緋弾のアリア-重力と五式の銃弾-   作:おうか

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11話.死臭と憎悪

夕方、赤く染まる空の横浜港に一隻のタンカーがぽつんと浮かんでいた。

港に下ろされているコンテナの物影にさらに四つの影が現れる。

新光は入港リストを確認する。

 

「どうやらあの船で合っているな」

 

新光の後ろに鷹山。

鷹山が持ってきた銃はレミントンM31、銃尾がついてないショットガンだ。

ショットガンはいいのか?という質問をした新光だが鷹山はスラッグ弾だ、問題ない。らしい。

スラッグ弾とは簡単に言うと散弾しない弾、まぁでかい銃弾だ。物によってショットガンがグレネードランチャーに変わることもある。ある意味凶悪な武器だ。鷹山が持ってきている弾は通常弾と敵榴弾(てきりゅうだん)。さらに凶悪な件について。

 

「よし、行くぞ!」

 

タンカーの甲板に行ける道を見つけて時間を確かめて怪しまれないように歩きながら行く。

甲板に昇ると人影も気配もなく、コンテナは見当たらない。

積み荷は下ろし、作業終わったのか?

 

「……なぁ、なんか変な臭いがするぞ」

 

「あぁ、なんか臭うな」

 

ミキ、鷹山も同じ事を言う。

確かに刺激臭がある、腐敗したような臭いだ。

何か腐らしたのか…それとも。

 

「人が居ないなら好都合。行きましょう」

 

希は鼻を手で覆いそう言った。

 

「中に入るか」

 

鷹山が大声でそういうと、中に入ると至って普通の船だが腐敗した臭いが一層強くなる。

 

「俺が先行する」

 

鷹山がレミントンM31を構えながら突き進む。角を曲がった時に鷹山が止まり呆然する。

 

「な、なんだ。これは……」

 

ミキ、新光、希の順に鷹山が見たものを見て呆然し、希はヒッ!と叫んで身を縮む。

壁や床に銃痕が残っており壁にもたれているのは人だけではなく皮が剥がれているような人の形をしている肉塊。その肉塊に風穴がありここで戦闘が行われていたようだ。

死亡しているのは中国人で武器はトカレフだ。

死因は様々で流れ弾、打撲、あの肉塊がやったのか首や頭、腕が引きちぎれており腕の中から白い物体や赤い糸が伸びていた。

外傷が見当たらないのは内臓出血が死因なのか、医学は専門外だからわからない。

あとは天上や壁に剣のようなものが刺されておりそれにも中国人が死んでいた。

心臓に刺されていたため死因は多分それだろう。

 

「この剣のような物はなんだ?」

 

形状は剣に似ているが土で出来ており、他にも赤く黒ずんでいる色もあった。

 

「タカ。希を安全な所に移動させよう。」

 

希はあの光景を見てから震えながら失禁していた。無理もない。誰が見てもトラウマになりかねない光景だ。

鷹山曰く、彼女にもトラウマがある。と言っていた。この光景もトラウマの一部だろう。

 

「鷹山。この血痕を見てくれ」

 

この殺戮が起きた現場から何かを引きずるような血痕がある。それも階段の下に。

 

「犯人はこの下だな。ミキ、希を見てくれ」

 

「せ、先、輩。わ、私は、だ、だい、じょ、うぶ。み、みんなと行って。あ、とで、おいか、ける、からぁ…」

 

希は泣きながら、鷹山にそう言った。

 

「わかった。ミキ、新光。行くぞ」

 

三人は希を見ながら階段を降りて先に進む。

残った希は階段の金属音が鳴る音を聞き、鳴り終わった時に通路から足音が聞こえてきた。

その足音の正体は土で出来た剣を握り締めており服や顔は赤い短髪と同じ色の血がこびりついていた。

 

「おい、てめぇ。――――は知らないか?」

 

「……」

 

男は希に何かを聞いたが希は答えなかった。いや、答えることは出来ない状況だからだ。

 

「知らない…か。ならば」

 

男は剣を振り上げ、そして降り降ろした。

 

その頃新光たちは階段を降りてその血痕の行方を追っていた。

その先はタンカーの甲板の真下の空間だった。その空間にはコンテナがバラバラに置かれており動きづらいとかはなかった。

コンテナの中から腐敗した臭いが放出されているようだ。

鷹山とミキはそのコンテナの中を調べた。

新光も調べたら肉には肉だが豚、牛、羊の肉のようには見えない。挽肉(ひきにく)にしているように見えるが鷹山はその肉からあるものを見つけた。

 

「これは……大腿骨!?」

 

「じゃあこの肉はまさか!?」

 

鷹山と新光は口揃えて言う。ミキは少し青ざめていた。

中に大腿骨が入っているなら間違いなく、この肉は。

その時、奥からクチャクチャと何か耳障りな音が鳴り響く。

 

「何か……居るようだね」

 

新光はルガーを取り出してマガジンを差し込む。ミキはMac10を取り出す。

鷹山はレミントンM31を構えながらコンテナからコンテナへと移動しながらその音源を探っていた。

そしてその音源を見つけた鷹山はすぐさまに突き進み銃口を突きつける。

 

「おい!誰だ!」

 

鷹山の左右から新光とミキが立ち銃を鷹山が突きつけている先に向ける。

突きつけられているのは二人の少女。

後で気づいた三人は青ざめる。

その二人の少女が食べているのは腕。

部位は上腕二頭筋だろうか。

後ろの存在を気づいた少女は顔をこちらに向く。

血が塗りつけてあるその顔は無垢な笑顔であった。

 

「私はテルア」

 

「私はエルサ」

 

エルサ、テルアと名乗る少女達は髪を上に上げ玉にし、纏めた特徴的な髪、そして二人の特徴的な目 、赤い左目と青い右目の瞳をしており双子のようにも見えていた。

 

「テルアとエルサ…だっけ?お母さんはどこに居るの?」

 

ミキは銃を降ろし近づくが二人の少女は顔が暗くなる。

 

「お母さんは…私達を捨てたの」

 

ミキの足が止まる。この少女達に辛い思いを触れてしまったのだろう。

 

「今、私達の親になってくれているのはアーネストおじさんだけ…」

 

「アーネスト?ヴィンチェンゾ・ファミリーのことか」

 

新光はとっさに声を出す。

アドシアードに襲撃してきたロシアの組織。

少女達は黙った。

 

「それより聞きたいのはなぜ君たちはそれを食べているんだ?」

 

鷹山はさっき少女達が食べていた人肉について質問した。

 

「「私達は…これを食べないと死んじゃうの」」

 

口揃えて言った少女達。もしそれが本当なら親に捨てられるのも無理もない。

いや、それよりも……

 

「そうか、だがそれは死体損壊罪に入る。警察署まで連れて行く。それにこのタンカーに居た中国人の事も聞かないとな」

 

連れて行く…この言葉で二人は泣きそうな目になり俯(うつむ)いてエルサが質問した。

 

「……ねぇ、中国人のこと。どう思う?ここで働いていた中国人をどうするの?」

 

中国人のこと。ここ近年何か問題を起こしているのはわかる。このタンカーに載せてあるコンテナの中にある肉も問題がある。

だが中国人は全て悪、問題があるなんてことはない。

鷹山は答えた。

 

「中国人は悪い人がいるが良い人もいる。中国人が謝るなら俺は許す」

 

ブツン!

何かが千切れたような音がした瞬間にエルサ、テルアの中心に何か電磁波のようなものが発生する。

ミキは鷹山の近くに寄り、新光は辺りを見渡す。

 

「中国…人を…許す…」

 

「なんで…なんで…」

 

コンテナがガタガタと揺れ始め照明もチカチカと点灯し始める。

バンバン!とコンテナの中から何か暴れ始めた。

 

「「アーネストおじさんを…カイルおじさんを殺した中国人を許すなんて……私達の第二の人生を奪った中国人なんて……大嫌い!!」」

 

「タカ!」

 

「ミキ!」

 

二人は背中を合わせ暴れるコンテナに凝視をする。

バンバン!ガコッ!とコンテナの容器の一面が外された。

そのコンテナの中から覗いているのは背中から白い骨が突き出ていた生物…と言えないものだ。

 

「待てよ、待てよ。何時からバイオになった?」

 

鷹山は皮肉にもそう呟く。

背中から白い骨が突き出ている生物のようなものは全身に皮はなく肉塊で、四つ目がついた顔が、身体は人と同じ形で腕は長い骨が爪のように一本差し込まれていた。全長は三メートルはいっているな、胴体は普通の人の二倍の太さ。それが三体、三個のコンテナから出てきた。

残りのコンテナからは上に居たあの皮がない人の形をした肉塊だ。

それが五体。

鷹山の言うとおり完全にバイオだな。この状況は。

 

「ミキ!絶対に守る!」

 

「私もだ!ダーリン!」

 

「おい!来るぞ!」

 

人の形をした肉塊が白い牙を出しながらゾンビとは桁違いな速さで飛び上がった。

飛び上がった肉塊、いやゾンビと呼ぶべきか、その物体を新光はルガーで頭を撃ち抜く。

 

「新光大丈夫か!?」

 

新光は鷹山と合流する。

すると新光の後ろからゾンビが走ってきて新光を掴み取ろうとするが新光は後ろに振り返りともえ投げをして鷹山が撃ち抜いた。

 

「ナイスだ、鷹山」

 

コンテナの上に上がったゾンビの身体が黄色い膿のような物が膨張しはじめた。

それを見た鷹山は呟く。

 

「なんだ、あれは?」

 

嫌な予感を感じた二人はそのゾンビを撃つ。どんどん膨張するゾンビは新光達に向かって走る。

 

「こっちに突っ込んでくるぞ」

 

新光はあのゾンビが危険なゾンビだと予知して脚の関節部分に撃つ。ガクッ、と倒れたゾンビはそのまま膨張して後続のゾンビが通りかかった時に爆発し後続のゾンビごと吹き飛んだ。

その爆発したゾンビが自爆するゾンビだとすぐに分かった。

 

「ダーリン!こっちにも援護して!」

 

ミキはコンテナからコンテナへとMac10で爪を持つゾンビと戦っていた。図体がデカイゾンビはMac10の銃弾が効かないように見えた。いや、あのゾンビの肉が固いのが唯一の理由だろう。

爪がコンテナを突き破りコンテナを持ち上げて姿が露になったミキを残りの二体が左右から凪ぎ払って来るがミキはジャンプしもう一回凪ぎ払いが来るが来た爪の上に乗りもう一回ジャンプし別のコンテナへ。

コンテナを突き刺していたゾンビはミキを向けて投げようとしたが鷹山が撃った擲榴弾が首に当たり爆発し鷹山の存在に気づいたようだ。

 

「こっちだ!」

 

鷹山は大袈裟に言った。

高く飛び上がったゾンビは鷹山の前に爪を立てて着地する。

四つ目があるこのゾンビは気持ち悪いゾンビに感じる。

 

「グオォォォォ!」

 

「新光、俺はこいつの相手をする。あぶねっ!お前は別のヤツを相手をしろ」

 

「おう!」

 

鷹山はレミントンM31に擲榴弾を装填し新光はもう一体のゾンビに撃つ。

すると後ろに振り返り爪を床に突き刺しながら進んでくる。

通常弾でも倒せないならこの弾だ。

ルガー拳銃のマガジンを外し外されたマガジンが床に落ちる。

 

「これより凍結弾(フリーズ)と擲榴弾の使用を許可する……なんてな」

 

勝の口癖を言いながらマガジンを挿し込み二発撃つ。撃った弾は青い曳光を走らせながらミキが相手をしているゾンビと目の前にいるゾンビに当たり着弾した所を中心に氷始めゾンビの活動が停止した。

 

「ミキ!撃つんだ!」

 

新光はルガー拳銃の銃口に擲榴弾を差し込み撃つ。ミキも凍結したゾンビに銃弾を浴びせる。擲榴弾はゾンビの足に当たり爆発、バランスが崩れたゾンビはそのまま床に叩きつけられガラス瓶のように砕け散った。

ミキが撃った銃弾は全身を浴びせまるで窓ガラスのように砕け散った。

そのころ鷹山は四発の擲榴弾をゾンビに浴びせたが効果が見出だせてなかった。

 

「くそっ、装填する暇がないからあと一発。せめて口を開けてほしいな」

 

鷹山が愚痴言っている時にゾンビはスッ、と後ろに回り込んでくる。図体がデカイが鈍いと勘違いした鷹山の失態だ。

油断していた鷹山に二本の凶器が降りかかる。

 

「やばい!『スローモー』!」

 

降りかかる凶器が急に遅くなるように感じ鷹山は潜り抜けて下から擲榴弾を口に向けて撃つ。

後ろでガガッ!と凶器が床に突き刺さった時に擲榴弾は口の、歯と歯の隙間を通り口腔の中で爆発した。

口から少しだけ血と肉が吹き飛び爪という名の凶器を杖にして倒れ気味になり息絶えた。

 

「ダーリン!大丈夫か!?」

 

顔に付いた血を拭き取った鷹山は前から飛び付いて来たミキを受け止め抱き締める。

 

「大丈夫だ、ミキ。俺はお前が死ぬまで死なないからな」

 

「ダーリ~ン!」

 

こんな死臭が漂っている空間にいちゃつくカップル居ないだろうな。

 

「新光、お前が撃った弾は武偵弾か?見たことない弾だぞ」

 

鷹山はミキを抱き締めながら新光が武偵弾を使ったのか聞いた。

新光はルガー拳銃のマガジンを外し一発だけ出す。全体が青い弾であった。

 

「あぁ、これは武偵弾、凍結弾(フリーズ)だ」

 

凍結弾とは何で出来ているのか分からないが弾頭に薬品が詰まっており撃つと青い曳光が走り着弾と共に薬品が漏れて被弾物が凍結する弾だ。

威力は高いが被弾物全体凍結するため、対人には不向きで武偵には知られていないシークレットな弾である。

 

「それよりも希と合流しよう。この有り様だと証拠はあまりないだろう」

 

新光はこの有り様……ヴィンチェンゾ・ファミリーも絡んでいると分析して証拠はあまりない……と言った。

鷹山は栄養ドリンクを飲みながら辺りを見渡す。

 

「そうだな。希と合流してここから離れよう」

 

新光、ミキは頷き弾を装填しながらもとの場所に戻ることにした。

 

「……いない…だと!?」

 

階段から上がった時に置いていた希の姿が見当たらない。残っているのは失禁した水と血痕が出口に向かって伸びていた。

鷹山は自分の怒りを拳で壁に叩きつける。

 

「くそっ!なんでここに置いてきてしまったんだ」

 

「タカ!まだ希は死んでいるなんて決まってない!出口に行くぞ」

 

鷹山がorzになっている時にミキは鷹山を励ます。

 

「まぁ…死んではないだろ」

 

新光がそういいルガー拳銃を構えながら進む。惨劇があった現場を新光が通りすぎて鷹山、ミキが通りかかったときに壁にもたれて倒れていたゾンビが震え始めた。

 

「キエェェェェ!!」

 

甲高い叫びをしてゾンビの身体が黄色い膿らしいものが膨れ上がる。

そして立ち新光に向かって走ってくる。

 

「爆発するゾンビだ!」

 

新光はゾンビが叫んだ時に振り返り、すぐに撃てたが9mm弾では威力が足りず関節を破壊できずつかみかかってきたゾンビを新光は両手で止めた。

だが膨れ上がってきたゾンビがいつ爆発するかわからない。下の階で見たあの威力を間近で食らうことになる。

 

「新光!頭下げろ!」

 

鷹山が叫びながらレミントンM31を構えて新光は頭を下げた時、ゾンビの頭が飛び力なく倒れた。

 

「さ、さんきゅー、鷹山」

 

「早く行くぞ。いつこいつが爆発するかわからん」

 

「そうだな」

 

倒れたゾンビは膨張するのを止めて黄色い膿が脈を打っている。

爆発するかわからないが甲板に向かう。

日没を過ぎ甲板は上にあるライトで明るく照らされていた。外に出て血痕の跡を追うとすぐ横に曲がった所に腕から血を流している希の姿を発見した。

 

「希!」

 

鷹山が血を流している希に近寄り希の服を引き裂いて傷を確かめ始めた。遠目で見ているが肩の傷があるだけで他の外傷は見当たらない。

 

 

「くそっ!誰が希をこんな目に遭わしたんだ!やった奴を殺してやる!」

 

「タカ、激しく同意するわ」

 

鷹山が高らかに叫びミキも鷹山の意見に同意をする。

だがそんなことしている間に希が死ぬかもしれない。そうなる前に病院に連れて行くべきだ。

 

「鷹山、それをするより希を病院に連れて行った方がいい」

 

鷹山が新光を見る。新光は鷹山の目を見る。新光は軽く驚愕した。鷹山の目が憎しみと狂気を含んでいる目であった。完全に冷静に保っていない。こんな時に敵と遭遇したら……

 

「てめぇらは病院ではなく、あの世に逝くんだな!」

 

甲板の、船首の方から男の声が聞こえた時にその船首の方からボウガンの矢が飛んできた。

 

「タカ!」

 

「鷹山!」

 

鷹山に向かってくるボウガンの矢を新光は時間を計り始めて念動力を使いボウガンの矢は鷹山の目の前に止まり矢をへし折った。

鷹山はレミントンM31を船首にいる男に向けて撃つ。

男はその弾を避けて甲板の真ん中に出てきた。ライトによってその男の姿が浮き彫りになる。赤く染めた短髪に返り血がこびりついた服、手には土のような色の細い剣を確認できた。

 

「お前が希に手を出したのか」

 

鷹山はレミントンM31を男に照準を定め言った。

 

「希?…あぁ、失禁していた女か。そうだ、だが安心しろ。傷は浅くやった。お前らを誘き寄せる餌としてな」

 

「お前は何者だ!目的はなんだ!?」

 

「俺は……ジーク。ヴィンチェンゾ・ファミリーのジークだ。二つ名なんて無い。俺はいつも孤独だからな。俺の目的は人生を…家族を奪った中国軍の王新生(わんしんしぇん)を殺すことだ!てめぇらは奴の事知っているんだろうな?」

 

「王新生……中国の英雄、王新生か 」

 

「鷹山、知っているのか」

 

「あぁ、少しだけな。ジークと言ったな。希に手を出した事を後悔させてやる!」

 

鷹山は叫び、ジークは剣を鷹山に向ける。

 

「いいだろう。無理矢理でも奴の居場所を吐かせてもらう!」

 

薄暗くなった港に数々の銃声、そして爆裂音。

船内は肉片の死臭が漂い甲板には三人の人間は一人の復讐者に銃口を向けていた。

その復讐者…ヴィンチェンゾ・ファミリーのジークは走り鷹山のレミントンM31の銃弾を土で出来た剣で叩き斬り真二つになった銃弾は空中で爆発した。

そしてジークは剣で突くが鷹山はすぐさまにレミントンM31を盾にし、少し抉れたが防ぐことができた。

 

「ちっ!」

 

ジークは舌打ちをした瞬間に何かに押されるかのように鷹山から離れた。

正確には新光の能力で後ろに飛ばしたのだ。

そこでミキがmac10で偏差射撃をするがジークは手に甲板を当てた時に床から土が盛り上り銃弾から防ぐ。

さらに9mm弾とレミントンM31の擲榴弾がジークに向かって飛んでくる。

 

「甘い!」

 

ジークの剣がボウガンに変化しボウガンの矢が放たれ擲榴弾を貫通、爆発し9mm弾も爆風であらぬ方向へ飛んでいった。

 

「さあ吐いてもらうぞ!」

 

「するわけねぇだろ!」

 

ジークは鷹山に接近、撃つ前にジークの持つボウガンが剣に変わりレミントンM31の銃身を二つ、いや四つに斬られバラバラになった。

 

「死ね!」

 

「『スローモー』!」

 

ジークの片手の上段の構えを取り降り下ろす。鷹山の眼にはその動きがよく見え剣の刃が作業服とスレスレになったが避けきれてカウンターとして回し蹴りをしてジークを落下防止の鎖まで追いやり、その衝撃で手から剣が離され海に落ちた。

 

「もう終わりだ。ジーク。」

 

栄養ドリンクを一本飲みそして10mm弾が吐き出されジークに襲いかかる。

 

「なめるんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

 

満身創痍であるジークだがジークが手に触れていた鎖やポールが土に変わり意志があるかのように鋭い形状となりそれが10mm弾を割りそのまま新光達に迫り来るが新光は能力で刺を折らせた。

ミキは迫り来る刺を破壊しようとするが銃弾が刺に触れた瞬間に四つに割られミキはしゃがみ刺はミキの上に通過した。

 

「『スローモー』!……な、しまった!」

 

スローモーによって土の刺を避けることが出来たがさらに刺が生えて鷹山が持っている弾薬、栄養ドリンク等がこぼれ落ちた。

ジークは鎖を掴むと鉄であった鎖が土と成りさらにその土が剣へと変形しそれを杖変わりとして立つ。

 

「ジーク、お前の能力は手に触れた物を土にし、さらに変形させる能力か」

 

「そうだ。てめぇの…能力は…何かを摂ることで…使えれる能力だと……見通してたぜ」

 

ジークは途切れ途切れに発し説明をする。

ジークの足元に多くの血が落ちる。

 

「俺は……ここで死ぬわけには…いかねぇ!ドイツ人を殺した…俺の家族を奪ったヤツを殺すまでは!その手掛かりとして、てめぇを!」

 

「鷹山危ない!」

 

新光は何か危ない気を感じ視界の片隅に赤い何かが鷹山に向かって猛烈な速さで迫り来ることが見えて声を出したが時すでに遅く鷹山の後ろから赤い刺が横腹と手の甲を貫きデルタエリートが床に落ちる。

 

「がはぁ!?」

 

鷹山を貫いたその刺の元は希の血痕からであった。

 

「タカァ!」

 

ミキは悲痛な叫びをし新光は茫然と…そしてただ冷静に状況を整理した。

そしてわかったことは。

 

「ジーク。お前の能力、もう1つあったのか…」

 

ジークは悪巧みしている顔をし、ジークの血が剣に染まり黒ずんだ剣になった。

おそらく鉄と同等の剣になったのだろう。

 

「ああ、もう1つは……流血した血を遠隔操作が出来る能力だ。他人の血で貫かれる…感覚はどうだ?さぁ…吐かせてもらうぞ」

 

「くそっ!血を操る超能力だと!?」

 

希の血痕から伸びてきた紅い刺は砕けちりその瞬間に脇腹と手の甲から鮮血が飛び散る。

出血量はそんなに多くはない。

 

「違うな…すぐにガス欠になる欠陥能力ではない…さて、そろそろ吐いてもらうか」

 

「許さない……」

 

その時ミキは鷹山を傷つかせたという怒りでMac10が震えその銃口はジークに向けられる。

 

「許さない許さない許さない許さない許さない!」

 

怒りの目になっているミキを見たジークは少しだけ空気を漏らしながら笑う。

 

「怒りが込もっている…がそれでは俺には勝てない。なぜなら……」

 

ジークは手のひらをミキに向ける。

何をする気だ?

血の攻撃か?

 

「貴様はただの人間…能力を持たないただの人間だからな」

 

手のひらにこびりついている血が球体の弾丸となって数十発の弾丸が亜音速の速さでミキに襲いかかる。

 

「なめるなぁ!」

 

それをミキはMac10で弾丸を撃ち落とす。

彼女にとってはこんな攻撃はただの的撃ちと一緒だろう。

だがミキは前の攻撃しか見ていなかった。

タンカーの管制塔のガラスが割れた。

割った物は赤黒い物体、そうそれは血液。

ジークが遠隔操作した鉄分を凝縮したものだった。

それを気づいていないミキに亜音速で襲いかかる弾丸に近い血だが新光はいち早く気付き能力でそれを止めて海に落としドボドボと海面にめり込み海底に沈む。

新光はそれを見届けてミキの前に立ち制止させる。

 

「ジーク、お前の狙いはなんなんだ?王新生とお前の関係は一体なんなんだ」

 

「決まっているだろ!ヤツは家族を奪い世界を―」

 

『止せ、ジーク』

 

初めて聴く声に新生は一瞬だけ戸惑う。

なぜならこれは春奈と同じ、心を干渉して声が聞こえる能力だからだ。

だから鷹山、ミキにはこの声が聞こえない。

 

『なんだヴィンチェンゾ!俺の邪魔をするんじゃねぇ!』

 

ジークの声が心から通じて聞こえてくる。

ヴィンチェンゾ、それが彼らのボスの名前だろう。

 

『戻れ、彼らは王新生の居場所は知らない』

 

『……ちっ!』

 

ジークは舌打ちをしながら床に落ちている書類を新生に投げ渡す。

この書類は……

 

「俺は帰る……命拾いしたな」

 

足取りが悪いジークは歩きその場から立ち去った。

今追撃しようとも無駄だろう、むしろ逆に被害を受けてしまう。

嵐が去ったかのような静けさがこの激しい戦いが完全に終わったと告げていた。

 

希は病院へ、鷹山は幸いにも軽傷ですみ、希を除く三人は横浜駐屯地で小野勝はジークが投げ渡した書類……あのタンカーに関わる輸入、輸出した会社のリストを見ていた。

鷹山達の話を聞いた勝はやっと口を開いた。

 

「このリストに載っている会社は全て王新生に関わっている」

 

「親父、その王新生とは一体誰なんだ?」

 

新光の質問に鷹山が答える。

 

「王新生とは中国軍の最高司令官並びに中国の上から二番目に強い権力を持つ独裁者だ。王新生は金を使って部下達が各国のテロを起こさせている。その王新生は英雄と讃えられ奴は大の日本嫌いでな、東日本大震災の時も奴はテレビを通してシャンパンをぶちまけて喜ぶ姿を放映させやがった!」

 

怒りをぶちまけて机を強く叩く鷹山を見て勝は話を繋げる。

 

「そんな奴だが今、王新生は主権を握ろうとしている。恐らくシベリア進攻を再び始めようとしているのだろう」

 

「待てよ。再びってまさかあれを起こさせたのが……」

 

「紛れもない。王新生だ」

 

狂っている。王新生は狂っている。

兄が死ぬきっかけを出したのが王新生。

そしてまだテロ活動を行っている。

 

「ヴィンチェンゾ・ファミリーのジークの家族は奴の部下に殺されたのだろう。そして復讐者となっていると考えられる」

 

「各国にテロを起こさせているならそりゃあ復讐者が出るな」

 

「第二次朝鮮戦争にも奴が介入しまた停戦した。本題に入るがその王新生は金を賄賂として使い警察を口止めし人肉を売ったのだろう。警察だけではなく武偵局、海上保安庁、日本政府、防衛省にも奴の手のひらの上に乗せられている。唯一無事なのは『大和』だな」

 

勝は立ち上がり外は闇に包まれた空間を窓から覗き見る。

この先の闇は未来がない……そのような景色であった。

 

「新光、もう帰れ。明日はゆっくり休め」

 

「あ、あぁ。わかった」

 

急に用無しとなった新光はしぶしぶと退室する。

 

「鷹山、近いうち……あと一年ほどに経ったら中国に何か起きる。私と一緒に中国に向かう。それまでに準備をしろ」

 

「あんたが言うとマジで当たるんだが……」

 

「それとだ、お前は来月から韓国軍から予備自衛隊へ転属するわけだが……」

 

勝は机から離れ、鷹山が持っているレミントンM31を没収する。

 

「自衛隊に入っている間、この銃の使用を禁止する。我が自衛隊が使用している銃だけを許可する。例外は認めん、武偵に所属していても禁止だ」

 

自衛隊に所属している間は自衛隊が所持している武器しか使用認めないと言う。

本音は弾の補給やら統一性を見せたいからだ。

 

「はぁ!?なんで!?俺は認めんぞ!俺は」

 

「うるせぇ!ガタガタ抜かすんじぇねぇ!チョン漬け野郎が」

 

反論する鷹山に遮ったのは勝ではない。新光が出て行った扉から入ってきたタバコを必要以上に噛んでいる男、公安0課の栗林英雄(くりばやしひでお)だ。

公安0課と言うと、これは後で言おう。

 

「栗林、貴様の韓国嫌いはいつものどおりだな」

 

勝はため息を吐きそうであったが飲み込み、栗林に話す。

栗林は噛んでいたタバコを口から外し鷹山の額に押し付け、押し付けた額から煙が出てもがく鷹山。

 

「っつぅ!?」

 

「おら、てめぇは早く家に帰って子供つくりの作業に入れ!」

 

栗林は鷹山をつまみ出して部屋から追い出した。

追い出した鷹山は激しく扉を叩くのだが他の自衛官に連れて行かれ、静寂に戻る。

静寂に戻った部屋に栗林から出した書類、それはとある人物が米軍から自衛隊に転属する書類だ。

公安0課がこれを持ってきたのは不明だが、これを読んでみると転属先は第07小隊。

根なし草の勝が来月構成される小隊だ。

 

「これは……」

 

「そうだ、お前の部隊の一人、米村准(よねむらじゅん)。第二次朝鮮戦争時の失踪者。そしてあの作戦の発案者の親戚に当たるヤツだ」

 

勝は米村の行動について思い出す。戦争時、生物兵器施設を破壊、その後3年間の失踪し、さらに一時彼の知り合いの自衛官と共に失踪した経歴を持つ。

その親戚はあのミサイル阻止作戦、光明を死なせる案を出したあの人物。だがその人物もあの戦争で戦死した。

そんなことはもうどうだっていい。もう帰ってくることもない。指示を出したのは勝本人だからだ。

 

 

同刻広島呉は空はうす暗く、マンション一室は電気点いていない。留守だろうと思うが暗い部屋に一人の男、米村准がベットに腰かけていた。

彼の左頬に一線の傷。これは戦争とは関係ない傷だ。

米村は目を閉じ、昔のことを思い出す。

 

戦争時の悲劇、その後の世界の崩壊の予兆。彼が見てきた残酷な未来。奴のせいで消されかけた世界。

米村はもはやボロボロに朽ち果てた刀を抜き、その戦いを思い出し、戒めた。

だが…もう迷うことはない

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