緋弾のアリア-重力と五式の銃弾-   作:おうか

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9話.尊い犠牲と…

武偵病院の集中医療室の中から響き渡る電子音は一定の音を出していた。

そうキンジは…

 

「キンジ!キンジ!バカキンジぃー!」

 

「キンちゃーーん!」

 

アリアと白雪は涙を溢しながら布団に伏せていた。

やはり、時間が経ちすぎたのか。

そう思ってしまう新光。

香苗は二人を慰めようとするが新光は止めた。

しばらくそっとしといたほうがいい、と。

新光が先に出て浩司、香苗も順に出ていく。

 

廊下に出て鷹と春奈と合流した。

鷹は頭に包帯が巻かれていて目立った怪我はない。

 

次は願と翠と柚梨佳と遼だ。

 

願と翠は目立った怪我はなく柚梨佳は手首に包帯が巻かれていたが彼女曰く神経とその周りの肉だけは斬られていなかったとのこと。

遼は重度の凍傷で入院。

しかも皆見舞いに行っていない。

理由は、願達はこう言った。

遼は要らない子だろ、と。

酷いな。

新光は願にキンジの事を言った。

死んだ事を言った瞬間に願から殺気を含んだオーラを出した。

 

「キンジが死んだ、だと?」

 

「ああ」

 

新光は怯えずに答えた。

 

「そうか」

 

願はそれだけ言っただけで外に出ていった。

余談だがこの殺気で殆どの医療器具が故障、生命維持装置も壊れ殺気に耐えれずに数人死んだらしい。

 

・武偵病院 外

 

願はこう考えていた。

ヴィンチェンゾ・ファミリーを壊滅させてやると。

だが願の考えは思い通りにならなかった。

 

「やぁ、どこに行くんや?」

 

冷たい青色の髪をしており、扇子を持っている人物、雪風だ。

 

「お前か、雪風。いや……京都武偵高校の遊雪雹(ゆゆきひょう)」

 

「覚えていて良かったで」

 

雪風…いや、雹は嬉しそうな顔をする。

 

「当たり前だ。京都の超能力でズバ抜けている武偵だ。無限と言える程の攻撃できたからな。俺と勝負して武偵の中でかなり長い時間戦ったお前だが……特殊能力者だったとはな」

 

「ところで願、あんたぁ、何処に行くのかえ?」

 

雹は願が考えていたことを見据えたような目をする。

願は無言で殺気を立てた。

 

「やっぱり三下やわな。これだけで殺気を立たせるとか腹立たしいや」

 

「なんだと!!」

 

雹はさらに殺気が立った願を前にして怯えずに失神もせず、ただ軽蔑な目をしていた。

 

「復讐は幸せにもならん。ただ無と周りの不幸しか残らんで。あんさは弱い、ただ仲間が傷付けられただけで怒り任せぇで戦うなんてただの子供。傷付けられても冷静になりぃ、能力喰いに半分も力奪われたあんさはヴィンチェンゾに負ける」

 

願は反論出来なかった。

確かに仲間が傷付いただけで怒り任せにしていた。

反省すべき点だろう。

 

「そして死んでいった者への『業』を背負いぃ。まぁあんさの場合『業』なんて一切背負ってないやろう。だから強くならん」

 

願は軽蔑の言葉にムキになって叫んだ。

これも子供っぽいかもしれなかった。

 

「てめぇ……『業』とか言っているがお前は背負っているのか!!!!!!」

 

空気が響き窓ガラスも全て割れて雪の様に舞う破片。

 

「願はん、京都の『氷山事件』知ってん?」

 

「あぁ、知ってるさ」

 

『氷山事件』

京都タワー近辺に現れた氷山のことだ。

この事件で家屋は殆ど消え戦後のような風景に、そして犠牲者は不明。なぜなら氷山が壊れた瞬間に中に閉じ込められた人も消え去ったのだ。

犯人は捕まってない。

 

「あの事件。実は犯人はわいや」

 

「何!?」

 

「あの事件の発端は能力喰いや。あんさも戦ったはずや、人の能力と生命を吸い取る化け物。そして奴はあっしの友達を操ってあっしに襲いかかった。幸い勝ったが操られた友達は奴に喰われた。その光景に見たあっしは怒り任せに奴にぶつけた。そしたら……もうこれ以上犠牲者を出すわけにはいかへん」

 

全てを告白した雹は一呼吸してさらに言う。

 

「だからな、冷静になりぃ。あんさの勝手な行動で無関係な人まで巻き込んでしまうで?」

 

数秒だけ間が空く。

 

「……そうだな、サンキューな雹。少しだけ頭が冷めたわ。あと一つ聞かせてもらう。お前の中にある色金は一体なんだ?」

 

雪風は目を細くして願を見る。

軽蔑じゃなく、何かを調べるような目を。

 

「……知らへん」

 

「そうか、じゃあな」

 

願は踵を返し武偵病院へ帰っていった。

雹だけ残ったが木の陰から草加が現れた。

 

「どうでした?彼は」

 

草加が来る。

雹……雪風は草加の方へ向く。

 

「なんや、草加はんか。願は洗脳されてへん。当然、皆もや」

 

雪風は扇子を開き扇ぐ。

少しだけ空気は湿っており暑いが雪風は自分の周りだけ水分を調節しており涼しいはずだ。

 

「彼らに言いましたか?『能力喰い』、いえ『破号』を」

 

「少しだけや。あんさも言わなくてもよいさかい?『EJ』、『虹色金』、『暗黒色金』のことを説明したほうが良い気がするが」

 

草加は首を振る。

 

「それらは今は言わなくてもいいです。この先の戦いの後の話です。それに、あの色金の存在は絶対に知られてはいけない。特に『大和』に。もし耳に入ったら奪いに来るでしょう。『大和』は欲深い組織だ。もしそうなったら我々が全力で阻止しなければならない」

 

「どっちもどっちやな」

 

草加は雪風の側を通りすぎたときに言った。

 

「雪風。あなたは何時洗脳されるか分かりません。あまりあの力を使わないで下さい。陽炎にも忠告してください」

 

「承知やで」

 

草加は武偵病院へ。雪風は足から氷を生成してスノーボードに乗るかのような形で滑って行く。

そして雪風が生成した氷は脆くくだけ散る。

人気が無くなったかのように感じたが木の陰に翠が居た。

そう、彼女は雪風と草加の話を全て聞いたのだ。

 

「虹色金?暗黒色金?よくわからないけど願なら何か知っているかな?」

 

翠は走って草加よりも早く武偵病院へ入る。

廊下で願を探しているときに願達を見つけた。

願に向かって走っているときに黒いスーツを着ていて紫色のウェーブがかかった髪の男はすれ違う時にに気付かれないように翠の頭に手を添えてすれ違った。

その瞬間に翠は足を止めた。

 

「あれ?なんか忘れたような?まっ、いっか♪」

 

翠は何かを忘れたかのような顔をするが「ま、いっか」とのことで願の元に行った。

ウェーブがかかった髪の男は少し後ろを向きまた歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後の夜、武偵病院の廊下は暗闇に閉ざされており最小限の明かりしか灯っていなかった。

カツン、カツンと靴と杖が床に接する音がした。

闇の中からつ白髪まじりの老人と二人の少女が滲み出てきた。

『集中医療室』のプレートが掲げられていており老人と二人の少女は無言で静かに扉を開けて入ってきた。

中は二人の女性とベッドの中に入っている男。その男の顔に布がかけられていた。

電子器具は止められており静かだ。

そして明かりでその人物が浮き彫りになった。

そう、ヴィンチェンゾ・ファミリーのアーネストである。

そしてその同行者である二人の少女、エルサとテルア。

アーネストは杖から抜刀せずにベッドの中に入っている男、キンジの顔にかかっている布を取る。

 

「エルサ、テルア。こっちに来なさい」

 

「はぁーい」

 

アーネストは静かに二人を呼び男の手を少女らに握らせる。

その男の手はひどく冷たい手だった。

 

「いいの?アーネストおじさん?」

 

部屋の壁がピリピリと静電気を発する。

その時二人はアーネストの方へ向く。

 

「いいのじゃよ。今回は同僚が無関係な人を殺してしまったからのぉ」

 

同僚とはガンドのことだ。

アーネストはやりなさい、と目を配らせる。

少女らは互いに顔を見合う。

 

「エルサ」

 

「テルア」

 

そして笑顔でこう答えた。

 

「大好き」

 

瞬間、部屋に帯びていた静電気は医療器具を通りベッドの足に通りベッドの中に入っている男に集まった。

 

「……ごほっ!ごほっ!」

 

男は噎せて空気を吸い始めた。

意識はまだ戻ってはいない。

仮に戻っていたとしたら微かにあるのだろう。

 

「遠山家……いや、遠山キンジ。我が同士の身勝手な行動により貴方を死なせてしまったのを謝罪する。だが今度、我々の計画を邪魔するなら今度は容赦せん」

 

アーネストは目を細めてキンジを見た。

そう、厳しい目をしていた。

だがキンジは聞いていない。

 

「エルサ、テルア。帰りますぞ」

 

「うんー♪」

 

三人は音を立てずに部屋から出ていった。

その時の表情は誰も見ることはなかった。

[newpage]

武偵病院の集中医療室にて

 

「ば、バカキンジぃー!」

 

「キンちゃーん!」

 

ガバッと抱き締める二人だがキンジの顔が青白くなる。

 

「おーい、二人とも。キンジがまた天へ召されるぞ」

 

「だって、だって……」

 

泣きじゃくる二人。

それほど嬉しかったのかが新光達は分かっていた。

 

「キンジ、感謝しろよ。この二人はずっとお前の傍に居たからな」

 

かぁ、と紅くなる二人。

 

「そうか、ありがとな。アリア、白雪。お前は星伽の守りを無視したんだな」

 

その言葉に白雪は少しずつ青ざめていく。

 

「あ、あぁ……」

 

あたふたしている白雪を新光は手で白雪の頭の上へ置く。

 

「まぁいいじゃないか。もう過ぎた事は戻ることはない。真っ直ぐ突き進むんだ」

 

「そう言えば魔剣……ジャンヌは?」

 

アリアの問いに願が答える。

 

「あぁ、あいつなら今頃、綴の拷問に遭わされているな」

 

満身創痍の奴に拷問かけるか?普通。

 

「……ん?キンジ。お前……いや、なんでもない。さて、と。俺達はアメリカに行かなければならないな」

 

願は振り向きそう言った。

 

「アメリカで仕事か?」

 

「まぁ、そうなるな。お前、一回親父に会いに行けよ」

 

願は微笑みながら行った。

俺の親父は陸上自衛隊の一等陸佐。

あまり会えないしここ二年程会っていない。

 

「そうだな。明日休みだし、行ってみるか」

 

「じゃあな。新光」

 

願はさよならの挨拶をして出ていった。

明日親父に会ってみるか。

 

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