サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第百四十七話

後悔を斬る(後編)

 

 

「アタシを誰だと思ってるの!?」

 

「コイツ!!」

 

 

タツミが街中で少女と揉めていた、なぜこうなったのか時を少し巻き戻してみる。

 

 

 

「今なんて言ったのですか?」

 

「夕方まで自由時間と言った」

 

 

ガウリの説明によるとアリアの今日の予定は午前はピアノのレッスン、昼食を高級レストランで両親と共に召し上がりその後劇場でオペラを鑑賞することになったのである、よって夕方までは付き人の仕事はないのである。

 

 

「そうなんですか」

 

「ああ、夕方まで好きにしていいぞ」

 

 

自由時間がもらえても何をしたらいいのかわからない、とりあえず街中へ行くことにした。

 

 

「あいかわらず賑わっているな」

 

「そうだな」

 

 

タツミはギアと共に街中に赴いていた、男二人で行くのはどうかと思ったが一人で赴いて夕方までに戻れるかいまいち自信がなかったのである。

 

 

「本当に帝都は俺の田舎とは全然違うな」

 

田舎とは全く別世界であった、特に違ったのは女子が皆垢抜けていたのである。

 

 

「どれもこれも可愛いな、おや」

 

 

タツミは一人の少女に目が行った、その少女は小柄でピンク色の髪の毛でツインテールをしていた。

 

 

「あの子なかなか可愛いな」

 

タツミはジーと少女を見つめていた、すると少女はその視線に気付き険しい顔になり近づいて来た。

 

 

「何ジロジロ見てるのよ」

 

「いや、別に」

 

 

ヤバ、怒らせた、なんとか切り抜けないと。

 

 

「もしかしてナンパ?」

 

「い、いや・・・」

 

「アンタみたいなさえない奴がアタシをナンパだなんて千年早いわよ!」

 

「何だと!?」

 

 

ジロジロ見つめたことには失礼だったかもしれない、でもここまでけなされるいわれはないぞ。

 

 

「アンタごときがアタシをナンパするなんて身の程を知りなさい!」

 

コイツ、顔は可愛いのになんて生意気なんだ、ナンパだなんてこっちから願い下げだ。

 

「それは自意識過剰だぞ」

 

「はぁ!?」

 

「顔は可愛いがアンタ胸はたいしたことないぞ」

 

 

ブチ!!

 

 

何かがキレる音がした、すると少女の顔がみるみるうちに怒りで真っ赤になった。

 

 

「ヤバ」

 

完全に怒らせた、謝ってもダメそうだな、どうしよう。

 

 

「タツミ、逃げるぞ!」

 

「わ、わかった!」

 

二人は一目散に逃げ出した、それを見て少女はさらに激怒した。

 

 

「コラー!!待てー!!」

 

 

少女は鬼の形相で追いかけて来た、捕まったらどんな目に遭うか火を見るより明らかだった。

 

 

「すげぇ怒ってる」

 

「後ろを見るな、全力で走れ!」

 

 

二人は無我夢中で走った、少女はまだ追いかけて来る、その最中とある人混みを見つけた。

 

 

「あの人混みに入るぞ」

 

「大丈夫かな?」

 

「一か八かだ!」

 

 

・・・確かにこのままでは追いつかれてしまう、捕まったらどんな目に遭わされるかわからない。

 

 

「行こう」

 

 

二人は人混みの中に潜り込んだ、窮屈で息苦しいがなんとか前に進むことができる、とにかく逃げ切ることに専念する。

 

 

少女は人混みにたどり着いたが二人を見失っていた、辺りを見回すも見つけることはできなかった。

 

 

「ちくしょう!!」

 

 

アタシの胸を小さいと言った奴をみすみす逃がしてしまった、徹底的にぶちのめしたかったのに。

 

 

「おーい」

 

「何!?なんだアンタか」

 

「ずいぶん機嫌悪そうだな」

 

「何でもないわよ」

 

「あ、そう」

 

「それよりもアンタ順調なの?」

 

「ああ、後数日で完了できるよ」

 

「そう、待ち遠しいわね」

 

「ああ、一仕事して稼がないと、今一文無しだからな」

 

「アンタこないだ臨時の収入が入ったって言ってなかったっけ?」

 

「そうだけど、それ全部バクチですっちゃったから」

 

「はぁ、何やってんの?」

 

「倍に増やせると思ったんだけどな、まいった、まいった」

 

「・・・アンタの辞書に後悔って文字ないの?」

 

「後悔?ないよそんなもの、私は後悔なんてしない、ひたすら全力疾走するだけさ」

 

「まぁ、アンタの好きにしたらいいわ、そのかわり仕事は」

 

「もちろんバッチリやるさ」

 

 

 

その頃タツミとギアは人混みから抜け出し人通りの少ない裏道にたどり着いていた。

 

 

「なんとか逃げ切ったな」

 

「ああ」

 

 

二人は全力疾走で駆け抜き汗だくで息を切らしていた、危機を乗り越え二人は安堵した。

 

 

「ふー助かった」

 

「助かったじゃねぇ、余計なこと言いやがって」

 

「ごめん、でも胸が小さいって言っただけであそこまで怒るとは」

 

「女には女にしかわからん苦悩があるんだよ」

 

「そうだね」

 

 

生意気な娘だったけど悪いことしたな、まぁ、もう会うこともないと思うけど。

 

 

「それにしてもずいぶんと寂れた所に来てしまったな」

 

「そうだね」

 

 

裏道は表通りと違ってすごく寂れている、帝都にこんなところがあったんだな。

 

 

「急いで戻ろう」

 

「戻るのはいいがまた面倒なことをおこすなよ」

 

「大丈夫だって」

 

タツミは後ろを振り返ってダッシュした、すると何かにぶつかった感触があった。

 

 

「きゃっ!」

 

 

タツミの目の前には尻もちをついた女子がいた、どうやらぶつかってしまったようである、それにしても・・・

 

「いたた」

 

 

 

娘は思いっきり尻もちをついて痛そうにしている、悪いことをしてしまった。

 

 

「言わんこっちやない」

 

「ご、ごめん」

 

「俺に謝ってどうするんだ、謝るのはその娘だろ」

 

「う、うん」

 

 

タツミは慌てて娘に謝った、娘はタツミを睨みつけている、仕方ないことある、タツミは謝ったがそのまま娘をジーと見つめていた、可愛いのもあったが別の理由もあったのである。

 

 

この娘の肌浅黒いな、この国の人じゃないな。

 

 

「私の肌そんなに変?」

 

 

 

タツミがジーと見つめているのを見て察したようである、タツミはまずいことになったと察した。

 

 

まずい、なんとかごまかさないと、何か、そうだ。

 

 

「ち、違うよ、君のおヘソが可愛いから思わず見とれてたんだ、肌は関係ないよ」

 

可愛いと褒めておけばなんとかごまかすことができるだろう、タツミはそう目論だがそれは浅はかであった。

 

「ど、どこ見てるのよ、変態!!」

 

 

娘は顔を怒りで真っ赤にしてタツミをさらに睨みつけた、タツミの目論は完全に裏目になった。

 

 

「お前馬鹿か、火に油を注いでどうする」

 

「そんなつもりは・・・そもそもそんなおヘソ丸出しの格好してたら嫌でも見えちゃうよ」

 

「この格好をしていた私が悪いって言いたいの!?」

 

「そ、それは・・・」

 

「お前しばらく黙ってろ、ややこしくなる」

 

「・・・わかった」

 

タツミは少しムッとしていたが余計なことを言ってしまったのは確かなので黙ってることにした。

 

 

 

「・・・ええとまぁ、いろいろすまなかった、コイツは馬鹿で考えなしで物事を言うが悪い奴じゃない、勘弁してやってくれ」

 

「・・・もういいわよ、私急ぐから」

 

「悪いな」

 

 

娘は不満そうな顔をしていたが文句は何も言わず立ち上がり、そのまま裏道の奥に歩いて行った。

 

 

「全くお前は」

 

「本当にごめん、それにしても、あの娘の肌」

 

「ああ、あれは南の異民族だな」

 

「南の異民族?」

 

 

ギアは説明した、南の異民族とは帝国のはるか南部に住んでいる者達である、何年か前に帝国と激しい戦争をして大敗し今は帝国の隷属状態にあるのである。

 

「そうなんだ」

 

「ああ、それにしても、何の用で帝都にいるんだ?」

 

「出稼ぎじゃないの?」

 

「言っただろう、隷属されているって、帝都に来てもろくな仕事にありつけねぇよ」

 

「そうか、なんだろう?」

 

「考えてもわからん、とにかくここから離れるぞ」

 

「わかった」

 

二人は首を傾げながら裏道を去って行った、今はさっきの少女に再会しないことを祈るばかりである。

 

 

 

その頃さっきの娘はさらに裏道の奥へ進んで行った、日光もほとんど照らさない寂れたところである、その先に男達がたむろしていた、彼らの皮膚は娘と同じ浅黒い色であった。

 

 

「遅いぞ、カーコ」

 

「ごめん、いろいろあって・・・」

 

「まあいい、ところで例の案件うまくいってるか?」

 

「ああ、だいぶ絞り込めた、だが範囲が広い、完全に絞り込めるまでもう少しかかる」

 

「急げよ、あんまりぐずぐずできないからな」

 

「ああ」

 

「その時が来たら一斉に仕掛けるぞ」

 

「ああ・・・なんだカーコ、そのツラ、不満か?」

 

「・・・これって私達絶対捨て駒だよね」

 

「だからどうした、わかりきってることだろ、俺達に選択の余地なんかねぇんだよ」

 

「それはわかってるけど・・・」

 

「だったらガタガタ言うな」

 

「カールセンさんのもとに行くというのもあったんじゃ・・・」

 

「・・・もう俺達とあの人とは歩く道は違うんだ、俺達はこの道をひたすら行くしかねぇんだ」

 

「・・・わかった」

 

 

そうだ、もうあの頃と違うんだ、あの頃に戻ることはできないんだ、俺達は足掻くことしかできないんだ、たとえどんな結末になっても後悔はしねぇ。

 

 

「お前達、情報をさらにかき集めるぞ、行け」

 

「おお」

 

 

男達は分散してそれぞれ街のあちこちに散って行った、その中にはさっきの娘もいる、表情は暗い。

 

 

選択の余地がないからといって無謀すぎるわよ、私達だけでなんとかなると思えない、あの殺し屋集団ナイトレイドに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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