戦闘狂を斬る
6月8日
帝都の街中に一つの貸本屋がある、貸本の種類の豊富さで評判の貸本屋である、その店はラバの店であり、その店の地下室はナイトレイドの隠れ家になっている、その地下室にラバとレオーネとイエヤスがいる。
「案の定サヨちゃんの手配書が出ちまってたな、しかも帝具もばれてる」
ラバはサヨの手配書を手に持ち眉をひそめている。
「あいつ、いろいろ手を打ったんだけどな」
「帝国はそう甘くはないということさ」
ラバとイエヤスの話の最中、レオーネは酒を飲んで上機嫌だった。
「いやあー、昼間から飲む酒は最高だね」
すっかり酔っ払ってるレオーネを見てイエヤスは。
「姐さんくつろぎすぎ・・・」
ア然としているイエヤスをよそにラバは。
「にしても特殊警察イェーガーズか・・・」
ラバの表情が一気に険しくなった。
「エスデスだけでも脅威なのに、さらに六人の帝具使いか・・・」
ラバはこれ以上なくうんざりしている。
「にしても帝国にはそんなに帝具があるのか、三獣士のもいれたら9つだろ、エスデス一人にそんなにたくさんまわしてくれるのか?」
「エスデスは特別なんだよ、強さもそうだが奴は政治には全く興味はないから大臣もエスデスに大盤振る舞いしてくれるんだよ」
「持ちつ持たれつってやつか」
「ああ、最悪のな」
二人はうんざりしているとレオーネが。
「何辛気臭い面してんだよ、飲んだ、飲んだ」
レオーネはさらに酔っ払っていた。
「話は変わるが、明日、そのエスデスが武術大会を開催するらしいぞ」
「本当か」
「ああ、優勝者には賞金が出るらしいぞ」
「マジ!?」
「ああ、村への仕送り増やせるんじゃないのか」
「よっしゃー!!賞金いただきだぜ」
イエヤスはテンションが一気に上がった。
6月9日
「・・・ここは?」
エスデスは自分がどこにいるのか一瞬わからなかった。
「お目覚めですね、隊長」
ランはにっこり微笑んで答えた。
「そうか、武術大会の最中だったな、あまりのつまらなさに居眠りをしてしまったんだったな、今はどのあたりだ」
「はい、今決勝戦の最中です」
「ほう、片方はまだ少年だな」
その少年はイエヤスである、イエヤスが圧倒している。
「彼、なかなかの逸材ですよ」
「そうだな・・・」
エスデスはそっけなかった。
「おや、興味がわきませんか?」
「ああ、けっこう強いんだがな、全く興味がわかん」
エスデスは大きなあくびをした、本当に興味がないようだ。
「一応彼のことは調べておきますか」
ランはイエヤスに何かを感じた、そうしているうちにイエヤスが勝った。
「終わったな、奴に賞金を渡してさっさと帰るぞ」
「はい」
二人が試合場に向かおうとすると突然乱入者が現れた。
「おい、飛び入り参加いいか?」
突然の乱入者に観客はざわついている、その乱入者は18ぐらいの黒髪の女である。
「おい、何言ってるんだよ、そんな勝手・・・」
イエヤスが女に文句を言おうとしたとき。
「いいだろう、許可する、つまらない大会もこれで少しは面白くなるだろう」
エスデスは笑顔で許可した。
「はあ!?そんな理不尽な・・・」
イエヤスは抗議するも。
「こいつに勝てば賞金を倍にしてやる、それなら文句ないだろう」
「・・・わかった」
完全に納得していないが賞金倍でとりあえず承諾した。
「とにかくこいつに勝てば賞金倍だ」
イエヤスは気を取り直して構えた、女は隙だらけであった。
「なんだこいつ隙だらけだよくでかい口たたけたな」
イエヤスがむっとしていると女が口を開いた。
「一発打たせてやる、来な」
女の挑発にイエヤスは頭に血が上り、力いっぱい女の顔面に鉄拳を食らわした。
「どうだ!」
手応えを感じイエヤスは勝ちを確信した、だが、女は堂々と立っている。
「なかなかやるじゃないか」
女はケロッとしている、それを見てイエヤスは驚愕した。
「ば、ばかな、手応えはあったのに・・・」
「じゃあ、次は俺の番だ」
動揺しているイエヤスの腹に掌底を打ち込んだ、イエヤスは観客席まで吹っ飛び気絶した、観客はシーンとなった。
「姐さん・・・」
試合を見ていたラバとレオーネも呆然としている。
「ああ、あいつに落ち度はなかった、あれを食らってなんともない奴なんてそうはいない」
レオーネは何とか冷静に分析した、それでも女の強さに多少は動揺していた。
「やるじゃないか、お前名は?」
「カーラだ」
「ではカーラ、お前に賞金をやろう」
「金はいらん、その代わり一つ望みがある」
「なんだ?」
「あんたと闘いたい」
カーラの言葉に観客は騒然となっている、ラバとレオーネは青ざめている。
「な、何考えてやがるんだあいつ、死にたいのか?」
ラバは動揺を隠せない。
「少なくとも奴はそのつもりは全くない」
レオーネはカーラの強さをかなり高く見ている。
「あなた本気ですか、冗談だったじゃ済まされませんよ」
普段は冷静なランも今は多少動揺している。
「ああ、十倍本気だ」
カーラには微塵も迷いはない。
「では相手をしてやるぞ」
エスデスはすでに臨戦態勢を整えている。
「今やるのもいいが、今はやめとく、戦う日程は後日俺から知らせる」
カーラの言葉にエスデスは肩透かしをくらい顔が引きつっている。
「・・・貴様、それで済まされると思っているのか」
「どうせやるなら大々的に帝都中に宣伝したほうがいいだろ」
カーラの不敵な態度に観客はさらに青ざめている。
「じゃあそういうことだ、またな」
カーラが立ち去ろうとしたその時、エスデスはパチンと指を鳴らした、その瞬間、カーラの頭上に巨大な氷が現れた、そのまま落下した。
ガシャ!!
誰もがカーラが押し潰されたと思った、だが、氷はひび割れて粉々に砕け散った、カーラはアッパーで氷を砕いた。
「・・・」
エスデス以外の人間は驚きのあまり言葉を失った。
「焦るなよ、そう遠くない日にやれるさ」
カーラは余裕しゃくしゃくだった。
「いいだろう、その日を楽しみにしてるぞ」
カーラはそのまま闘技場を後にした。
エスデスの表情はまさに狂喜であった、まがまがしい気がエスデスからあふれている、ラバとレオーネはそれを感じ身動きできなかった。
「・・・絶対動くなよ」
「わかってるよ、動きたくても動けねえ」
二人から大量の汗があふれている。
「にしてもあの女何者だ?」
「さあね、なんにせよ俺達では手に余るよ」
「とにかくエスデスがここからいなくなったらイエヤスを救助して退散だ」
「ああ、長居は無用だ」
二人はイエヤスを救助して目立たないように退散した。
ランはこの衝撃の光景を目の当たりにしてイエヤスのことはすっかり忘れてしまっていた。
夜の帝都の郊外、その周囲には誰もいない、そこにカーラは歩いていた。
「いい加減出てこいよ、いるんだろ」
カーラが振り向くと、一人の人間が現れた。
「やっぱり気づいていたわね」
イェーガーズの一人、スタイリッシュである。
「アナタを見てビビッときたのよ、最高の素材だってね」
「素材?」
「ええ、隊長に全く臆さず、その強さ、まさに究極の素材よ」
「冗談は顔だけにしておけ」
「まあ、失礼ね、でもそのふてぶてしさ悪くないわよ」
「で、俺にどうしろと?」
「だから、アタシの研究素材になってほしいのよ」
「断る」
「でしょうね、だから力ずくでいくわよ」
スタイリッシュが指を鳴らすと、奇抜な格好をした集団が現れた。
「なんだこいつら?」
「チームスタイリッシュ、アタシの帝具で強化した兵隊よ」
「・・・本当にお前趣味悪いな」
カーラは顔を引きつっている。
「大きな口を言えるのも今だけよ、チームスタイリッシュの皆さん熱く激しく突撃よ」
スタイリッシュの号令で一斉にカーラに突撃した。
数分後、チームスタイリッシュはスタイリッシュと数人の兵を残して全滅した、辺りには強化兵の死体がゴロゴロ転がっている、その中には特殊兵であるカクサンとトビーもいた、トローマはたった今カーラに首を絞められ首の骨をへし折られた、スタイリッシュは青ざめて呆然としている、呆然としているのは兵隊が全滅させられただけではなかった。
「・・・なんでアンタなんともないの、アタシが作った麻痺毒辺り一面にばらまいたのに」
スタイリッシュは悪夢を見ているようであった。
「生物である以上効かないわけが、まさか帝具?」
「いや、おもいっきり効いたぜ」
「それってどういう・・・」
スタイリッシュはなにかをひらめいた。
「カーラ・・・その名前どこかで見覚えがあると思ってたのよね、そういえばアンタ彼に面影が・・・」
「それ以上言うな、ぶっ殺すぞ!」
カーラの表情は突然険しくなった。
「・・・とにかく今日のところはアタシの負けね、でもいつかアンタを素材にしてあげるわ」
「いつでも来な、返り討ちにしてやる」
スタイリッシュに勝ち誇るとカーラの姿は闇夜に消えて行った。
「ウフフフフ、見てなさい、次はもっとスタイリッシュにするから」
その夜、スタイリッシュの高笑いがいつまでも続いていた。
今回はオリジナルキャラをメインに出しましたが、今までで一番自信がありません、オリキャラは出すのに勇気がいります、カーラの声は沢城みゆきさんをイメージして見てください。