日曜日、アリアは退院し、俺と浩司と香苗は武偵病院に行ったが既に出ていったようだ。
だがすぐに見つかった。歩道に歩いている私服姿とピンク色のツインテール、アリアが居たのだ。
離れすぎず近すぎずの距離を保ちながら尾行を開始。
「アリアはどこに行く気だ」
「新光、あまり前に出るな。気付かれるぞ」
「あ、キンジさんもいる」
アリアとはかなり遠いがキンジが信号で待っていたが見つけたらしくアリアが歩いて行った方向に行く。
キンジも尾行するようだ。
尾行元、アリアは新宿に向かっているようだ。
普段のアリア……武偵服ではないアリアは可愛らしく、向ける目線が急に増えている。
そしてアリアが向かっていた行き先が判明した。
「警察署?」
アリアの行先は新宿警察署だった。
そして
「下っ手な尾行。シッポがにょろにょろ見えるわよ」
アリアは振り向き新光たちに目を向けるがばれているのは新光ではなく、その前、キンジであった。
「なんだよ、気付いていたなら言えばいいだろ」
キンジは諦めて街灯から顔を出す。
「迷っていたのよ。教えるべきかどうか。あんたは武偵殺しの被害者の一人だから。あと後ろの……新光だったかしら、出てらっしゃい」
「え!?え!?」
アリアが指を指した向きに向いたキンジは目を点にした顔をする。
「あはは〜」
と香苗が出て新光、浩司と顔を出す
「キンジ、貴様探偵科(インケスタだ)ろ。尾行くらい気付け」
浩司は中々きついこと言う。
「一般中(ぱんちゅー)出身の女子には気付いたけどなぁ」
とキンジが言い訳しているがキンジに尾行する人なんているのか。
キンジファンの女子か?
「まぁ、もう着いちゃったし。いいわ、ついてきて」
と署内へ向かうアリア。
キンジは疑問符を浮かべ付いてくる。
留置人面接室、どうやらアリアは留置中の誰かと話す。
留置人面接は三人までしか入れないからここは俺が行く、というわけで二人は外に待機となった。
アクリルの板越しのドアから出てきた美人、美しい長い髪にオニキスのような瞳。
アリアと同じ白磁のような肌。
親戚の方だろうか
「アリア。この方、彼氏さん」
「ち、違うわよママ」
アリアの傍に居たキンジを見たようでアリアは、
「ち、違うの。こいつは遠山キンジで……そういうのじゃないわ。絶対に」
とスパッと言い切る。
「後ろに居る方は?」
と今度は新光に向けられる。
「あ、あぁ。俺は小野新光」
「初めまして。わたし、アリアの母で、神崎かなえと申します。娘がお世話になっているみたいですね」
「あ、いえ……」
とキンジは滑舌を悪くして返す。
「ママ、面会時間が少ないから手短に話すけど、こいつは武偵殺しの被害者なのよ」
とキンジに指を指す。
「まぁ…」
「奴らの動きが活発になってきてるのよ。すぐにとっ捕まえてやるわ。待ってて!」
この言葉を聞いた、かなえは目をそらし暗い表情を見せる。
「武偵殺しの件だけでも無実を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑されるわ。最高裁までの間に、他もぜったい全部なんとかするから」
懲役864年……実質終身刑みたいなもの。
その意味を知っているのかキンジもかなり驚いている。
「気持ちは嬉しいけど……アリア、もうパートナー見つかったの?」
「そ、それは……」
見つかってない、かのように目を逸らす。この前キンジとパートナー解散したという。
「大きな敵と戦う前にあなたを理解してくれる人を見つけなきゃ」
「あたしなら一人でも…」
「いいえ、アリア」
顔を伏せたまま言ったアリアをかなえさんがそれを否定する。
「あなたを受け継いだ才能を発揮するには必要なことよひいおじい様やおばあ様にも優秀なパートナーがいらっしゃったでしょ?」
「わかっている。いつまでもパートナーを作れないから、欠陥品とまで言われて……でも時間が」
「人生はゆっくりと歩みなさい。早く走る子は、転ぶものよ」
アリアがやっと顔を上に上げ、かなえの目を見る。
「神崎。時間だ」
管理官が壁の時計を見ながら告げる。
もう面会時間が終わったというのか。
「ママ、待ってて。ママに濡れ衣を着せた奴らを公判までに必ず全員捕まえるから!」
一秒でも、母に言いたいことを言うアリア。その言葉には必ず釈放できるように決意するかのように。
「駄目よアリア!イ・ウーに挑むのはまだ早いわ!」
イ・ウー?
「時間だ!」
管理官が無理矢理かなえさんを引きずり無理矢理退室させる。
これが重罪を犯した者の扱いか。
「止めろ!ママに乱暴にするな!」
「アリア。まずパートナーを見つけて!その額の傷は一人で対応できない危険に踏み込んでいる証拠よ」
アリアが額の傷を隠していたがとっくに気付いていたらしく、かなえがアリアを叱る。
「アリア!」
「ママ!ママ〜!」
アクリル板を叩きドアが閉ざされ叫びが虚しく消え去った。
曇り空の中、警察署から出るとすぐにアリアは新宿駅へ戻る。
キンジはすでにアリアの後を追い、新光は浩司と香苗と一緒に帰る。
新光は歩きながら考えていた。
イ・ウー、アリアがかなえを懲役864年を着せた組織を追っている。
「あ、雨降ってきましたね」
歩き始めてから十分くらいにポツポツと雨が降り始めた。
嫌な雨だ。
こんな時にジメジメとした空気は。
そんなのを気にせずに歩いていると黒い車と一人の男が立っていた。
近くに御偉いさんがいるのか。いや、そうではなかった。
「お待ちしておりました。小野新光くん、九条香苗さん、岸田浩司くん」
ゆっくりとはっきりと言った男、新光はルガー拳銃を取り出そうとするが。
「私はEJの者です。場所を変えてお話しましょう。他の方も待っています」
EJの一人。この、指輪の秘密を知る組織の一員がついに新光たちと接触した。という訳だ。
「わかった。香苗、浩司、来てくれ」
「え、はい」
「おい、新光」
「頼む……」
静かに言い、浩司を説得させる。
浩司も黙って新光に従う。
EJの組織、そしてこの指輪のこと、そして俺たちに関係あることを聞かなければならない。
某所の喫茶店、その小部屋に分けられている所に案内され、中に入ると春奈、鷹が居り、部屋の出口に帽子を被って紫色の髪でウェーブかかった特徴な男。EJの仲間だろうか。
春奈とテレパシーで交信しつつ入る。敵意は無いようだということで拳銃は取り出さない、ということ。
「私は草加 匠(くさか たくみ)と申します。イ・ウーの敵対組織であり、あなた方を援助するEJという組織の一人です」
黒い服を着ている草加は自分自身をEJの人間と言う。しかもイ・ウーの敵対組織と言い、新光たちを援助すると言った。
仲間とそう言っていると同じ事であった。
「何故EJが俺達を援助を?」
「そうですね……新光、あなたがお持ちの指輪は全ての質量、重力操作が出来ます。もちろん空気もね」
重力……すなわち物にかかるすべての重力を操ることができるということ。空気も重さを持っているからそれも、そして逆に反重力にすることができるということ。
「成る程、それでロシアの組織もイ・ウーというやつも欲しがる……というわけだがイ・ウーとはなんだ?ロシアの組織の名くらい知っているだろ?春奈が言うには俺の他の仲間にも狙ってきてるらしいが」
質問責めとなったが新光たちは情報が欲しいため草加に聞いてみる。
「イ・ウーは我々と同じく過去の産物であるもの。そしてロシアの組織……『ヴィンチェンゾ・ファミリー』も超能力を持つ者を集めて主に殺し屋としてやっている組織。なぜあなたたちは狙われているか、それはあなたたちの能力を欲しているからです」
新たな組織、ヴィンチェンゾ・ファミリー。確かにロシアの有名な殺し屋だ。超能力(ステルス)を中心に使う組織だと。
「そしてあなた方が持っているのは……特殊能力(スペシャル)と呼ばれる能力です。超能力とは違う能力です」
「特殊能力?超能力(ステルス)とは何か違いがありますか?」
香苗はそう質問する。
確かに超能力と特殊能力の違いはわからない。
「特殊能力とは……ただ体質が変わっている能力者のことです」
「体質?なんか人ではない、と言われている気がするな」
事実、超能力を持つ武偵。超偵もある意味人間ではないが。
「特殊能力ということは超能力とは何か違うメリット、デメリットがあるのか?」
浩司は草加にそう質問した。
超能力のメリットは身体能力向上させれる等だ。
デメリットは精神力を削ってしまうこと。
違うのだったら条件も違うということだ。
「特殊能力は精神力を削り通常戦闘に支障が出るような能力ではなく身体と能力が別れた通常戦闘と能力戦闘両方使い分けれるのです。能力は環境、身体の一部を代償・代価を支払い行使させます」
環境と身体の一部……確かにSSRの連中はそんなヤバい特徴を持つ武偵はいないな。
「待って!代償って」
春奈が慌ててそう聞いた。
それでも草加は涼んだ顔で答えた。
「代償・代価とは細胞や内臓の一部を失わせることです。もっと悪質な物だと命、脳まであります。大丈夫です、そのような能力者はあまりいません……続いて環境です。時間や月の光等が関係しているものです。しかしこれは使用出来ない環境もあります。我々はこれらを『制約』と呼んでいます」
制約……SSRの連中でもその単語は言わなかった。そして肉体を代償にする能力者は数少ないようだ。もしかしたら俺たちの中でも居ないだろう。なぜなら新光、鷹、浩司は時間、回数の制約。春奈は精神集中型の肉体型、ということだろう。
「そんな能力を持つあなた達はイ・ウーに、ヴィンチェンゾ・ファミリーに狙われている。かつ、その指輪は我々の計画の一つだった。しかしもうそれは過去の話、今はあなた達を援助する第二の計画を開始しました」
第二の計画とは言っていた新光たちをイ・ウー、ヴィンチェンゾ・ファミリーから守るための作戦だろう。だが新光はとっさに疑問を草加に言う。
「そうか、特殊能力を持つ俺ら。そして計画失敗し使い道がないこの指輪を俺に貸し出す、と」
「いえ、まだその指輪には使い道がありますが……預言者、その人からあなたたちを守るようにと言われました。ならば一か所にまとめ間接的な援助をするようにしました。ではこれを新光に渡します。多分お役にたてると思いますよ」
と渡されたのは大きなトランクだ。この中に一体なにが入っているのだろうか。そしてEJ、イ・ウー、ヴィンチェンゾ・ファミリー……この3つの組織が新光たちをどう変えていくのかまだわからない。