「目立つことするな、新光」
アドシアード当日、武偵校の待機室にて待機している新光らは魔剣を確保する作戦を練っており浩司が、アドシアードを中止になるような行動をするな、と先に釘を刺しておく。
今までほとんど新光は単独行動をしていたからだ。
「大丈夫だって。敵はただ一人だけだぜ?」
そんな新光はヴァイオリンを置く。
「何が大丈夫だ。昨日の化け物、ヴィチェンゾ・ファミリー、そしてイ・ウー。敵は多い。あのときに願が居なかったら死んでいた」
確かにそのとおりだ。
とりあえず、願に連絡してみよう。
どうやら魔剣は白雪を連れ去ったようだ。場所は地下倉庫(ジャンクション)
地下倉庫とは、えげつない所を選ぶな。
地下倉庫……それは火薬が積んでいる場所だ。絶対行きたくない場所。
もしここで引火、誘爆なんて起こしたら巡洋戦艦『フッド』の如くふっ飛ぶ。
そう、文字通りフッドがふっ飛んだ、と。
地下倉庫にて新光、キンジ、アリアが走って行った先に、鎖で縛られている白雪がいた。
願は先に魔剣を追いかけて行った。
「白雪!大丈夫か!?」
キンジは白雪の肩を掴み異常がないか確認する。
鎖にドラム型の錠に三つの鍵で開けるタイプがつけられている。
浩司の能力で飛ばせば簡単に終わるが。
「アリア、新光。先に行ってくれ」
キンジは学生証の中から解錠キーを取りだす。
キンジは解錠するようだ。
新光達はキンジを残していき、先に進む。
梯子を昇りきり次は広い部屋に出る、どうやらスパコンの部屋だ。
そして目の前に願がいるが新光達は絶句、を通り越して苦笑いをする。
願の足元に欧州の昔の騎士みたいな格好をしている白人の女が倒れている。
もしかしたら、と新光は思って願に聞いてみる。
「願、まさかこいつが」
「おう、新光。こいつはあの魔剣だ、そしてこいつは30代目ジャンヌ・ダルクだ」
ジャンヌ・ダルク?
おかしい、ジャンヌ・ダルクは確か
「火刑された、と思っているだろ?だがこいつはそれを影武者だとほざいている……まぁ、こいつを連行すっぞ」
「ケケッ!五流雑魚を倒すとはなかなかだなぁ」
突然閃光と爆音がジャンヌ、新光達に襲いかかり、願はすでに避けていた。
砂ぼこりが晴れ、視界にジャンヌは確認できたがそのジャンヌは地面にめり込み、周りに電気が地面を走っていた。
その中心にはジャンヌの頭を掴んでいる銀髪の男。
「お、お前は何者だ?」
ジャンヌは地面にめり込んでいる状態で苦し紛れにその男に問うが男は無言で足に電気を溜め放出、時速数百キロの速さでわしづかみしたままのジャンヌを壁に叩きつけ顔が壁にめり込む。
声が出ないジャンヌをそのままスライド するかのようにしジャンヌの顔が通った後が壁に残る。
「さぁて、雑魚第1号の退場だな」
壁から離し口や鼻、頭に血が流れているジャンヌに男は右手に電気を溜めドドメを誘うとするが……
「待て!俺の獲物に手を出すな!」
願は虎徹で男に斬りつけるが紙一重に避けられ手から離されたジャンヌは頭から地面に叩きつれられ呻き声もあげずに部屋の片隅に当たり止まった。
「アリア、ジャンヌと白雪を安全な所に避難させろ。手錠も忘れるなよ」
「分かってる」
アリアはジャンヌの所に行き引きずりながら安全な所に避難させる。
「キンジ、俺達は願に援護するぞ」
「おう」
ルガー拳銃にドラムマガジンを挿入し、キンジはベレッタを取り出した。
「で、お前は何者だ!」
願はスパコンの上に着地した銀髪の男に向け叫ぶ。
「俺?ヒヒヒ!俺はなぁ……」
銀髪の男が触れているスパコンが放電し、ショートし煙を吐く。
「ヴィンチェンゾ・ファミリーのカザフだ」
「ヴィンチェンゾ……ファミリー!?」
突如現れた男、カザフが所属しているファミリー、ヴィンチェンゾ・ファミリーの名を聞いた二人、願と新光は叫ぶ。
キンジはなんのことか知らないような顔をする。
だが、二人は知っていた。
願はその一人と会ったこと。
新光は草加から、EJから、ヴィンチェンゾ・ファミリーは新光達を狙っていることを聞かされたことを。
願にとってはヴィンチェンゾ・ファミリーには関係ないのだが新光は別だ。
狙われているからだ。
「ウヒャヒャ!また会ったな!小野新光ぉ!」
そんなこと考えていたらどこからか手錠が飛んできて、器用にカザフの手首に収まる。
投げたのはアリアだ。
「よくわからないけど器物損害の現行犯で逮捕よ!」
そんなこと言うアリアだがカザフは呆ける顔をする。
「なんだこれは?」
「対超能力者用の手錠よ!これであんたの超能力は使えないわ!」
自信満々に言うアリアだがカザフは逆に笑う。
「あめぇよ」
カザフは施錠された左手をバチバチと放電させ手錠を切断し始めた。
まるでプラズマ溶接のように金属を溶かし切断、スパコンの上に落ち、溶解された手錠がスパコンの容器に流れる。
その光景にアリア、キンジ、白雪は驚いた。
「な、なんで!?」
対超能力の道具付けられても能力は十分使える。即ち。
「成る程、特殊能力者か」
願は冷静に分析をした。
特殊能力、新光達が使う能力の名称。
制約に縛られた能力。
「知っているか。ならいいぜ、欠陥能力である超能力との違い、見せてやるぜ!ヒャハハハ!」
カザフは全身に電気を纏い音速の速さで突撃し新光の横に霞み近くのスパコンを貫き壁に激突、クレーターが出来る。
新光、キンジは反応出来ず衝撃波で飛ばされるが受け身を取り体勢を整えるがその時目の前にカザフが居た。
右手を槍のようにし電気を纏わしキンジの右脇腹を貫こうとしたが新光は能力、サイコキネシスを発動しカザフを飛ばす。
やはり強い。これが特殊能力者との戦いか。
「ヒャハハ!そうか!ボスの言う通りだな、小野新光!てめぇをヴィンチェンゾ・ファミリーに入れてやる!指輪も貰うぜ!」
カザフは着地し高笑いをする。
ヴィンチェンゾ・ファミリーは俺達の能力を欲していてそして指輪も欲しいようだ。
時計のストップウォッチを作動させる。
約三十分、能力が使える時間。
「新光が狙いか!」
願はサムライエッジを、キンジはベレッタをカザフに向けて撃つ。
鋼さえも貫く威力をもつサムライエッジ。
人間であるカザフでもただでは済まない。
「こんなナマクラもんでは効かねぇよ」
手のひらを出すと電気が盾のような形の放射線状の電気が放電し、バチッ!と銃弾が当たっただけで終わった。
防がれた、それでも願はXD-9で跳弾を利用してカザフの周り、四方八方からの銃弾が襲いかかる。
「中々いい線いくなぁ」
拳を地面に叩きつけ周りに大量の電気を放出し銃弾を弾く。
銃弾では効かないと見た願は漆黒のナイフ、ノワールを持ちカザフの電気を斬り、カザフ本人に斬りつける。
手応えある、と感じた願。
「いってぇな。一皮切れちまったじゃねぇか。ヒヒッ」
全てを切り裂く事が出来るナイフが一皮一枚しか切ることができなかった。
一瞬反応遅れた願に襲いかかる電気の刃。
だが願を引っ張るような感じに飛ばされ刃は空振りに終わる。
そう、引っ張ったのは新光の能力だ。
「くそ、奴のG(グレード)はいくつだ!?」
願はカザフの能力の限界の底が見えないことに悪態をつく。
あの量の力を使うとしたらG30は下らない。
「G?欠陥超能力の値なんてしらねぇよ。それに一ついいこと教えてやる」
カザフは球体の小さな球を人差し指と中指に挟みこみ指先を願に向ける。
それを見た願は咄嗟に叫ぶ。
「『超電磁砲(レールガン)』!?」
超電磁砲……最近ネットで見たことある。
簡易的だが構造上はあっている。
馬鹿デカイ電力を消費しマッハ三の速度を誇る弾を撃つ。
こんな狭いところでそんなもの撃ったら、ひとたまりもない。
「皆離れろ!」
願はカザフに肉薄し新光はキンジとアリアを引っ張り物陰に隠れる。
カザフから発生する電気が球に流れていつでも撃てる状態になる。
「俺には制約なんて縛られていない」
「しゃらくせぇ!」
スパコン室で雷鳴と閃光でマッハ三を誇る銃弾をノワールで両断する願。
そこからがら空きになったカザフにハイキックを決める。
これでもあまり効いていないようだ。
「ケケッ、生ぬるいなぁ!」
放電しながら体当たりしてくるがそれを避けスパコンに当たり火花散りながらスパコンが爆散する。
「来いよ、三下。格の違いを見せてやる」
煙が立ち込め新光達も煙の中に、そしてカザフは高笑いしながら出てくる。
「ケケケッ!三下?おめぇなぁ」
煙の中から新光はむせながら出てくる。
「げほっ、ヤバいな」
そこからキンジ、アリアも出てくる。
二人ともかなり埃が付いている。
「新光、今ならあいつに攻撃できるぞ」
ヒステリアモードのキンジはベレッタを構えながら言う。
確かにカザフは今願と戦っている。
期待はできないが攻撃する価値はある。
「よし。キンジ、アリア。カウント三から数える。零になったら一斉射撃」
新光、キンジはカザフに照準を合わせる。
だがアリアは構えていない。
「三」
「ねぇ、キンジ」
カウントを数える新光とアリアの声。
「三下っていうなら」
カザフの声。
「ん?なんだい、アリア?」
キンジはアリアに向き話す。
「二」
「仲間の中に『裏切り者』がいるのを気づかないとなぁ!」
「外したら風穴よ」
ドスッ、グチャ!となんか嫌な音が響く。
なんだ?と思い新光は振り向く。
すると、新光は
「アリア?なにやっているんだよ!?」
そう、新光が見たのはアリアが素手でキンジの腹を貫通させたのだ。
防弾制服を着たキンジを。
浩司、鷹、春奈、香苗、翠、柚梨佳、…………遼は願が指示した通りにスパコン室に向かうため通信科棟に来た。
ここからエレベーターで地下に向かう。
この時春奈は新光とテレパシーで通信していた。
「今、新光達は魔剣ではなくヴィンチェンゾ・ファミリーの一人と戦ってるわ」
ありのままを話す春奈。
このまま進めばヴィンチェンゾ・ファミリーと交戦する。
しかも相手は同じ能力者、かなり強いようだ。
「このまま行けば全員無事では済まない。残る者は残れ」
浩司は冷酷に言う。
浩司なりの確認だ。
「残らないよ!願が戦ってるし!」
「仲間を見捨てないよ!」
「ふん!そんな雑魚俺がぶっ潰してやる!」
柚梨佳、翠は決意を込めた目をし、遼は明らかな敗北フラグを立たせる。
「……よし、行くぞ!」
そして通信科棟に向かおうとしたら通信科棟前に白髪混じりの老人、その手には杖が握られていた。
老人の鋭い赤い左目と青い右目のオッドアイが光る。
ただ者ではないこの老人は……
「はじめまして、『桜井機関』の者。わしの名はアーネスト、ヴィンチェンゾ・ファミリーのアーネストじゃ」
ヴィンチェンゾ・ファミリー、草加と新光が言っていた組織、おそらく浩司達も狙いに来たのだろう。
浩司はそう思い老人、アーネストは杖から、細い仕込み刀を抜き出した。
「ここから先は……行かせませんぞ」
一緒、アーネストの姿が消え気づいたら既に浩司の目の前に姿を現しており、下からの斜め切りしてくる。
浩司と同じ能力。
浩司は半分驚きながら、刀の柄を手で 受け止めアーネストが握っていた刀と浩司が消え後ろからアーネストの首の横に刀を突きつける。
その刀を握っていたのは浩司だ。
一回目。
「動くな。遼、先に行け」
「よし、行くぞ」
アーネストの動きを封じながら浩司はそう言い遼は翠達を引き連れ通信科棟に目指す。
アーネストは刀を突きつけられながらも手をあげる。
「動くな」
警告したがアーネストは刀を触れ、浩司が握っていた刀と共に消えた。
後ろにアーネストの姿を見た浩司はデザートイーグルを取りだし撃つ。
アーネストは走り弾丸を避けながら姿を消す。
そしてアーネストは遼達の前に現れ鷹が鉄パイプを持ち、叩くがアーネストが消え代わりに壁が現れる。
そう、アーネストが鷹を棟の壁の前に飛ばしたのだ。
「ぐわっ!」
肩から壁に激突し鷹はダウンする。
「くそ!」
それを見た浩司は悪態を吐き遼達の所に行く。
「警告しましたぞ」
刀を持ったアーネストは遼達にそう言う。
すると浩司がアーネストの前に現れ手首を押さえる。
二回目。
「先に行け」
手首をひねり、背をアーネストに乗せそのまま地面に叩きつけるがアーネストが消え、距離を置く。
浩司は後ろに向きデザートイーグルで追撃、だがまたアーネストが消える。
棟の上に移動したと気づき撃つ。
一、二発アーネストの足元に着弾しまた消え、最初の位置に戻った。
浩司は撃とうとするがカチ、と撃鉄を叩く音が響く。
「弾切れかな?」
く、俺の能力はあと一回……
疲労感はなさそうだ。おそらく特殊能力者。やつには制約はないのか?
「ではこちらから行きますよ」
刀を構え斬りつけてくるアーネスト。
浩司は避け鷹とバトンタッチするように代わり、鉄パイプで受けとめる。
突然銃声が鳴り響き銃弾はアーネストに襲いかかる。
「ぬ!」
アーネストは姿を消し少し距離を置いた。
発砲したのは……
「なぜ戻った」
コルトSAA二丁を持っている柚梨佳であった。
どうやら柚梨佳は残りその他はスパコン室に向かったのだろう。
「加勢するよ」
「やれやれ、あまりやりたくなかったのじゃが……『ルーマニア流剣術』」
『ルーマニア流剣術』……そう呟いたアーネストは柚梨佳に刀を向け少しだけ手首を捻る。
ズガッ!と何かが切れた音の次はズズゥと何か崩れる音。
「う、そ!?」
四階建ての数十メートルの長さの通信科棟が斜めに崩れ落ち、硝子が割れ、瓦礫と化す。
「柚梨佳!!今からでもいい!さっさと行け!」
浩司は柚梨佳一人、いや、俺達全員でもアーネストにはおそらく勝てないと思い先に行けと言う。
だが柚梨佳はそれを無視しまだ隠しているコルトSAAで早撃ちをする。
アーネストは反応できず肩に穴が空き血が飛び散る。
「ぐっ、不可視の銃弾か。……だが今度は効かないぞ」
「なめないで!」
コルトSAAで不可視の銃弾を撃つ。
「だから効かないと」
刀で弾き一瞬で柚梨佳の後ろに瞬間移動し首に刀をかける。
「言っておりますがな?」
「くっ!」
柚梨佳は振り向きバックステップしながらコルトSAAを乱射する。
だがアーネストは見事な刀捌きで銃弾をはたき落とす。
「さて、お遊びはここまでにしますかな」
「あの馬鹿者が!」
浩司はデザートイーグルをリロードしアーネストに向けようとしたら、デザートイーグルが分解される様に砕け散る。
「なっ!?」
「い、痛い!痛い!」
デザートイーグルが破壊されたのに気がとられ、さらに柚梨佳の悲鳴。
見ると彼女の足元にはコルトSAAの残骸。
そして刀は彼女の手首を貫いていた。
「武器を失った武偵はただの人間」
アーネストは手首に貫いている刀を抜き杖のグリップの形をした柄で殴り柚梨佳は気絶した。
「でやぁ!」
少し遅れて鷹が鉄パイプで殴りかかるが鉄パイプは切られさらに首に殴られ倒れた。
「さぁ、一緒に来なさい。私たちの楽園を創るために」
楽園を創る、その意味が解らず浩司はコルトM1911を取りだし撃つが刀で弾かれた。
「何をしても無駄ですぞ、さぁ来なさい」
アーネストは手をさしだす。
「悪いがそれはさせん」
シュン!とアーネストの目の前に瞬間移動したかのような速さで現れた男は刀でアーネストの刀を、アーネストごと吹き飛ばす。
「ぬぅ!」
宙に浮いたアーネストは瞬間移動で地に着く。
「ほぉ、貴方は……」
「き、貴様は……」
アーネストと浩司は驚きの声をあげる。
そう、現れたのは草加と共に居たあの男だった。
「アリア!どうしちまったんだよ!」
新光はキンジの腹を貫通させたアリアに問う。
だがアリアは不敵の笑みを浮かべる。
一体何が……
「ちょっと!?一体何があったのよ!」
少し晴れてきた砂埃から聞き覚えのあるアニメ声。
まて、何かおかしいぞ。
「アリア!?」
そう、その正体はアリアだ。
だが待て、目の前にいるアリアは……
アリアが、二人居る!?
「あ、あたし!?」
「キンちゃんの仇ぃー!」
もう一人のアリアに驚くアリアと同時に武装巫女、白雪が涙を流しながら、刀を持ち跳びながら切りかかるがキンジを攻撃したアリアは避け、距離をとる。
やばいな、キンジの出血が多いぞ。
「ふふ」
アリアは笑いながら紫色の電気を放電させ背が低いアリアから背がそれなりに高い女性へ、武偵制服から紫色の服、電気が通っている紫色の髪に変化した。
「ふふ……ふははは!やっぱりかわいい子には油断するのね、油断大敵よ」
アリアに化けていたこの女性。
前、理子が化けていたやつを見たがあれは皮を被った変装、だがこいつはそれを無しでアリアに化けたのだ。
体型、声、特徴、武器も全部。
「おい、ガンド。そいつは中国人じゃねぇ。殺す価値ねぇぞ」
カザフはその女性をガンドと呼んだ。
「あらごめんなさい。面白くてつい」
おそらくガンドという女性はあの砂埃の中からアリアに化けた……のだろう。
そんな分析をしているうちに白雪は札を出してキンジにつける。
すると淡い光がキンジの開いた腹を少しずつ塞げてく。
「もう許さない。キンちゃん、ごめんなさい。私が守らなかったばかりに……ガンド、もう貴女は逃げられない」
白雪は決心したかのように頭のリボンをほどく。
すると白雪を中心に何かが渦巻きそして刀に焔が灯る。
そう、あれは白雪の超能力。
「星伽の巫女がその身に秘める、禁制鬼道を見るからだよ。私の本当の名前は――緋巫女!」
白雪は床を蹴り、ガンドに一直線に走る。
そして白雪はガンドに刀を振る。
するとガンドはその攻撃を避け刀は地面を抉る。
ガンドの避けかたはまるで新体操みたいな動きと人間ではないほどの跳躍力だ。
「星伽候天流の初陣、緋焔毘、次は緋火虞槌―これで決める」
「うふふ、やってみなさい」
数分間、刀の斬激とガンドの攻撃、フリスビー型の紫色の電気が繰り広げられた。
それを白雪は叩き落としガンドは白雪の攻撃を避ける。
繰り返された結果、白雪は息切れを起こしていた。
「あら?もう終わり?」
対してガンドは楽しそうにしていた。
これが超能力の欠点、精神を消費する。
「ま、まだぁ……」
白雪は刀を構え、焔が一層激しくなる。
「そうそう、そのいき。私はここから一歩も歩かないわ」
ガンドはその場に止まり白雪は一直線に走る。
これで決めるつもりだ。
「緋緋星伽神――!」
刀がガンドの前に止まった。
いや、白雪が止めた。
それは
「キ……ンちゃん!?」
ガンドはキンジに化け不敵な笑み。
キンジに化けたそのせいで白雪は刀を止めた。
そしてキンジに化けたガンドは手のひらを白雪の顔に押し当てる。
「駄目だよ。止めたら」
キンジの声を出すガンドは白雪を壁まで飛ばす。
「きゃあ!」
飛ばさた白雪はロープ状の電気に繋げられ拘束される。
壁に縫い付けられた白雪は脱出しようと試みるが、脱出できない。
「そこでおねんねしなさい」
「願!この遼様が来たぜ!」
エレベーターから春菜、香苗、翠、遼が出てきた。
春菜と香苗はすぐに新光の側に向かう。
「香苗!キンジを治療してくれ!」
香苗はすぐ頷き瀕死であるキンジの治療、特殊能力の治療(ヒーリング)をかける。
だが香苗は深刻な顔をする。
かなりやばい状況なのだろう。
「翠!遼!来てくれたか!」
願は大声をあげる。
「勘違いするなよ、願、俺はお前を助けに来たんじゃない。そこにいる奴を倒すのはこの俺だか
「はいはい(ツンデレですね、よく分かります。あとキモイ)」俺の扱い酷くね!?」
敵であるカザフとガンドや瀕死のキンジ、拘束されている白雪にもその場に居る全員は異口同音をする。その瞬間遼はラリアットを食らいそのまま壁に当たりクレーターが出来上がる。
「なんか言ったか?」
ぐいぐい押し込まれる遼は何も反応しない。
「ケケッ、よわ。そしてやっと本気だしたかぁ?」
後ろに振り向くカザフ。
そこには願がいた。
だがその願は何かおかしかった。
「友人(キンジ)を死なせた罪、これは重いぞ」
「ほお、なんだそれは?」
突然オーラが変わったのを感じたカザフは体勢を整え変化した願に睨み付ける。
そう、願はこの能力でケリを着けようと思ったからだ。
『Demon Savant Syndrome』
という能力を。
「貴様には教えんゴミ虫」
「ほざけ!」
願の挑発に乗ったカザフは手を槍のような形状にして電気を流し足に電気の反発で高速の速さで肉薄する。
カザフは挑発に乗ったがそれでも願に勝てると思われていた。
だが……
「遅いぞ、ゴミ虫」
高速の速さで肉薄したカザフを手で押さえつけ、ハイキックのカウンター。
カウンターを食らったカザフは飛ばされ体勢を整えたが離れていたはずの願が既に目の前に現れていた。
「な、に!?」
コンマ数秒の戦い、息を整えていないカザフは猛烈なラッシュを受ける。
血を吐きながらカザフは拳に電気を込めて突く。
「遅いぜ!」
願はそう叫び額に迫り来る拳を避けて腹にカウンターを入れる。
急に速くなった願、これは
Demon Savant Syndrome、略してDSS。
身体能力、反射神経が約60倍にはねあがりカザフの攻撃はもう、蚊が止まったような感じに感じているのだ。
そしてカザフから見たら逆に速くなったように感じている。
腹にカウンターを受けたカザフは吐血し後退する。
だが後退したカザフの動きが止まった。
いや、止められたのだ。
足に絡み付いている願の黒いオーラに。
「オーラが実体化するのか」
今までオーラを武器に利用したのを初めて見たカザフはありえないと心に叫び迫り来る願の蹴りが顔面に直撃し、飛ばされたカザフは頭からコンクリートに直撃する。
「ああぁ!三下ぁ!てめぇまだ動けるだろ?」
完全に口調が最高のハイに達している願は汚れた手を舌で舐め汚れを落とす。
壁に穴が空いたところから顔が血まみれになったカザフは手に電気を槍の形に変えて出てくる。
すでに出血多量ではないか?と思われていた。
いや、顔が青白くなっている。
そろそろやつは限界だろう。
「ぐうぅ!てめぇ、調子にのるな!」
電気の槍が飛ばされ、願に迫る。
願は避ける素振りも見せずただ、赤黒い瞳は電気の槍を映している。
勝った、と冷静に言ったカザフだが電気の槍はまるで犬が飼い主に戻って行くように願の前からUターンしてカザフに戻って行く。
驚愕したカザフだが動けるはずもなく自ら投げた槍を受け身体を突き破り傷口から大量の血を吹き出し静かに倒れた。
その姿を見た願は血溜まりになったカザフに近づき虎徹を手にする。
「『ベクトル操作』だ。どぶねずみが!」
虎徹を振り上げ、見下した目で凶器は降り下ろされた。
虎徹の刃はカザフを斬るコースになっていた。これは誰から見ても明らかにそうだと思っていた。
しかしその予想を反して刃はカザフを斬ることがなかった。
いや、正確にはカザフは粒子状に分解し、姿を消し空を斬ったのだ。
願はすぐに状況を把握する。
奴は電気を使う、ならばこの粒子は電気。
そのような解析をしていたら独特の笑い声、後ろから無惨なスパコンの残骸の間に粒子が反発するように放電しながら集まりだし血も傷も顔色が戻ったカザフの姿になっていく。
「ケケケッ、危なかったぜ」
カザフの表情はかなり余裕を持っているように見える。
願は虎徹を床に突き刺し赤黒い瞳が光り輝く。
「お前にはやはり拳だけで充分だ」
「何時まで余裕をこいているんだ?」
カザフは電気の反発でさらに速度を上げて願に肉薄する。
だが反射神経、身体能力が向上している願にとっては造作もない。
軌道を読み膝でカザフの腹に打ち込む。
バンッ!と破裂したような音が鳴り響く。
手応えがある、だがカザフはニヤニヤとしている。
打ち込んだその重さは約5トン。内臓が破裂してもおかしくはないのにカザフはまるで効かないような表情をしている。
「こんなものか?」
四方八方から無数の電撃が願に向かってくる。
電撃、いや、雷撃と言うべきか、その雷撃をすり抜けながら離れる。
距離をとりカザフの姿を見るとやつは黒いオーラを纏い薄く見えるがオーラで創られた黒い翼も見えた。
それにカザフの後ろに黒い電気の鋭い尾もあると確認した。
いままでのカザフではない、と願は微笑みながら思った。
「それがてめぇの本気の姿か、カザフ」
「これでお前とは五分五分だ」
徐々に黒い翼が濃くなりその翼で滑空しながら黒い電気の槍を投擲する。
「何度やっても同じだ。この『ベクトル操作』で……」
願は絶対に逆らうことの出来ないベクトル操作を槍に向け操作する。
「……馬鹿な!?」
槍は方向転換をせずそのまま願に迫る、だが反射的に身を縮めこみ避けるがさらに横から黒い電気の鋭い尾が来る。
しゃがんだ状態から跳び跳ねて鋭い尾も避ける。
だがまだ攻撃が終わっておらず上から雷撃がくねりながら迫る。
空中に跳んでいる今の願はさらに空気を蹴って避けることは出来ない。
だが身体を捻ることは容易い。
身体を捻り雷撃を避ける。
しかし戻ってきた鋭い尾が下から突き刺す勢いで願を突き刺してきたが願はそれを拳で叩き落とす。
ゴンッ!と鈍い音がしたがビクともせず押し返され天井を貫き瓦礫が落ちる。
滑空し終わり着地したカザフは穴が開いた天井を見続けた。
数秒後、穴から落ちてきたのは願。
しかもDSSが解除されており髪や瞳は元の色に戻っているが傷はDSS状態のうちに60倍の自然治癒で治っていた。
しかし立つ気力が殆ど無く万事休すとなっていた。
カザフの鋭い尾が動きだしその鋭い刃は願に向けられている。動くことも出来ない今の願はこの凶器は自分を容易く殺すこともできる、と。
「ケケ、冥土の土産として教えてやる。こいつは特殊能力しか効かない。特殊能力者じゃないお前には勝ち目がない。ギャハハハ!」
高電圧になった鋭い尾は願に向けて放たれた。
すこし時を遡り、キンジに化けているガンドは紫色の電気を放電させながら本来の姿に戻っていく。
その光景はまるで道化師のように錯覚した。
「……香苗、キンジは大丈夫か?」
香苗は今なお苦しい、いやかなりキツイと思われる顔をしている。
衛生科である香苗がこの表情をしているのは……
「出血が多すぎる、早く病院に行かないと」
だが武偵病院に行くにはここから出ること、出るためにはエレベータから出ることだがそのエレベータの入口には電気の柵で閉ざされている。
すなわち、出るためにはガンド、カザフを倒すことだ。
「ハル、俺は翠を援護する」
新光はトカレフを春奈に渡す。
翠一人ではガンドを倒すことは出来ないかもしれない。それに戦力が一人でも多ければこ有利となる。
「大丈夫なの?」
「大丈夫だ、な?アリア?」
「えぇ、それにアタシに化けたあの女に風穴を開けてやるわ」
化けられたことに怒っているアリアは冷静にガバメントを取り出していた。
翠もSWATを取り出して構えていた。
それを見たガンドはふーん、と興味なさそうな目をしている。
「まさか坊やたち三人で私を倒そうと?」
「そうよ!」
「だったら、私を楽しましてね!」
驚異的な跳躍力で翠に飛び掛かるガンド。
カザフとは違い、能力ではなく自分の足の強さで飛んでいた。
「くっ!」
翠は避けてSWATを三点バーストで撃つがさらにガンドは高跳びするかのような高さを飛び銃弾を回避する。
「逃がさない!」
アリアのガバメントが火を吹くが速すぎて弾が当たらない。
「ふふふ、お返しよ」
高く跳びながらガンドは円盤状の電気を放ち三人に襲いかかる。
翠は弾道を見、銃弾で叩き落とす。
アリアは円盤状の電気を叩き落とす事が出来ず後ろに下がり避ける。
新光はルガー拳銃のVT信管弾で爆発させて消滅させる。
ガンドが着地した時、爆発した煙の中から銃弾が飛んでくるが新体操をしているかのような回り方をして避ける。
だが一発の銃弾がガンドの紫色の髪を散らす。
「……ちっ!」
舌打ちをしながら煙の中にから姿を現した翠に向けて円盤状の電気を投げる。
フリスビーみたいな形をした円盤の電気を叩き落とすべく翠は引き金を引くが撃鉄の音しか鳴らなかった。
弾切れ……そう思った翠はすぐにマガジンを取り替えてすぐに叩き落とす。
ガンドは何か考えている顔をする。
どうやらこの戦い方では勝てない……と思っているのだろうか。
ズズーン!と向こうで轟音が鳴り響く。
願とカザフとの戦闘だろう。
「……はっ!」
またもやガンドは身体中から紫色の電気が放電して姿を変えていく。
その姿は見たことある姿でもあり仲間の姿。
それは藍の色素が混ざった漆黒の髪と全身に傷痕が残っている人物に。
それは
「………願」
翠は冷静にアリアは少し恐れて、新光は呟くように声を出す。
「さぁ、ここからが本番」
願に化けたガンドは願の声で発する。
そして漆黒のナイフ、ノワールを取り出し舌でノワールの刃を舐める。
ガンドが持っているノワールは願が持っているノワールより刀身が長く、まるで刀のようなノワールだった。
「まあ、あっちはすぐに終わるけどね」
ガンドは願の声でノワールを下し、呆気ない様な口調で喋る。
「願!くそっ!」
願は倒れ黒い電気を纏っているカザフが止めを刺そうとしている。
新光は能力を使う前に時計を見る。
能力行使してから三十分は経っている。
すなわち能力が切れたということだ。
遠くからでは援護できない。
……いや、出来ていた。指輪の重力操作を。
その存在を気付いた新光だが既にカザフの一部であろう鋭い刃をもつ尾が願に突き刺そうと動く。
「願ぃーー!」
絶体絶命の願に翠は叫ぶ。
ガキィ!
と鈍い音が響いた。
願の前に一本の大きな氷柱が現れカザフの攻撃を止めたのだ。
「っち!これは!」
カザフは焦りを見せて後ろに下がる。
その瞬間に氷柱から小さな氷が床を沿い始めカザフとガンドに向かう。
道中にあるスパコンの残骸に触れて凍る。
「あらやだ」
ガンドは蝙蝠(コウモリ)になり逃げ、カザフは宙に飛びやり過ごした。
願はすぐに状況を把握する。
この氷柱は一体何なのか。
氷と見るには使えるのは空気化しているジャンヌだがやつはこの頑丈でカザフの攻撃まで耐えれるほどの力はない。
他にも誰も氷を操る能力者は居ない。
すると第三者がいる。
氷柱が激しくなりそれが四つに割れる。
「やっと見つけましたで?小野新光、萩原願」
氷柱が割れたその中には中性な顔を持ち男か女か分からない人物が関西弁に近い言葉で喋る。
そしてその人の手には青い冷たい氷のような扇子が握られていた。
願はこの人物何処かで見た気がすると思った。
「ケケ、誰だ、お前は?」
その人は扇子を開いた時に氷の粒を撒き散らす。
そして扇子で口を隠しこう言った。
「EJ所属の雪風。どうぞよろしゅう」
「お、お前は……むぐっ!?」
突然現れた人物雪風に何か言おうとした願だが雪風は手で口を抑え込んだ。
雪風の肩に掛かるほどの長い冷たい色をした髪が揺らぐ。
「願、言ってはあかんよ」
面識がある様な言い方をする二人だが雪風は願の首を掴み翠に向けて投げ飛ばす。
「きゃ!?」
翠と新光は願を受けとめ願は叫ぶ。
「おい!何をする!」
「五月蝿いなぁ。三下は黙っておくんなまし」
雪風は見透かすかのような冷たい眼で見ながら言う。
「てめぇ!」
「待て!願!」
願はノワールを取りだし襲いかかろうとしたが翠と新光二人がかりで止める。
「ケケっ、そろそろいいかぁ?」
カザフは親切にも待っておりすぐにも戦おうとしている。
対して雪風は凄く静かに扇子で口を隠しながらカザフに振り向く。
カザフの雷神による黒い雷がカザフ本体から、もしくはスパコンがショートしていた電気が黒くなり雪風に襲いかかる。
「あぶねぇぞ!超能力者のお前では防ぎれないぞ!」
願は叫ぶ。
確かにカザフの特殊能力は超能力者では太刀打ちすることは出来ない。
だが願は叫んだ瞬間にハッと気付く。
雪風が造った氷柱はカザフの攻撃を耐えたことを。
雷の閃光と爆発の衝撃で狭い部屋に響き渡る。
願、翠は爆音には慣れているから大丈夫だが新光、香苗、春奈には慣れておらず耳を塞ぎ身を縮こまる。
煙が巻き上がりその中から傷ひとつ付いていない雪風がいた。
「てめぇ、何をした」
「……別に水で防いでやったんや」
雪風は冷静に答えた。
そう、雪風の身体の表面に薄い水を纏っている。
普通、電気は水を通すが雪風が操った水は純度100%の水だ。
水の電気分解をするとき水に水酸化ナトリウムを入れると通しやすいと説明すれば解るだろう。
「ケケっ、電気が駄目なら物理的に攻撃だ」
カザフの雷神で造られた尾が動くが突如消えた。
いや、正確にはカザフの雷神が解けたと言うべきか、黒いオーラも消え失せた。
「今やな」
呟いた雪風は扇子を上に挙げてひし形の氷を生成しカザフに投げる。
この間に十秒は経った。
カザフなら電気で撃ち落とすだろう。
「ちっ!」
だがカザフはそれをせずに避けた。
新光、願二人は疑問に思った。
十秒という長い時間をカザフは攻撃せずに避けたのか。
「そうか、分かったぜ!カザフの制約!」
先に気づいたのは願。
カザフの制約は雷神解除からのタイムラグを。
全壊寸前のスパコンに隠れたカザフはさらに数秒後、能力発動して出てくる。
「てめぇ……俺たちの邪魔をするな!」
「邪魔……ねぇ」
雪風は久世から聞いたヴィンチェンゾ・ファミリーの目的を思い出す。
「はぁ……復讐は何も残らへんよ。カザフやったな?もう勝ち目なんかあらへんよ。なぜなら……」
扇子をパチン、と閉じた瞬間に雪風と新光達の間に大きな氷の壁が下から沸き上がり天井まで達した。
完全に隔離されて氷の壁は透き通っていた。
皆は気づいていない、その氷の壁の中に遼が入っていることを。
「てめぇ!俺はまだ戦える!出しやがれ!」
願の叫びに雪風は振り返る。
「願、あんたは三下やから黙り。せめて新光を守りぃや」
雪風の軽蔑という言葉に血管がブチ切れそうになる。
三下はお前だろ!と叫びたいようだ。
雪風はそれを無視し上にあるスプリンクラーを見た。水が流れている。
空気中に水分は沢山含まれている。
「水が大好きやから」
雪風とカザフの戦闘が始まって十分……
壁、床、天井にさらに穴が開きスパコンの残骸も雪風の氷によって完全に消え去った。
そしてスプリンクラーから流れる水を使い雪風は無限に近いほどの氷の攻撃をしていた。
「はっ!」
「うりゃ!」
扇子を突き氷の波動がカザフに当たり凍りつくがすぐに解かれカザフは電気を籠めた拳で腹に殴る。
「うっ、そりゃ!」
「ちっ!」
一瞬衝撃に襲われた雪風。
カザフの拳に水が覆われていた。
そう、勿論電気を通さない純度100%の水だ。
衝撃だけ喰らった雪風は少し後退っただけで扇子で凪ぎ払う。
その扇子の先から長い剣のような氷が現れカザフは避けて上に跳躍する。
「ちっ!」
上から何か来ると感じたカザフは電気の粒子になり避ける。
一瞬遅れてカザフが居た位置に巨大な氷柱が天井から生えた。
もし、避けなかったらカザフは串刺しになっていたのだろう。
「はよ帰ってくだんさいな。怪我人がいるんねん」
雪風は少し下がったカザフに言う。
怪我人とは勿論のことキンジだ。
「ケケッ!断る!」
カザフは頑固なのか仕事に忠実にやるのか分からないが引き下がらない。
そんな様子を見た雪風は呆れた顔をする。
「やれやれやな、ならこれでもやるかや?」
眼を瞑る雪風。
カザフはチャンスと思っていたがみるみる表情が恐ろしい物を見たかのような顔をする。
「てめぇ!その力は!」
空気が変わったのを気づいたのは全員。
だが一人……願は更なる衝撃を受けた。
「なんだあの色金は!?見たことないぞ!?」
願は雪風の中から色金の気配を感じ取った。
雪風の身体から虹色のオーラが滲み出て次第に青、毒々しい青に変わり瞳も青に変わる。
滲み出る毒々しい青のオーラは扇子にも帯びて雪風は閉じた扇子を前に上げる。
「終わりや」
扇子を開いた瞬間、雪風の周りが全て青い氷に覆われた。氷に覆われて、空いている空間は雪風の周りにしかない。
扇子を閉じた瞬間に氷は全て砕け散った。
カザフは砕け散ったのか?
いや、雪風の感触ではカザフは死んではいない。
上を見上げる。
穴がある。
しかも微かに光を射し込んできている。
ここから逃げたんやな。
毒々しい青が身体から消え隔離していた氷の壁が下から水蒸気になり壁の高さが低くなる。
「キンちゃん!キンちゃん!」
中から白雪の声が聞こえた。
ガンドのロープが消え自由になったんだろう。
「止血しました。ですが血が足りません。武偵病院まで連れていかないと」
「よし、俺が背負っていく。願、ヘリを呼んできてくれ」
「分かった」
新光はキンジを背負い、願は携帯を取りだしヘリを呼び出す。
ただこの光景を見ていた雪風は不安に思った。
草加、一人死んでまうけどええんの?と