サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第百三十九話

大河を斬る

 

 

ナジェンダ隊とエスデス隊がバン族と交戦して数日が経過した、形勢は不利ではないが決して有利でもなかった、両隊にそれなりの被害が出てしまっている、原因はわかっている、地の利は明らかにバン族にあった、地下道を利用して奇襲をしかけ少なからぬ痛手を被っている、そしてこの地域に生息する数多の危険種を利用していることだ、バン族は生態を完全に把握していて手足のように扱えるのだ、それになりよりバン族の街の正面に存在する大河が一番の問題であった、この大河が街への侵攻を困難とし難攻不落の拠点にしてしまっているのである、それ以外のルートは危険種がウヨウヨしている密林であり、人間が立ち入るのはほぼ不可能であった。

 

 

 

「ここまでとはな」

 

 

ナジェンダはため息をついた、この地域が過酷ということは報告書を見て知っていたがここまで過酷とは予想していなかったのである。

 

 

「今はまだ甚大な被害はでていないが・・・」

 

ナジェンダは少し焦りを感じていた、戦力的にはまだ余裕があるが戦いがさらに長引けば補給の問題がでてくる、もしバン族が補給を潰すことに専念したら形勢は逆転しかねない。

 

 

「早急にかたをつけなければならない」

 

それは非常に困難だとナジェンダは理解していた、大軍の進軍を阻む大河を何とかしなければならない、だがあの大河をどうにかするなど人間では不可能だ、ナジェンダが思案していると。

 

 

「あの大河を何とかすればいいのだろう」

 

エスデスはのほほんと言った、エスデスの表情には全く悲観がない。

 

 

「エスデス、お前、簡単に言うが・・・」

 

あの大河を簡単に解決できるなら苦労はしない、いくらエスデスでも簡単ではないはずだ。

 

「手はある」

 

「本当か!?」

 

「ああ、最初に大河を見たときから思いついていた」

 

「最初に!?なぜ今まで実行しなかったのだ!?」

 

「はるばる遠方の辺境まで来たのだ、すぐに終わらせたらつまらんだろう」

 

「・・・つまらんって、お前、戦をなんだと思っている、現にお前の部下も何人も死んでいるのだぞ」

 

「それで死ぬならそこまでだったということだ」

 

 

ナジェンダは唖然とした、こいつにとって戦は道楽でしかないのだ、それで死んでいった部下達のことを思うと憤りを感じずにはいられない。

 

 

「・・・お前の考えた手はうまくいくのだろうな?」

 

 

ナジェンダはエスデスを糾弾したかったが、今はこの戦を終わらせることが最優先である、怒りを何とか抑えることにした。

 

 

「ああ、断言しよう」

 

「そうか、明日実行してくれ」

 

「わかった」

 

 

道楽気分で戦っているエスデスにナジェンダは怒りを感じたがこの戦を早期に終わらせるにはエスデスの力が不可欠である、今は我慢の時である。

 

 

 

 

夜が明けて両隊は大河の前に待機していた、大河の向こうにはバン族の街が見える。

 

 

「エスデス、任せたぞ」

 

「了解だ」

 

エスデスは一人大河に向かって歩き始めた、川岸に到着すると大河に手を入れ集中し始めた。

 

 

「凍れ」

 

 

その瞬間大河はあっという間に凍りつき氷の大地が出来上がったのだった、バン族の街は無防備そのものであった。

 

 

「終わったぞ」

 

「・・・ああ」

 

 

ナジェンダは目の前の光景にただ唖然としていた、大河を凍らせた、人間離れしたエスデスの力にただ唖然とするしかなかったのである。

 

 

「リヴァ、兵の指揮は任せた」

 

「はっ!」

 

リヴァの指揮したエスデス隊は進撃した、バン族の兵達はありえない状況に混乱し浮足だってしまい、エスデス隊によってあっという間に壊滅したのであった。

 

「組織的な抵抗は終わりました」

 

「そうか、では兵達に褒美を与えないとな」

 

「エスデス、何を?」

 

 

ナジェンダは胸騒ぎがした、戦の勝敗は完全に決着がついた、これ以上何をするのだ、エスデスの邪悪な笑みを見て

エスデスが何をしようとするのかを察した瞬間。

 

 

「街に攻め入り、住民を思う存分蹂躙しろ!!」

 

 

ナジェンダはこれよりエスデス隊による大惨劇を目の当たりにすることになる、そしてナジェンダにとって大きな分岐点になるのであった。

 

 

 

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