サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第百四十一話

部下を斬る

 

 

「隊長、失礼します」

 

ナジェンダの執務室にナジェンダ隊の中核をなす三人の大隊長が入ってきた、副官を務めるジャズ、レッド、トレイルである、三人はナジェンダに呼び出されたのである。

 

 

 

「隊長、どうしたのですか?」

 

無言を貫くナジェンダに違和感を感じたジャズは質問した、するとナジェンダは三人にそれぞれペンとメモ帳を渡した、三人は即座に筆談をするのだと悟った。

 

 

 

 

隊長、どうしたのですか

 

今から書くことに驚かないでくれ

 

わかりました

 

私は帝国を離反しようと思う

 

!!?

 

 

三人はあまりの衝撃的な内容に驚かずにはいられなかった、大声はなんとか叫ばずに済んだ。

 

 

どういうことですか、隊長

 

言葉通り、私は帝国を抜ける、そしてその後革命軍に行くつもりだ

 

革命軍!!?

 

ああ

 

本気なのですか?

 

無論だ

 

やはり、あのバン族の反乱の際のエスデス隊の所業が許せないのですね

 

ああ、これ以上私は帝国についていけん

 

なるほど、それで私達にも同行しろと

 

いや、私はお前達に離反を強制したりはしない

 

どういうことです

 

これは私のわがままだ、それにお前達を強制するつもりはない

 

隊長

 

拒否しても一向に構わない、私の行動が許せないのなら上に報告しても構わない

 

それは

 

 

戸惑っているジャズの隣では勢い良くレッドがメモ帳に書き始めた。

 

 

いいですよ、隊長、俺もあなたについて行きます

 

「レッド!?」

 

ジャズは思わずレッドの名を叫んでしまったがレッドは気にせず筆談した。

 

 

俺もあの所業には心底ムカついていたのです、いい機会ですこの機に帝国を抜けます

 

 

それを見てトレイルは負けじとメモ帳に書き始めた。

 

 

 

全くそのとうり、俺は今まで帝国の非道に腹が立っていた、私腹を肥やすために地方から搾取する上の連中嫌気が差していた、駄目と言われても俺はついて行きます

 

 

「レッド、トレイル」

 

 

ナジェンダは迷っていた、同意したとはいえ自分のわがままに部下を巻き込んでしまってよいのかと、彼らの地位のふいにしてしまい人生を破滅に追い込んでしまうのではないかと。

 

 

 

俺たちのことは気にしないでください、隊長は自分の意思を貫いてください。

 

隊長と出会えたから俺たちは激戦を乗り越えて今まで生き残ってこれたのです、ボンクラな奴の元ならとっくに戦死しています、最後までお供します

 

 

「お前達・・・」

 

 

ナジェンダは嬉しかった、帝国を離反するというばかげたことを一切批判せず受け入れてくれた部下に。

 

 

副官はどうします

 

もちろん私も同行する

 

無理をすることないぞ

 

見くびるなよ、我が身可愛さに保身に走るなどみっともないことはしない

 

それでこそ俺たちの副官だ

 

それに私の所有する帝具は隊長の力になるはずだ

 

ああ、お前の帝具バルザックは頼りになる

 

はい、改めて私も隊長と共に帝国を離反することを誓います

 

 

「お前達、ありがとう」

 

「隊長」

 

 

帝国を離反するなど愚かの極みであるはずなのに一行は心の底から充実感を感じていた、それだけ帝国に失望していたというわけである。

 

 

ところで隊長、どの時期に決行します

 

迂闊に動けば帝国に勘付かれます

 

それなのだが、ついさっき、ある命令が下った、南方にあるファーム山にたむろしている山賊の討伐を遂行しろという命令を

 

ファーム山

 

それはえらく南方な

 

だが私たちにはとても好都合だ

 

確かに、革命軍の拠点ははるか南方にあります、まさに好都合です

 

それに小耳に挟んだのだが同時期にエスデスの部隊は北方へ出陣するそうだ

 

それはまさに好都合

 

千載一遇の好機

 

 

一同は安堵していた、帝国で最も脅威であるエスデス隊が自分たちとは正反対の方角に移動するのであるから。

 

 

では決まりだ、その日をもって私たちは帝国離反する

 

はい

 

ところで隊長、ひとつ聞きたいことが

 

なんだ

 

ラバックのことはどうします

 

ラバック?

 

はい、ラバックにもこのことを知らせては

 

無用だ、ラバックには決行前日にキョロクに出張命令を出すつもりだ

 

出張!?

 

ああ、あいつはまだ少年だ、家族もいる、そんなあいつを巻き込むわけにいかない

 

本当にいいのですか

 

ああ、もう決めたことだ

 

 

そう、これでいいんだ、あいつは秀でた才がある、私なんかのために人生を棒に振っていいわけがないんだ

 

 

話は以上だ、皆その時まで普通に過ごすんだ、帝国に勘付かれてはならんぞ

 

はい

 

 

ナジェンダはこれまで筆談に使った紙を全て一つにまとめて焼却した、燃え尽きたのを確認すると自分のカバンに灰を入れた。

 

 

「ではそれぞれの任務に戻ってくれ」

 

「はっ」

 

 

三人が退室してナジェンダは執務室に一人だけになった、ナジェンダは考え事をしていた、無事に革命軍と合流できるか、帝国を打倒できるか、民が平穏に暮らせる世界を創れるか、そして最も考えているのはラバックのことであった、ラバックとは確実に今生の別れになるであろう、それでいいのか、部下にはああ言ったものの絶対の自信はなかったのである。

 

 

 

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