初陣を斬る
7月21日午前
大臣のおいを仕留めてから二日がたった、鞭の帝具は革命軍本部に送られることになった、ナイトレイドのアジトは相変わらず賑やかである。
「待ちなさい、チェル、よくもアタシをタヌキに変化させてくれたわね」
「いいじゃない、タヌキ可愛いんだし」
マインがチェルシーを追いかけている、いつもの光景である、チェルシーの名称はあっというまに馴染んでいった。
ガイアファンデーションの新たに発見した能力、コンパクトを使うことで自分以外にも変化させることが出来る能力、ただし、欠点もある、その能力で変化させたら声は変わらないこと、もう一つはいつ変化が解けるかわからないことである。
「なんだ、また、やり合っているのか」
ナジェンダがタバコをくわえたままやってきた、そしてそのまま椅子に座った。
「今日は仕事の依頼はないな」
ナジェンダはタバコをふかしながらくつろいでいる。
「・・・」
サヨは無言でナジェンダを見つめている。
「どうした?」
「は、はい、ボスって二十歳で将軍になられたのですよね」
「ああ、正確には二十歳と10ヶ月だ」
「ボスの初陣はいくつだったのかなあって思いまして」
「15になって間もない頃だ・・・いい機会だ話してやろう」
サヨは楽しみになってきた、ボスの初陣どんなんだろう・・・
ナジェンダが軍学校を卒業して前線に配属されることになった、ナジェンダと新兵達は配属先の隊長と顔合わせすることになった。
「新兵諸君、俺はこの大隊を指揮するロクゴウだ、以後よろしく頼む」
「了解!!」
新兵は力一杯応答した。
そのあと新兵は武器の手入れをしたり、雑談したり、緊張して震えたり、いろいろだった。
ロクゴウはその新兵を観察している、新兵の力量を見極めるためである、その中の一人にロクゴウは注目した。
「たしかあれは・・・」
その新兵の名はナジェンダであった、ナジェンダは首席で軍学校を卒業した逸材であると聞かされている。
ナジェンダは鍛練していた、なかなかのキレである、キレは・・・
ナジェンダはロクゴウの視線に気づき敬礼した。
「こ、これはロクゴウ隊長」
「そう固くなるな、続けろ」
「は、はい」
ナジェンダは鍛練を再開した、ロクゴウはナジェンダの鍛練の感想を言った。
「なかなか筋はいいな」
「あ、ありがとうございます」
隊長が褒めてくれた、ナジェンダは喜んでいるとロクゴウは。
「だが、型がきれい過ぎるな、それでは敵に読まれてしまうぞ」
型がきれい過ぎる?ナジェンダはロクゴウの言葉の意味をイマイチ理解できなかった。
それから数日後、敵の部隊が進行しているとの報告を受けたロクゴウは大隊に臨戦態勢を整えさせた。
ナジェンダ達新兵も準備は終わっていた、ナジェンダは緊張していた、訓練は多く行ってきたが実戦は初めてである、本物の殺し合いが始まるのである、ナジェンダは自分自身に檄をいれた、しっかりしろ、私、と。
「敵部隊が来るぞ!!」
ロクゴウの号令で帝国部隊は前進した、そして、両軍は激突した。
当たり一面に血しぶきと断末魔の悲鳴が上がった、それにともない死体が量産されていった、まさに地獄絵図である。
ナジェンダも敵兵と刃を交えていた、ナジェンダはキレのある動きで敵を追い詰めていった。
「いける!!」
ナジェンダは斬りこんで行った、だが敵兵はあっさり防御し反撃に転じた、ナジェンダはあっという間に追い詰められた、ついには吹っ飛ばされて地面に倒れた。
ナジェンダはロクゴウの言葉を思い出していた、 型がきれい過ぎるな、敵に読まれてしまうぞ
・・・私は馬鹿だ、ロクゴウ隊長の言葉の意味を理解できなかったなんて・・・ナジェンダは悔しさのあまり歯ぎしりをした。
敵兵はナジェンダに止めを指すべく駆け出した。
・・・私はここで死ぬのか?初陣で・・・ナジェンダは諦めかけていた、だが・・・いや、私はここで死ぬ訳にはいかない。
ナジェンダは地面を握りしめた、そして掴んだ土を敵兵の顔面に投げつけた、土が敵兵の目に入り敵兵は立ち往生している、ナジェンダは剣を握りしめて敵兵に向かって行った。
ザグ!!
ナジェンダの剣は敵兵の胸を貫いた、大量の血が吹き出した、そしてそのまま敵兵は息絶えた。
・・・
ナジェンダは放心状態であった。
・・・私は人を殺し・・・
ナジェンダは血まみれの自分の手をただ見てることしかできなかった、すると別の敵兵がナジェンダに斬りかかってきた。
しまっ・・・
ナジェンダは死を覚悟した、その時敵兵が激しく飛ばされた、ナジェンダは訳がわからなかった。
「大丈夫か、ナジェンダ!!」
ロクゴウが鞭で敵兵を仕留めてナジェンダの元へ駆け寄った。
「は、はい・・・」
ナジェンダは必死に返答した。
「ボサッとするな、敵は待ってはくれないぞ」
「す、すいません・・・」
ナジェンダはロクゴウに醜態を見せてしまって肩を落とした、ロクゴウは敵兵の死体を見て。
「敵を仕留めたか」
「・・・はい」
「恐いか、初めて人を殺して」
「・・・はい」
ナジェンダはつい本音を漏らした、ナジェンダはその瞬間しまったと思った。
「そうだな、そうだろう、俺も初めて敵を殺した時は震えたぞ」
ロクゴウ隊長が震えた!?ナジェンダはとても信じられなかった。
「戦にかっこよさなどない、殺す奴と殺される奴がいる、そういう狂気の世界だ」
ロクゴウの言葉には重みがあった、数々の修羅場をくぐり抜けた兵士の言葉である。
「それでも戦場に来た以上、死に物狂いで戦い生き残らなければならん、ナジェンダ、戦えるな?」
「はい!!」
「いい気迫だ、来い」
「はい!!」
ナジェンダはその後も必死に戦った、さらに5人の敵兵を倒したのであった。
戦の勝敗は帝国の勝ちだった、ロクゴウが敵の指揮官を倒し、一気に勝敗を決したのである。
「・・・」
ナジェンダは辺りを見回した、大勢の味方の死体が転がっていた、その中にはナジェンダの知り合いもいた。
これが戦・・・戦いが始まる前私はかっこよく戦おうと浮かれていた・・・だが、それは愚かな戯言だった・・・
ナジェンダは現実を目の当たりにして自分の愚かさを恥じていた。
「なんとか生き残ったなナジェンダ」
ロクゴウが話しかけてきた、ナジェンダは慌てて敬礼をした。
「は、はい」
「初陣は死亡率が高い、よく生き残った」
「ありがとうございます」
「少しはマシな顔になったな、だが、まだまだだ」
「はい、鍛練に励んで強くなります」
「よし、俺がしごいてやる、覚悟しておけ」
「よろしくお願いします」
私は弱い・・・だが、私は強くなる・・・帝国のために戦う、ナジェンダは心の中で誓うのであった。
「ボスも最初は弱かったんですね」
「当然だ、最初から強い者などいない」
「そしてそれから強くなっていずれは将軍になるんですね」
「その道のりは非常に険しいものだったが」
「ところで、ロクゴウ隊長はそれからどうなったのです」
「ああ、間もなく将軍に昇格した」
やっぱり・・・ボスがその人を語る時、熱がこもっていたからすごい人だと思ってたけど。
「ねえ、ボスはそのロクゴウって人好きだったの?」
チェルシーが突然話に割って入ってきた、その瞬間ラバの顔が真っ青になった。
「いや、尊敬はしていたがそういう感情はなかった」
それを聞いてラバは心から安堵した。
「現在も帝国にいるのですか?」
「・・・いや、ロクゴウ将軍は帝国を抜けて革命軍に合流することになっていた」
「なっていた?」
「その後ロクゴウ将軍は消息を絶ってしまった、おそらく帝国の追っ手に討たれたのであろう」
「残念ですね、心強い味方になったはずですのに・・・」
「ああ、本物に残念だ」
ナジェンダは心の底からロクゴウを惜しんでいた。
お前は自分が信じた道を進め
ナジェンダはロクゴウの言葉を思い出していた。
ロクゴウ将軍、私は私の道を歩みます、どれだけ困難な道だとしても・・・
ナジェンダは改めて革命の達成を決意するのであった。
今回はナジェンダの初陣を書きました、15歳のナジェンダはどのような顔つきなのでしょうか、きっと可愛いでしょう。