後悔を斬る(前編)
「これがナジェンダさんから聞いた話さ」
「まさに壮絶ね」
ボスの将軍時代の話は以前から興味はあったけどボスにとって辛い出来事だから話を聞くのは気が引けてたけど彼から話を聞けてよかった。
「それにしてもよくボス話をしてくれたわね」
「ナジェンダさんが酔っていた時に話をしてくれたんだよ」
「なるほど」
酒に酔っていたのなら話をしても不思議じゃない、普段はどうかわからないけど。
「ハウルさんはボスに振られても諦めきれなかったんだね?」
「みっともなくても自分の気持ちは抑えきれなかったんだよ、ナジェンダさんが重傷を負ったという噂を聞いて彼女のもとに駆けつけようと決意したのさ、すべてを捨ててでも」
王族の地位を捨ててまで恋した人のもとに駆けつけようとする心意気、すごいなと思う。
「別に大したことないさ」
ラバックはハウルに対抗するかのように物申した、サヨは余計なことを言っているなと思った。
「確かに大したことないさ、ナジェンダさんの想いを貫くならすべてを捨てる覚悟でないと」
ハウルの対応は大人である、それに比べてラバックのそれは幼稚である。
「俺だってナジェンダさんのためなら命をかける覚悟はあるさ」
「まぁ、それは行動で示せばいいさ」
「言われるまでもねぇ」
二人のやりとりが盛り上がっていると誰かが声をかけた。
「盛り上がっているな」
サヨは後ろを振り向いた、そこには見覚えのある者が立っていた、外見があまりに特徴的であったから。
「これはギアさん」
「ああ」
この男はハウルと同じ工兵チームに所属しているギアという者である、特徴的な外見というのはこの男は両足がなくバネの臣具を義足の替わりにしているのである。
「よぉ、本部の時以来だな」
「は、はい」
サヨはギアのバネの足を見て少し戸惑っていた、はっきり言って異様だからである。
「俺のこの足滑稽だよな」
「い、いえ」
サヨは自分が失礼な態度をしてしまったと後悔した、この人だって好きでこんな足になったわけではないはずだから。
「気に病むな、実際へんてこだからな」
「すみません」
「こうなったのもあのイカレ小娘のせいだからな」
サヨはイカレ小娘と聞いてある人物を思い出した、それは帝都に到着した日に出会った上流層の令嬢であるアリアのことを。
「・・・もしかしてそのイカレ小娘ってアリアのこと?」
「そうさ」
この人はあのアリアの被害者だったんだ、それにしても私達以外に生き残っていた人がいたなんて。
「実はな本部で会う前からお前らのこと知っていたんだよ」
「えっ、もしかしてあなた・・・」
思い当たることは一つしかない、彼に私達のことを教えた人は。
「ああ、俺はあの屋敷でタツミと会ったんだよ」
やっぱり、それしか私達のことを知るすべがない、まさかタツミと知り合いだったなんて。
「あなたが知っていることを教えて」
「キツイ話になるぞ」
「わかってる、それでも知りたい」
「わかった」
ギアはタツミについて知っていることを語り始めた。
「拾っていただきありがとうございます!!」
大声でお礼の言葉を言った少年の名はタツミ、帝都で兵士になるために北の地方からやって来たのである。
「いいよいいよ、遠慮しないで」
「はい」
タツミは心の底から嬉しかった、帝都に来て散々な目にあってきたのである、兵舎に行ったら突然叩き出されて、道を歩いていたらカツアゲされそうになって、極めつけは巨乳の女にあり金の大半を騙し取られたのである。
「もう、オーバーね」
「それだけ嬉しかったんです」
そうしているうちにドアが開いて知らない男が入って来た。
「そいつ誰です?」
入って来た男は小太りでちょびヒゲを生やした中年の男であった。
「彼はタツミ、私が連れてきたの」
「俺と同じですか」
「そうよ」
「あのー、この人は誰です?」
「この人はギア、昼に私が連れてきたの」
「そうなんだ」
俺の他にも地方からきた人を招いているんだ、本当にこの人いい人だな。
「ええと、ギアさん、帝都へ稼ぎに来たんだよね」
「ああ、それ以外に帝都まで来る理由ないだろ」
「そりゃそうだ、もしかして兵士になるために来たの?」
「いや、俺は土木関係の仕事を目当てに来たんだ」
「土木?」
「俺は土木に関しては自身があるんだ」
「そうなんだ、それで仕事見つかったの?」
「いや、全然だ」
帝都は不景気で簡単に仕事が見つからない、タツミも身を持って知ったのである。
「途方に暮れていた時にアリアお嬢様に声をかけてもらったんだよ」
「そうなんだ、俺も帝都で散々な目にあったんだよ」
「散々な目?」
タツミは帝都で自分に起こったことを説明した、聞き終わった後ギアは呆れた顔をした。
「そりゃあ、タツミ、お前がマヌケだよ、いきなり隊長なんてぬかしたら門前払いくらうのは当然だ、女に騙されたのも迂闊でしかない」
「でもうまくいったら・・・」
「その女にデレデレしてまともな判断できなかったんだろう」
確かに、あの女の巨乳に目がいってしまい冷静な判断ができなかったかもしれない。
「まぁ、済んだことを悔やんでも仕方ねぇ、これからどうするか考えな」
「そうだな」
クヨクヨしても仕方ない、村を救うために稼がなければならないんだ、サヨとイエヤスを見つけて3人で村を救うんだ、困難な道になっても3人一緒なら乗り越えられる。
「明日から頑張るぞ」
「タツミ、頑張ってね」
「はい」
タツミはアリアの励ましに意気揚々と答えた、だが、タツミは気づいていなかった、一瞬アリアの笑みが歪んだものになっていたことに。