(未完)異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!?   作:DENROK

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第7話:いつから反省したと錯覚していた?

 

 「ゆぐっ えぐっ ずびばぜんでじた……」

 

 パワードスーツを脱がされ、地面に正座させられたインランは、宝石のように美しい少女の顔をクシャクシャに歪めて号泣していた。

 

 装着者がいなくなり、自律行動しているパワードスーツもインランの横で器用に正座してぺこぺこと頭を下げていた。

 

 「ゆ! ゆ! ゆるざんぞぉおおおお!!!!! この件に関してはマジで許さんぞ貴様ぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ズッシンズッシンと地団駄で地面に罅を入れながら、そんなインランの目の前でモモンガが顔を真っ赤にしてぶち切れている。

 

 

 さすがに一時間以上説教されて痺れを切らしたのか、すっくとインランは立ち上がる。

 

 「うっさい! ばーか! バレなきゃ犯罪じゃないのよ!」

 

 凄まじい言葉を残して、インランはその場からダッシュで離脱、逃走を始めた。

 

 周辺の空間に転移阻害をモモンガがバリバリにかけているので、転移は使えないのだ。

 

 「うぉおおおお!!! 仲間達よ俺に力を!!!」

 

 マジギレしているモモンガは、手元にスタッフオブアインズウールゴウンのレプリカを呼び出す。レプリカだがギルド武器の試験用の杖なので、並の神器級(ゴッズ)アイテムよりも性能が高い。

 

 「ひぃっ!? スーツ! スーツ!」

 

 走りながら後ろを振り返ったインランがソレを見て、悲鳴を上げながら走ったままガチャガチャとパワードスーツ(別名:仲間達の涙)を身に纏っていく。

 

 「《神霊召喚(サモンディバインスピリット)》!!!」

 

 さらにインランは自身が持つ最強の壁モンスターを召喚する。半透明の粘土のようなもので出来た巨人がモモンガとインランの間に壁として立ち塞がった。

 

 「くぅ、ヘルプぅう! 守護者なんだからあたしを守護しなさいよぉおおお!!!」

 

 さらにさらに、インランは近くで傍観していた守護者達に助けを求めた。

 

 「ならん!! ソイツを助けた奴はナザリックに入れてやらんぞ!!」

 

 なんか子供を叱りつけるお父さんみたいなことを言い出すモモンガ。

 

 

 

 スッとインランの側に一歩踏み出す者がいた。デカい埴輪である。

 

 キュッと軍帽の鍔を抑えながらインランの方へとダッシュする。いや、インランがレベル100どころじゃない速力で疾走しているので。今すぐ走らないと間に合わないのだ。走りながらスキルで変異し、ギルドメンバー最速の忍者の姿に変わる。

 

 距離が離れているので、会話は念話に切り替わった。

 

 『私はインラン様の側につかせて頂きます』

 

 『埴輪ぁあああああ!!! ありがとぉおおおお!!!』

 

 途轍もなく恩知らずな渾名を叫びながらインランは感激していた。

 

 『なんだと!? お、お前は俺が作ったのに!!』 

 

 『この場でインラン様を失えば、モモンガ様はとても悲しまれてしまわれるでしょうからね。主の幸せを第一に考えればこの選択が最も良いものだと判断致しました』

 

 『ッッッくそぉ!! 後悔するなよ!!』

 

 『うっさいばーか! けち! もげろ!』

 

 『貴様ぁああああああ!!!』

 

 念話でしょうもない口論を続けながら、モモンガは他の守護者に血走った目で目配せする。

 

 「お前達はどうするのだ?」

 

 他の守護者は至高の存在に手をあげるなど恐れ多くて出来ないという反応だった。

 

 「そうか、まぁ仕方ないかもしれんな」

 

 転移後にナザリック内で傅かれた経験から、モモンガは納得する。

 

 そして、ナザリック地下大墳墓にいる敏腕秘書に念話を繋いだ。

 

 『アルベド、ルベドを起動しろ』

 

 『ははぁ! ……は? 今なんと仰れましたか?』

 

 『いいからルベドだ! あの馬鹿に鉄槌を与えるにはもうソレしかない!』

 

 全身世界級(ワールド)アイテムの凄まじい能力向上と、ギルメンの血と汗と涙の結晶みたいな狂った性能のパワードスーツを纏ったインランにマトモなダメージらしいダメージを与えられるのは、最早ナザリックにはルベトかガルガンチュアくらいしかいない。

 

 というわけでモモンガはルベドを使うことにした。怒りで冷静な判断力を失っているのかもしれない。

 

 『今あのバカが居る場所の少し先に向けて、バカに直撃させられるタイミングでルベドを投下しろ。これはギルド長としての命令だ!』

 

 『か、かしこまりました…… しかし、インラン様にダメージを与えるのであればガルガンチュアで宜しいのではないでしょうか? さすがにご命令でもルベドを起動するのは余りにも危険すぎますわ』

 

 震えた声でアルベドから返事が返って来た。

 

 『ふむ…… はぁ…… いいだろうソレで頼む。 ただし殺す気でいけよ。 それでも止まらんだろうがな』

 

 アルベドの諌言を怒りに燃える頭でなんとか吟味し、モモンガはアルベドの諌言を受け入れた。

 

 『ははぁ! すぐに取りかかります!』

 

 

 

 

 

 平原を疾走する四足歩行の獣型のパワードスーツと忍者。

 

 インランとギルメンに変化した埴輪ことパンドラズアクターが併走している。

 

 先ほどの全力疾走よりは幾分か速度が落ちていた。後ろを振り返ったインランが宝石の様に美しい少女の顔に満面の笑みを浮かべる。

 

 「わははは! ギルド長も諦めたみたいね!」

 

 「どうでしょうか、我が創造主は私が言うのもなんですが、頑固で執念深いところがありますから」

 

 「あー、そうね、うちのギルドの方針としても諦めた可能性はないか。しかしうちのギルドは無駄なことはしない主義なのよねぇ。自分で言うのもなんだけど、今のあたしに有効な手なんてほとんどないと思うけど」

 

 「……では、残された有効な手を打ってくるのでしょうね」

 

 「まぁね」

 

 二人は上空を眺めていた。当たり一体がいきなり暗くなったのだ。嫌でも気づく。

 

 空が振ってきていた。

 

 

 

 「デイダラボッチ!!」

 

 インランは2対目の壁モンスターを無詠唱で召喚する。

 

 一瞬で地面に巨大な幾何学模様の魔方陣が生まれ中から巨大な手が飛び出し、空から墜ちてくる岩の塊に向かって伸びた。

 

 鈍い音を響かせながら、デイダラボッチが巨大な岩の塊であるゴーレムを受け止める。経験値が供給される限りデイダラボッチは無敵の壁になるのだ。

 

 「ぐッッ!! なんてことすんのよ!! あのバカ!! ここまでやるフツー!?」

 

 「さすがに今回はインラン様にも非があるのではないでしょうか?」

 

 「そーだけど!」

 

 パンドラに痛いところを突かれてインランもそれ以上二の句が継げない。

 

 「コイツが出てくるってことは、まさかルベドまで出てくるんじゃないでしょーね!? さすがにアレにはあたしと埴輪だけじゃ勝てないわよ!?」

 

 「可能性はありますね。ルベド殿の制御には成功しているのですか? いえ、私はずっと宝物殿にいたものですから、そういった情報には疎いのです」

 

 ガルガンチュアが真上にデイダラボッチによってだっこされた状態で、二人は暢気な会話を行う。しかし実際にはデイダラボッチが居る限りその近くが最も安全なのだ。経験値さえ残っているならばだが。

 

 うっかりデイダラボッチから離れると、ガルガンチュアの攻撃が当たりかねない。その事を二人は理解していた。

 

 「いやいや、全然制御なんて上手くいってないわよ。もうギルメンも残っていないせいで暴走したら止められないから起動実験もしてないわ」

 

 「そうですか、ならばルベドが出てくる可能性は低そうですね」

 

 「だといいわね」

 

 二人が話している間も、デイダラボッチにだっこされたガルガンチュアがだだっ子のように空中で手足を振り回していた。こうしてみる分には可愛いかもしれない。

 

 「じゃあ、こいつ投げ捨てるからダッシュで逃げましょうか。強欲と無欲に貯めこんだ経験値が勿体ないのよね」

 

 「おや、本当に逃げるのですか? 素直に謝った方が良いと愚考致しますが。ハッキリ申し上げますと、追跡を振り切るのはニグレド殿がいる以上はほとんど不可能です」

 

 「うぐぅ、……仕方ないわね。ギルド長をボコって納得させましょうか。そもそもギルド内裁判を行おうにももう二人しか残ってないんだからやれるわけがないのよね。なんか言ってて悲しくなってきたわ」

 

 ネジの飛んだ結論を出したインランが徹底抗戦の決意を固める。

 

 「私はシモベに過ぎませんから、仕えるべき主がそう決めたのであれば、それに従います」

 

 パンドラズアクターとしては、既にナザリックを捨てたギルドメンバー達などどうでも良かった。最後まで残り今も目の前にいる主達に比べれば。もう過ぎたことで内部抗争など起こされてはたまったものではない。

 

 

 

 

 

 「《上位排除(グレーターリジェクション)》」

 

 一瞬でデイダラボッチが掻き消えると、支えが無くなったガルガンチュアが落下してくる。

 

 下敷きになる前にインランとパンドラズアクターは離脱していた。

 

 「来たわね。待っていたわよ!」

 

 「何をぬけぬけと!」

 

 空に浮かぶモモンガと地上のインランが睨み合う。

 

 胴体に比べて短い手足を使ってよちよちとガルガンチュアも立ち上がった。

 

 

 「まさか今更素材を返せとか言わないわよね?」

 

 「そんなことは言わん。反省しろ! お、お前なぁ! 素材が足りなくて皆ひぃひぃ言ってただろうが! 良心が痛まないのか!?」

 

 カルマ値-500に良心の呵責を攻められるというシュールな絵面が生まれている。まぁカルマ値はゲームの数値だが。

 

 「いや、まぁね。うん、めんごめんご」

 

 インランは片手を額の前に立ててウィンクした。殺意。

 

 「貴様ぁ! そこまで外道だったとは! 失望したぞ! お前! もう少しはマトモだっただろう!?」

 

 「あはは! なんか罪悪感が全然湧かないのよねー。 当時は結構胸を痛めていたんだけどね。 なんでかしらねー?」

 

 無邪気なインランの笑顔を見てモモンガもちょっと我に返る。

 

 「とにかく、この件は許さん! もうギルド内裁判は機能していないが、それでもコレに時効はないと思えよ!」

 

 ズビシッ。 モモンガは指をインランに突きつけると叩きつけるようにセリフを吐き捨てた。

 

 「いやいや、きっと皆も許してくれるってば。多分」

 

 「ないわ! この件に関してはそれはないわ! 皆キレるわ!」

 

 「あ、そういえば、るし★ふぁーもメタトロンをちょろまかしてたわよ!」

 

 「仲間を売るなよ! え、マジで!?」

 

 「マジマジ、皆には内緒だぞって笑い合ってたわ」

 

 矛先を逸らすための作り話かと思ったが、るし★ふぁーである。普通にありえそうで、作り話だとモモンガには思えなかった。

 

 「お前らぁああああ!! 本当にもう!! 馬鹿ぁあああ!!」

 

 いつになく感情表現豊かなモモンガは茹で蛸のように顔を真っ赤にして空の上で怒り狂っていた。精神抑制が働かないのも考えものである。

 

 ガルガンチュアは空気を読んでいる!

 

 

 

 それから幾ばくかの時間が過ぎた。

 

 「はぁ……疲れたよパトラッシュ……」

 

 空に浮かんだままモモンガは怒り疲れていた

 

 「クッソ古いアニメの古典じゃないの。どうしたのよ」

 

 「あぁ……疲れた……なんかもう……いい……おうちでアルベドに癒やして貰うわ……」

 

 疲れた顔でモモンガはそう言うと、転移の魔法で消えていった。

 

 「よく分からないけど、許されたわ!」

 

 「いえ、許されてはいないと思いますが、もう追撃は諦めていただけたようですね」

 

 インランはアルベドに念話を繋ぐ。

 

 『アルベドー、取りあえず話ついたから、ガルガンチュア回収してくれるかしら?』

 

 『ははぁ! あのー、モモンガ様はどうしていらっしゃいますか?』

 

 『あぁ、そっちに戻ったわよ。監視してなかったの?』

 

 『えぇ、少し別件に取りかかっていたものでして』

 

 『なんかギルド長はアルベドに甘えるとかなんとか言ってたから、アルベド探してるかもよ』

 

 『なんですって!? と、とんだご無礼を致しましたわ。申し訳ありません』

 

 『まぁそっちにもう着いてると思うから、ギルド長の私室に篭もってるんじゃないかしら?』

 

 『ありがとうございます!』

 

 ここで念話は切れる。

 

 「どうでしたか?」

 

 「うん、ガルガンチュア回収してくれるってさ」

 

 忍者から埴輪に戻った埴輪とインランが話す。

 

 「いやー、助けてくれてありがとうね」

 

 「感謝など恐れ多い、主達を助けるのが我らシモベ達の存在意義ですから、当然のことをしたまでです」

 

 キリッと軍帽を握りながらポーズを決めて凄く格好いいことを言っているのだが、埴輪の表情は埴輪なのでインランには読め取れなかった。

 

 

 

 

 

 それから暫く経った後の、ナザリック地下大墳墓第九階層。モモンガの私室。

 

 その中の寝室で、モモンガはベッドに横になりながらアルベドに膝枕されていた。

 

 「アルベド疲れたよもぉおおおお!! あの馬鹿もうやだよぉおおおお!!」

 

 「おおよしよし、頑張りましたね」

 

 アルベドに膝枕されながら、モモンガはグリグリと顔をアルベドの腹に押しつける。

 

 アルベドはとても満ち足りた笑顔でモモンガの頭を撫でていた。

 

 

 

 




ガルガンチュア「ボムキング状態!」

アルベドに癒やしてもらう(意味深)

そろそろ二人とも自分達の精神が肉体にひっぱられて変質していることに気づく頃
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