第五十話
誤算を斬る(前編)
突然の味方の訪問・・・一体なんだろう、ただ事ではないような気がする・・・とにかくその人に会えばわかるわね。
私達は会議室に移動した、しばらくして味方の人がアジトに到着し、会議室に入室した、味方の人は細身の中年の男性だった、一目見てその人が場数をこなしてきた手だれだとわかった、そしてその後ろに三人の女の子がいた、正直に言って強いとは思えなかった、どちらかと言えば素人に近い。
「久しぶりだな、ナジェンダ」
「・・・ジャド・・・まさかあなたが来るとは」
ボスを呼び捨て・・・ボスよりも上の人なのかな?
「あの、ボス、どなたですか?」
「ああ、彼の名はジャド、密偵チームの隊長だ」
密偵チームの隊長?何でここに?それに後ろの女の子も気になる・・・
「エアちゃん達久しぶりだね」
ラバが笑顔で女の子達に挨拶した。
「ラ、ラバックさん、お久しぶりです」
帽子をかぶった女の子が返事した、顔が少し赤いのは気のせいだろうか。
「皆さんお久しぶりです」
青い髪の毛の女の子は三人の中で一番落ち着いた雰囲気を感じる。
「ヤッホー、ラバックさん、あれからナジェンダさんとの・・・」
「わー!!わー!!」
ラバが取り乱している、ひょっとしてこの娘達ラバの気持ち知ってるのかな?
「あれ、ラバックさんひょっとしてまだなの?」
「何のことだ、ラバ?」
「な、何でもありません!」
ラバ・・・汗まみれだ、気持ちわかるけど・・・それにしても黄色の髪の毛の娘大胆ね。
「あの、この娘達は?」
「ああ、私が説明しよう」
ボスがこの娘達の説明をした、依頼料立て替え事件・・・操作系の帝具・・・ナイトレイドの活動開始の頃にそんなことがあったなんて。
「にしても依頼料立て替えは御法度なのか」
イエヤスがつぶやくとラバが。
「当たり前だろ、プロは甘くないんだよ」
「でもお前やっちまったんだろ」
「!!」
ラバは痛いところをつかれて顔が引きつっている。
「なあ、お前らのその衣装、密偵チームの制服か?」
イエヤスはエア達の衣装が気になったようだ、三人共ミニスカートでかわいかった。
「いいでしょこの服、密偵チームのお姉さんが着てたのを真似たんだけど」
エアは赤、ルナは青、ファルは黄色のミニスカートである。
「へえ、いいじゃんよく似合ってるよ」
イエヤスは衣装を褒めた、三人はとても喜んだがジャドはなぜか落ち込んでいる。
「・・・ちっともよかねえよ・・・そいつらの衣装代、俺が自腹切るはめになったんだぞ」
心からへこんでいる、かなりかかったようである。
「ところで三人とも背が伸びたね、特にファルちゃんが」
「でしょ、ラバックさん、私見違えたでしょ」
「でも、胸は大きくなりませんでしたけど」
「ルナ、うっさい!」
ルナの一言にファルはツッコミをいれた、結構気にしているようだ。
「いいじゃない、胸の大きさなんて・・・」
エアがファルをなだめるがファルはさらに怒った。
「その胸が言うかー!!」
ファルは怒りに任せてエアの胸を揉んだ。
「ひゃあ!?何するの!?」
「あんたは前から胸けっこうあるなと思っていたけどますます大きくなって!!」
「わ、私が望んだんじゃないよ・・・勝手に大きくなっただけだよ・・・」
「ますます許さん!!」
もにもにもにもに
ファルはエアの胸を揉み続けている、それを見てジャドは呆れたようにつぶやいた。
「・・・こいつら、いつもこうなんだよ、やってられねえよ・・・」
「ジャドさん、ぼやいてばかりだとハゲますよ」
「これは剃ってんだ、ハゲじゃねえ!」
「でも、薄いから剃ってるんですよね」
「うっ・・・」
ルナの指摘にジャドは言葉が詰まった。
「はあ・・・何が悲しくてガキどものおもりしなくちゃならねえんだ・・・俺におもりを命じたあいつが恨めしいぜ」
今のこの人を見ると哀愁漂う中年にしか見えない、悪いけど密偵チームの隊長には見えない・・・
「ところであなたが直々にやって来たということはただ事ではないことが起きたのか?」
「そうだ」
一瞬でこの人の雰囲気が変わった、密偵チームの隊長は伊達ではない。
「いいニュースと悪いニュース、どっちから先に聞きたい?」
「ではいいニュースから頼む」
「わかった、では言うぞ」
ジャドはいいニュースの説明をした、それは北方で反帝国の勢力が大きくなってきているそうだ、その中心人物は以前私とシェーレが助けたチョウリであった、元大臣だけあって短期間でまとめあげた手腕はすごかった、秋頃には帝都へ進軍できるそうだ、ただ、目的は幼い皇帝を利用している奸臣を討ち皇帝を救いだすということである、革命軍としては大臣を討つという目的が共通しているのでひとまず協力体制をとるつもりである。
「まさにうれしい誤算だな、北が動くことで包囲網が強固になる」
ナジェンダは心から喜んだ、革命の成功に一歩近づいたから。
「じゃあ、悪いニュースを言うぞ、ちなみに悪いニュースは3つだ」
3つ!?一体なんだろう・・・緊張するわね・・・
「・・・西の異民族との交渉が決裂した」
その瞬間、サヨとイエヤス以外のメンバーの表情がこわばった、やはりただ事ではなかった。
「それは本当か?」
「ああ」
「なんてことだ・・・」
ボスの顔から笑顔が消えた、特にマインがショックを受けている。
「そんなにやばいのか?」
イエヤスの質問にボスは・・・
「やばいなんてものじゃない、革命そのものが消滅しかねない!」
ボスが動揺している、大ピンチなんだ・・・
「なぜこうなった・・・大筋で合意していたはずだ」
「・・・イシミ銀山知ってるか?」
「ああ、この帝国内で最大の銀山だろう、西の異民族に返還予定されて・・・まさか!?」
「ああ、交渉に向かったパスターとムールが勝手に銀山を返還予定地域から除外したんだよ、うまく交渉できると踏んだんだろうがものの10秒で決裂だ」
「勝手なマネを・・・本部は何も手を打たなかったわけないだろう」
「あれから使者を送ったが返事はない」
「そうか・・・」
ボスが頭を抱えている、しかもまだ悪いニュースは二つもあるのよね・・・
「・・・二つ目は・・総大将が倒れた」
再び騒然となった、イエヤスもさすがに驚いている、革命軍の指導者が倒れたのだ当然である。
「・・・交渉決裂がよほどショックだったんだろう」
「それで総大将の容態は!?」
「一命を取り留めたが意識が戻らない、最悪総大将抜きで帝国と決戦することになるかもしれない・・・」
「そうか・・・」
ボスがますます落ち込んだ・・・もう一つは何なの!?
「三つ目は・・・カプリコーンの連中が三獣士の帝具を持ち出して逃走した」
再び騒然した・・・私達が命懸けで確保した帝具を持ち出して逃走だなんて許せない!!
「カプリコーンってなんだ?」
確かに・・・一体何者なのかな・・・
「カプリコーンは地方の殺し屋のチームだ」
「えっ?確か地方のチームは全滅したはずじゃ・・・」
「それは北部のチームだ、地方のチームには北と南の二つがあるんだ」
なるほど・・・帝国は広いからね・・・一つじゃ大変だからか・・・
「そのカプリコーンは大きな失態を招いたため解散が決定されていた、おそらくあいつらは解散を撤回させるために手柄を立てようとしている」
「それってまさか・・・」
「ああ、あいつらはイェーガーズの首を手土産にするつもりだろう」
「あいつらの首を!?簡単にできるわけないだろう」
「ああ、だがあいつらはそのために囚人兵も連れ出して逃走した」
「囚人兵!?」
「革命軍の軍律を破って略奪を行った奴らだ、近日中に処刑が決まっていた」
「処刑!?」
「そうだ、示しをつけないといけないからな、お前らも気をつけろよ、軍律破ったら厳罰だからな」
「いっ!?」
厳罰のことばにイエヤスはびびった。
「そう臆すな、ようは一般人に危害を加えなければいいんだ」
ナジェンダの言葉にイエヤスはあることに気づいた。
「・・それって姐さんやばいんじゃ」
「何で?」
「だって姐さん俺達の金騙しとろうとしただろ」
「そんなことあったっけ?」
「姐さん・・・」
大丈夫なのかな・・・殉職する前に処刑されなければいいけど・・・イエヤスは心から思った。
「それはともかく今からあいつらの似顔絵見せるぞ」
カプリコーンのメンバーの似顔絵を見せられた、メンバーは三人である。
「あの・・・この人」
「ああ、こいつはリーダーのピエールだ」
「この人・・」
「こいつヤギによく似ているだろう」
よく似ている?これはヤギそのものと言った方が・・・
「このオッサン変な仮面かぶってるな」
「ああ、こいつはダン、仮面の帝具バルザックの使い手だ」
バルザック・・・確か文献にあった帝具・・・潜在能力を100%発揮できることができる帝具・・・
「そいつは革命軍の中でも指折りのガタイを持つ奴だ、強いぞ」
「この眼鏡をかけた女性は?」
「そいつはローグ、元焼却部隊の一員だった奴だ」
焼却部隊・・・確かボルスが所属していた部隊ね・・・大勢の人を殺してきた部隊と聞いているけど・・・
「三人とも帝具使いだ、特にダンとローグはかなり強いぞ、ナイトレイドと同じくらいの強さだろう」
「それほどですか?」
「ああ、そうだ」
ナイトレイドと同じくらいの強さ・・・革命軍にはそんな腕利きがいるのね。
「とにかく時間がない、詳しいことは移動しながら説明する」
「時間がない?」
「いつあいつらが帝都に到着するかわからんからな」
「みんな、聞いての通りだ急いで帝都に向かうぞ」
「了解!」
ナイトレイドのメンバー全員が駆け足でアジトを後にした、不安を抱いて・・・
その頃、帝都でも騒動が起こっていた、イェーガーズのクロメとウェイブが何者かに襲撃されその襲撃者を追跡していたのである、城壁の外側まで追跡が続いていた。
「あいつ、なかなか足が速いな、追いつけない」
「うん」
「一瞬しか見てないがあいつヤギに似ていたな」
「と言うよりヤギそのものだったような・・・」
「とにかく捕まえればわかる」
「うん」
二人は襲撃者の追跡を続けた、すると突然頭上から岩が降ってきた。
「危ねえ!」
二人は間一髪かわした、そして瞬時に臨戦態勢をとった。
「待ち伏せか」
二人は周りを見回した、すると丘から人影が現れた、全部で六人である、その中にはあのヤギもいた。
「こいつらは?」
「あの衣服・・・反乱軍のだよ」
「反乱軍!?」
反乱軍・・・帝都から遥か南に拠点を持つ反帝国集団・・・なぜここに・・・
「・・・クロメにウェイブ、イェーガーズの中でもお前達は標的だ、覚悟してもらうぞ!」
・・・なんてな、最初に見つけたのがこいつらだっただけなのなが、まあ、実際、クロメは標的になっているわけだし、好都合じゃわい・・・
などとヤギが思っていることなどウェイブ達は想像もしない。
「俺達は簡単にはやられたりしないぜ!」
「うん、そうだよ」
二人は自信満々で相づちを打った、この時はヤギが帝具使いだとは思いもしなかった。
「じゃあ、これでも喰らいな!!」
突然長身の赤髪の女が攻撃してきた、見る限り爆弾に見えた。
「避けたらクロメが危ないな、よし!」
ウェイブはジャンプして爆弾に突っ込んで行った。
ドォオオオン!!
轟音とともに爆発が起こった、辺りに黒い煙がたちこめている、その中からウェイブが飛び出した、無傷であった。
・・・あらかじめ帝具を装着していてよかったぜ・・・この攻撃、帝具だな・・・あの女の帝具・・・ボルスさんの帝具に似てるな・・・何者なんだ?
この女が元焼却部隊だとはこの時知るよしもなかった。
この女・・・やっかいだな、早めに仕留める!
ウェイブはこのまま急降下して女に蹴りを食らわそうとした、だが、仮面の大男がそれを阻止した。
・・・こいつ・・・かなり強え・・・すげえ力だ・・・
ウェイブは態勢を立て直して着地した、クロメがウェイブの元へ駆け寄った。
「大丈夫!?」
「ああ、それにしてもあいつら強ええな」
「うん、特に女と大男はすごく強いよ」
「ああ、俺達と同じくらいの強さだな」
二人は女と大男の強さを認めた。
「援軍が来るまで粘るか?」
「ううん、その必要はないよ」
クロメは刀を抜いて構えた、ヤギ達はそれが帝具八房であることを知っていた。
八房を使うか・・・死体を操る帝具か・・・だが、ダンやローグには敵わないじゃろう・・・
ヤギは余裕だった、この時までは・・・
「その帝具、確か死体を操る能力だったな」
「うん、きっとウェイブビックリするよ」
クロメは楽しそうであった、ウェイブの驚く顔が目に浮かんだからであった、そしてクロメは八房を発動した、その瞬間大地が大きく揺れた。
「地震か?」
地震ではなかった、地面から複数の影が現れた、そして巨大な手が現れた。
「・・・」
ヤギはア然としていた、それは巨大な危険種のガイコツだった、その足元には人や危険種の姿もあった、いずれも強そうな死体だった。
「マジか!?」
「こ、これは?」
ローグとダンもその迫力に開いた口がふさがらなかった。
八体の人形を見てウェイブも呆然としていた。
「どう、ビックリしたでしょ」
「・・・これはたまげたぜ」
ここまですげえとは・・・改めて帝具って奴はすげえと思うぜ・・・
一方、ヤギ達はビックリしたじゃ済まされなかった、この人形全部と戦うことになるのだから。
なんてことだ・・・完全に予定が狂ったわい・・・こんなことになるとは・・・
ヤギは歯ぎしりをした、形勢が逆転したからである。
「ピエールさんどうしますか?」
ダンが問いかけた、戦うか逃げるかだが・・・
「決まっておろう、我等には後がないのだぞ!」
「わかりました」
ダンも腹をくくって戦う決意をした。
「そうこなくっちゃな」
ローグは戦う気満々であった。
イェーガーズの首を手土産にしなければ我輩は終わりだ、やるしかない!
一方、クロメは準備を終えて気合い十分だった。
「さあ、帝具戦の始まりだ、何人死ぬかなあ?」
今まさに帝国軍と革命軍の帝具戦が始まろうとしていた。
今回から革命軍編が始まります、この話で革命軍の権力争いを少し書きました、オリジナルキャラクターも登場させました、今回も文章が下手でわかりにくいかもしれませんがよろしくお願いします。