従者を斬る
「痴女と雑談とはいい御身分だな雑魚主人」
この声にサヨは確かに聞き覚えがあった、間違いなく彼であった、その名は···
「あなたはナックルね」
本部でムディと共にいた彼の従者である、ただ従者であるのに主人であるムディに対してかなり上から目線の言い方をしておりムディも渋い顔をしているのである。
「俺の名前を覚えていたか、意外だな」
「それぐらい覚えているわよ、って、今私のこと痴女って言わなかった?」
痴女ってどういうこと?もしかして彼さっき私の胸見ていたの?
「言ったぞ」
「···もしかしてさっき私の胸見たの?」
「お前が勝手に見せたのだろう」
「そ、それはメロディのせいで」
メロディが胸をあらわにしちゃったのよ、それは完全にメロディのせい、だけど胸を見ていい理由にはならない。
「とにかくあなたは私の胸を見た、それは間違いないよね!?」
サヨは怒りの眼差しでナックルを睨みつけた、乙女の胸を勝手に見たのであるからとっちめないと気がすまないのである、その様を見てナックルは不機嫌になった。
「ああ、確かに俺はお前の胸を見た、だが俺がお前の胸を見たからといってそれが何だと言うのだ」
ナックルのつまらないものを見たかのような口調にサヨはあ然とした、いやらしい顔でデレデレするのは嫌だが全く眼中にないという態度をとられるのは女として傷つくのである。
「実際あなたは私の胸を見たわけだし」
「俺は見たくて見たわけではないぞ」
その一言にサヨは怒りを通り越して寂しさを感じた、自分の胸はそんなに魅力がないのだろうかと。
「サヨさん、彼の言うことを真に受けてたらきりがありませんよ」
ムディの一言にサヨはハッとした、ナックルの口の悪さは本部で知っておりいちいち気にしていたらきりがないのである。
「余計なことをするな雑魚主人」
「···きりがないのですよ」
ムディの表情は一見穏やかに見えるがところどころ引きつっている、彼の心中も穏やかではないのであろう。
「···ところであなたの任務はどういうもの?」
少々強引ではあるが話を切り替えることにした、この気分を引きずるのも面倒だからである。
「俺の仕事はこの街の警備隊隊長を仕留めることだ」
「強いの?」
「それなりに強いと聞いているが油断さえしなければ問題なく仕留めることができる」
実際そうなのだろう、彼は口はとびきり悪いがかなりの腕である、左腕を失っているにもかかわらず。
「お前何この不格好な腕を見ているんだ?」
「べ、別にそんなことは」
つい思わず彼の左腕を見つめてしまった、彼の左腕は義手で革命軍の技術者ホーラーが製作したものなのである、ボスの義手も彼が造ったものである。
「嘘をつくな、この腕が不格好ではないと思わないわけがないだろう」
確かにその義手はかっこいいとは言い難く、はっきり言って格好悪い、それでもちゃんと指まで動かすことができるのだから十分だと思うのだが。
「まあまあ、あんまり不格好と言い続けたらホーラーさんに悪いですよ」
「何を言う雑魚主人、不格好を不格好と言って何が悪い」
「確かに格好いいとは言えませんが···」
「それにこの義手には余計なものが仕込んでいるのだ」
「余計なもの?」
「指からトリモチが飛び出す仕掛けがついているのだ、おかげで指が太くなってしまっているんだ」
よく見たらボスの義手よりも指が太いわね、だからボスの義手よりも格好悪く見えたのね。
「仕方ありませんよ、試作品のモニターも兼ねてただで提供してくれたのですから」
「まあ、ただというのが唯一の利点だがな」
「ですからたまにはトリモチも使用したらどうです?」
「断じて断る」
キッパリと断った、よほどトリモチの仕掛けが気に食わないんだろうな、まあ、少しは気持ちわかるかな···
「無駄話している暇があるなら準備に勤しむべきじゃないのか?」
「そ、そうだね」
確かに夜までまだ結構時間があるけど何もしないわけにはいかないよね。
「じゃあ」
「ああ」
こうして私は二人のそばから離れた、やることは結構ある、帝具の手入れ、最善の動きをするために身体をほぐす、任務に悪影響が出ない程度の食事、標的や街の情報の確認、やることは本当に結構あるのである。