記憶を斬る(前編)
ナイトレイド一同はナジェンダの昔話で盛り上がっていた、そんな中ラバはふと思っていた。
そういやナイトレイドが活動を開始してもう10ヶ月か・・・あんなこともあったな・・・
これはナイトレイドが開始して間もない頃の話である。
帝歴1023年9月
帝都は連日すごい賑わいである、いろいろな人が行き交っている、そのなかで目を輝かせキョロキョロしている少女達がいる。
「ふええええ・・・これが帝都・・・大都会だなぁ・・・」
「ほんとすごいよ、宿屋と道具屋しかない私達の村とは大違いだよ」
「ファル、冒険者に武器屋もないと言われたのトラウマになっていましたから」
「うっさい、ルナ」
この少女達は田舎から帝都に出稼ぎにやってきたのである、ピンクの髪の毛の少女はエア、青の髪の毛の少女はルナ、黄色の髪の毛の少女はファルである。
「はしゃぐ気持ちわかるけどそろそろ行こうか」
「は、はい」
この青年の名はバック、少女達の主人である、バックは繁華街へと案内した。
「じゃあ予算あげるから服買っておいで、働くためのいい経験になるから」
「はいっ、ありがとうございます」
バックはエア達に予算を渡した、そして、エア達は繁華街に足を運んだ。
「どこから廻ろうかな」
「店が多すぎて迷っちゃうよ」
「とりあえず目の前の店へ参りましょう」
エア達はいろいろな店でいろいろな服を試着した、見たこともないきれいな服ばかりである、三人は時間を忘れるほど楽しかった、その時は・・・
「すごく楽しかったね」
「うん、いっぱい買っちゃた」
エアとファルは買い物をすっかり満喫していた、そのなかでルナは。
「でも、ただ普通に買い物しただけです・・・」
ルナは何か思うところがあった。
「えっ?だってバックさんは好きに買い物しておいでって言ってたじゃない」
「それはそうですが・・・この買い物はテストかも知れません」
「テスト?」
エアとファルは訳がわからずキョトンとしている。
「つまり、この買い物はどれだけ上手に買い物が出来るか見極めるのが目的かもしれないのです」
その瞬間、二人から笑みが消えた。
「ありえるかも・・・」
「どうしよう・・・考えなしで買っちゃた・・・」
慌てる二人を見てルナは。
「落ち着いてください、そうとは限りません」
「でも、そうかもしれないし・・・いまさら返品とか出来ないよね・・・」
「たとえそうだとしてもバックさん怒ることないんじゃないかな?」
エアの言葉に二人はなるほどと思ったが。
「だけどやっぱりイナカモノだなって思われるのもしゃくだな」
「そうですね・・・」
ファルとルナが困っているとエアが。
「ねえ、骨董屋さんに行ってみない?」
「骨董屋?」
「バックさん言ってたじゃない、この帝都では昨日までのがらくたが今日ではお宝になるって」
「いいじゃん、行こうよ」
ファルは乗り気であるがルナは。
「でも、素人の私達では見分けがつきません」
「いいじゃん、行ってみるだけでも」
「それにもし掘り出し物を見つけることが出来たらバックさん褒めてくれるかも」
行く気満々の二人を見てルナは。
「そうですね、駄目元で行ってみましょう」
「じゃあ、レッツゴー!!」
「骨董屋さん楽しみね」
三人は骨董屋へ足を運んだ、そして骨董屋へ到着した。
「骨董屋さんにしては大きい・・・」
「さすが帝都」
「二人とも急ぎますよ」
三人は骨董屋へ入って行った、中はいろいろなものであふれていた。
「すごい・・・見たことないものばかり」
「私にはがらくたにしか見えないけど」
「丁寧に調べてください、壊したら弁償させられますよ」
「う、うん」
三人は掘り出し物がないか調べ始めた、だが、これといってめぼしいものはなかった。
「見つからないね」
「掘り出し物なんて簡単には見つかりませんよ」
エアとルナが調べているとファルは。
「こっちに地下室あるよ、ここも調べようよ」
「でも勝手に入って大丈夫でしょうか?」
「でも、店のおじさん居眠りしてるよ」
「ちょっとくらい大丈夫だよ」
「行って見ようよルナ」
「そうですね」
三人は地下室に降りていった、地下室は埃まみれであった。
「すごいね、ここ」
「でも、お宝ありそう」
「二人とも早く調べますよ」
三人は地下室をくまなく調べた、それでもめぼしいものはなかった。
「見つからないね・・・」
「やっぱりそう甘くないです」
「チェッ、骨折り損のくたびれもうけかよ」
ファルは壁にもたれた、すると壁が突然崩れ落ち、ファルはあおむけに倒れた。
「大丈夫?ファル」
「いてて、大丈夫、大丈夫」
「これは・・・隠し部屋ですね」
穴が空いた向こう側には部屋が続いていた。
「ねえ、行って見ようよ」
「うん、行こう、行こう」
「仕方ありません、とことん付き合います」
三人は隠し部屋の奥へ足を運んだ、中はさらに埃まみれであった、いろいろなものがあったが掘り出し物とは思えなかった。
「ないなあ・・・」
「もう、諦めましょう、これ以上遅くなるとバックさんに怒られます」
「待って、もう少し・・・」
エアは一生懸命辺りを調べた、するとエアは古びた箱を見つけた。
「ねえ、この箱どうかな?」
「埃まみれだな、この箱・・・」
「とにかく開けてみましょう」
三人は箱を開けた、すると中からとてもきれいな三つの腕輪が入っていた。
「うわあ・・・とてもきれい」
「こりゃすごいよ、お宝だよ」
「はい、私もドキドキが止まりません」
三人は腕輪をとても気に入ったのであった、それぞれ赤、青、黄色の腕輪で構成されており、大きな宝玉が埋め込まれている、安物などではなかった。
「ねえ、どの腕輪気に入ったの?私は一目見て気に入ったけど」
「へえ、私もそうだけど」
「私もです」
「じゃあ、気に入った腕輪を指そうよ」
「いいよ」
「それでは・・・」
三人は一斉に指を指した、エアは赤、ルナは青、ファルは黄色の腕輪を指した。
「三人別々になった」
「うまい具合にバラけた」
「喧嘩にならずにすみました」
三人はちょうどうまい具合に好みが分かれて安堵した、早速三人は腕輪を腕に身につけた、腕輪のサイズは少し大きくブカブカしている、それでも三人はとても喜んだ。
「すごくきれい・・・」
エアは腕輪を見てうっとりしている。
「かっこいい!!」
ファルは大はしゃぎでポーズを決めている。
「私はオシャレにあまり興味はありませんが、この腕輪は本当にきれいです」
ルナは腕輪に見とれていた、三人は腕輪を心から気に入った。
「ねえ、この腕輪買おうよ」
「うん、これ以外ないよ」
エアとファルは大はしゃぎしているが、ルナは心配そうにしている。
「でも、これだけの一品、残りのお金で買えるのでしょうか?」
「・・・そうね」
「絶対高いよ・・・」
エアとファルは肝心なことに気づいて意気消沈している。
「でも絶対諦めたくない!!」
「私もだよ!!」
二人は声を荒げた、腕輪を諦めたくない気持ちがひしひしと現れていた。
「私も同じ気持ちです・・・私に店主の人との交渉任せてくれませんでしょうか?」
「一人で大丈夫?」
「私達も一緒に行った方がいいんじゃないの?」
二人は心配そうにルナを見つめている。
「いえ、三人で行けば収拾がつかなくなるかもしれません、まず私が交渉します」
二人は三人の中で一番冷静なルナが交渉した方がいいかもしれないと思った。
「うん、わかった、ルナに任せる」
「頼んだよ」
二人はルナに激励をして送った、そしてルナは店主と交渉した・・・
「ダメだ、話にならねえ」
「ですがお金はこれだけしか・・・」
「これっぽっちじゃな」
交渉は難航していた、ルナに焦りの色が出てきた。
どうしましょう・・・このままじゃ腕輪を諦めることに・・・そんなの絶対嫌です・・・なんとかしないと・・・
ルナは全身全霊で今一度お願いした、腕輪に念を込めて・・・
「このお金で売ってください!!」
三人は骨董屋を後にしていた、腕に腕輪を身につけたまま。
「いやあ、本当によかった、あのお金で買えて」
「本当だね、ルナに任せてよかった」
二人は大喜びである、だが。
「・・・それはどういたしましてです」
ルナは疲労困憊であった。
「大丈夫?」
「いくら全身全霊で交渉したからって・・・ルナ、体力なさすぎだよ」
「すいません・・・」
ルナは歩くので精一杯だった。
「でも、ルナのおかげで腕輪買えたんだし」
「そうだね、ルナ、本当にありがとう」
「いえいえ・・・あれ!?」
ルナは何か異変に気づいた。
「どうしたの?」
「私の腕輪の宝玉が・・・」
ルナの腕輪の宝玉が真っ黒になっていた、きれいな青であったが。
「な、なんで・・・」
ルナは悲しさで涙目になっている。
「どうなってるの!?」
「最初は青だったはずだけど」
二人にもまったくわからなかった、ルナは涙をボロボロこぼした。
「せっかく私の物にできたのに・・・」
悲しむルナを二人は励まそうとした。
「だ、大丈夫だよ、ルナ」
「そうだよ、そのうち元に戻るよ」
二人の励ましを聞いてルナは。
「・・・とにかく今はバックさんのところに戻りましょう」
「そうだね・・・」
「もうすぐ夕方だし・・・」
二人はルナを心配していたが急いでバックの元へ戻らなくてはならなかった。
「・・・明日から大忙しね」
「そうだね」
「・・・」
三人はこの時これから自分達に何が起こるのか想像もしてなかった。
今回は三人娘が主役のストーリーです、ナイトレイドが活動開始して間もないという設定にしました、次回も応援お願いします。