声をかけ、教えを与え。不治とされた病に侵された者を全て癒やし、寿命以外で死んだ者を悉く蘇生させ、さらに神官達に魔法の手解きなどもしているらしい。

 それにより法国での天使への熱狂ぶりは狂信の域に達していることが資料から窺えた。

 

 「いったい何処から来たのだ。この天使とやらは……」

 

 「神の世界からじゃないですか?」

 

 その言葉に場がざわつく。

 この場には現実主義者しか存在しない。そうでなければ生き馬の目を抜くような犯罪組織の中でトップまでのし上がれないからだ。

 神の世界などという世迷い言はこの場の誰も信じていなかった。

 

 「馬鹿な! そんなふざけた話があるはずがない!」

 

 「本物の天使などいるはずがない! 何か裏があるはずだ!」

 

 「しかしこの天使は、既存の蘇生魔法では灰になるような者達でさえ悉く魔法で蘇生しています。いいですか悉くですよ。千人では効かない数です。そんな人知を超えた大魔法を際限なく行使できるような存在はもはや神と実質的に差がありません。法国が彼等を神と崇めるのも納得できる話です」

 

 捲し立てるように語られ、円卓の面々は怪訝な顔になる。

 

 「なんだ貴様は、まさか神を崇めるカルトの仲間入りをしろとでも言うのか?」

 

 「我々は非合法なビジネスを生業とする八本指だぞ、宗教団体ではない」

 

 ヤジを飛ばす者とは別の者が目を輝かせながら口を挟む。

 

 「しかしこの魔法は素晴らしいな、この魔法をちらつかせれば権力も金も思いのままだ」

 

 「同感だ。しかしなんだこの第十位階という子供の考えたような位階は」

 

 「天使の自称ですが第十位階の魔法の《完全蘇生(トゥルーリザレクション)》という蘇生魔法だそうです。あまりにも人知を超えた領域なので、天使の言うことの真偽は我々にはどうあっても分かりません」

 

 別の資料を手にまとめ役の男はさらに語る。

 

 「さらにありますよ、天使は神と二人でビーストマン十万の大軍を一撃で(みなごろし)にしました。これは我々にも確認出来る紛れもない事実です」

 

 「はは…… もう驚かんぞ」

 

 「一撃……? プロパガンダではなくか?」

 

 「私はもう良くわからないんだけど、帰っていいかしら?」

 

 ずっと黙っていた八本指の中で麻薬部門を仕切るヒルダという妙齢の女性が無表情で口を開く。

 この円卓には九人いるがヒルダの他にも口を開いていない者は他にもいる。内容の突飛さに口を挟めないのだ。

 

 「会議から抜け出すと組織からの離反と見なしますよ?」

 

 「いや、ありえないでしょう。地平線まで届く魔法でビーストマン達は塵も残らなかったんでしょう? こんなの相手に私達に何が出来るっていうのよ」

 

 「それをこれから決めるのですよ。もう理解出来ていると思いますが神の機嫌次第で我々は滅びますよ。あなたが先走って勝手なことをしないためにも、この場に最後まで残って下さい」

 

 一人が呆然と呟く。

 

 「神か……」

 

 

 

 

 「目下の懸念事項としては、王国が神の機嫌を損ねかねないことです。貴族が無能なことは今までは我々に大きな利となりましたが、これからはそれが真逆に働きます」

 

 「あの豚共か、確かに神を怒らせそうだな」

 

 「何も見えていない無能どもめ……」

 

 面々は顔を歪める。王国の貴族の無能ぶりは皆よく知悉していた。何しろそのおかげで八本指はここまで大きくなったのだから。

 貴族の無能の恩恵に与っていないものはこの場にいない。

 

 「王国が滅ぶついで(・・・)で、我々も巻き添えを食らう可能性はかなり高いのですよ」

 

 面々は天井を見上げる、その上の地上には王国の首都が広がっているのだ。

 八本指は王国に寄生する立場にあり、宿主が滅べば一緒に滅ぶのは必然である。

 

 「……今から貴族に手回ししても間に合わないかもしれません。最悪の場合は王国を放棄することもありえますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリックでルベドの起動実験を行う前にまで時間は遡る。

 上質なソファーに腰掛けたモモンガに隣に座り太ももが触れあうほど密着したインランがしなだれかかっていた。

 ガッシリとした広い肩に少女の細い腕が回され美しい顔がモモンガの顔に向けられて甘い声音で囁かれる。

 

 「ちょっとあたしを殺してくれない?」

 

 「またですか?」

 

 モモンガは一瞬で意味を理解する。もう慣れていた。

 ユグドラシル時代はインランをモモンガは両手の指で数えられないほど殺している。

 

 「もうゲームじゃないですから、何が起きるか分かりませんよ。リスクが余りにも大きすぎます」

 

 「ちょっとビルドを組み替えたいのよ。いいじゃないあたしでプレイヤーの蘇生実験すれば」

 

 思わず抱きしめたくなるような男心を串刺しにする外見の美少女に纏わり付かれながら、モモンガは肉の付いた精悍な印象の顔の眉根を寄せてしばし黙り込む。

 

 「むぅ、蘇生に失敗した場合俺は孤独死しますよ」

 

 「なんだ結構あたしのこと大事なのね」

 

 「それはもう、最後に残ったたった一人の友達じゃないですか」

 

 「それは恋人にはならないのかしら?」

 

 ふーっと、モモンガの耳に甘い香りがする吐息が吹きかけられる。

 

 「ないです無理ですゴメンなさい」

 

 無表情でモモンガは即答した。

 

 「んー、あたしはあんたを満足させられるわよぉ?」

 

 嫋やかなな指がモモンガの太ももをすりすりと擦り上げる。

 

 「それはアルベドで間に合ってますんで」

 

 「まぁいいわ。時間はタップリあるからね」

 

 小悪魔のように笑みながらインランはより強くモモンガに抱きつく。

 

 「とにかく蘇生が確実だと分かるまではダメです」

 

 「あたしが自殺してもいいんだけど?」

 

 「ちょっと! やめてくださいよ本当に!」

 

 「ちゃんと蘇生してね。一番安い魔法でいいから」

 

 インランはソファーから立ち上がるとパーカーを脱ぎ捨てた。パーカーは光と共に消えていく。

 完璧なプロポーションの肉体をモモンガに晒しながら、インランは手元に大きなライフルを取り出す。ライフリングの刻まれていない散弾銃と呼ばれるものである。

 

 「ちょっ! 待って!」

 

 モモンガが立ち上がるよりも速くインランは自身の胸骨に銃口を密着させて、トリガーに手を伸ばした。

 

 ドン! 炸裂音と共にインランの体がぐらりと揺れる。

 

 「痛っ! 何コレもの凄く痛いんだけど!」

 

 少女の胸には大穴が開き、モモンガからは穴の向こうに部屋の壁が見える。出血は一切なかった。

 

 「あー? 本当に心臓がないのねこの体」

 

 胸の大穴に前から腕を突っ込んで背中を触りながら(・・・・・・・・)インランは口を開いた。胸に大穴が開いているのにしっかりと床に直立している。

 

 「あたしはクリティカル無効なんだけど、頭を吹き飛ばしたらどんな感じなのかしら? あぐ」

 

 散弾銃の銃口を少女の小さな口を目一杯開けて突っ込む。

 

 それを見てパニックになって動きが止まっていたモモンガが再起動した。

 急いでインランの元に駆けるが引き金が引かれる方が速い。

 

 「待って!!」

 

 ドン! 再び炸裂音が響く。

 

 モモンガはその光景を見て心臓が止まるかと思った。インランの美しい顔の顎から上が消し飛ぶ瞬間を見てしまったのだ。

 少女のような声がモモンガの喉から飛び出す。

 

 「ひぃ!? う、うわああああああ!!!!」

 

 ドサリと床に少女の体が倒れる音が立った。

 今度はぴくりとも動かない。四肢はグッタリと床に投げ出されている。

 

 「いやあああああああ!!!!!!!!」

 

 「インラン様ぁあああああああ!!!!!!!」

 

 先ほどから硬直して声を出せずにいた部屋に控えていたメイド達が一斉に金切り声を上げた

 

 その声で一瞬我に返ったモモンガはすぐに行動を始める。

 手元に蘇生の短杖を取り出すと間髪入れずに蘇生魔法を目の前の頭部のない少女の体に向かって行使した。

 

 

 

 

 

 

 

 「いやー、死んだわ。死んだ死んだ」

 

 「やめてくれよおおおおお!!!! ほんとにもおおおお!!!!」

 

 床に倒れたまま上半身だけ起こした五体満足のインランは、モモンガに抱きつかれていた。

 

 「あら、これは役得ね」

 

 インランは笑顔でモモンガに腕を回して抱きつき返す。

 

 「それで大丈夫なんですか!? どこか異常はありませんか!?」

 

 「あ、しまった」

 

 「え!? どうしました!?」

 

 モモンガはインランの言葉にさらに顔を青くした。

 

 「ギルド長に強欲と無欲を渡して殺して貰った方が経験値は無駄にならなかったわねぇ」

 

 「《完全なる戦士(パーフェクトウォーリア)》あああああああ!!!」

 

 ギリギリとインランの体がモモンガの腕で締め上げられる。

 レベルダウンしてさらに裸の状態で何も装備していない今のインランには十分以上に効いた。

 

 「ちょちょちょちょちょ!!! 痛い痛い痛い!! 出ちゃう内臓でちゃうううううう!!!!」

 

 本気で痛がりながらインランは泣いてモモンガの肩を叩くが死の抱擁は暫く続いた。

 

 

 

 

 「あー、痛かったわ。まさかリョナられる側に回るとは……」

 

 ポーションを呑みながらインランは呟く。今はパーカーを纏っていた。

 

 「後でメイド達に謝ってくださいよ、ヤバい取り乱しようでしたから」

 

 錯乱したメイド達は、錯乱の状態異常を解いたあと大事を取って他のメイドと交代させられている。

 

 「まぁベッドでいくらでも謝ってあげるわよ」

 

 「はぁ、本当にもう! 俺は心臓止まるかと思いましたよ!」

 

 「んふー、どうよ? あたしがいかに大事な存在なのか再確認したでしょー? 今後はもっと大切に扱ってね?」

 

 さきほどのようにソファーに二人で密着して腰掛けながら、インランは喜色満面で語りかけた。

 

 「いや、自傷行為に走るとか完全にメンヘラじゃないですか」

 

 「今後はギルド長が殺してね。経験値が勿体ないし」

 

 「はぁぁぁぁぁ…… まだ死ぬんですか。蘇生が出来ることが分かっているので、必要ならばかまいませんが」

 

 「今度ね。今は良いわ。5レベルダウンで丁度いいし」

 

 裸パーカーのまま、インランは手に嵌めて非表示にしていた籠手を表示させる。強欲と無欲である。

 

 「何のクラスを取得するんですか」

 

 「ちょっとクラフトの上位職をね。しかしコンソール出ないんだけど、どうやって選べばいいのかしら?」

 

 「えぇ…… そんな状況で死んだんですか? やっぱり馬鹿ですね」

 

 モモンガは心底呆れた顔で隣に座る美しい少女を見る。艶のある漆黒の髪の下に真面目な顔を作って手元を見つめていた。

 

 「とりあえずやってみましょう。なんとなくフィーリングでいけることは、ジルちゃんに経験値上げたときに分かってるのよ」

 

 インランの両手に装着された強欲と無欲の漆黒と純白の籠手が輝きだす。経験値エフェクトである。

 

 「ん? なんか、ある」

 

 「ある?」

 

 「なんだろう。すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、あたしのほうに」

 

 唐突に珍妙な語りを始めたインランにモモンガの目が点になった。

 

 「お、おう?」

 

 「なんか凄い力を感じるから、コレ取るわ」

 

 強欲と無欲の籠手から溢れだした光がインランの体に流れ込んでいく。籠手に貯めこんだ経験値を自身に流し込んでいるようだ。

 

 モモンガは光がインランに流れ込んでいく中で、その存在感が爆発的に大きくなる感覚を感じていた。

 すぐ隣から強く押されるようなオーラのようなモノを感じる。

 

 「インランさん? 何を取ったんですか?」

 

 「さぁ?」

 

 ニコリと微笑みを向けるインランに、モモンガは不可思議な威圧感のようなモノを感じていた。

 

 

 




 そのうちモモンガはインランに喰われる
 友人だから強く拒めなくて最終的に体を許す異性の友達ポジション。
 普通は男女逆だよね。
 モモンガはヒロインだった?

 飛行の魔法はより位階の高い特化魔法があるという捏造設定。
 第三位階のただの《飛行(フライ)》はキャラ一人を浮かばせるのが限界の廉価版的位置づけ。
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