サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第三十八話

   墓参りを斬る

 

 

7月17日早朝

 

ナイトレイドのアジトから少し離れたところに丘がある、そこに小さな石が置かれている、その石は墓標である、サヨの幼なじみのタツミの、前のアジトから墓標だけ持ってきたのである、サヨはタツミの墓参りをしていた。

 

 

「・・・」

 

 

サヨはしゃがみこんで手を合わせて黙祷している、サヨは村から出て間もない頃を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

サヨ、タツミ、イエヤス、三人は意気揚々と帝都へ向かっている。

 

 

「帝都か、俺達田舎者の憧れの地、ロマンを感じるぜ」

 

 

タツミは笑顔で大はしゃぎしている。

 

「ああ、帝都で大儲けしようぜ」

 

イエヤスも興奮せずにはいられなかった。

 

 

「二人とも、あんまりはしゃがない、旅は始まったばかりよ」

 

サヨは二人に注意する、幼いころから続いてきた光景である。

 

 

「けど楽しみだぜ、帝都にはあかぬけた姉ちゃんがいっぱいいるんだろうなあ・・・」

 

 

ボガン!!

 

 

イエヤスはサヨに殴られた、それを見てタツミは笑っている。

 

 

「痛えな、何すんだよ」

 

「あなた下品よ、私達は帝都へ遊びに行くんじゃないんだから」

 

「わかってるよ・・・」

 

 

イエヤスは頭をさすりながらつぶやいた。

 

 

「帝都へ着いたら兵舎へ行かないとな、俺達の腕を見せつければいきなり隊長ってことも・・・」

 

タツミは脳天気に語っているとサヨは難しい顔で。

 

 

 

「何言ってるのそんな都合良くうまくいくわけないでしょう」

 

 

「けどよ時間ないんだぜ、次の冬まで金送らないとまた村人が飢えで死んでしまうぜ」

 

 

タツミの言葉にサヨは言葉が詰まった、確かに時間ないのも事実よね・・・

 

 

「だったら急いで帝都へ向かおうぜ」

 

 

イエヤスは意気込んで駆けだした。

 

 

「ちょっと、一人で先走らないで、あなた方向オンチなんだから」

 

「俺達も行こうぜ」

 

「うん」

 

タツミとサヨも駆けだした。

 

 

「俺達三人いればどんな困難も乗り越えられるさ!!」

 

 

この時のタツミの笑顔はとても輝いていた・・・

 

 

 

 

 

 

・・・しばらくして夜盗に襲われて散り散りになっちゃったのよね、そして帝都に到着して・・・

 

 

タツミはアリアの手でオブジェにされて殺された・・・

 

 

サヨの目から涙が浮かんだ、サヨはすぐ涙を拭った。

 

 

泣いちゃダメ、泣いてもタツミは戻って来ないんだから・・・

 

 

その時誰かが近づいてきた、サヨは後ろを振り向いた、そこにはシェーレがいた。

 

 

「シェーレ、どうしたの?」

 

「はい、お花を供えようと思いまして」

 

シェーレはタツミの墓標に花を供えた、そしてもう一つの墓標に、アカメの墓標にも。

 

 

「ありがとう、タツミの花も用意してくれて」

 

「どういたしまして」

 

 

二人はあらためて二人の墓標に手を合わせた。

 

 

「・・・」

 

 

シェーレは何か考えている、何?とサヨが聞くとシェーレは。

 

 

「タツミと会いたかったなあ、と思いまして」

 

「そうね、シェーレ、タツミのこと気にいったと思う」

 

「本当に残念ですね・・・」

 

 

「もしタツミがナイトレイドに入ったら絶対戦力になったと思う」

 

「サヨがそこまで言うんですからすごく強かったんですね」

 

 

「うん、ハイドさんが言っていたけどタツミは鍛えれば鍛えるほど強くなる伸びしろの塊だって」

 

 

「そうですか・・・ブラートなら彼のこと気に入ったと思います、そしてブラートの指導の元ならとても強い戦士になれたでしょう」

 

「うん、そうね・・・」

 

サヨとシェーレもタツミが生きていればと強く想うのであった。

 

 

サヨはアカメの墓標にも視線がいった、私がもっと強かったらアカメの足を引っ張ることがなく死なずにすんだのに・・・でもアカメの分まで仕事をこなさないと、サヨは心のなかでつぶやいた。

 

 

シェーレはアカメの墓標を見てアカメに出会ってしばらくしてからの事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・アカシタさん?」

 

 

「私はアカシタじゃない、アカメだ!!」

 

何度も名前を間違うシェーレにアカメは少しムッとした。

 

 

「あわわ・・・すいません」

 

シェーレは慌て謝った。

 

 

「お前、物忘れ激しすぎるぞ」

 

「本当にすいません」

 

シェーレはひたすら平謝りしている。

 

 

「お前、殺しの仕事の時は冷静沈着なのにな」

 

「はい、仕事の時は頭がクリアになるんです」

 

「まあ、仕事の時に取り乱すよりはマシだが」

 

「すいません」

 

 

再度シェーレは謝った。

 

 

「なんとか治そうと努力はしているのですが・・・」

 

シェーレは天然ボケを直す100の方法の本をアカメに見せた。

 

 

「こんなものおもしろ半分で書かれた本だぞ、あてにはならん」

 

「そうなのですか?」

 

「だいたいお前、本の内容覚えられるのか?」

 

「それは・・・覚えていません・・・すいません」

 

 

シェーレは申し訳なさそうに謝った。

 

 

「こんなもの必死で覚えるよりもお前は今のお前であり続けるべきだろ」

 

「今の私?」

 

 

シェーレはアカメのいうことがわからなかった。

 

 

「お前はナイトレイドのなかで誰よりも優しいんだから、その優しさを大事にしろ」

 

「優しさですか?」

 

「今苦しんでいる人達を救いたい、その気持ちがあるから過酷な殺し屋稼業をつとめることができるのだろう」

 

 

「ええと、私、難しいことはよくわからないんですけど・・・」

 

「とにかくお前は今のお前のままでいろ」

 

 

「は、はい、わかりました、アカアシ」

 

シェーレは笑顔で答えた、再び名前を間違えたことに気づいていないが。

 

 

「・・・まあ、お前のペースで頑張れ」

 

アカメは顔を引きつりながらもこれもシェーレの個性だと自分に言い聞かせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか人の名前は間違えずに覚えることができました、これもアカメのおかげです、私、これからも頑張りますから安らかに眠ってくださいアカメ・・・」

 

 

シェーレはアカメの墓標に誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりにタツミを出しました、やっぱり、皆さんはタツミがいないナイトレイドは違和感あるでしょうか、この話の主役はサヨなのでタツミがいると目立たないので、これからも応援よろしくお願いします。

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