サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第百四十四話

離反を斬る(後編)

 

 

ラバックを加えたナジェンダ隊は南へ向けて進軍した、途中で地方軍と遭遇したが一蹴したのであった。

 

 

「ずいぶん進んだな」

 

「はい」

 

「だが油断は禁物だ」

 

「もちろんです」

 

 

ここまでは何事もなくうまくいっている、だが何が起こるかわからないのが戦場である、わずかな油断が命取りになるのだ、ナジェンダは一層気を引き締めるよう部隊に命じた。

 

 

ナジェンダ隊は順調に進軍していた、この速度で進軍していけば数日以内に革命軍の拠点に到達できるであろう。

 

 

「隊長、使者を送って革命軍に我々のことを知らせては?」

 

「そうだな」

 

 

使者を送れば革命軍も対応しやすいだろう、ナジェンダはその案を良しとした。

 

 

「ラバック、お前行ってくれるか?」

 

「はい、喜んで」

 

「では、まかせたぞ」

 

「はい」

 

 

ラバックはそのまま一騎で革命軍の拠点を目指して駆け出した、あっという間に見えなくなった。

 

 

「では、皆行くぞ」

 

「はっ」

 

 

こうしてナジェンダ隊は進軍した、もうすぐ襲いかかる脅威に気づかないまま。

 

 

ラバックは馬を全力で走らせた、一刻も早く到着するために、すると南方に人の集団を見かけた、それはただの集団ではなかった、武装をしており、見事な統率で動いている集団であった。

 

 

「あれは、もしかして」

 

ラバックは集団に向かって駆け出した、この集団に心当たりがあった、おそらく革命軍の部隊であろう、地方軍がこれだけの統率した動きができるわけがないのである。

 

 

「止まれ」

 

 

止まれと指示されてラバックは馬を止めた、ラバックに緊張が走る、彼の対応次第でナジェンダ達にも影響が出るからである。

 

 

「何者だ?」

 

「は、はい、自分はナジェンダ将軍の使いの者です」

 

「ナジェンダ将軍の?」

 

 

一人の男がラバックのもとに近づいてきた、その男はお世辞にも屈強とは言えなかった、頭が切れる参謀のように見えた。

 

 

「はい、近くまで来ています」

 

「そうか、私はこの部隊を率いるウォーロックという者だ」

 

「自分の名はラバックと申します」

 

ラバックは緊張しながら自己紹介した、もし自分に不手際があればナジェンダに迷惑をかけることになるからである。

 

 

「20歳で将軍の地位についたナジェンダ殿にお会いできるのを楽しみにしていたよ」

 

「光栄です」

 

 

ラバックは表に出さなかったが内心ウォーロックに対してナジェンダに馴れ馴れしくするなよと思ったのである。

 

 

「では皆聞いての通りだ、全速力でナジェンダ殿を迎えに行こう」

 

「はっ!」

 

 

一行は全速力で進軍した、全く乱れることなく見事な統率であった、ラバックはウォーロックを只者ではないと思った。

 

 

「そろそろナジェンダ将軍に・・・なんだ!?」

 

 

 

ラバック達が向かって行く先で大きな音が響いていた、それは戦闘の音であった、それも大規模な。

 

 

「まさか!?」

 

 

考えられるのは一つしかない、帝国の追手が追いつき戦闘が始まっていたのだ、ラバックが真っ先に頭に浮かんだのはナジェンダの顔であった。

 

「ナジェンダさん!!」

 

 

ラバックは無我夢中で馬にムチを打って速度を上げた、一刻もナジェンダの元へ駆けつけるために。

 

 

「全員戦闘用意!速やかにナジェンダ将軍を助けるんだ」

 

ウォーロックの指示で部隊は即座に臨戦態勢を整え突撃した、見事な手腕であった。

 

 

その一部始終を追手の部隊の指揮官は全く動じることなく見ていたのである、その指揮官は・・・

 

 

「援軍、反乱軍の部隊か、ここまで迎えに来ていたとはな」

 

 

その指揮官はナジェンダが最も恐れていたエスデスであった、エスデスは北方に遠征していたのだがナジェンダ離反を知らせを聞いて進軍したのであった。

 

 

「見事な陣形だ、できる奴が指揮をとっているな、一戦交えたいところだが私の部隊は遠方からの強行軍で疲れている、連戦はキツイか」

 

エスデスは口笛を吹いた、するとエスデス隊は一斉に戦闘を止めて退却を開始した、口笛は退却の合図であった。

 

 

「次のご馳走はとっておこう、退却するぞ」

 

 

ナジェンダを今始末するのは容易い、だが、それでは面白くない、こいつの実力はよく知っている、私を倒す準備を整えて再び挑んでくるだろう、その方がずっと面白い。

 

 

エスデスはナジェンダとの再戦を期待しながらその場を去って行った。

 

 

 

「なんてこった!!」

 

 

ラバックは辺りを見渡した、多くの兵が息絶え倒れている、生きていても負傷していた、そして愛しい人を目の当たりにすることになる。

 

 

「ナジェンダさん!?」

 

 

ラバックは変わり果てたナジェンダを見て絶望した、ナジェンダの右腕は跡形もなく欠損しており右目も失っていた。

 

 

「ナジェンダさん!!」

 

ラバックはナジェンダに声をかけた、生きててくれ、ラバックはただそれを願うしかできなかった。

 

 

「・・・ラバックか」

 

「ナジェンダさん!!」

 

 

生きていた、ラバックは嬉しかった、生きていることをラバックは心から安堵した。

 

 

「ナジェンダさん、すみません、俺が最も早く駆けつけていれば・・・」

 

「・・・お前のせいじゃない、私が甘かったのだ、エスデスが現れないなどとたかをくくってしまった私が愚かだったのだ」

 

「いえ、ナジェンダさんのせいじゃありません、エスデスが非常識すぎたんです!!」

 

 

はるか北方から短時間で駆けつけるなんて、非常識にもほどがある、こんなのどうしようもない。

 

 

「・・・いや、それがエスデスという奴だ、私の認識が甘かったのだ」

 

「とにかく今は・・・」

 

「ナジェンダ将軍!」

 

 

革命軍の指揮官であるウォーロックがナジェンダのもとに駆けつけてきた。

 

 

「・・・あなたは?」

 

「はい、私は革命軍の部隊を率いているウォーロックと申します」

 

「・・・無様を晒して面目ありません」

 

「とにかく今は治療を」

 

「・・・私は後回しでいい、部下達の治療を」

 

「もちろん治療します、今はあなたの治療を」

 

右腕を失ったことで出血がひどい、一刻も早く手当てをしないと命取りになる。

 

 

「・・・どうか」

 

ナジェンダは出血多量で会話もできなくなりつつあった、ナジェンダの意識は朦朧としている。

 

 

「ナジェンダさん!!」

 

「衛生兵、早く手当を!!」

 

 

 

薄れゆく意識の中でナジェンダはエスデスとの差を心から痛感していた、今のままでは絶対エスデスには勝てない、勝つためには力はもちろん必要だ、それ以上にエスデスを倒すためならどんな卑怯な手を使う覚悟が必要だと認識したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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