昔々……とある龍が人間の女に恋をした。
龍は女を愛し、女もまた龍を愛した。
やがて二人の間に一人の男の子が産まれた。
これは、龍と人間の間に産まれた男が、
その一癖も二癖もある友人達と共に幻想の世界の中で
紡いでいく物語………
まるで夜みたいだな…
誰もいない荒れた道を進みながら男はふとそう思った。周りから高く伸びた木々がまるで日の光を独占したいとでも言うがごとく枝を広げ日の光を遮っていた。
辛うじて木々の枝に捕まらなかった日の光が地面に当たり、まるで蝋燭のように周りを薄く照らしている。そのおかげで今は朝だという事が分かるが、この光が無くなれば、朝か夜の区別がつかなくなってしまいそうな気がした。歩くたびに枝が服に引っかかったり、日の光が届かないためかぬかるんだ地面を踏むたびに男のズボンの裾やスニーカーに泥がついてしまっているが男は特に気にした様子はなかった。
男は外見は大体二十代前半から中頃ぐらいだろう、黒髪黒目の日本人としては標準的な相貌に、白い半袖のTシャツに紺色の長ズボン、そして黒色のジャケットを羽織っていた、良く言えば、当たり障りのない、悪く言えば、ありきたりな服装をしていた。
本来ならばこんな深く薄暗く、荒れた道がある森に来る服装ではない。迷っているかと思いきや、男の足取りには迷いがなかった。周りを見渡さずに一直線に進んでいくその様子は、歩き慣れているのではなく、元々行くべき場所が分かっているような印象を与えた。
それから数分かけて男が辿り着いた場所は、深い森のさらに奥深くにポツンと佇む朽ちた神社だった。あちこち塗装は剥げていて、屋根も崩れており、本堂を支えるはずの柱は朽ちており、その役割をギリギリ保っている状態で、境内には大量に生えた雑草達で足の踏み場もない、一目見ただけで廃れてしまったのだと分かる神社。それを正面から見据えて、男は少し不安になった、
―本当にここで合っているのかと、しかし『遠い』友人から送られてきた手紙をもう一度読み直しても目的地は、ここで合っていた。
男は苦笑いしながら鳥居をくぐり境内へ足を踏み入れる。すると男はまるで何か探すかのように境内の中を歩き回ったり、鳥居を叩いたり、本堂の中を覗いたりしていたが、暫くすると境内の裏に回った所に石作りの鳥居を見つける。
何故参道に、既に設けられている筈の鳥居がどうしてここにもあるのか?と普通なら不思議に思ったりする人や、中には気味悪がったりする人もいるだろう。
しかし男はその異様な鳥居を目の前にして不思議に思うのでもなく、まして気味悪がる様子も見せずにその鳥居に近づいていき、その鳥居の前までやって来ると静かに目を閉じ、深呼吸をする。
同時に男の髪が揺れた。それに合わせ男の足元から白い粉が舞い上がり、男を包んでいく。……暫くすると男を包み込んでいた白い粉が消えていき男が姿を現す。
そこに居たのは、先ほど存在していた男の面影はあるが全くの別人が立っていた。
黒かった髪は元々あった色を洗い落としたかのように真っ白に。少し赤みがかかった健康的な肌は、髪と同じように白くなっていた。そして身につけていた衣類も変化していた。
白い半袖のTシャツは黒色の着物に、紺色の長ズボンは、同じ紺色の馬乗り袴に、そして黒色のジャンパーは右が黒、左が白色の羽織袴に変わっていた。
そして男は閉じていた目を静かに開く。そこには先程まで黒色だった瞳はなく、代わりに黄金色の瞳が存在していた。
姿を変えた男は、否、人から人ならざる者へ『戻った』男は静かに笑いながら目の前の石造りの鳥居を見つめ、まるで何かに語りかけるように静かに、だけれどもよく響く声で言葉を呟く。
「さて、……それじゃあ行こうか。」
「現世から忘れ去られた"モノ"たちの最後の楽園」
―幻想郷へ。
さぁ、物語の始まり、始まり………………
どうも読者の皆様初めまして。
奇想天神です。
今回初めてハーメルン様にご投稿して、小説を書く事の大変さを実感しました。
他の方々はこれよりも、長い文章に凝った内容なので、その大変さは自分にはとても図り知れません(汗)
さて今回初めて書いた小説『東方道楽求聞史記』どうでしたでしょうか?まだ書き始めたばかりの稚拙な文章で申し訳ごさいません。これからも皆様に楽しく読んでいただけるように努力していきますので、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。