緋弾のアリア-重力と五式の銃弾-   作:おうか

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第4章.死臭漂う船
10話.過去の決断


次の日、新光は陸上自衛隊横浜駐屯地に足を運んでいた。

今朝行こうとしたら親父からの電話、どうやら話があるとのこと。

皆は来ていない。否、呼んでいない。

だから新光、ただ一人で来ている。

そして親父が来る間一人で部屋に待った。

そして数分後親父が来た。

言うまでもないが服は作業服だ。

親父、小野勝は俺とは違い黒い髪とすこし険しい顔。

一等陸佐と小隊長に相応しい、いやそれ以上の顔つきだ。

 

「親父、久しぶりだな。今日急に呼び出すって何かあったのか?」

 

新光は、最初驚いたように、そして真剣な眼差しで言った。

まるで事件が起きたかのような。

 

「お前が来そうな気がしてな。道中ナンパしないようわざわざ電話したんだ」

 

勝は厳しく、そして過保護するような事を言う。

確かに俺はナンパをするようになった。

一年前、一学期の時にヨーロッパ留学の帰りに婚約者遊佐鈴音の死去から……いや、この話は後だ

 

「呼んだ理由は他にもある」

 

勝は手帳を取り出す。

古くさい手帳から一枚の写真が滑り落ち机の上に乗った。

写っているのは兄の姿。

俺は五年前、親父と兄と同じ自衛官になろうと思った。

だがその五年前に親父が語ったある出来事に俺は自衛官の道に進むのを諦めた。

新光の脳裏から思い浮かぶのは五年前の話である。

 

シベリアに吹く冷たい風は作戦実行中の自衛隊の身体を擦り付けていた。

異例の出来事であるシベリア進攻していた中国軍は願達の活躍により大半は撤退した。

だが中国軍はミサイルで首都モスクワならび東京に攻撃をするという情報が入った。

しかもそのミサイルの場所は分からず、ある送信施設からの電波しか受信しないミサイルだった。

小野勝(当時三等陸佐)は息子である小野光明(おのこうめい)にその施設に潜入させた。

なぜ一人で行かせたのか。

 

「小野三等陸曹が目標施設内に潜入しました」

 

通信機に耳を傾かせている自衛官。

皆はぴりぴりしていた。

この作戦が失敗したらモスクワもそうだが、東京が火の海へと変わる。

勝は手を後ろに回し次の指令はどうするか、考えていた。

 

「光明、時間はないが確実にやってくれ」

 

他の自衛官は耳を当てて言う。

 

『わかりました』

 

光明は指を額に当てて通信機を切りミサイルの変更指示を開始した。

 

「勝、なぜ光明一人で行かせた?」

 

願(当時二等陸尉)は疑問を寄せていた。

なぜ勝がこの作戦の指令になったのか。指令するのはこの俺じゃないのか?と。

そしてなぜ息子である光明を行かせたのか。

その時にザザッ!とノイズが走り通信機からアラーム音が響き渡る。まるで光明の危機が迫っているような。

 

「どうした!?」

 

自衛官らはざわざわし始めた。しかし勝はざわざわせずにその通信機から発する言葉に耳を傾かせていた。

 

『自爆装置が作動したようです。しかもミサイル発射時間も短く……あと一分で自爆と同時に発射されます!』

 

通信機から爆発するような言葉に皆を蒼白させる。だが光明はこの危機に悲鳴のような叫びではなく楽しそうな叫びをする。

 

「光明!」

 

「小野三等陸佐!指示を!」

 

「勝!俺が光明を救いに行く!行かせてくれ!」

 

さまざまな言葉が勝の耳へ飛び交う。

願も光明を救出すると言い出す。

だが勝から発する言葉はシベリアの風より南極に吹く風より冷たく酷い言葉だった。

 

「光明、そのまま作戦を実行しろ。一つでも情報を送れ」

 

この言葉は光明の命を見捨てるような物だった。

他の自衛官らも勝を見る。本気なのか、と。

 

「し、しかしこのままでは小野三等陸曹が!」

 

「光明!おい勝!いまなら光明を救える!行かせてくれ!」

 

皆は光明を救いたい一心に叫ぶ。

願も行かせてくれと言うがなぜ勝手に行かないのか。

願は遊撃隊かつ勝の指令の元にしか動けない。勝の指令で行き現場では願の判断で動くという遊撃隊だからだ。

 

「勝!光明はお前の息子だろ!」

 

願はお前の息子だから助けたいだろ?と言うような感じに言う。

肉親を見捨てるなんてことは絶対にない、と願……いや、皆は思っている。

 

「願、お前は待機だ。光明、作戦を続けろ」

 

『……了解!…アウト』

 

光明は勝の顔が見えるはずもないのに通信機に向かい微笑みながら言い、無線を切る。

 

「勝!貴様ぁ!自分の息子を死なせる気か!」

 

願は勝を掴み叫ぶ。皆は止めたいと思うが願を止めることは出来ない。

 

「願、直に命令をする。待機だ。」

 

「命令するなら今だろ!早くしないと―」

 

その時通信機から多大なるノイズのような爆音が轟きそれから通信機から何も音が出なかった。

皆は分かっていた。この爆音の元は……光明はもう…

願も力が抜けて手から勝を離す。

そしてモニターから画像が送られてきた。

その画像はミサイルの位置を示す地図であった。

それを見た自衛官は小さく言った。

 

「小野三等陸佐……ミサイルの位置を示す地図です」

 

勝は遠目で画像を見て願に向けて指令を出す。

 

「願二等陸尉、今すぐそこに向かえ」

 

機械のような、まるで何もなかったかのような感じに。

その態度が願を怒らせた。

一瞬何があったか分からないような速さで勝の首を絞め倒す。

 

「てめぇ!息子が死んで悲しいとは思わないのか!?」

 

次第に首に力を入れる。

勝はそれでも苦しむような顔をしない。

その目は何かを見え透いたかのようなこれが運命だからかのような目であった。

 

親父はこの作戦で必ずしこうなると分かっていた。しかも並の自衛官にやらせたらこの作戦は失敗する。だから機械操作が一番得意な光明に選んだ。

もし、光明ではなく誰かであったら無駄死にとモスクワに死体の山が出来ていた。

兄は爆発する前に発射を停止させミサイルの位置を送り、散った。

親父が指示した『情報を送れ』というものを。

願は彼を恨んだ。仲間を軽々しく捨てるような奴と。

当時十二歳であった俺はこの話を聞いたとき勿論親父を責めた。

この時の俺はまだ子供だった。

アニメのようにハッピーエンドは必ずあると思っていた。

だが現実では小説のように都合がいいなんてものは無い。

皆も辛いと思っていた。

だが一番辛いのは紛れもない指令した親父であることを。その事を気づくのは少し経ったあとであった。

一つの命より多くの命を……

「中国から輸入される輸送船。そこから輸入される肉を調査してほしい」

 

手帳を見て、そして引き出しから何か書類が引き出され、我に返った新光に渡す。

新光はその書類に目を通した。

見た感じ輸入のリストのようで違和感があまりなかった。いや、何か違和感があった。

肉…そういえばこれは『肉』しか表示されていない。

 

「親父、これはまさか……」

 

勝に問いただした新光、その返答は彼の予想を的中させるものだった。

 

「輸入業者からコピーしたものだ。業者も薄々気づいていたようだ。肉でもどこの国の牛、豚のどこの部位の肉か……表示されていないとなると知られてはいけない肉だろう」

 

知られてはいけない肉、その答えに辿り着いたのは更なる確信へと導いた。

 

「面倒なことになったなぁ…」

 

リストの紙にとんとんと指で叩く。

現場に潜入し、発見したら外交問題へと化してしまう恐れもある。

 

「横浜港に入港する輸送船に潜入し証拠を掴んでくるんだ。この調査はお前の他に鷹山勇次(たかやまゆうじ)が行く」

 

鷹山勇治…たしか現国連軍(韓国軍)配属で成人になったら日本の自衛隊に転任する人物、彼は第二次朝鮮戦争で活躍した。勝がそいつを推薦したのはこの依頼が難しいのか、それとも別の理由か。

 

「鷹山の他に着いてくる奴いるが、いいだろう」

 

勝はへんな虫でもいるかのようなため息をする。

 

「鷹山はすぐそこの部屋にいる。『後は頼んだぞ。新光』」

 

『後は頼んだぞ』……この言葉は新光と勝の合言葉のような物。

新光は右手を拳にして突き出す。これは承知したの意味。

勝は微笑み新光は勝が書いた地図を貰い部屋から出てすぐそこの部屋を見て確認してからドアを開ける。

するとありえない光景が目に突き刺さった。

 

「いよっしぃ!光稀イくぞぉ!おらおらおらおら!」

 

「ちょっ!らめぇ!希ちゃんたすけてぇ!」

 

「ふ、ふわあぁぁぁぁ!」

 

「希!お前もイくかぁ!」

 

鷹山勇治と風連希(ふうれんのぞみ)、蓼光稀(たでみき)は某任天堂の某大乱闘をプレイしており、さっきのテンションはこれのせいだったようだ。

流石に…これは絶句、もとい幻滅する光景だ。

 

「ははは!いきなり見苦し姿を見せてしまったなぁ!」

 

大型テレビの電源を消した作業服姿の男、鷹山勇治が軽く謝る。

 

「お前が小野勝の息子か」

 

「まぁ、そうだが」

 

あたふたしている新光を見て鷹山は不満そうな顔をする。

 

「なんだ?名前くらい言えよ」

 

「あ、あぁ。そうだな!俺は小野新光だ。まぁ見ての通り武偵だ」

 

急に驚き、急に明るくなる鷹山。

 

「お?“同じ”武偵か。俺は鷹山勇治。皆からタカと呼ばれている。そしてこっちは俺の彼女(妻)蓼光稀、であっちでオムツ変えしているのが風連希。武偵だ。」

 

鷹山の隣にいる銀髪の女性が光稀。そして向こうで見えない様にして(見えない位置)着替えているのが希。

 

「“同じ”武偵?鷹山は武偵なのか?それにあっちに居るのも確か一年の武偵…」

 

新光はすぐに疑問をあげた。

そして新光はなぜ「タカ」ではなく「鷹山」と呼んでいるのか…それは田中鷹と軽く被るからである。

 

「まぁ色々あって武偵校に入った。でだ、ミキと希は第二次朝鮮戦争に知り合ってミキは彼女(妻)に、希は後に戦兄妹(アミカ)になってな――」

 

笑いながらしゃべる鷹山のよこからすっ飛んできて、遮ったのは希だ。しかもかなり汗かいている。それほど恥ずかしいことだろうか。

 

「お、おまたせぇ!……あれ?小野先輩じゃないですか」

 

「……あれ?君、俺のこと知っているのか?」

 

「当たり前ですよ!ライカさんを瞬殺した岸田先輩と対等に戦っている先輩なのですから!」

 

ライカとは一年の強襲科、火野ライカ。

ライカは一年女子の強襲科の中で一番強い人だ。年上の武偵と相手してもひけをとらない。

浩司は一回ライカと勝負し合気道で瞬殺したのが一番有名だ。

そして俺は浩司とほぼ互角に戦える。

これもかなり有名だ。

 

「タカぁ。仕事行こうぜ」

 

ミキは鷹山に寄り添ってラブラブオーラを出しながら言った。

もしも俺じゃなく誰かだったらリア充がっ!と叫んでいる。

 

「そうだな。よし、新光。行くぞ」

 

鷹山は立ち上がりすぐ側にあるショットガンを手にする。

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