末路を斬る(中編)
タツミとギアの二人は気持ちを切り替えて付き人の仕事をこなしていた、ギアはわずかながら不安を感じていたがタツミを信じることにしたのであった。
「荷物を馬車に乗せろ」
ガウリの指示で二人は馬車の上に載せていった、あまりの重さで馬車が少し重さで歪んでいる。
「大丈夫かな?えらいことになってるけど」
「大丈夫だ」
ガウリの言う通り馬車はなんとか前に進むことができた、かなりゆっくりであるが。
「では屋敷に戻るぞ」
「・・・こないだのように俺達は歩きで戻るの?」
「当然だ」
やっぱりか、こないだも買い物で馬車が重量オーバーになったんだから、今回もそうなるな。
「行くぞ」
「・・・はい」
ここから屋敷まで結構遠いんだよな、まぁ、仕方ないな。
馬車と共に屋敷に到着したタツミ達は買い物を屋敷の中に運んでいった、多少疲れていたが気合で乗り切ったのであった。
「終わりました」
「ああ、休んでいいぞ」
ガウリの許可を得て二人は与えられた部屋に戻って行った、今日の付き人の仕事は終わったのである。
「今日は疲れたな」
タツミはベッドに横になって天井を見つめていた、そしてここにいない二人のことを思い出していた。
サヨ、イエヤス、お前達は今どこにいるんだろうな、お前達のことだから野盗なんかにやられたりなんかしていないはずだ、もしかしたら帝都に到着しているのかな、でもこの広い帝都で二人を見つけるのは困難だ、旦那様は探してくれると言ったけどそう簡単にはいかないよな、とにかく俺は今の仕事を一緒懸命こなすだけだ。
コンコン
突然ドアをノックする音がした、タツミはドアを開けるとガウリが立っていた。
「どうしたんです?」
「・・・お嬢様がお呼びだ」
「は、はい、すぐ行きます」
タツミはアリアがいる大広間へ向かった、なんだろうと思いながらタツミは足を運ぶ、それとは別にガウリの様子がおかしかったような気がした、例えて言うなら罪悪感に満ちた表情であった。
「タツミ、お前も呼ばれたのか?」
「うん、そうだよ、ギアさんも?」
「ああ、いったいなんだろう?」
この時ギアは再び不安を感じていた、もう今日の付き人の仕事は終わったと思ったのだが、何なのだろうと。
「失礼します」
タツミ達は大広間のドアを開けて目の前の光景に驚いた、そこにはテーブルの上に山のようにご馳走が置いてあったのである。
「これはいったい?」
「あなた達のために用意したのよ」
「俺達のために!?」
付き人の仕事しかしていないのにここまでよくしてくれるなんてなんていい人なんだとタツミは感激した、だがギアは不安を感じていた。
「本当にいただいていいんで?」
「ええ」
アリアはにっこり微笑んだ、一見可憐な少女の微笑みなのだがギアは何か違和感を感じていた、それが何かなのかよくわからない、このまま食っていいのだろうか。
「いただきます」
タツミはためらうことなくご馳走を食べ始めた、あっという間にたいらげていく。
「おい、タツミ」
「すげぇ美味いよ」
「大丈夫か?」
「全然、食べないなら俺が全部食べるよ」
タツミの様子を見る限り何も入ってないようだな、俺の考えすぎか・・・
「食うに決まってるだろ」
ギアは目の前にあった分厚いステーキを素手でつかみそのままかぶりついた、肉汁がこれでもかとあふれ出ている。
「美味え、こんな美味い肉生まれて初めて食ったぞ!」
こんなご馳走を用意してくれたお嬢様を疑うなんて神経質になっていたな俺、タツミの純粋さを見習うべきだな。
二人がご馳走をたいらげている間にアリアはワインを持ってきていた。
「ワインもいかが、このワイン絶品で有名なの」
「ワインですか」
これだけのご馳走に酒なしは物足りない、ぜひいただきたい。
アリアは持っていたワイングラスにワインを注いで飲み干した。
「ああ、美味しい、私あまりお酒飲まないんだけどこのワインすごく美味しいわ」
アリアは至福の笑みを浮かべた、本当に美味しいのだろう。
「はい、どうぞ」
アリアはギアに別のワイングラスを渡した、そしてグラスにワインを目一杯注ぎ込んだ。
「さあ、どうぞ」
「では」
ギアはワインを一気に飲み干した、絶品というだけあって格段に美味い酒であった。
「こりゃ美味え、こんな美味い酒生まれて初めて・・・」
ワインを飲み干して感激した瞬間ギアはあるものを見て言葉を失ってしまった、そのあるものとは・・・
お、お嬢様の笑顔、歪んでいなかったか?例えるのならまさに邪悪な笑みだ、いったいあれは・・・
「どうしたの?」
「べ、別に・・・」
いつものお嬢様の顔だ、気のせいだったのか?
「タツミもいかが?」
「俺もいいの?」
「もちろんよ」
「でも、俺、酒そんなに飲んだことないんだけど」
「いいじゃない、今のうちにお酒を飲めるようになっておいた方がいいわよ」
「確かに、じゃあ、いただきます」
タツミはアリアからワインを注がれて一気に飲み干した。
「美味い!」
「いい飲みっぷりね」
「どうもどうも」
ワインを飲み干してタツミの顔は赤くなっていた、それを見たアリアは次の瞬間邪悪な笑みを浮かべた、それを見たギアは絶句した。
気のせいじゃなかった、あの邪悪な笑みは気のせいじゃなかった、いったいどうなって・・・
ギアは突然強烈な眠気に襲われた、ふらついて立っていることもままならない。
ね、眠い、たった一杯で酔うわけが・・・
「効いてきたわね」
アリアの一言でギアはワインに何か入れられたと察した、今にも眠気で倒れそうである。
「な、何を入れた?」
「眠り薬よ」
「い、いったいどういう・・・」
ギアはそのまま眠りに落ちてしまった、眠りに落ちる寸前後悔した、やはりこの屋敷はやばいところだったと。
「ギアさん、酔っちゃたの・・・」
タツミもすぐさま眠りに落ちてしまった、ただギアとは違い後悔の念は一切なかった、この時は。
アリアは二人が眠ったことを確認すると今までのうっぷんを晴らすかのように暴言を吐いた。
「全く、こんなイナカモノなんかに愛想を振り向かなくてはならないなんて自分を褒めたいわ」
「ですが、お嬢様」
「わかってるわよ、そうしないと逃げられるということを、だから我慢してきたんじゃない」
「まぁ、それも今日でおしまいでさぁ」
「そうね、ようやく趣味の時間を満喫できるわ」
そうよ、そのためにこいつらを我慢して飼っていたんだから目一杯楽しまないと。
「二人を倉庫に運んで」
「はっ」
ガウリ達はタツミとギアを担いで倉庫へ向かった、タツミを担いだガウリの表情は苦悩に満ちていたのであった。
「今までいい思いさせてあげたのだから今度は私を楽しませてよねイナカモノ」
アリアの表情はまさに邪悪そのものであった、これまでの可憐な少女の面影はどこにもなかったのである。