Infinite Stratos Other Wings   作:槇島 包呉

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Blast of Wind

「思っていたより速いですわね。」

精密射撃を重視する装備のスターライトMk-Ⅲで飛行するEAFに狙いをつけるが相手は任意のタイミングでフラップを動かすことでISには真似する価値のないと思われる挙動で機体を不安定にさせ、狙いを外させてくる。

既に数度射撃を行ったがその中でも僅かなタイミングを見て間一髪で避けられてしまった。

成程。流石はIS学園にまで送り込まれてくる精鋭。観察力はあるようだ。

しかも遠距離戦はこちらの土俵だと理解しているらしく徹底的に距離を開けすぎないように保っているのである。

このまま誘いに乗ってこちらが下がればすぐにでもアレ(EAF1号機)は追撃をして近接機である向こうのフィールドに持ち込もうとするだろう。

しかしこのまま現状維持で中距離からの射撃に徹していては何も始まらない。

アレを使いたいところだがこの後の事も考えればできるだけ温存したいというのが本音である。

こちらの切り札を温存しつつこの状況を崩す。

それならば

「こちらから突っ込んでいけば!」

今まで相手との距離を一定に保つために定めていた移動方向を瞬時に慣性ごと入れ替え一直線に相手の方へ突っ込んでいく。

距離が縮む事によりこちらも不利な距離になるがそれでもペースを崩された相手に一方的に一撃を与えることができれば流れを生むことに繋がる上にうまく行けば交差は一瞬で過ぎ、再び一定の距離を保つことができるようになる。

そう思考する刹那、ハイパーセンサーが捉えたのはフラップではなく翼の付け根から主翼を90度回転させて翼全体を大きなエアブレーキにすることで空気抵抗により大きく減速しながらこちらにその機体を追い抜かせるEAFの姿であった。

『貰ったぁっ!』

そう声を上げる相手よりも早く咄嗟に機体の進行方向を真下に向ける。

万が一を考えて想定していた離脱コースで距離を稼ぎつつハイパーセンサーで相手の位置を再認識する。

何が起こっているのかは理解している。

慣性制御が完成されているISの運用機動では行う必要のない空気抵抗を意識したマニューバである。

それは訓練時代に空軍の戦闘機を相手にした際に目にしたものとどこか似通っており、相手が戦闘機の系列たる航空系パワードスーツだと理解するには充分なものであった。

戦闘のスピード感で加速された思考でそんな事を考えている間にも相手とこちらの位置関係は動いていく。

風に翻弄されるように急激なブレーキをかけたにもかかわらずEAFの1号機はぴしゃりとその手に装備されたガトリングの銃口をこちらに向けて更に相対速度を合わせるように一度スラスターの出力を調整すると機体を再安定させる。

慣性制御で劣っている相手をこちらが追っていたはずなのに一瞬の後に形成が逆転したことを教えるように鳴るロックオンアラートに余計な考えを排除して思考をクリアにさせるとアンロックユニットと身体を振り回して相手の方へと向き直りつつバレルロールの機動で回避行動を取る。

今度は攻撃を考えていないすれ違いの機動だったことが良かったのか想定外の動きは生まれずこちらの考えていた通りにお互いの位置関係が移動していく。

しかしそれだけで終わらせてくれる相手ではない。

お互いが交差すると同時にサイドスタスターや翼の可動を利用して小さな円の軌道でターンすると即座にこちらを追いかけてくる。

これではまるでドッグファイトである。

 

先程の回避マニューバによる移動方向への慣性は維持したままその身体だけを回転させることで追撃してくる相手に向かい合って急速後退をかけている姿になった直後に私が見たのは眼前に広がる飛沫のような銃弾の雨霰であった。

高速の判断で振り子のような軌道を行い、銃弾が飛来するエリアを回避する。

そして返礼とばかりに身体に抱き寄せたスターライトMk-Ⅲで応射を行う。

「やはり主力はあのガトリングですのね。」

精度のあるライフルの射撃などなら回避機動はまだ予測しやすかったのだが弾をばらまくことに特化したソレは少々厄介である。

相手にとって悪くない選択肢。

つまりそれはこちらにとって都合が良くない選択肢という意味でもあるのだ。

相手の状況判断能力もそれなりのものがあるということだろう。

更に最高速度は相手側が上らしくじわじわと距離が詰められている。

このままではこちらの不利に繋がるばかりである。

「これくらいの事では敗けられませんのよ!」

己を鼓舞する言葉とともに瞬時に挟み込んだ逆加速と慣性制御の合わせ技で相手を中心に円を描く軌道で機体を真逆の方向へ転進させ、高速ですれ違っていく相手の予想進路に再度スターライトMk-Ⅲの銃口を向けるとトリガーを引く。

相手も回避行動を優先したのかガトリングを構えてはいたが攻撃を仕掛けるタイミングを逃したようですれ違った後は再び距離が離れていく。

先程のニアミスからの回避に意識を持っていかれすぎることも無く改めてそのタイミングで射撃を行う相手を確認して、切り札の使用を決める。

「見事だと言わせていただきますわ。ですがこれならどうかしら。ブルー・ティアーズ!」

間髪入れぬ射撃を加えたはずだったが戦闘開始時と変わらぬ巧みな回避行動を見せられて、本来ならば一夏相手まで取っておこうと考えていた装備を起動させた。

『ビット兵器!』

こちらのISから切り離されたであろうソレを捉えた相手が叫ぶ。

「お行きなさい!ブルー・ティアーズ!!」

主人を守るように周囲に展開されたビットが脳内に描くコースへの誘導に従って螺旋を描いて回り込みながら飛行していった。

 

『流石ビット兵器、上手くはいかんかぁっ!』

ビットの解禁以降、致命傷こそないものの目に見えて被弾が増えた相手がようやくといった姿で、接近する軌道をとってしまった一機のビットに刀を突き立てて動きを止めた。

そして腰に装備されている装甲に固定のショットガンを打ち込んで完全に破壊される。

「よそ見はキケンでしてよ?」

(やりますわね。)

内心でビットを一機落とされたことを悔やみつつもそれを悟られぬようにそう誘いこんだのだと思わせる言葉と共に手に持ったスターライトMk-Ⅲで射撃を行う。

これが命中すればビット一機の損失に充分なお釣りである。

しかし相手も流石のものでその一撃はしっかりと回避されてしまう。

その後も数度か攻撃のタイミングを図るものの有効打と呼べるものは行えず、こちらがビットによる攻撃を行い相手がやや削られつつも凌ぐという流れが数度繰り返された。

『もう付き合いきれん!』

その流れを打ち切ったのは痺れを切らしたのか真正面から相対する軌道で突っ込んで来る相手側の動きであった。

攻撃手段をビットに絞ることで弾幕は維持しつつも一撃必殺のためのエネルギーをチャージすることに成功させ、わざと本体の側へと隙を作る。

これが狙いであった。

「これでトドメですわ!」

その誘いをチャンスと見た相手が飛び込んでくるのを確認して全力後退し、僅かに引きつけた後でフルチャージショットで迎え撃つ。

『一点突破ぁっ!』

エネルギーの奔流に飲まれる相手はそれすらも読んでいたのか即座に刀をクロスさせて高出力レーザーの嵐を正面から受け止めた。

更に相手は主翼の付け根にマウントしていたユニットのカバーを排除するとその中に格納されていた高機動ミサイルを6発全て放出する。

「なんですって!?」

レーザーに対してブーストを全開にしつつ突っ込んでくる雷吾の姿に動揺して言葉を漏らしてしまう。

実弾兵器ではなく、光学兵器であるスターライトでは相手の速度を殺すことが難しいのだ。

そう考える間にも全力で距離を取るこちらと最高速度が上らしい相手との距離が縮まっていく。

おそらくはレーザーだけで倒しきるだろうが万が一の事を考えて次の手段を考えなくてはならない。

さらにそちらにばかり気を取られていてはミサイルへの対処が足りなくなるであろう。

銃身の加熱による限界までの時間と相手を倒しきれるほどのレーザーの出力維持に思考を割かれるせいで安定しないビット制御を懸命に行い、ランダム機動で迫り来るミサイルヘの弾幕を生み出す。

「・・・・・・!これですわっ!!」

もう近距離の間合いと呼べる程度までレーザーに耐えて接近してくる相手を確認し、もはやブルーティアーズによる一撃での決着は間に合わないと考えると開いた左手を空に掲げて叫ぶ。

「インターセプターッ!」

それは近接武装の展開に言語によるサポートを付けなくてはならないことを知らしめる物であったが今の勝利のためにはそんなことは関係ない。

左手をフリーにさせたせいでややブレる照準の中、レーザーを突破した相手は融解しかけた刀を捨てて両拳のフィストガードを展開、再加速するのを見た。

『うぉぉぉぉっ!!』

「ッ!チェックメイトですわ!」

相手とこちらの声が重なる中でようやくビットがミサイルを捉えて二機の周りに爆炎のベールをかける。

爆炎によって視界が悪い中、一直線にこちらに向かっていたであろうEAFを迎え撃とうと左手に持ったショートブレードをためらわずに突き出した。

 

 

 

静寂。

 

一度高速で金属がぶつかり合うようなガキンッ!!という音が響いた後で時が止まったのだ。

先程までアリーナの空気を震えさせていた銃撃の音も剣戟の音も静止している。

 

 

 

『WINNER、セシリア・オルコット!!』

直後に鳴り響く勝者の宣言にやっと安堵の息をつくことが出来た私は勝利をもたらしてくれたその手の剣を高く高く掲げてみせた。

 




続・キャラ紹介

八王子有斐(はちおうじゆうひ)
元々はEAF開発チームのソフト面を担当していた研究者であった。
EAFの工場が襲撃された際に機体に乗り込んだことでパイロット登録されてしまった。
その時、自作したAIのテストタイプと共に最も機体制御が困難である2号機に乗り込む。
その後も降りるチャンスはあったのだが本人の希望でパイロットも続けている。
AIのサポートにより膨大な火器を装備する2号機をなんとか制御している。
かつて山田真耶専属サポートチームに所属していてソフト面の主任を務めていた。


EAF02
後方からの支援をメインにするために支援装備に重点をおいた機体。
その機体はEAFシリーズで最も大型であり、飛行する際も翼による揚力よりも各部のスラスターによる推力に頼っている。
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