サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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今回はマシロが主役の話です


第百一話

  脱走兵を斬る(前編)

 

 

帝国の最南の地、そこには革命軍の本拠地があった、そこから一人の女性が現れた、彼女の名はマシロ、

 

 

 

 

 

 

「ここまでは誰にも見つからずにすんだ、だがもうすぐストリークの監視網に入る、どうやって乗り切るか・・・」

 

 

帝具による煙を使った監視網はマシロもよく知っていた、高性能で知られており味方の時は頼りになったがいざ相手にするとなると危機感を感じずにはいられなかった。

 

 

「それでも引くわけにはいかない」

 

 

監視網から逃げ切る絶対の自信はなかった、だがコウガの敵をとるためには引くわけにはいかなかったのである。

 

 

「死に物狂いで全力疾走しかないな」

 

覚悟を決めたマシロの後ろに一人の人間が近づいてきた、マシロはそれに気づき後ろを振り返った、そこにはマシロがよく知る人物であった。

 

 

「エヴァ殿!?」

 

 

そこにいたのは革命軍の最高幹部であるエヴァであった、マシロは驚きの余り一瞬我を失った。

 

 

「すきだらけだぞ、お前らしくないな」

 

 

マシロは懸命に思考を巡らした、なぜ彼女がここに?私を追って来たのか?だがそのような感じでもない、どういうつもりだ?とにかくここはごまかさなくては・・・

 

 

「コウガの敵討ちに行くのか?」

 

 

完全に先手を取られてマシロは言葉が詰まってしまった、完全にマシロの心を見抜かれていた。

 

 

「・・・そうだ」

 

 

下手なごまかしは無意味と判断し腹をくくって本当のことを言った、最悪一戦交えるかもしれない、そうマシロは覚悟した、だが事態はマシロの予想とは全く異なるものとなった、エヴァは無言であるものをマシロに投げ渡した。

 

 

「これは!?」

 

マシロが受けとったものは強い臭いを放つ臭い袋であった、むろんただの臭い袋ではない。

 

 

「それがあればストリークの監視網を難なく通れるぞ」

 

 

この臭い袋は革命軍において通行手形の役割をはたしているのである。

 

 

「どういうつもりだ!?」

 

 

てっきり脱走を阻むと思っていたのだが、まさか手助けをするとは・・・

 

 

 

「お前は手柄を多く立てたからな、その対価だ」

 

「いいのか?総大将が良しと言うとは思えんが」

 

「軍略は私が握っている、プライムの奴も私に何もいえんさ」

 

 

プライムの奴か・・・あいからわず無礼な態度だな、実際彼女の軍略で5年足らずで革命軍を帝国も無視できない勢力

に仕上げたのだからな。

 

 

 

「それでも私を行かせる理由があるのか?」

 

「理由か、あえて言うなら面白いと思ったからだ」

 

「面白い?」

 

「そうだ、世のため人のためなどありきたりでつまらんだろう、私怨で戦う方が面白いだろう、私怨、多いに結構だ」

 

 

マシロは思った、以前から思っていたことだがコイツはいかれてる、頭のネジがぶっ飛んでいる、この乱世でなければ狂人の烙印を押されて果てていただろう。

 

 

「いくら軍略の権限を握っているとはいえ総大将が納得するとは思えんが」

 

「そんなものはどうにでもなる、お前に人材集めの命を与えたと言えばいいんだ」

 

「私がその命を果たすとでも思っているのか?」

 

「果たすつもりがなくても集まる時は集まるものだ、その逆もしかりだ」

 

 

マシロはあきれた、こんなずさんなやり方を平気でやろうとするエヴァに、しかもこのやり方で今までうまくいっている悪運の強さに戦慄を感じずにはいられない、まさに結果が良ければ全て良しである。

 

 

 

「・・・とにかく私は行くぞ、いつ気が変わるかわからんからな」

 

「せいぜい励むがいい」

 

 

マシロはその場を後にした、正直に言ってここに戻ってくるつもりはさらさらなかったのである、もちろん人材集めも果たす気はない、今はコウガの敵討ちしか頭にない、もう私は革命軍ではないのだから。

 

 

 

「エヴァはああ言ったが他の奴は私を見逃すつもりはないだろう、急ぐとするか」

 

 

マシロは極力村や街を避けて移動した、エヴァと関係ないとこで追っ手を差し向けているかもしれなかったからである、このあたりの地形は熟知していて一般人が通らないがけとかを通り移動して行ったのである。

 

 

「あの街は確か革命軍の息がかかっていなかったな、一息つけるな、完全に気はぬけんがな」

 

 

マシロは革命軍の息がかかっていない街に到着していた、エヴァはああ言ったものの他の革命軍の幹部が追っ手を差し向けないという保障がなかったからである。

 

「とりあえずここまで何事もなかったな、それにしても・・・」

 

 

辺りを見回して見るとほとんどの人間の表情が辛気臭さかった、不景気そのものである。

 

「帝国の圧政の影響だな、まあどの街も似たようなものだがな・・・」

 

 

かつてはコウガと共に圧政をしく帝国を打倒して新国家を築くと志したのだが、今はもうコウガはいない、ただ復讐を果たせれば他はどうでもいいのだ。

 

 

「さて、宿を探すか、できるだけ安いところがいいな」

 

 

路銀は決して多いとはいえない、できるだけ節約しないとな、マシロは場末の宿を求めて裏道へと入った、

裏道には胡散臭い輩がウヨウヨしていた。

 

 

「ネーチャン、美人だな」

 

「俺達といいことしないか?」

 

 

マシロはそれらの声を全て無視して早足で歩いた、いちいち相手するのも面倒であった。

 

 

「無視すんなよ、あまり調子・・・」

 

 

マシロは殺気を込めて睨みつけた、男達はびびって一目散に逃げ出した。

 

 

「やれやれ、早いとこ宿を・・・」

 

 

突然、男達の怒号が鳴り響いた、それはマシロにむけられたものではない別の者にむけられたものであった。

 

 

「あれは?」

 

 

マシロの視線には怒った複数の男達がいた、そしてもう一組は双子の少女であった。

 

 

 

本気で少女につっかかるとは大人気ない、それだけ人心が荒んでいるのだな、まあ、私には関係のないことだが、

さっさと立ち去るか・・・

 

 

その瞬間、男の一人が吹っ飛ばされた、少女の一人に蹴り飛ばされたのである。

 

 

「何だと!?」

 

 

少女の素早さは並大抵のものではなかった、マシロでもどうにかついてこれた程であったから。

 

 

「ふん、たいしたことないね」

 

 

少女の一人が倒れた男にさらに追い撃ちをしかけた、少女の蹴りは男のみぞうちにもろに決まった。

 

 

「まあまあの変顔かな、さらに痛めつけたらもっと面白くなるかな」

 

 

さらに蹴りを男にくらわし、泡を吹いてそのまま失神した、少女はその様子を見て笑みを浮かべた。

 

 

 

「もう失神しちゃった、つまんないの」

 

 

男の仲間達は怒りに顔を真っ赤にして懐からナイフを取り出し、殺気を込めて少女を睨んだ、明らかに殺す気である。

 

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 

男達は少女に向かって行った、だがもう一人の少女に男の一人があしばらいをかけられた、男はその場に転び他の男達も巻き添えで転んでしまった。

 

 

「くそ、どけ!」

 

「お前こそどけ!」

 

 

いらついている男達を双子の少女達は見下した笑みを浮かべている。

 

 

「おまぬけですわね」

 

「姉様、こいつらどうしようか?」

 

「決まってますわ」

 

「そうだね、フルボッコだね」

 

少女達は容赦なく男達を袋だたきにした、苦痛の悲鳴が鳴り響いたが少女達は満面の笑みで痛めつけた、

やがて男達は全員気を失い悲鳴が止んだのである。

 

 

 

この二人何者だ・・・この身のこなし、素人などではない、それにこの容赦のない攻撃、私の勘では殺しの心得があるな、さて、どうするか・・・

 

 

双子は男達の懐から財布を抜き取りその場を素早く立ち去った、マシロも双子の後を追うようにその場を去った。

 

 

 

双子は人気のないところへ移動し財布を調べだした、そこそこのお金が入っていた。

 

 

 

「まあまあ持ってましたわね」

 

「夕ごはんふんぱつできるね」

 

「それもいいですが」

 

「うん、わかってる」

 

 

二人は同時にある一点に視線を向けた、そこには誰もいないように見えた。

 

 

「そこにいるんでしょう」

 

「気配消してもわかるよ」

 

 

返事は一切なくシーンと静まり返っていた、その反応を見て双子はいらつきだした。

 

 

「さっさと出てきなさい」

 

「痛い目見る前に出てきなよ」

 

またも辺りはシーンと静まり返った、双子の顔は怒りで赤くなってきた。

 

 

「・・・いい加減にしたらどうです」

 

「・・・今すぐ出て来ないと本当に殺すよ」

 

 

「私を殺すか、ずいぶん威勢がいいな」

 

 

 

真後ろから突然の声に思わず後ろを振り返った、そこにはマシロが立っていた、双子は心底驚いた。

 

 

「何で後ろに!?」

 

「確かあそこに気配を感じたのに!?」

 

「あれはわざとだお前達の意識をあそこに釘つけさせるために」

 

 

双子はア然とした、そんなマネができるなんてこの女ただ者じゃない、うかつに仕掛けたらただじゃ済まない、双子は身動きができないでいた。

 

 

マシロの方も双子がただ者でないと判断していた、男達をぶちのめした動きは素人のではなく、訓練された動きであった。

 

 

 

「お前ら、落ち着いた場所で話をしないか?」

 

「話を?」

 

「お前らはただの子供ではないだろう、少し興味を持ってな」

 

 

双子は後ろに向いてひそひそと二人で相談した、マシロには全て筒抜けであったが。

 

 

「どうします、ロリス」

 

「うん、ここはあの女に乗ってもいいんじゃないかな」

 

「そうですね、あの女ただ者じゃありませんし」

 

「じゃ、決まり」

 

 

双子は振り返り、申し出を受けることにした、すでにわかっていたが。

 

 

「じゃあ、適当な食堂に行きましょう」

 

「ああ」

 

「あなたのおごりでね」

 

「・・・別に構わん」

 

 

マシロは少し不満を感じたが、時間がもったいないので渋々受けることにしたのである、三人は場末の酒場に赴き適当に食事を注文した、食事できるまでそれぞれ自己紹介した。

 

 

 

「私はマシロだ」

 

「私はミーラですわ」

 

「私はロリスだよ」

 

 

三人は名前の次に所属を明らかにした、お互い所属を聞くと大層驚いた。

 

 

 

「マシロさん、革命軍の兵士でしたの?」

 

「元だがな」

 

「納得だよ、帝国の地方軍の兵士じゃ強すぎるから」

 

「私も驚いたぞ、まさかお前らがあのオールベルグの一員とはな」

 

 

 

オールベルグ・・・歴史の裏で数々の暗殺を行ってきた暗殺結社である、構成員も凄腕ぞろいで裏世界の勢力では最強の一角である。

 

 

 

「それにしてもあのオールベルグが壊滅したとはな・・・」

 

 

暗殺部隊が強いのはわかっていた、だが、まさかあのオールベルグを壊滅させるほどとは・・・

 

 

「言っておきますがメラ様は奴らより弱かったではありませんわ」

 

「実際、メラ様は奴らの何人かは捕らえたんだ」

 

双子は無念の思いで語った、死ぬほどの悔しさをひしひしと感じる。

 

 

「・・・分からんな、なぜそれだけ有利な状況なのに壊滅したんだ?」

 

 

マシロは首を傾げた、最も解せないのは何故殺さずに捕らえたのか、不思議でならなかった。

 

 

「・・・それは」

 

「言いたくないのなら言わなくていい、今の私にはそれは問題ではないからな」

 

「じゃあ、言わない、言いたくないから」

 

「構わない」

 

「ところでマシロさんは何故革命軍を抜けたのです?」

 

「一言で言えば敵討ちだ」

 

「敵討ち?」

 

「そうだ、恋人の敵討ちだ」

 

「恋人は男なの?」

 

「そうだが?」

 

 

マシロは再び首を傾げた、女の恋人は普通男のはず何故そんな質問をするのかわからなかった。

 

 

「いけませんわ!」

 

「はあ?」

 

「恋人が男なんてダメだよ!」

 

「お前ら何を言って・・・」

 

 

意味不明なことを言う双子に戸惑うマシロであったがあることを思い出した、オールベルグは同性愛、女性同士の恋愛を重んじることを。

 

 

「とにかくお前ら落ち着け、今はその話をするためにここにきたのではない」

 

「確かに・・・」

 

「今は後回しにするよ」

 

 

マシロはやれやれの表情をした、後回しということは後で再びもめるということだから。

 

 

 

「単刀直入に言う、お前ら、私と組まないか?」

 

「え?」

 

「どういうこと?」

 

 

 

二人は予想外の事を言われてキョトンとしている、無理ないことである。

 

 

「そのままの意味だ、組まないかと言ったのだ」

 

「そうは言われましても・・・」

 

「簡単に決められないよ・・・」

 

 

まあ、気持ちはわからんでもない、私でも同じ立場なら同じ反応をしただろう。

 

 

「正直敵討ちは私一人でやりたい、だがあのメラルド・オールベルグすらも返り討ちにする連中だ、私一人では

極めて困難になるだろう、無論お前達もだ」

 

 

「だけどメラ様の敵討ちは私達でやりたいですわ」

 

「そうでないと意味がないよ!」

 

 

組むという提案に双子は明らかに不満であった、それもマシロは予想していた。

 

 

「お前達、メラルドよりも強いのか?」

 

「そんなわけありませんわ!」

 

「私達がメラ様に及ぶわけないよ!」

 

「ならお前達だけでは不可能だろう」

 

 

双子はマシロの指摘に反論できなかった、全くそのとうりであったから。

 

 

「別に一蓮托生というわけではない、一時的な共同戦線ということだ、目的のために互いを利用しあう

納得できないなら解消して構わない、そういう関係だ」

 

「・・・それなら」

 

「組んであげてもいいよ」

 

 

双子は完全に納得したわけではない、だが自分達だけで復讐を果たすのは極めて困難というのも事実である、

ここはこの女を利用して復讐の可能性をあげるのが得策である、そう判断した。

 

 

「では、あらためてよろしく頼む」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「私達がいれば鬼に金棒だよ」

 

 

三人はあらためてお互いにあいさつした、だがお互い完全に信用していない、一時的な関係だと理解していた、

復讐を果たすためならあっさりと切り捨てる程度の関係であると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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