次の日、アリアは休んだ。
そしてキンジもいない。
外は台風が近づいている証拠なんだろうか、雨と風も強い。
「ねぇーシンシンー」
強い風の中に歩いていた新光は理子と会う。
改造したゴスロリ風武偵服が風をなびき、アイドル的な存在の理子を怪しく、不気味にさせる。
「どうしたんだ、理子……いや、武偵殺しさん。と言えばいいかな」
新光は静かにそう言う。ハッタリではなく本当に。
「ふーん、どうやって分かった?」
理子の能天気な声が消え殺気が滲み出る声が出た。
「うちには証拠が残ってる物にはすぐわかる人がいるでな」
そう、その人は春奈、彼女はテレパシーの他にサイコメトリングという能力を持っており他人の記憶や残留思念を読み取ることができ、自分の思念を送る事ができる。
オープンカーの残骸に残っていた残留思念を読み取った結果、理子が犯人だと判明したが極秘にしてアリア達には知らせていない。混乱を避けるためだ。
「ふぅーん、やっぱり教授(プレフェオン)の言う通りね。シンシン、こっちに来ない?」
「お断りするわ」
と新光が断った瞬間、理子が小型の拳銃を取り出し発砲、反射的に能力を使い銃弾を真下に落とし、腕を突き出し理子をアサルト棟の壁まで吹き飛ばす。
「かはっ!ごほっ!」
背中に叩きつけられた理子はむせる。
「理子、もう降参するんだな」
「なーるほどね、こういうことなら教授も欲しがる訳ね。シンシン、悪いけど今捕まえられる時間じゃないから」
と、理子がガス缶を投げ、白い煙が立ち込める。
毒ガスか、と思われたが風ですぐに吹き飛ばされるが晴れた時には理子の姿はなかった。
逃げられた、そうため息をついていたら携帯の着信音が鳴る。
浩司からだ。
「もしもし」
「新光!アリアが乗った便がハイジャックされた!教室に来い」
「なんだと!?」
「おい!本当か浩司!」
「新光、今通信でキンジと連絡がとれた……だが燃料漏れが起きてあと15分しか持たない、肝心の着陸地点、羽田空港は自衛隊が封鎖した、最悪の場合、撃墜らしい」
浩司が次々と情報を出す。その中には自衛隊が出来てきてジャック機を撃墜するという。
「なんだと!?」
すぐに携帯を取り出し父親、小野勝(おのまさる)に通話をする。父親は陸上自衛隊一等陸佐。
もしかしたら父親の権力で着陸許可を下せば。
「……そうか、ありがとう親父」
5分くらい時間を取り、そして通話を切る。駄目だ。ということ。
「お前……チキショー!勝手にしやがれ!」
キンジと連絡を取っていた武藤はスタンドマイクを叩きだし、外へ飛び出そうとするが。
「武藤!どこに行く?」
「あのバカ空地島に不時着させる気だ」
「まじで?」
「あのバカ本気だ、しかもあの場所明かりなんてない。下手すりゃあ飛行機は……」
武藤の言葉が正しければ着陸失敗し、大惨事になりかねない。
暴風に見舞われた東京都に浮かぶ空地島。
風車が多数立っており、強風のためブレードが回らなくなっている。
そして、武藤がアムド等の懐中電灯(マグライト)を無断で借りて滑走路の誘導灯となり航空機が降りてきようとする。
「見えた。降りてくるぞ」
新光、浩司はカッパを着、キンジが乗る航空機の着陸を待つ。
チャンスは一回きり。
失敗すれば乗客全員死亡する。
暗い闇の中からエンジン音を鳴り響かせ航空機が降りてくる。
武藤の誘導により着陸、やはり地面が濡れているからあまりスピードが落ちていない。
これはぶっつけ本番、しかも乗員込みという危険な状態。
能力『念力(サイコキネシス)』の制限時間30分をとうに過ぎている。
草加の言葉を思い出す。この指輪は新光たちと同じように能力使えると。
「そりゃあ!」
念じ、指輪から黒い塊、超重力物質を生成しそれを地面スレスレに滑らせ、航空機の後ろに、その瞬間前へ吸い込まれるかのような力が生まれる。あの物質のせいだ。吸い込まれあの物質に吸い込まれる。その前に新光、浩司の周りに重力空間を中和させ対策をとった。
海がさらに荒れ海面の一部が島の一部が浸水、風力発電もひっぱられる重力に負け、柱が折れ黒い塊に吸い込まれていく。そして閃光が煌めき、風圧でマンションのガラスが振動する。
「新光、……止まったぞ」
「そうだな」
無事に航空機は止まった。
ヴィンチェンゾ・ファミリー、イ・ウーはこれを何に利用するつもりなんだ?そして俺たちを狙うのも何が目的だ。キンジはあの後一回病院送りとなった。
そして新光は今、武偵高の屋上で草加と話をしていた。
「本当にこの指輪、俺が預かってもいいのか?」
「ええ、我々ではその指輪を有効に扱うことはできません。だから君に渡したのです」
パーマ男は階段の傍で見張り、草加はこの指輪をなぜ新光に渡したのか、その理由を言う。
「それだけではないのでしょう?昨日のようなことがこれからも起きるから、これを使う機会があるから、ですね」
新光はさらに草加がこの指輪を渡したのか、その理由を深読みして言った。これから迫る組織、指輪の危険性と有効性。それを実感してからこその推測だ。
「察しがいいですね、期待通りです」
この推測が当たったのか草加は機嫌よさそうに答えた。
「……そろそろ教えてくれないかな?『預言者』について」
新光は話題を変えて『預言者』について聞いてみる。
一回この名が出てきたとき引っかかった。
知らない人が新光たちをEJと接触させたのか。
「……それは言えません、彼女からの頼みなので」
草加はこれを答えるのを拒否した。
預言者とは何か、もしこの指輪が向こうに渡ってしまったらどうなるか。
草加がなぜ新光に指輪を預かっているのかもう一つ理由があった。
このことを知るのはまだ、遠くて、近い未来にてわかることだろう。
『次のニュースです。チューク諸島近海に出没した海賊が残骸として発見され漂流者の証言では旧日本―』
テレビで放送されている一つのニュース、一見何事もないニュース。もしかしたらこの裏には闇に葬り去られている真実が隠されているのかもしれない。