バン族を斬る(後編)
バン族の戦士の一人がナジェンダに突撃してきた、ナジェンダは直ちに迎撃態勢を整える。
「来い!」
ナジェンダはバン族の戦士の槍の一撃を剣で防ぎ、ナジェンダはすかさず斬りつけたが素早くかわしたのであった。
「こいつ、できる」
ナジェンダが戦ってきた者達の中でもこの男はかなりの手練であった。
「お前、名は?」
「俺は一族の長の一人ガザムだ、死ぬまでの短い時間、覚えておけ」
「そうはいかん」
再び両者は激しく打ち合った、打ち合う中でナジェンダが次第に優勢になっていった。
「もらった」
ナジェンダはガザムの一瞬の隙を見つけて斬りかかろうとした、するとその瞬間、ナジェンダの背後に妙な気配を感じた。
「!?」
突然ナジェンダの背後にマントをかぶった男が現れナジェンダに切りかかった、ナジェンダは反射的に回避して命拾いした。
「・・・なんだこいつは」
全身をマントで覆って不気味な男である、それでも腕はかなりたつ。
「・・・仕留め損ねた」
「助かったぞ、ヘンター」
「・・・こいつ、強い」
「ああ、こいつが噂の二十歳で将軍になったという女だ、かなりの手練だ」
「・・・どれだけ強かろうと俺は仕留める」
「ああ、ここで仕留めて戦況を有利にするぞ」
「・・・行くぞ」
ナジェンダとバン族の戦士達が激闘を繰り広げていたその時、違う場所でも戦いが行われていた。
後退するバン族の戦士達を一人の大柄な男が追っている、その男はエスデス隊の一人で三獣士の一人ダイダラであった。
「逃げんじゃねぇよ」
ダイダラは後退する戦士達を警戒することなく追っている、自分がやられるなどと微塵も思っていない。
戦士達はやみくもに後退しているわけではなかった、あるところにおびき寄せるためである。
「鬼ごっこは終わりだぜ」
戦士達は足を止めた、そこは周りと同じ密林であった、ただ1つ違うのは辺りに複数の山盛りになった土の塊があったのである。
「お前ら、俺の経験値に・・・っ痛!?」
ダイダラは突然足に痛みを感じた、足を見てみると無数の大きな蟻が下半身にまとわりついていたのである。
「蟻?」
ただの蟻ではなかった、普通の蟻より十倍の大きさの蟻であった、獰猛な蟻の危険種ジャイアントアントである。
「この!」
ダイダラは手に持っていた斧でまとわりついた蟻を振り払った、だが数が多すぎて全く追いつかない。
「うっとおしい!」
ダイダラは足を振り上げて引き離そうとした、だが蟻は力強くしがみつき、ほとんど引き離すことができなかった。
「ちっ!」
ダイダラは舌打ちしつつどうするか考えていた、虫けらなんかに手こずっているなど恥さらしである、だが、このまま手をこまぬいているのはと考えていると突然ダイダラの下半身が氷漬けになった。
「これは!?」
もちろんダイダラには確信があった、このようなことができるのはあの人しかいない。
気配を感じ後ろを振り向くとあの人がいた、ダイダラ達の主である、エスデスが。
「あ、ありがとうございます」
恐れを知らないダイダラであったがさすがにこのときは緊張している、無様をさらしてしまったからである。
「次はないぞ」
「わ、わかってまさあ」
エスデスの冷たい視線にダイダラは額から冷や汗を流した、決して脅しなどではないとわかっていたからである。
「油断するな」
ダイダラに注意したのはダイダラと同じ三獣士であるリヴァであった、その一言にダイダラはバツが悪そうな素振りをした。
「面目ねぇ」
ダイダラはリヴァに詫びを言った、傲慢なダイダラが詫びを言えるのはエスデス、リヴァを入れてわずかしかいないのである。
「なぁ、あんたの水を操る帝具で一気にかたをつけてくれよ」
リヴァが所有する帝具ブラックマリンは水を操ることができることができるのである。
「そうしたいのだが、帝具がうまく作動しないのだ」
「はぁ!?なんでだよ!?」
「この一帯の水は根本的に他の水とは異なるのだ」
「結局どうなんだよ」
「・・・つまり、ここでは私の帝具は使えないのだ」
「なんだそりゃ!!」
「そういうわけだから私は兵の指揮に専念する、だからお前は戦闘に専念しろ」
「なんかずるくないか?」
「適材適所というやつだ」
「なんかスッキリしないな」
二人が会話しているとエスデスは辺り一面にある蟻の巣を凍らせ一瞬で粉々にした。
「お前達、口を動かす前に体を動かせ」
エスデスは二人を鋭い眼光で睨みつけた、それにより二人は気を引き締めた。
「も、もちろんでさあ」
「申し訳ありません」
その瞬間、密林の奥地から無数の獰猛な危険種が襲いかかってきた、バン族がおびき寄せたのである。
「お前達、わかっているな、思う存分蹂躙しろ」
「おお」
「はっ」
エスデス達は向かってくる危険種達を片っ端から蹴散らした、だが、危険種の数はあまりの膨大で百戦錬磨のナジェンダ隊、エスデス隊でもかたをつけるのは容易ではなかったのである、戦況は数日間膠着したのであった。