Infinite Stratos Other Wings 作:槇島 包呉
「あぁ、こっちだこっち席はとってある。先に食事しながらですまないがな。」
先程から会話にあまり加わらずに何かを探していた様子だった蔵人が手招きとともにオルコットさんを呼ぶ。
「・・・・・・突然名指して呼び寄せて、話とはなんでしょうか?」
「まぁ本当なら食事の後が良かったんだが・・・・・・なにせ時間がないから手短に話すが、この書類を渡して記名してもらいたいのと、こっちが本題だ。ISの使用申請関係の書類の書式を教授願いたい。」
「え?あぁ、ありがとうございます・・・・・・って、はい?!」
必要以上に身構えていた所におもいっきり事務的な話題を切りだされて拍子抜けしたオルコットさんも何が起きているのか理解できていないようできょとんとした表情になっている。
「我々は最低限
「おい、俺のことかよ!」
素人というのが誰のことを指すのか明らかだったので思わず口を挟むが蔵人は平然と反論する。
「当然。」
「にしたってド素人って言い方は。」
「んじゃワンサマーおまえ申請手続き分かるのか?」
「マジサーセンした。」
情けなくもあるが実際の所書式の提出などやったこともないのだから分かるわけがない。
しかし、何のために蔵人がわざわざ俺と蔵人の前にオルコットさんを呼んだのかが理解できるのと同時にあまりにもゴーイングマイウェイな姿勢に唖然としてしまう。
昨日の放課後の時に気づくべきであったがこの友人は恐ろしくマイペースなところがあるようであった。
もっと唖然としているのは俺だけではなかったらしく、斜め向かいに座るオルコットさんも同様にぽかんと口を開いた状態で止まってしまっていた。
「今回の試合相手にわざわざそんなことを尋ねるなんて正気なんですの?」
なんとか調子を取り戻そうとしたのか自分の分の書類を受け取ったオルコットさんが尋ねる。
「それがどうした。あくまでただの模擬戦だ。それにこういった書類は普段からISの使用経験があるものが一番詳しいだろうよ。」
「まぁ、確かにそうですわね・・・・・・そういったことでしたら・・・・・・。」
「更に言うとだ、本来ならクラス代表にでも手伝ってもらったり用意してもらったりすべきものだろうがな。まさしくその席が不在なんだから当事者な俺達が調べて用意するしかないだろう?」
「そう、ですわね・・・・・・。確かに、私も本国ではそういった申請を作成したことも有りますし・・・・・・。」
マイペースと自分の考えを崩さない蔵人に徐々に丸め込まれつつあるオルコットさんを横目にその後も淡々と続けられていく事務的な要素を多く含んだ会話に耳を傾けながらも自分用に渡された申請用紙に目を通す。
「これ全部埋めなきゃいけないのかぁ・・・・・・。」
その申請書の項目の多さや文章量に思わず声が出てしまうほどであった。
因みにちらりと横目で覗き見た蔵人の手にあるEAF用の申請用紙は文章量こそ少なかったもののチェックリストや項目の数はこちらの数倍であった。
「なぁ蔵人、オルコットさん。コレ健康状態の欄っていつの段階で埋めればいいんだ?」
とりあえずざっと目を通して気になっった項目について尋ねてみる。
「確かに・・・・・・俺達は当日の朝と飛行1時間前、飛行直前の3回がベストだけれど・・・・・・一回分しか項目がないな。」
そこに関してはEAFとは項目が違ったようで蔵人も顎に手を当てて考えはじめる。
「えーっと、私は使用30分ほど前にメンテナンススタッフの方が最終チェック中に確認に来てましたわ。でも、こちらでは違うかもしれませんわね。」
そこへオルコットさんが自分の経験からの時間を教えてくれた。
「・・・・・・とりあえず空けといて提出の時に聞くか。」
そこから導き出した結論として一時保留することを選ぶ
「そうですわね。」
「そうだな。」
それに二人が同意したのを確認してとりあえずまずはオルコットさんを新たに迎え食事を再開することにした。
結局、朝食の賑わいは朝一から綺麗に化粧をした千冬姉が食堂にやってくるまで続くことになった。
「雷吾の姿も見てないし早めに教室に行くか。」
歩いても余裕を持って時間内に教室に行ける時間なのだが男子寮は半端に遠い上に特にすることもないので先に教室に行ってゆっくりしようと有斐が提案して皆やや早足で教室に向かう。
更に続くようにアリーナの使用許可申請用紙や専用ISの使用承諾書など複数の書類を片手にどのように纏めて提出するのかをああでもないこうでもないと議論しているオルコットさんと(一応雷吾の代理らしい)蔵人の姿があった。
「おにぃさんおぉーろぉーしぃーてぇー。」
そしてそののんびりとした移動速度からいつ教室にたどり着けるか分からなかったために何也によって小脇に抱えられて運ばれているせいでじたじたと暴れるのほほんさんが抗議の声を上げる。
そこから数歩遅れて思い出話に花を咲かせる一夏と俺、その話を聞く相川さんという一団でがやがやと会話を楽しみながら教室へ向かう。
その光景は亀よりも遅いほどゆっくりではあるが徐々にクラスメイトからは受け入れられ始めているようだったが、やはりEAFパイロットのことを詳しく知らずに印象やイメージだけで理解する他のクラス、他学年の生徒からは冷たい視線が向けられる。
そのうちの何割かが男というだけで俺にも向けられているのだからさすがにため息でもつきたくなる。
そうして教室に入った所で既に教室に来ていた雲親と合流する。
「よ、遅かったじゃないか。」
そんな風に言いながら手を上げて挨拶してくる雲親にお前が早すぎるんだよ。と笑って挨拶を返す。
雷吾も既に準備を終えたのか片手を上げて挨拶をしてきた。
ハーフだからかそんな仕草も様になっている気がしてずるいと感じてしまう。
しかし、感嘆する俺とは違いそんな姿に思うところがあったのかのほほんさんを解放した何也と有斐が雲親を呼び寄せるとせーので雷吾に向かって押し出してぶつける。
この時、重なりあった雲親と雷吾の姿に既に教室に居た女子生徒数名の目が輝いたような気がしたのはきっと気のせいであると思いたい。
「朝のHRを始める。」
そのようにふざけている内に時間が来ていたのか千冬姉の声とともに予鈴が鳴り、それまでそれぞれに行動していた生徒が席につき始める。
「今日の連絡は特にない。以上だ。」
そして僅か数秒というスタイリッシュな朝のHRを終えた。
「一発目の授業何だっけ?」
「ISの理論。」
何也が中身が入っているのかと思えるほど薄い鞄から筆記用具を取り出しながら尋ねてきたので応えつつ他の友人の様子を見る。
「理論か・・・おおよそ頭に入ってるし関係ないところはノートだけ取って『ぼくがかんがえたさいきょうのEAFコンテスト』用の機体設計図でも図面引いとくかな。」
「え?何そのコンテスト俺知らないんだけれど。」
「昨日の夜に広報のスタッフチームから民間向けにそういうのするってメール来てたよ。」
有斐と雲親がそのような会話をしながらも最低限必要なテキストなどを取り出していることにホッとしつつ雲親がメールに添付されていたらしいコンテストポスターをこっそりと教室の掲示板に貼り付けるのを眺める。
「マスタッシュだんでー、もっちー。お客さんだよー。」
そこへその動きのトロさで授業前の短い休み時間の間にどこへ行こうと考えていたのかわからないのほほんさんが教室の入口付近でやはり緩慢に長い袖をぶんぶんと振って雷吾と雲親を呼ぶ。
そこに現れたのは
「あ、もっちゃーんあと雷吾くんも!朝ゴハン食べれなかったでしょ?だから軽いものだけど持ってきたわよ!」
食堂が開く前に起きていたので朝を抜いたであろう二人を心配して自家製のメロンパンとフルーツジュースをいそいそと持ってきてくれたオカン属性の塊、権蔵(座右の銘は「カワイイは作れる」。)であった。
「権蔵アンタ教師だろうよ。こんな所居ていいの?」
雷吾と雲親ののほほんネームによって笑いすぎて危うく呼吸困難に陥りかけていたがなんとか復帰して尋ねてみる。
先程我が姉である担任は職員朝礼の為に職員室へと戻ったはずなのだが権蔵はここにいてもいいのだろうか。
「心配ないわよー。アタシの授業は今日二限目からだから。」
やーねぇ。と笑いながら告げる権蔵に何故か飴玉を貰うのほほんさん。
権蔵のエプロンポケットから出てきたあめ玉はなぜかやけに美味しそうに見えた。
「もっとー。」
もごもごと既に飴を一つ口に入れたままで権蔵に更に飴を要求するのほほんさん。
ハムスターでもないというのに何が目的なのか。
「心配しないでも飴ちゃんは逃げないからいくらでも持って行っていいのよ。」
「ありがとー。」
どっさりと音がしそうなほど飴をもらったのほほんさんが先ほどまでよりも僅かに早いスピードで自分の席に戻っていく。
興味本位で観察を続けると席に戻ったのほほんさんは相川さんと箒、それに周囲の女の子グループに飴を配り始めた。
「アンタ達にはこれよ。」
「あ、どうも。」
その後教室を出ていこうとしていた権蔵とたまたま目が合った結果、何故か仲間はずれはいけないからと蔵人、有斐、何也の分も合わせて飴玉を貰う。
「はい、権蔵から。」
「あ、サンキュー。」
「ありがと。」
「蔵人は?」
有斐と何也に飴玉を渡して姿が見えない蔵人の行方を尋ねる。
「トイレから戻ってきてたけど今本音さんにお菓子ねだられてる。」
「一体なにが目的なんだ?」
2人の言葉を聞いて教室の入口を見ると確かに蔵人とのほほんさんの間で飴とキャラメルの物々交換が行われていた。
一方権蔵お手製メロンパンを受け取った2人はなぜか悔しそうな顔でメロンパンにかじりついていた。
曰く、「悔しいことに腹が立つほどにうまい。」らしい。