限界を斬る
革命軍の者が接触してから数日後、ナジェンダはそのことを忘れようと鍛錬に励んでいた、ナジェンダが今いる場所は郊外から離れたほとんど人がやってこない場所である、なぜそのような場所で鍛錬しているのかはとある理由があるのである。
「一息いれるか」
ナジェンダはタオルで汗を拭き水筒の水をゴクゴクと飲み干した、その時近づいてくる人の気配を感じ、周囲を見渡した。
「ラバか、それにハウルどのも」
ナジェンダは意外だなと思った、ラバはよくここへ来ていたがハウルは確かこの場所を知らなかったと思ったのだが。
実際ハウルはこの場所を知らなかった、この場所をラバに教えてもらったのである、無論ラバは絶対教えたくなかったのだが数日前のパーティーの件をハウルは知ることになり、ラバがわざと自分に知らせなかったことも知ってそのことをナジェンダに知られたくなかったらここに連れて行くようラバに要求したのである、ラバは仕方なく渋々ハウルをここに連れてきたのであった。
「お疲れ様ですナジェンダさん」
「どうも」
「よかったらどうですか?」
ハウルは自分の食事に購入したサンドイッチを差し出した、特に豪華さはないありふれたサンドイッチである。
「いいのですか?」
「ええ、ナジェンダさんに食べていただけるのなら本望です」
「では遠慮なく」
ナジェンダはハムとレタスを挟んだサンドイッチを手に取り食した、ちょうど小腹が空いていたのである。
「美味しいです」
「それはよかったです」
ラバはその様子を見て不愉快であったがパーティーのことをハウルに言わなかったいきさつもあり、今回だけは見逃すことにしたのである、不愉快極まりないが。
ナジェンダは軽く食事を取り少し休憩をとり再び鍛錬を行うことにした、ただその鍛錬は普段のと違うが。
「ナジェンダさん、それは何ですか?」
ナジェンダはケースを開けて何かを取り出して組み立てている、それは銃に見えるが。
「これは帝具パンプキンです」
帝具、それは千年前に当時の皇帝だった始皇帝が創り出した兵器である、全部で48造られ、どれも凄まじい性能を誇るのである。
「これが・・・帝具」
話には聞いていたが間近で見るのは初めてである、どれだけのものなのだろう、ハウルはとてもワクワクしてきた。
ナジェンダは集中してあるものを狙いをつけている、それは3メートルほどの岩であった。
ドウン!!
轟音とともに閃光が走り岩を貫き木っ端微塵にした、岩の原型は全くなかった。
「す、すごいです、なんて威力!!」
たった一発で岩を木っ端微塵にするなんて帝具とはなんと凄まじい、それを使いこなすナジェンダさんもすごい。
大絶賛するハウルであったがナジェンダは全く満足していない様子であった。
「いえ、パンプキンの威力はこんなものではありません」
「え!?」
「私はこの帝具の性能を完全に引き出していません」
「し、しかし」
「私にはわかるのです、自分はギリギリ帝具に選ばれたに過ぎないと」
ハウルは信じられなかった、ナジェンダ程の実力者がギリギリ選ばれたなどと。
「恐れながらそれは過小評価ではないですか?」
「お気遣いありがとうございます、でもこれは確かなのです」
「ナジェンダさん・・・」
「ですが私は立ち止まるつもりはありません、さらに鍛錬を重ねて今よりもさらに性能を引き出すつもりですから」
「そのとうりです、ナジェンダさんなら絶対大丈夫です!!」
ここぞとばかりにラバがアピールしてきた、抜け目がないなとハウルは思ったのであった。
「ナジェンダさんならいつか完全に性能を引き出すことができます」
ハウルはお世辞などではなく、本心でその時が来ると信じていたのである、無論ラバもそうである。
「ありがとうございます、私も自分を信じて一層鍛錬に励みます」
そう言うとナジェンダは持ってきていた重装な鎧を身に着けた、無論身を守るためではない。
「ではこの地域一帯を走って来ます」
「鎧のままで?」
「はい、この方がより鍛錬になりますので」
「なるほど」
「では出発します」
ナジェンダは鎧を着たまま走り去って行った、鎧を身に着けているとは思えない程の速さであった。
「すごいな」
「そりゃナジェンダさんだからな」
彼女は単なる美人ではない、ずば抜けた強さと意志を持った女性なのだ、その魅力は計り知れない。
「じゃあ私は戻ることにするよ」
「戻るって?」
「一度帝都に戻ろうと思う、このままここにいても彼女の邪魔になるだろうし」
「そりゃよかった」
「・・・君は本当に正直だね」
「寂しいとでも言ったらよかったか?」
「まさか」
彼にそんな言葉をもらってもはっきり言って胡散臭いこの上ない、よかったと言われた方がスッキリする。
「君はどうするんだい、私がいない間に一気に決めるつもりなのかな?」
「そうしたいと言いたいところだが今の俺では全然ナジェンダさんに釣り合わない、そこでだ俺は兵に志願しようと思う」
「兵に志願?でも君は15歳に全然達していないだろ、志願するのに年齢制限はないが明らかに不利だろう」
15歳以下でも兵の志願はできる、だが15歳以上に比べて軽んじられる傾向があるのだ。
「それは何とかするさ、何しろ俺には恋の女神の加護があるからな」
「まぁ、それだけの自信があるのならなんとかなるかもね」
「おうよ」
もともと最初からあっさり叶う恋だなんて思ってないさ、何しろ相手は絶世の美人将軍だ、イバラの道になることぐらいわかってるさ、だけどだからこそいいんじゃねぇか、あっさり叶う恋なんてつまらないだろ、苦労した分叶った時の喜びは計り知れないんだ。
「とりあえずさよならだ、再会を楽しみにしているよ」
「俺は御免被りたいな」
「君らしいな、じゃあ」
「ああ」
次に合う時彼はどうなっているのかな、興味もあるけど少し不安もあるかな。
ハウルはそう思いながら帝都へ帰還する旅に出るのであった。