サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第百二十八話

励ましを斬る(後編)

 

 

 

「アレクの話は以上だよ」

 

 

大臣に言いなりの少年皇帝がそんな志を持っていたなんて、正直ピンとこない。

 

 

「やはりピンとこないかい?まぁ無理ないけど、でもアレクは心から国のために何かしたいと今でも思っているんだ」

 

 

アレクは本心から国を良くしたいと思っている、だがその思いをオネストとその一派は私欲のために利用しているんだ、それを思うと憤りを感じる。

 

 

「諸悪の根源である大臣達をどうにかしないとならないのよね」

 

「ああ、今のアレクはオネストの操り人形そのものだ、どんな良い献策を言っても阻まれる」

 

 

国を思う忠臣は次々に消され、今周囲にいるのはオネストの息のかかった俗物しかいない。

 

 

「だから一刻も早く大臣達を始末しないといけないのよね」

 

「ああ、だが今は西の異民族との国交を修復するのが先だ」

 

「うん、だからこそ今回の任務は成功しないと」

 

「だけどまだ開始までまだ時間がある、別の話をしようか」

 

「別の話?」

 

「ナジェンダさんの話さ」

 

「ボスの?」

 

 

ボスの話ってあんまり聞いたことないわね、いい機会だから聞いておこうかな。

 

 

「ぜひ」

 

「じゃあ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

アレクと最後に会ってから結構月日が流れた、アレクのことは気かがりだが近づくことはもはや無理だ、アレクに近づいただけでオネストは自分を殺すだろう、だからアレクのことは考えないようにした、代わりに象牙細工の収集や製造に専念することにした、そうすれば多少は気が紛れるからだ。

 

 

 

「なかなかいい物が手に入ったな」

 

 

今日も象牙細工の収集に没頭している、それが長生きの術なのだ、趣味に没頭していれば早死にになることはない。

 

 

「なんだ?」

 

前方に知り合いの貴族の青年達がいた、何やら騒いでいるようだ。

 

 

「どうした?」

 

「ああ、ハウルか」

 

「何を騒いでいるんだ?」

 

「ああ、ついさっきナジェンダ将軍を見かけてな」

 

「ナジェンダ将軍?」

 

 

ナジェンダ将軍のことは小耳に挟んでいる、二十歳で将軍に就いた女性で今注目されているのだ。

 

 

「ひと目見たけどかなりの美人だぜ」

 

「ああ、彼女と付き合いたいな」

 

 

彼らがここまで絶賛するのだから相当の美人だろう、興味が出てきた。

 

 

「まだ近くにいるかな」

 

「いるんじゃないかな、彼女を見たいなら急いだ方がいい」

 

「そうだな、じゃあ」

 

 

 

ハウルは早足でナジェンダ将軍を探した、簡単には見つからないだろうと思っていたが以外にもすぐ見つけることができた。

 

 

「···あれがナジェンダ将軍」

 

 

 

貴族の青年達にナジェンダの顔はあらかじめ教えてもらっていた、それを推測しただけでも美人だと予想はつく、だが彼女は予想をはるかにしのぐ美人だったのである。

 

 

 

「···美しい」

 

 

貴族の令嬢にも美人はいる、だが彼女は上辺だけの美人ではない、生命力に溢れた命を感じたのだ。

 

 

「···」

 

 

ハウルはしばらくボーとしていた、ナジェンダの美しさに我を忘れていたのである。

 

 

「いかん、いかん、ボーとしている場合じゃない」

 

 

ハウルは我に返ってこの胸のときめきを彼女に伝えるべくナジェンダのもとに駆けつけたのである。

 

 

「ナ、ナジェンダ将軍で···」

 

 

ハウルは緊張のあまり噛んでしまい最後まで話が続かなかったのである、なんというザマだ、とハウルは内心で自分自身を罵った。

 

 

「何か用ですか?」

 

 

ナジェンダは不愉快な表情をすることなくハウルに受け答えしたのであった。

 

 

「え、ええと、将軍就任おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

 

ナジェンダは浮かれることなくハウルに返答した、ハウルは堂々としているナジェンダをすごいと感服した。

 

 

「じ、自分はハウルと申します、一応王族の身です」

 

「そうでしたか、王族の方に無礼な振る舞いをして申し訳ありません」

 

「い、いえ、無礼だなんて」

 

 

ハウルは慌てて非礼など一切ないとアピールした、彼女の頭を下げさせてしまうとは、王族と言わない方が良かったとハウルは後悔した。

 

 

「そ、そうだ、将軍の就任のお祝いに何かご馳走しましょう」

 

「とても光栄なことですが今急用がありますので控えさせていただきます」

 

「えっ!?」

 

 

もしかして私ナジェンダ将軍に嫌われた?ハウルは思いっきりショックが表情に現れていた。

 

 

「気分を害されたのであれば申し訳ありません、私は明日からとある地方都市へ派遣命令がくだされその準備をしなければならないのです」

 

 

「そうでしたか」

 

ハウルは心からホッとした彼女に嫌われたというわけではなかったから。

 

 

「ところで何処へ派遣されるのです?」

 

「アートンという街です」

 

「アートンですか」

 

 

アートンといえば商業が盛んな街でその街の商業ギルドの長はなかなかのやり手という話である。

 

 

「派遣期間は半年程です」

 

「半年ですか」

 

 

半年は短いようで結構長い、彼女と半年間会えなくなる、そう思うと寂しさを感じずにはいられなかった。

 

 

「あ、あの」

 

「はい」

 

 

あなたを見て一目惚れしました、そう言うんだ、今言わなければ半年先になってしまう。

 

 

「そ、その···」

 

 

何をためらっているんだ、ハウル、男を見せるんだ、ハウル!!

 

 

 

「ナ、ナジェンダ将軍、は、派遣任務頑張ってください!!」

 

「励ましをいただきありがとうございます、私は準備があるのでこれで失礼します」

 

「あ、ああ」

 

 

ナジェンダはハウルにお辞儀をしてその場を去って行った、そしてハウルだけがポツンと残されたのである。

 

 

「ああああ!!」

 

 

何やっているんだ私、励ましを言ってどうする、一目惚れと言うんだろう?それなのに私は!!

 

 

「···とにかく今は頭を冷やそう」

 

 

今から後を追いかけて一目惚れでしたと言っても引かれるだけである、何か対策を考えねば、ハウルはそう考え近くの喫茶店に足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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