Infinite Stratos Other Wings   作:槇島 包呉

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更新も不定期ですがキャラの紹介などもそのうちにやっていきたいと考えております。


That day

「牽制」

1 相手の注意を自分の方に引きつけて自由に行動できないようにすること。

2 作戦上、敵を自分の望む方にひきとめたり引きつけたりすること。

by端末にインストールされていた辞書

 

最初の休み時間という開放されるべき時間にこの教室を包み込んだ空気はまさしく「牽制」一言で表現できた。

EAFのパイロットという立ち位置的に最初からこういう展開を予想していたらしい彼等は針の筵のように襲いかかる鋭い視線に無視を決め込むと、それぞれが教科書を取り出したりカードゲームを始めたりと至って普通の学生らしくそれぞれの時間を過ごし始める。

しかしその中で俺だけが流れに乗り遅れて休み時間を手持ち無沙汰に過ごし始めてしまったのだ。

「・・・・・・ちょっといいか?」

「えぁ?」

それほど長い休み時間というわけでもないので右に倣えと彼等と同じく教科書を取り出していた所で女子生徒に声をかけられて気の抜けた返事をしてしまう。

どこか懐かしさを感じさせる男らしさを交えた少し硬めの口調と馴染みある気がする声音。

何か記憶の一部に引っかかるものを感じながら顔を上げた俺の目に入ったのは、記憶の通りならば6年ぶりとなる幼馴染の少女の顔であった。

「・・・・・・箒、だよな?」

万が一人違いだった時に備えて確認の為に尋ねる。

すると昔から不安がっているとき特有の眉根をしかめた表情であった視界の中の少女の顔が少し驚いた顔になった後、たちまち嬉しそうに緩く笑みを浮かべたものに変わっていく。

「久しぶりだな一夏。ちょっと廊下でいいか?」

春先なので心地良い温度であろうまだ人気のない廊下を示して彼女はそう言った。

「おう、いいぞ。」

女性に対する口調としてはどうかと思うようなノリではあるが、幼なじみでもあり家が剣道の道場をしていたこともあって男勝りな口調が交じるこの少女に対してはちょうどいいとして敢えて昔のように返事をする。

記憶にあるものと比べて随分と女性らしいラインを描くようになった少女の背中を見ながら久しぶりの再開である時間を少しでも長く取ろうとこちらも急いで廊下へと出た。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

さて、いざ廊下へ出てみると久しぶりの再会になるのだが、あまりにも久しぶりすぎてどういった話題を切り出せばいいのか分からなくてお互いに少々口ごもってしまう。

「そういえば、さ。」

「な、なんだ?」

そんな状況を打開しようと先にこちらから口を開いた。

理由は強いていうなら教室の窓越しに見える雲親の読んでいた雑誌の見出しに大きく載った先手必勝の文字くらいであろう。

(どっちの話題をふるのが吉だ?)

口を開いた側として話題を振ろうと急いで話のネタを考え、思いついた2つの話題についてどちらを選ぶかで一瞬迷ってしまう。

「一夏?」

口を軽く開けた状態でフリーズしていたこちらを見て覗きこむように身を少し乗り出した箒が、顔にかかった髪を耳にかけ直す仕草を見て結論を出す。

「髪、伸びたな。やっぱ似合ってるよ。」

「そう?良かった。あ、後やっぱりってなんだ!」

思わず目を惹かれた髪を褒めた所、箒が嬉しそうに僅かにはにかんだ後で頬を赤くして堰を切ったように問い詰めてくる。

「前見た時から思ってたんだよ似合ってるなって。」

「前?!前って何時だ!」

そう素直な感想を告げてみれば、顔は赤いままで今度は驚いたような動揺したような表情になってこちらの肩を掴み揺さぶってくる。

ころころと表情を帰る幼なじみの少女に俺は何故か昔のように素直に懐かしさを覚えることが出来ず、どこからともなく生まれる原因不明の心臓の圧迫感に妙な違和感を覚えながらも問い詰められたことに答える。

「ほ、箒!ちょっと落ち着けって!・・・・・・たまたま新聞で見たんだよ。去年の剣道で優勝したって。・・・・・・見たら悪かったかよ。」

「み、見た・・・・・・のか・・・・・・。」

緊張、安堵、心配、歓喜、驚愕、動揺ときて今度はまさしく恥じらいと言う言葉が似合うように頬を染めて俯き、照れる箒。

「あー、でもさ。新聞で見た時は凄く凛々しくってなんか俺の知ってた箒とは違うのかなって思ったりもしたけど、今日本物に会ってこうやって話してみるとさ・・・なんか、綺麗って感じになっててびっくりしたよ。」

数多いとはいえない語彙の大海の中から手探りで褒め言葉を探してそう告げる。

それはどうやらかなりの効果があったらしく箒が無言のままビクリと震えて視線を逸したままで耳まで一気に赤く染まっていく。

(な、何か声をかけるべきだよな・・・・・・?)

昔のように話そうと努めているにもかかわらず、なぜか本調子が出ない会話にどうにかせねばと内心で頭を捻らせる。

しかし、有効な解決策は見つからずこの空気をどうにかしようと考えた所で教室内からの視線に気づいて教室側を確認した。

すると、こちらを楽しげに見ていた友人たちの一団の中で何也がそっと教室内の時計を指す。

その時計は次の授業までの猶予がもう僅かであると示しており、彼が何を告げたいのかをすぐに理解する。

「マズイな、もう次の授業が始まりそうだ。急ごう箒。」

昔らしくを意識した結果、なんとか幼なじみの手をとって教室の中に戻る。

あの姉のことだ。席に付いていなかったら何を言われるか。

新学期早々これから一年をともに過ごす級友達の前で公開処刑など堪ったものではない。

そう考えていたせいもあって箒の手を引く左手に返ってきていた小さな手の力に気づくことはなかった。

 

さて、無事に始業前に席に座り、いよいよ本格的な授業が始まるという場面で現在時点での学力を測る簡単なテストを行うことを宣言された。

成績に関係はせず、とりあえず現在の生徒個人の学力を教師側で確認する為のテストだという説明にそういうものなのだと納得してテストを受ける。

理屈としてはおかしいところを感じなかったので気づくことはなかったが実はこのテストは今年のみ行われたものでその背景にはIS学園側がEAFパイロットの学力や事前にどれほどISについて知らされているのかを図ることを第一の目標にしたものであったらしい。

そんな裏の事も知らされるわけもないままで俺、ワンサマー(クラスメートの男子により命名)こと織斑一夏もテスト問題を解き始めていた。

いざ解き始めたテストに対してその手応えはしっかりとしたものであったが、姉含む教師陣に事前にカンニングに近しい教育が施されていたという経緯を思い出して自分だけズルではないのかと些かアンフェア感に悩まされる。

EAFの発表や彼等パイロットのIS学園入学のニュースより後に男性IS操縦者操縦者であると発覚した為か『彼等に負けるようなことがあってはならぬ!』と耳にタコが出来るほど政府やその他の関係者により事前に言い聞かせられて、更には講師として姉の参加の上でISという存在に対してみっちりと詰め込むように初期教育が俺の高校入学前の春休みをほぼ全て費やして行われたのだ。

これで解けないという方が難しいものである。

余談ではあるが姉の職業が現役IS学園教師であるというのを知ったのもこの時であった。

(俺は強制事前学習のせいである程度解けてはいるが他はどうなんだ?)

ひと通り問題を解き終えた後で、見直し前に頭をリフレッシュさせるのも兼ねて教卓から見ている千冬姉にカンニングと言われない程度でチラリと周囲の様子を伺う。

まずは必然的に視界に入ってくる女子たちの反応は様々で、自信満々に解答を手早く埋めていく者や悩みながら答を訂正する者などまさしく多様であった。

しかし、明らかに苦戦しているという様子の人物は確認できず、彼女達もやはりIS学園へのあこがれとともに受験という大きな壁を乗り越えてきたのだと思い知らされる。

尚、席順の関係で雷吾くらいしか見ることはできないが肝心のEAFパイロット(友人)達もこのテストの真意を知ってか知らずか似たような状態であったらしい。

 

そして

「終了」

時計の秒針がしっかりと12時の位置に来たことを確認した千冬姉の声を合図にカタカタと教室内に次々とペンを置く音が続く。

「あー、終わったぁ。」

テスト回収の最中から既にがやがやとざわつき始める教室内でペンを置いて集中していたために力が集まっていた肩と首を揉みほぐす。

「ワンサマおつかれ。」

そんな集中からの開放感に気を緩めている所で雷吾から声をかけられた。

「おう、雷吾達もお疲れ。どうだった?」

雷吾以外の様子も気になったので振り返りつつ尋ねると、だらりとペンと腕をおろして何をする気もないという確固たる意志を放つ何也がこちらを向いていた。

「まぁ、事前にある程度は学習をしてきたからその位には結果が出ると思うけれども一発目にテストなんてめんどくせえよな。」

「だな。千冬姉も成績には関係ないなんて言ってたけども実際気にするよな。」

もはや慣れてしまったヒソヒソと耳障りにも感じる小さな話し声と周囲の女子の一部から向けられる好奇心からの視線を無視して何也と会話を続けていく。

彼等が居なかったら男一人であった俺にとっても、こうして砕けた口調で話すことができる相手が居るというのはとてもありがたいことなのだ。

まぁ、その「気兼ねなく話すことができる相手」というのが好奇の視線の中に混じる親の敵を見るような視線をこちらにも向けられる一番の要因なのだが。

「そういやなんで雷吾達の制服は色が黒なんだ?」

テストの回収が終わり、ベルが鳴ったことを区切りとして休み時間に入ってすぐに会話の話題として入学当初から疑問に思っていたことを尋ねる。

「ま、俺達IS操縦者じゃなくてEAFパイロットだし。」

その言葉に最初に反応したのは先程から話していた何也であった。

自分たちの事をEAFパイロットだと誇らしげに告げる何也の制服の胸に付けられたウイングバッジが言葉に合わせてキラリと輝いたようにも感じる。

「昔読んだロボット物の小説だとか現実でも空母の乗組員の担当部署だとかでも区別のために制服の色分けるらしいし、似たような事なんじゃねーの?」

「アウェーで目立つ制服とか正気の沙汰じゃないがな。」

「まさか冗談で聞かれたと思った好きな制服の色に黒って言ってこうなるとは思わんよ。」

雲親、蔵人、有斐の3人も口々に制服の事について感想を述べていく。

「でも色だけならそっちの黒のほうがマジで羨ましいよ。」

数カ月前まで黒の学ランだったため白の制服というものに違和感を覚える俺からすると彼等の黒い制服のほうが遥かに馴染み深い存在だ。

「差し色で黒とか赤があるだけマシだろ?純白が良かったか?それに周りと同じデザインだから悪目立ちもしないだろ。」

有斐の言葉に気付いて軽く周囲の様子を伺うとたしかに視線を向けられる比率は彼等よりも幾分少ないようであった。

「全員席につけ。授業を続けるぞ。」

まだベルがなる前ではあるが教室に戻ってきた担任教師(千冬姉)の声に生徒が再び席に戻っていく。

「先ほど諸君にやってもらったテストの集計している間にクラス代表を決めようと思う。二年目以降は選ぶ際にこれまでの成績なども加味されるが一年目はそういったものも不問だ。自薦他薦は問わんから誰かやりたい奴はいるか?いい経験になるぞ。」

千冬姉には教育者として挑戦したい者を拒むという考えはないのだろう。

そういった挑戦を後押しする言葉に合わせて教室の電子パネルにクラス代表の職務や詳細を載せた資料が表示されていく。

「代表となった者のサポートはする。挑戦することに意味があるんだからな。」と、立候補しようかどうかと考えている最中の生徒を更に後押しするように千冬姉が付け加える。

身内故の贔屓目もあるかもしれないが千冬姉は教師として中々生徒の心をくすぐる言葉を持っているようだ。

その証拠にその言葉を聞いた数名の女子の表情が無関心から迷いへと変わって揺れ始めている。

しかし、クラス代表という肩書の担う責任や作業を同時にパネルにて見せられているためにあと一歩の決断が出来ないのか未だに誰も手を挙げない。

そんな隙を突いてはい。と一人が声をあげた。

「なんだ畝霧。だれでもと言っておいて済まないがEAF操縦者のお前たちには出来ない仕事があるから―――。」

「織斑一夏を推薦します。」

EAFパイロットの立候補は出来ないというような内容の事を告げようとした千冬姉の言葉を遮って蔵人がはっきりと告げた。

こちらとしては初耳もいいところなので衝撃のあまり固まってしまったのだが。

「あ、俺もワンサマがいいと思います。」

「おなじく一票。」

「Me too.」

「ワンサマーに一票。あ、それとEAF操縦者でなくEAFパイロットです織斑センセイ。」

それに合わせて面白がった他のEAFパイロットも次々と挙手しては勝手に発言をする。

「・・・・・・まぁ、他薦ならかまわんだろう。いいのか、織斑?」

「うぇっ?!は、はいっ!」

突然すぎる蔵人達の行動にいろいろと物申したいことはあるものの、先程千冬姉が語った「いい経験になる。」「挑戦することに意味がある。」という言葉に自分とてやる気が出なかったわけではないので決断するとはっきり了承の返事をする。

姉もそういうことならと5人分の票を推薦としてカウントしてその上の候補者の名前欄に「織斑一夏」と書き加えた。

更にふざけこそ混じっていたものの他薦した他者が出たことで「誰かが手をあげたら自分も」と考えていた周囲の女子達からも一部手が上がり始め口々に織斑一夏を推薦すると発言していく。

「では候補者は織斑一夏、他には居ないか?再度いうが自薦、他薦問わんぞ?」

他に候補がなければこれで決定だという千冬姉のその言葉に弾かれたように「はいっ!」という声と同時に3つの手が上がった。

「相川と篠ノ之、オルコットか。3人は誰か推薦か?」

確認するように手の主を見た千冬姉が尋ねる。

「私、立候補します!」

「わ、私も・・・・・・立候補です。」

「当然、立候補ですわ。」

「ほう」

立候補を告げる3人に対して千冬姉が教育者として嬉しそうな声を上げた。

「他には居ないな?」

相川清香、篠ノ之箒、セシリア・オルコットと新たに3人の名前を候補者に書き加えた後で見落としがないかと教室中を眺めて千冬が最後に告げる。

「ではこの4人で決めるぞ。他にはいないな?よし、後で4人には最終的に誰を代表にするのか話し合って貰う。」

そこまで言った所で採点が終わったテストを持ってきた副担任(山田先生)が教室に入って来たので、テストの返却と解説が始まった。




本編としては基本的に一本道で作っていこうと思うのですが他者視点の裏話やネタ的な話、キャラの紹介など合わせてやりたいことをどのようにして形にするかがまだ決まっていないのでご意見等いただければありがたいです。
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